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イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

もっと深めろ

2010-01-14 21:59:22 | 再放送ドラマ

『外事警察』未視聴だった第1話を、待望の全話一挙再放送(BShi10日)で録画視聴。良かった良かった。普通に良かったですよ。「良かった」と直球で言える第1話だったことに安堵です。

 初見では“凡庸ではないけど、そこらにいなくはなさそうな公務員警察官”といった風情で登場する住本(渡部篤郎さん)もいいし、同期の中では優秀でモティベも高いけれど、突然の研修発令に戸惑い尻込み気味ながら「なにくそ、あんまナメないでよ」と飛び込んでいく、刑事志望の所轄婦警松沢陽菜ちゃん(尾野真千子さん)の醸し出すフレッシャーズな雰囲気もさわやかでした。

2人ともそれぞれに、FISH案件に深く踏み込んでしまうアフターとビフォーをちゃんと画面で確認できたので満足です。特に尾野さんの松沢は、最終話で倉田理事官(遠藤憲一さん)と向き合う場面のあのツラダマシイに成長変貌する前の、出発点はここにあったのか…と感慨さえ覚えるほど。1話での住本の台詞にあったように、かわいいけど「男の目を惹かず、かと言って不細工過ぎず目立たない」、地味で、いい意味で田舎っぽい尾野さんの持ち味がこんなに活きる役柄もそうはないと思う。派手な目鼻立ちの、記号的美人さん女優では絶対に成立しない役です。尾野さんの出演作は今後も注目ですな。

何より第1話、テロを含む犯罪違法行為とは無縁だったはずの、まじめな技術者社長・谷村(田口トモロヲさん)をからませることで、“無辜の一般善良市民がテロの魔手に取り込まれる恐怖”、ひいては“巨テロ阻止という大義のためなら市民をツールにするのも平気な、外事の峻烈さ”をきちんと描出した。

自分には責任のない爆発事故から自社の主力製品があらぬ疑いをかけられ、せっかく脱サラ起業して軌道に乗りかけていた事業が低迷、倒産の危機に。二度めの不渡りを出す寸前に、テロ組織と内通した某国外交官が大枚の金銭と、何より谷村が誇りとする技術力を誉めそやす甘言をもって誘惑します。

一度は断った谷村でしたが、救いの神だったはずのベンチャー融資が理不尽に打ち切られるに及んで、ついに禁断の木の実に食指が伸び……。

「いま止めて危険を知らせれば、谷村は犯罪に手を染めずにすむ、別居を余儀なくされている妻も、事故以来いじめに遭って引きこもりになっている息子も、犯罪者の家族にならずに済む」と焦る陽菜、若い女子相手にガチ組み合って介入を止める住本は「谷村が自殺したらそれも仕方がない、ラモン(←FISHと通じる某国スパイ)が次のターゲットを定めるのを待つ」と言い放ちます。

谷村がラモンに禁断の取引場所を指定、苦しんできた負債を一気返済して釣りの来る5,000万円の現金を手にしたら、別居の妻子と久々に外食をと連絡します。受け渡し現場に向かう途中の谷村を追尾する松沢の、いまにも「あの…行かないで」と話しかけたげな表情をモニターして「おいおいおいおい」とひやひやする住本班金沢(北見敏之さん、過去最高の当たり役!)。松沢の願い虚しく谷村は外為法違反の現行犯で“外事表(おもて)”の手で待ち伏せ逮捕、つゆ知らぬ妻子が楽しみに待つレストランの前をパトカー連行されてしまいます。

しかも谷村をいっとき天国に祭り上げたベンチャー金融は、五十嵐(片岡礼子さん)の調査でも素性が判らないはず、実は住本の雇ったダミー。「一度天国を垣間見た人間は、地獄の恐怖がもはや耐えられなくなる」…これを松沢に知らしめない語り口がいいのです。ここで陽菜ちゃんが住本の方法論をそこまで知ってしまったら、2話以降の下村愛子(石田ゆり子さん)取り込みの話が成立しなくなる。

標的のためなら人間であることをやめるさえ辞さない住本と、そんな“公安が生んだ魔物”とチームを組んでいるとはいまだ知らない松沢。努力型の優等生新人女子と、“モンスター”とのコンビは、なにやらクラリス・スターリング捜査官とハンニバル・レクター博士を連想させます。

1話の土台がしっかりあったから2話以降が活きた。最終話ラストシーンの住本も、“みずからの峻烈なやり口に復讐された”と取るもよし、逆に“このシーンが‘さらなる裏の裏’への一丁目”とも取れる。

いまや“草食系男子”の時代ですが、渡部篤郎さんの、“実は肉食の隠花植物”みたいな、一見へなへな、ほにょほにょした、軟体な佇まいが実に役柄にマッチ。輪郭の明晰な、きりっパリッとしたルックスの人、動物的な温もりや熱気のある人では住本は演れない。

全話視聴して、依然、芸風的に苦手なタイプの役者さんであることに鐚一文変わりはないのですが、力のあるドラマ、小説であれ映画であれ力のあるフィクションは「苦手だけどおもしろい、わくわくする、見逃せない」と思わせてくれるものなのです。

NHK土曜ドラマは、こういう、一種引き攣った娯楽感に満ちた作品を、最近よく放送してくれます。民放他局のドラマがCM不況のためか軒並み小粒になり、冒険しなくなっている現状、NHKには“TVドラマ製作局最後の牙城”として期待したいですね。


裏の裏の裏

2010-01-10 23:09:33 | 再放送ドラマ

暮れに最終話を見とどけたドラマでもう一本、『外事警察』について触れずに来ましたが、あの終わり方(1219日放送)で良かったのか、良しとしていいのか、判断に迷ったので放置していました。

単体としては嫌いな最終回ではなかったんですけどね。『振り返れば奴がいる』や、『相棒 Season 2の『殺してくれとアイツは言った』のラストなど思わせる「この後果たしてどうなったでしょう?」を残してエンド。余韻の残し方、忘れられなさの刻印として、あざといけれど、まずは乗ってあげられる。

ただ、NHKの土曜ドラマは、『ハゲタカ』を筆頭に、最終話は第1話で蒔かれたタネを収穫して円環がつながり閉じる…ような構成になっていることが多いんですね。暮れに再放送された『再生の町』も、ゆるめだけれどそういう構造になっていました。

連続モノでこういう作りになっているドラマは幾らもあるのですが、NHK土曜ドラマは話数が56話と、記憶が新しいうちに完結するのでちょうどいいのでしょう。

従って『外事警察』もどうにかして見逃した第1話と、第2話の序盤15分ぶんぐらいを視聴しないと、あの最終話をどうこう言えないなと思っていたら、10日にBShiで一挙再放送とのこと。これは嬉しいニュース。きっと要望が多かったのでしょうね。

早速録画セット。逆光やカラヴァッジオばりのコントラスト、ジョルジュ・ド‐ラ・トゥールばりの単一光源を多用した画面だったので、最高画質で録画することにしました。落ち着いて再生するのが楽しみです。最終話のクライマックス=爆発シーンがモノクロで複数話にわたって何度もフラッシュする叙述法をとっていましたが、時系列の話法なら、陽菜ちゃん(尾野真千子さん)の交通婦警制服姿なんかもあるかしら。


平凡という名の非凡

2009-10-09 17:01:32 | 再放送ドラマ

『嵐がくれたもの』で本編とは別に印象深いのは、節子(岩崎ひろみさん)・順子(三浦透子さん)親子の靴みがき仲間=文子役の前沢保美(やすみ)さんですね。

いやー、この人の顔を『相棒』で何度見たことか。Season4『殺人講義』での、毒殺された女子大生が住むマンションの管理人さん(管理人さんの奥さんかな?)が、月河としては初見だったかな。

その後、season何か忘れましたが、『正義の翼』で脅迫される大手メーカーで、爆発のとばっちりを受ける掃除のおばちゃん、『犯人はスズキ』で「豆腐の好きな人に悪人はいないよ」と言葉たくみに?右京さん(水谷豊さん)に買わせてしまう下町豆腐屋の奥さん(店主で旦那は丸岡奨詞さん)。前season、昨秋放送の『隣室の女』では聞き込み先の結婚情報サービス会社の、これはちょっとキャリアウーマン風なスタッフでキリッとしたいでたち。『ピルイーター』では常連客だった被害者の異性関係(…)を語る、ややお化粧濃いめのスナックママ。

ほかにも何かあったかな。昨年春の連休前頃、劇場版PRのための、当地ローカルでの旧season再放送ラッシュから『相棒』視聴始めた月河でもこれだけ覚えてるんだから、土曜ワイド時代からの熱心な“アイボウラー”ならもっと記憶あるかもしれません。

前沢さん、舞台中心に活動されているベテラン女優さんですが、きっと『相棒』製作スタッフが、前沢さん個人か、所属劇団と懇意なのでしょうね。

言葉としてはあまり良くないけど、端役、チョイ役級で、ひとりの俳優さんが同じTVシリーズの複数のクールにわたって、その都度違う役でこれだけ頻回ゲストキャスティングされている例を寡聞にして知りません。

毎話、犯人とか共犯とかキーパーソンといった重い役どころではないものの、事件捜査の中で警察が接点を持つ“市井の一般人”のムード、柔和でさばけていて協力的な中にも一抹の警察への警戒心、猜疑心や毛嫌い感を出すのが実にうまいのですよ。普通ににこやかに聞き込みに応じているだけの場面でも、「愛想良さとか人あたりのよさって、庶民のなけなしの武器のひとつだよなぁ」なんてことを考えさせる。

だもんで、『嵐がくれたもの』で、よそ者(伊勢湾台風の混乱から東京に逃れてきた)の新入りで、路上商売としては商売がたきのはずの節子母娘に「一卵性親子だもんねぇ」なんて優しく接してくれている靴みがき業界先輩?の文子さんも、“何か知ってて隠しているのでは?”とつい思ってしまう。

ドラマ、特に事件もので、“出てきただけで犯人っぽい”“黒幕っぽい”と思われる、歩くミスリードみたいな俳優さんは結構いますが、前沢さんのような、あからさまに怪しくはないけど、いや怪しくはないからこそ、“凡人ならではのウラオモテ”を秘めていそうなキャラって貴重ですよ。

それにしても、前沢さんが出ていると、客のふりして右京さんか亀ちゃんか捜一トリオの誰かが聞き込みに現われそうな気が、どうしてもしてしまうなぁ。ドラマ的には、現われるとすれば節子の、放棄逃亡した前の職場・櫻警察署の丹波副署長(清水綋治さん)でしょうけど。


今週は麒麟仮面

2009-07-06 23:01:48 | 再放送ドラマ

最近、午前中1000台に、80年代の『必殺仕事人』シリーズ再放送を不定期でやっていて、どういう時系列なのか、見かけるたびに中村主水の藤田まことさんが微妙に若返ったりちょい老けたりしているのですが、ここのところは『必殺仕事人V 風雲竜虎篇』。村上弘明さん扮する鍛冶屋の政が、“裏の仕事”に赴く前、ウォームアップよろしく必ず鉄棒に両脚かけて逆上がりしたりベンチプレスしたりしてるんですよ。もちろん半裸。

このシリーズのメンバーが主水以下、なんでも屋お玉(かとうかず子さん)に南京玉簾使いのかげろうの影太郎(三浦友和さん)に絵馬坊主の蝶丸(桂朝丸‘現・桂ざこば’さん)という面子なので、村上さんの政はただひとりのワイルド&肉体担当。

『つばさ』の翔太(小柳友さん)を思い出さずにはいられませんな。ひょっとしたら翔太のほうが、“ヒロインの初恋担当”プラス“ドラマ世界自体の肉体担当”ってことなのかもしれない。台詞がなくてひとり映りのシーンでも半裸でウェイトレですもんね。80年代当時は花の金曜日夜2200台の放送だった『必殺』シリーズならともかく、朝に半裸汗ダラのワイルドは要らないと思うけどな。

長身で南方系濃厚フェイスなだけで、どこかJリーガーにあるまじくヒョロい翔太に比べると、本放送当時30歳、身長185センチ、元・仮面ライダー筑波洋の村上さんのウェイトレシーンは、毎話数秒のカットだけど結構見応えありますよ。設定がオモテの本業鍛冶屋なのに、何で仕事場に鉄棒やバーベルがあるんだ?なんて野暮なツッコみは自重の方向で。

ただ、『風雲竜虎篇』というすごいサブタイのこのシリーズ、共演の男性陣が藤田まことさんと三浦友和さんと桂ざこば師匠ですから、“純粋頭脳担当”が不在で、村上さん扮する政の肉体ワイルドがちょっと空回りな印象は否めません。熱血でフィジカルな政の対極となるべきクール&精神性、言わば戦隊におけるブルー担当は影太郎の三浦さんのはずですが、当時35歳の三浦さん、すでに結構肉づきが良くて、総髪ロン毛に派手な陣羽織の大道芸人ルックでも、カスミを食って生きてる様な傾(かぶ)き者感、非日常感があまり無いんだな。体温高そう、米のメシしっかり食べてそうで、人として生気があり過ぎなんですよ。

その点、この前に放送していた『旋風篇』には、長崎留学帰りでアタマでっかち新し物好きのイマドキ青年で、“仕事”よりドクター中松みたいな殺しの小道具考え出すほうが得意だったっぽい歯科医(←この前のシリーズまでは医学校受験生だったはずですが、医者二世の出来のよくないのの例にもれず、結局歯医者止まりだったらしい)の西順之助(ひかる一平さん)がいましたから、一応ギリでバランスが取れた。

こうしてみると『仕事人Ⅲ』『同Ⅳ』までの、三味線屋勇次(中条きよしさん)と錺職人秀(三田村邦彦さん)とのバランスは唯一無二でしたね。軟と硬、と言うより彩色とモノクローム。勇次はレッドのタイプとはお世辞にも言えないけれど、さりとて秀もブルータイプではない。

陽と陰でも、光と影でもない、強いて言えば、昼の日影と夜の月影。そもそも仕事人自体、正義の存在ではないのですから。言わば、“追加戦士が2人いる”ような贅沢感がありました。

『Ⅳ』時点で中条さん37歳、三田村さん30歳、対極のキャラながらいずれ劣らぬ二枚目の2人、ワンセットの仕事を請け負っても決してわかりやすいチームワークは無く、水と油みたいなのもよかったですね。大人の戦隊は仲良しこよしじゃいけない。要所要所で、世間知的なこと(特にオンナ関係)ならより長けていると思われる勇次が、不器用で融通が利かない秀をリスペクトして、助言を与える場面もあったり。さりとて秀がスペック的に劣っているわけではなく、『Ⅳ』では“幼い子供に慕われる”というお茶の間最強の属性を全開、同24話での加納竜さんとの空中戦など、“男対男”の局面では他を寄せ付けませんでした。

やはりチームもの、バディものは初めにキャラありきですね。俳優さんの持ち味や表現力、表現させてみてどう出るかの結果に俟つ部分も大きいですが、役者に本を渡し、現場に入れる前に、作り手にどういう風景が見えているか、どういうやりとりが頭の中で聞こえているかがいちばん重要だと思います。

『つばさ』も、公式サイトの“キャスト”ページのデザインから連想される通り、基本“大きな戦隊で、“毎週替わりで敵怪人来襲(“来襲”と言うより“来訪”)”みたいな構造のドラマですが、最近は、翔太よりつばさ弟・知秋(冨浦智嗣さん)のほうが、ユニセックスヴォイスはそのまま、いいカラダになってきつつありますね。或る日突然、意味無く2人並んでウェイトレしてたらうけるんじゃないかな。翔太が宮崎に帰る前にぜひ。


芹セリ

2009-06-19 20:59:54 | 再放送ドラマ

先日の記事で、『オリエント急行殺人事件』と並べて引き合いに出したら、ちょっと気になってきて、録画を探したら出てきました『相棒 season4“黒衣の花嫁”(本放送200510月)。

地上波再放送で、背中で観流していたエピソード、ときどきBS朝日で再々放送されているようなので、毎回というわけにはいきませんが気がついたらチェックしているんです。

そしたらアナタ、虫の知らせってやつですか?捜一ヤング芹沢くん(山中崇史さん)(←本放送時は“たかシ”)の大学ゼミ仲間のひとりとして、『夏の秘密』の夕顔荘在住20引きこもり博士・柏木役でご出演中の坂田聡さんの顔が見えましたよ。仲間の結婚式場で電話連絡を受ける最初の登場がいきなりバストアップであッと思いました。うわー、これは気がつかなかった。『夏の~』では3週めの今週から柏木さん、台詞も言うようになりだんだん出番も存在感も増して来ているんですけどね。

こちらでの坂田さんは、芹ちゃんと同ゼミ卒業後8年、いまは少壮のやり手弁護士・田村役。詳しく言うとネタばれになってしまいますが、芹ちゃん同期仲間でも結構、重要な役回りです。弁護士らしく終始バチッとスーツ姿なので、ますますわからなかったんですね。心なしか柏木さんより低身長で小柄に見えますが、これはゼミ仲間役に、より長身の人たちを揃えた対照効果かもしれない。それプラス、柏木役前に若干増量されたかな。でもって柏木って、夏のドラマなのにいつも浴衣の上にドテラみたいな、季節感のない格好してるしな。

タイトル“黒衣の花嫁”の元ネタであるコーネル・ウールリッチ作古典ミステリの本歌取り、換骨奪胎と見られなくもないこのエピソード、オリジナルに沿って復讐企図?と劇中、目される悲劇の花嫁役に遠野凪子さん。約2年後の07『麗わしき鬼』の悠子役ド迫力熱演の頃よりだいぶスレンダーで薄幸そう。05年と言えば、13月に『冬の輪舞』しのぶ役で主演されていますね。

坂田さん扮する田村弁護士はと言えばですね…うん、これだけ書いてもいいかな。2時間ドラマで、“出てくればほぼ犯人役”の俳優さんに注目しててください。坂田さんの田村弁護士も、彼つながりで重要な立場です。何か隠して芝居打ってそうな、それにしては臆病そうな、それでいて傲岸エゴそうな、坂田さんの“逆・目ヂカラ”みたいのがよく活かされたキャスティングだと思います。

そう言えば同じ“ジョビジョバ”メンバーの長谷川朝晴さんも、02『season1“仮面の告白”にゲストイン済み。のちにセミレギュラーとなる、松下由樹さん演じる武藤かおり弁護士の初登場エピで、彼女の、時には権力やマスコミとの敵対も辞さぬ人権派法曹としての辣腕ぶりを印象付ける意味でも、なかなか重要な役でした。

ジョビジョバと言えばマギーさん扮する元・暴力金融取り立て屋若杉などは、亀山(寺脇康文さん)に逮捕されたことでいったん更生後、再び悪の道に舞い戻り、夫婦の危機を迎えるも亀ちゃんの尽力で復縁、北海道で堅気に暮らしていたかと思いきや、職場の先輩と東京出張して来てまたもや事件に巻き込まれるという波乱万丈の人生で、月河が再放送で覚えているだけでも3つぐらいのエピに登場しているはず。亀ちゃんに恩義を感じるあまり、愛嬢に“薫”子と名づけた若杉、亀夫婦が東南アジア・サルウィンに渡ったと聞いてたまげただろうなぁ。

サルウィン!そうそう、亀ちゃん渡サル決心の、そもそものきっかけを作った高校時代の旧友・兼高役、四方堂亘さんが『夏の秘密』では、それこそ怖い暴金の社長雉牟田(きじむた)に扮して、蔦子姐さん(姿晴香さん)の浮舟で子分にひと暴れさせ、止めに入った伊織(瀬川亮さん)の利き腕を負傷させたり、サルウィンで兼高を待っていた奥さんと学校の子供たちが知ったら悲しむような悪行三昧。

昼帯と『相棒』再放送しか、大人向けドラマと言えるものはちゃんと観てないんだけど、これだけ俳優さんが往来している。こうしてみると『エゴイスト egoist~』並みに、リアル芸能界、俳優界、狭いのかもしれません。

さて『夏の秘密』は第3週、第15話まで終了。その柏木からの、事件前夜のみのり×伊織の諍い目撃情報に一抹の疑惑の種を蒔かれた紀保(山田麻衣子)ですが、真偽定かでないまま直後の杏子(松田沙紀さん)の裏切り判明で奈落の底へ。いっそ杏子が「私も龍一さんが好きでした、紀保さんと結婚させず奪いたかった」と言ったなら、杏子を「不潔」「卑劣」となじれる分まだしも傷が浅かったかも。「事件以降紀保さんは龍一さんのことばかり、昔のように私とアトリエに専念してほしかった」のみならず、「龍一さんと別れさせるため、同じく婚約破棄を望む羽村社長と、アトリエ経営支援追加を条件に結託していた」まで加わったから、紀保の孤立感は最悪に。

15話の冒頭、紀保は夕顔荘2階で柏木から思いがけず、伊織は紀保に黙って拘置所接見室で頭を下げて龍一から聴取して、それぞれ聞き捨てならぬ情報を得る場面のカット相互切り替えがよかったですね。一緒にいて会話しているときより、別々の場所で別々のベクトルに向かって前がかりになっているときのほうが、紀保と伊織、互いの距離が縮まっていく感。「あるいはみのりの方から、薬剤を使って龍一に行為を迫って?」という疑念に裏付けがとれてきて、龍一を一途に信じる紀保にすまなかったと思いはじめていた矢先だけに、伊織には紀保の涙がしみたことでしょう。

拘置所で二度めの接見するや、伊織の腕の包帯を見とがめた龍一が持ち出したラガーマン時代の怪我の話は、出かけて来る前に紀保が語って涙していた思い出と同じ話。「紀保さんが打ち明けることには嘘偽りはない」という実感が、改めて伊織の胸を領したはず。

雨漏りの修理後もまた雷雨。冷たい雨、そして暖かいシャワー。事件の夜も豪雨でした。前季までのこの枠の夏クールより1ヶ月早く、6月から走り出したドラマに、“”は重要なファクターになりそうですね。1週めから2週め、さらに3週めと、どんどん週末が長く感じられるようになってきましたよ。