イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

さようならミセス・ジェット

2013-03-31 16:11:52 | 再放送ドラマ

 世の中コトブキ報もあれば悲報もあるもので。坂口良子さんの訃報をいきなり午前中のNHKラジオ第一のニュースで聞くとは。

 デビューのきっかけになった1971年(昭和46年)の集英社の週刊セブンティーンと言えば、高校生や短大生のお姉さんたちが読んでいるイメージだったので、坂口さんも失礼ながらだいぶお年上と思っていたら、改めて訃報記事の横のカッコ書きを見たら、幾つも違わない、月河とほとんど同世代だったことがわかりました。本当に早過ぎるさよならです。

 同世代のモテモテ可愛い子ちゃん女優さんとくれば、同性のルサンチマン含みの視線でもっと熟視していてもよさそうな気がしますが、不思議と訃報を聞くまで関心の枠内にいたことがない、月河としては言わば“放置してきた”人なんです。

微妙に年上感がある、というより“同世代感がない”のは、坂口さんが可愛さ振りまく盛りの頃のドラマ代表作を、当方がほとんどまったく見ていないからという原因もあります。『サインはV』の実写ドラマ化も、昭和44年の岡田可愛さん、中山麻理さん&范文雀さん版は同世代間で結構話題になり、休み時間のモノマネネタにもなりましたが、坂口さん主演にかわった『新・サインはV』の昭和48年頃には熱が醒めていて、嵌まって観ている子はクラスにもほとんどいませんでした。小学校高学年から中学生になるかならないかの年代は本当に興味の勾配がはやく、夢中になっていても半年かそこらで次の対象に移ってしまうのです。

そこへ持ってきて、(このブログのリピーターのかたならおおかた周知のように)月河はドラマの中でも学園甘酸っぱ青春もの、にぎやか家族ワイワイものがどえらく苦手で、ラテ番組表でそういう臭いのする枠はまたいで通り過ぎるようにしていたという、勝手な嗜好の問題もあります。

ラジオやネットの訃報では『アイちゃんが行く』をデビュー作として言及、続いて『前略おふくろ様』『たんぽぽ』『池中玄太80キロ』を代表作に挙げている媒体が多かったように思いますが、月河はこれらぜんぶ、タイトルだけがギリ記憶にある程度。『前略~』は実家母がわりと見ていましたが、ショーケンと田中絹代さんと、あと桃井かおりさんと川谷拓三さん、ショーケンの職場である料亭の女主人として八千草薫さんと、その娘役で木之内みどりさんも出ていたかな、という感じ。本当に失礼ながら坂口さんがどんな役でどれくらい出番があったのかまったく印象がない。

近い年代の、雑誌モデル出身やオーディション抜擢組の歌手アイドル、たとえば麻丘めぐみさんや浅田美代子さん、ちょっと上の小林麻美さん等に比べると、女優がメインの坂口さんは当時の『明星』や『平凡』といったヤング(←死語)向け芸能グラフ誌で割かれるページ数が少なかったり、載っていても巻頭カラーの華やかなパートでなく、後ろの方の、活字の多いじっくりしたページだったりもしました。

思うに、前出の『前略~』等の“代表作”にしても、坂口さんが出演していなければ成立しなかったような作品ではないのでしょう。広く当時の視聴者に好感を持たれたドラマの、ほどほどの位置に坂口さんは居て、ほどほどだからこそ坂口さんの好感もアップしたというところではないでしょうか。愛くるしさ、隣のお姉さん的な親しみやすさ、失礼ついでに言わせてもらえば田舎っぽいオボコい感じなど、一時期の沢口靖子さんと共通するものがあるように思います。どんな年代の男性でも「好きだな」「かわいいね」「タイプだ」と人に言うとき躊躇や後ろめたさが伴わない。ミス・セブンティーンに行っていなければ、早晩NHK朝ドラヒロインに合格していたような気もしますが、そっち方向にならなかったのはご本人の志向性もあるにせよ、敢えて言えばもうひとつの持ち味“肉体性”でしょうね。朝ドラワールドが譲らない“健康的”の範疇から少ーしハミ出すんですよ。ヒップとかフトモモとか。オンナなんですな。

キャリアを積んでも、可愛らしさや親しみやすさのほうが前に来て、演技力上等!!という感じにならなかったのもいまの沢口さんと似ていますが、あぁこの人女優さんなんだ、芝居できるんだ、と月河が初めて思ったのが1976年(昭和51年)の『グッドバイ・ママ』でした。

ジャニス・イアンのエンディングテーマの胸打つ歌声に引かれてなんとなく継続視聴、お話は悲しいながらもごくごく夢々しいものでしたが、不治の病で迫り来る余命の中、幼い愛娘の父親になってくれる男を探して奔走する若すぎるシングルマザーの役、いま思い返せば坂口さん、放送当時は20歳だったのですね。雑誌モデルあがりで演技キャリアせいぜい45年の20歳で、市川森一さん脚本のあの詩的でホロにが含みの世界を嫌味なく演じられる女優さんがいま居るか??ということになったら、坂口さんに「演技派タイプではなかった」なんて評価は失礼千万でしょうな。

その後ウン十年を経て、月河が女優・坂口さんをいちばんたっぷり見たのは、再放送の昼帯ドラマ『その灯は消さない』と『風の行方』。前者の本放送時は坂口さん40歳、後者では44歳で、ともに子持ち家庭持ちの共働きキャリアウーマン役でした。奇しくもこの少し前に実生活では結婚生活が破綻され、負債を抱えて非常に苦しい状況だったはず。考えようによっては禍転じて福となすで、女優さんも男性主人公の脇で、カスミを食ってニコニコしていればオッケーだった時代から、実社会で働く地に足ついた女性らしく見せなければ役が回ってこなくなった時代を、坂口さんは生身のリスクを冒して、それこそ痛みに耐えて乗り切って見せてくれたわけです。

最近はドラマより、芸能人ゲストトーク番組で、タレントデビューした娘さんの“付き添い”みたいな雰囲気でにこやかに座っている姿の方が多かったような気がする坂口さん。続報によると2年前には重病発覚、通院治療をかさねておられたそうで、あるいは残された時間を悟り、「私があちらに行っても、娘を可愛がって引き立ててやってくださいね」と『グッドバイ・ママ』の心境でカメラに向かっておられたのかもしれません。

何であれ一所に懸命な人の姿は胸を打ちます。この記事を書くために幾つか調べてみたら、デビュー直後は当時のアイドルの例にもれず、女優人気の客を拾うようなシングルレコードも何枚かリリースしておられますが、音楽のほうで稼ぐ山っ気はまったくなかったようで、80年代に写真集2冊出した以外は“演じる”仕事ひと筋でした。見た目のイメージ以上に“女優魂(だましい)”の人だったのです。

初婚の負債から解放され、お子さんたちも自立の時期を迎え、つらい時期を支えてくれた長年の恋人と入籍されて名実ともに第二の人生を、健康で元気で歩まれていたら、演技者としてさらなる新境地もあったでしょうに。

ご冥福をお祈りするとともに、『グッドバイ・ママ』の再放送はないかな。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

いつの世にも悪は

2011-04-21 19:51:17 | 再放送ドラマ

前回の記事、NHK『おひさま』にて、祝・現代時制までサバイバル熟年タケオ役、犬塚弘さんの俳優としてのドラマのお仕事を二~三思い出したのですが、大事なご出演作品を忘れていました。

中村吉右衛門さん版『鬼平犯科帳』第1シリーズ最終話『流星』で、おかしら愛用の銀煙管を寝室枕頭からこっそり盗み出し、また知られずに元に戻しておくという、ルパンⅢ世ばりに人を食った腕利き盗賊・浜崎の友五郎を演じておられた。

息子同様に可愛がっている、賢い甥っ子が大店(だな)の手代勤めを続けられるようにと、お盗(つと)めの腕前を封印して堅気の船頭として静かに暮らしていた友五郎でしたが、水路に詳しく操船の腕も抜群なことから、上方から鬼平の鼻をあかすべく江戸に乗り込んできた凶賊・生駒の仙右衛門から、一枚加われと誘われます。仙右衛門は金目当ての浪人どもを集め、鬼平の部下やその家族を次々に手にかける、血も涙も仁義もない悪党。友五郎は一度ははねつけたものの、可愛い甥っ子が人質に取られたと知り、仕方なく加担を決めますが、伊達に船頭やってきたわけじゃない。逃げる船をわざと浅瀬に乗り上げ、一味を一網打尽にさせます。土壇場での友五郎の選択に、お縄にした鬼平は吟味の後、いつぞやの銀煙管の件にも敬意を表して温かい言葉をかけました。

本放送が確か1990年頃のこのエピソード、10年ほど後にいくらか違った脚色で再度制作、放送され(『大川の隠居』、18日にBSフジで再放送されていました)同じ役を今度は大滝秀治さんが演じられましたが、泥っぽく渋みも苦みも濃い大滝さんの友蔵よりも、長身の背中をちょっと丸めて“俺ぁしがない船頭さ”と飄然としているが“昔ゃヤンチャでブイブイ言わせてた”お洒落さの片鱗を随所に滲み出させ、真面目ゆえの気弱さも垣間見せる、でもお盗めの腕は融通無碍というギャップに興趣尽きない、犬塚さんの友五郎のほうが月河は好きでした。

もともと『鬼平』シリーズ、歌舞伎や新国劇、新劇畑などの舞台汁(じる)・役者汁が骨の髄までしみ込んだベテラン俳優さんたちは当然のようにベテランなりの存在感を皆さん発揮されるのですが、もともと俳優専業ではない、芸人や噺家さん、元アイドルや歌手、格闘家などもゲスト起用されると驚くほどの味を出すことが多いのです。池波正太郎さん原作の物語世界が分厚いことと、何度もTV映像化されてきた伝統の重みでしょうかね。

あと、基本、おかしら長谷川平蔵率いる火盗改方の活躍を描くお話なため、ゲストの役どころは概ね盗賊、元盗賊、掏りや舐め役・引き込み、あるいは密偵など、アウトローや社会のはぐれ者、“普通の人じゃない人”だから、生粋の、根っからの役者さんじゃなくても、演じやすく、味を出しやすいのかもしれない。

犬塚さんが友五郎に扮したのはまだ60代に入られたばかりの頃で、“引退した老盗”にはまだ失礼なくらいの、飄々とした中にもいなせで悪戯っぽい風情を漂わせていましたが、クレージーキャッツの元お仲間で俳優としても活躍された、植木等さんやハナ肇さん、谷啓さんなどにもお元気なうちに一度は『鬼平』にゲストインしていただきたかったなといまになって思いますね。

先週(15日)新作SP『一寸の虫』(←こちらも2001年=10年前に放送されたエピのキャスト替え再脚色です)が放送され、物語世界は古びていないし寺脇康文さん原田龍二さん北見敏之さんなど個性あるゲストも、ゲストインすればインしただけもれなく輝く『鬼平』マジックは健在でした。

ただ、おかしら吉右衛門さん以下レギュラーメンバーは、原作での設定を考えても、年齢的、見た目的にギリかも。…って近年、年1回のSPのたびにギリだギリだと言い続けているような気もするな。いよいよとなったら、それこそデジタルリマスター使ってシワとか伸ばしたりしてでも続けてほしいですね『鬼平』。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

90秒の招待状

2010-10-13 19:07:48 | 再放送ドラマ

BSフジで再放送中『愛の天使』の、時代(=本放送1994年)を感じさせるゆったり甘く切ないOP映像は、ざっくり分ければ“顔出し無し型”ですね。

 このフジテレビ・東海テレビ放送枠の昼帯ドラマ、OP“キャストが役の顔で出る型”と、“キャスト顔出し無し型”があります(正確に言えば“ありました”。現在はドラマタイトル→クレジット提供字幕ベースの12カットしかなくなりました)。

 月河が初めて本放送で第1話から視聴した『女優・杏子』20011月期)は顔出しも顔出し、闇の中をドレスアップして女優オーラ出しつつポージングして歩く杏子さん、一転砂浜でナチュラルメイクで自由にはじける杏子さんと、ほとんど杏子役荻野目慶子さんのプチPVのような仕立て。同年10月期『レッド』も遊井亮子さんが、降り敷く赤い薔薇の花びらの中で覚醒?と一歩間違えば映画『キャリー』かみたいな不思議なスタートから、最終的にはショーウィンドウの街路を笑顔でダッシュする“ヒロインひとり映りPV系”でした。

 荻野目慶子さんは0410月期『愛のソレア』でも主演で、こちらは少女~若年期担当前田綾花さんからバトンを受け継ぎ、OPでも衣裳七変化ならぬ3変化くらいでしたがヒロイン美保の人生の荒波を象徴して見せてくれました。女優さんながらすでに怪優的貫禄も備えている荻野目さんをヒロインに担ぎ出すなら、OPPVにしないと失礼だろってぐらいの勢いでした。

03『愛しき者へ』の馬渕英里何(現・英俚可)さん、06『新・風のロンド』の小沢真珠さん、08『安宅家の人々』の遠藤久美子さんも、それぞれドラマに合わせた白メインのイメージ衣裳で、ひとり映り大活躍のOPでしたが、この“顔出しヒロイン単独主演系”OPの最高峰には、ぜひ03『真実一路』の高岡早紀さんを挙げたい。『ソレア』につながる、ヒロイン経年成熟3変化パターンでしたが、放送当時30歳高岡さんの女学生セーラー服姿を拝めましたからね。

並木の成熟ロードを歩むヒロインがOPで一瞬すれ違う前半の、相愛の相手役をつとめた加勢大周さんが、残念ながら周知の不祥事で芸能界事実上追放に等しい状況なので、『ソレア』とともに再放送は難しいかもしれませんが、もし当時デジタル録画が可能だったら、ぜひ永久保存しておきたかったですね。

ヒロインのモーションもカット数も少なめだけれど印象的だった例で言うと、05『危険な関係』の高橋かおりさん。OP前半、月夜のバラ園で茨の蔓にからまれた部分裸身のカットをいくつも出しておきながら、いざ高橋さんの顔が映ってロングになると、からまれながらしっかり着衣、というズルい女作戦。まぁ、結ばれそうで結ばれないツンデレすれ違いの醍醐味も柱となるお話だったので、これくらいの脱ぐ脱ぐ詐欺(詐欺って)は見逃しましょう。

“顔出し型”にはこういった“ヒロイン単独主演系”以外にも、相手役との純愛あるいは悲恋小芝居系(02『新・愛の嵐』の藤谷美紀さん要潤さん、05『契約結婚』の雛形あきこさん長谷川朝晴さん、同年『緋の十字架』の西村和彦さんつぐみさん、06『紅の紋章』の酒井美紀さん山口馬木也さんなど)、親世代も含めた家族群像系(02『母の告白』07『愛の迷宮』、古くは1993年『誘惑の夏』、1996年『その灯は消さない』など)の変化球もあります。

一方、ヒロイン含め劇中キャストがいっさい顔を出さない、イメージ映像のみの代表と言えば何と言っても04『牡丹と薔薇』06『偽りの花園』、ご存知中島丈博さん脚本による“宿命の女子ふたり”連作。吉屋信子原作の05『冬の輪舞』もそうでしたが、対照的なキャラのダブルヒロイン作は、映るカット数や秒数に差が出ちゃいけないとかなんとかいろいろうるさいので“顔出し型”は作りにくいのかもしれません(07『母親失格』は芳本美代子さんと原千晶さんのダブルヒロインでスタートしましたが、OPは第三の主役=娘役森本更紗さんを加えてトリプル仕立ての顔出しになっていました)。いずれも、キャストの顔が見えないことがひとつも物足りなさにつながらない、キャンドルランプやステンドグラスなど光の素材をふんだんに使った、凝りに凝った美麗映像でした。

『冬の輪舞』は舞台に設定された伊豆の素直な海浜風景動画スライドショーで、屋外ロケが少なく箱庭作りモノ感が付きまとう昼帯の世界に広がりを添える効果はありました。

“顔出し無し型”OPにおける変化球の極致は、人影はちらつくけど、ヒロインでも相手役でもないという、07『金色の翼』Bamboleoダンスでしょう。舞台に想定された離島の遠景近景、ホテル周辺風景に挟まれる男女のダンサーのステップ踏む脚元のみ。ヒロインと相手役(国分佐智子さん高杉瑞穂さん)をイメージしているようで、実はそうでもない。“ひと夏の欲と享楽に踊る人々”の象徴ぐらいに捉えていたほうが適切でしたが、この距離感、抽象感が、ドラマラストまで一抹、ヒロインカップル及び彼らを取り巻く人物たちへの距離感につながってしまったのは如何ともしがたいところでした。良く言えばアレゴリック、寓話的、悪く言えば絵空事感濃厚な作ではありましたね。

さて、そんなこんなで現行堂々再放送中の『愛の天使』OPは、歴然と“顔出し無し”でありながら、実は川べりで水に浸かっていたり、廃品置き場に埋もれかかっていたり、雨の盛り場の片隅に放置されていたりする壁画タイルの破片に描かれている男女の天使像デッサンが、微妙に主役ふたり(野村真美さん渡部篤郎さん)です。女性像のほうはぱっと見、あからさまに野村さん風ぽってりクチビル、閉まりそうで閉まらない官能系おクチではないのでスルーするかもしれませんが、男性天使のほうは、かなりはっきり、本放送当時の渡部さんのナヨめの横顔を写している。

キャストの代わりに、脚役者さんや後ろ姿役者さんではなく、似顔絵で顔出し共演させるという、これも変化球中の変化球と言えましょう。

過去作の再放送を視聴しつつ「このOPはどっち型の、こんな系だな」と腑分けする楽しみ。気がつけば、確かにこの枠の昼帯、08年の『花衣夢衣』OP自体が廃止された頃から、月河が面白がれる、興がれるところが徐々に少なくなって行く傾向にはあったなと、若干惜しくもなります。

まあ、帯ドラマの場合、OPは毎日、毎話見る、観られることになるわけだから、飽きられずに視聴意欲を喚起し続ける60秒~90秒の映像を考えて作るのは、手間も費用も頭痛モノなのかもしれない。

枠が違いますが、放送中のNHK朝ドラ『てっぱん』は、同じテーマ曲・同じ振付を一般公募のいろんなチームのダンサーズに踊ってもらって、小節ごと編集しては少しずつ入れ替えてつなぐという手法で、放送開始3週めに入っても新鮮さを保っています。

前番組『ゲゲゲの女房』でも後半何回か大きめのマイナーチェンジや、録画再生でよっく観てやっとわかる級の本当にマイナーなチェンジをちょっこしずつ加えて注目させていました。長丁場の帯、こういう手もありますね。

小さな、細部のチェンジほど、月河の様な録画再生メインの客を「どれどれ?…あ、いまの?…見逃した、もう一度リプレイ」と前がかりにさせる効果もありますし。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

先生?先生…先生!

2010-10-10 15:50:33 | 再放送ドラマ

本放送中の昼帯から離れている間に、BSフジの昼ドラ名作選枠で1994年の『愛の天使』再放送が始まりました。4年ほど前に当地で地上波再放送された『誘惑の夏』の、ちょうど満1年後のクールで、同じ東海テレビ+東宝チームの作品です。

16年前かぁ。引っ張り上等なアバンタイトルがあり、テーマ曲をのせて象徴的なOP映像があり。やはり昼帯はこれがないとね。

キャストスタッフクレジットの文字も流れず、でーんと登場して、でーんと次と入れ替わる。しかも最近の作品の4倍くらいの大きさで読みやすいのなんの。視聴者にフレンドリーなつくりをしていましたな。

設計事務所を率いる気鋭の建築家・斉藤正樹(峰岸徹さん)の次男で、自分も建築を志す潤(渡部篤郎さん)は、デザインの才能はありますが数学が苦手で、工学部受験に二度失敗し浪人中。父は、大手ゼネコンに勤める長男・曜(米岡功樹さん)をやたら可愛がり、会社を辞めて設計事務所の後継者になってほしいとしきりに勧めていますが、潤には「デキの悪い息子」「建築に向いてない」と滅法冷たい。母親の頼子(上村香子さん)は兄弟分け隔てなく接して、冷遇される潤のことを心配していますが、どうも含むところがありげで、あるいは今後、“父親が違う”古典的展開もあるか。

そんな潤がデッサンの勉強に通う美術スクールに、イタリア留学帰りの新進建築デザイナー沙都美(野村真美さん)が講師として赴任。出会いの経緯がすごいよ。2人それぞれ都市建築ウォッチングに余念なく、潤はカメラ、沙都美はスケッチブックに夢中で、ガッチャンコ折り重なって転倒。「何よあれ、迷惑な人」と別れた直後、教室で「あーー、アナタさっきの」…

…もう、いまどきラブコメ漫画だって使わんわ、ってぐらいの純正混じりっけなしのベタさ。

…ってこれ、いまどきのドラマじゃないのでした。1994年。それにしてもね。すでにトレンディドラマの洗礼を受けて主婦になり、昼帯適齢期になったお客さんは、指さして笑って視聴していたでしょうね。クラシック、スタンダードな手口(手口って)を使って、大まじめに笑かす。これも昼帯になくてはならないスピリットのひとつです。

若くて美人でイタリア帰りの才気がはじける沙都美はたちまち生徒たちの人気者に。シャイで露悪的、軟派気取りだが根はピュアな潤は初対面から沙都美に興味を惹かれ、美的センスを褒められて「工学部より、美大の建築科を目指しては」とアドヴァイスもされ、次第に講師に寄せる尊敬以上の感情が育っていきます。

しかし、沙都美には驚愕の過去が。留学前の美大生時代に、沙都美は当時教授をしていた正樹と不倫関係で、奥さんの頼子に知られ咎められたことから、正樹に何も告げずに姿を消し単身イタリアに旅立ったのです。正樹は驚いて一時は捜し回ったらしいのですが、結局自らも教授職を辞して、振り切るように設計事務所に没頭してきました。

一方沙都美はイタリアで、アマチュア対象の設計デザインコンクールに優勝、画塾を開いた美大の先輩の招きで帰国し、いい設計事務所の就職先を紹介してもらう条件で、腰掛けのつもりで講師を引き受けたのです。

潤との偶然のラブコメ遭遇から間をおかず、建築業界のパーティーで正樹とも再会。「(浮気ではなく)本気だった」と言う正樹はヨリを戻したい気満々で、早速事務所で難航している受注先の設計プランを沙都美に依頼したり、マッハでキナ臭くなっていますよ。潤が沙都美を「親父の元愛人、現在も…」と知ったら一気にドロドロまっしぐらの予感。すでに頼子さんは、潤が塾で課題の石膏デッサンをばっくれて描いてきた沙都美の横顔のスケッチから“あのときのあの女性に似ている?”と懸念を持った様子です。

とにかく俳優さんたちが若いこと。放送当時26歳の渡部さんの大学2浪生は、如何にチャラ男くん演技が達者でもちょっときついのですが、演出が気つかって、塾生たちを微妙にヒネたのや年齢不詳なのばかりで固めてある。気のおけない同クラスの女友達ながらひそかに潤に想いがあるらしい由香を演じる奥貫薫さんは当時23歳ですが、服装はモノトーンシックで大人のスタイリストさんといったムードです。

29歳の野村真美さんのほうが、バブルの名残り的なビラビラ感のあるカタカナ職業ルック。美大を卒業して留学3年なら20代半ばか後半ということになりますが、回想シーンの沙都美教え子時代も、カチューシャつけたりしてお嬢さんぽく見せてはいるけど、結構オトナのムードなので、学部生ではなく院生か、兼・助手ぐらいの立場で正樹先生とわりない仲になったということかも。だったら3年経っての帰国後は、野村さんの当時の実年齢通りのアラサーでもいいわけです。

51歳峰岸さんがとてもいいですね。受賞歴もあり建築の才能は本物らしいし、仕事もできそうだけれど、教え子に手をつけ、奥さんは相手も知りながらキレもせずじっと耐えて見逃してくれているのに、3年ばかりで再会すると簡単に焼け棒杭になる最低の旦那。でもどこか、いいトシぶっこいているわりにやんちゃ青年っぽい含羞をとどめているんですよね。奥さんの立場だったらこのヤローだけど、こりゃモテてもしょうがねぇわという光線が出ている。

美的センスはあるが理数が苦手なばかりに工学部に合格できずにいる建築志望の生徒に、美大の建築科を勧めるのはアリだろうと思いますが、“建築”と“設計デザイン”との境界線ってどうなのかしら。結構深くて広い溝があるのではないかな。一級建築士の国家資格がないと設計事務所のトップにはもちろん、大きな仕事が請け負えないだろうし、美大出て二級で就職して、実務経験23年で一級受験するにしても、構造計算など理数はついて回るだろうし。

潤の「建築をやりたい」志望には、ゼネコンと組んで何十階ものでっかいビルやタワーを建てたいとか、設計事務所を事業拡大してブイブイ言わせたい的なベクトルはなく、ルネッサンスの教会建築か何かを理想に、小ぶりのオブジェみたいな外観の、レストランかコミュニティホールでも設計したいのではないでしょうか。

まぁ、資格とかキャリアとか、職能技能、各種業界事情のたぐいに関しては、良くも悪しくもざくざくにラフなのが昼帯のつね。こんな学歴、こんなポジションの人がこんな就職、転職、あるいは経営できるの?あり得なくない?と思ったら、脳内の“昼帯翻訳ソフト”を起動させればいいのです。当該業界に縁もゆかりもない無知蒙昧な一般ピープル視聴者が「だいたいこんなもんだろう」と想像する線基準なわけですから。言わば『ぷっすま』でときどきやってる、“ウロおぼえ絵心バトル”以下のリアリティと思って間違いない。

タイトル、あまーい主題曲(カルロス・トシキ改め鷹橋敏輝さん『Forever』)にOP映像のシークエンスが手ごろな助走となって、何となく自然に“ソフト起動”されて行く。ドラマ読解に際しての柔軟性、寛容性(と耐久性?)をブラッシュアップする意味でも、この時代の昼帯ドラマ、“名作”選とは言わず、怪作珍作も含めて、ときどき再放送してほしいものですね。

…いや、名作に越したことはないですけど。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

目と目が合って

2010-03-20 22:15:27 | 再放送ドラマ

『爆竜戦隊アバレンジャー』のアバレイエローいとうあいこさん、結婚されたんですね。2010210日と、なんだかパスワードみたいに覚えやすい日付を選んで入籍。スポーツ紙によると交際4ヶ月でのスピード婚とのことで、秋風が吹く頃に知り合ってクリスマスにぐぐっと盛り上がり、一緒にニューイヤーカウントダウンを刻んでキメちゃうパターンかな?とどうでもいい想像をしてしまいますが、ご本人たちは初対面から互いに運命の人の予感があって、結婚前提の4ヶ月だったそうです。とりあえずめでたい。

 戦隊ヒロインって基本的には女闘士ですから、ホットにもクールにもテンション高さを要求されることが多いんですが、いとうさん、キャピキャピしててもどこか落ち着いていてお姉さんっぽいというか、いまにして思えばですけど人妻向きなオーラが漂っていましたね。出色だったのは本シリーズ終了後の『デカレンジャー』とのヴァーサスシネマ、デカピンク菊地美香さんとデカイエロー木下あゆ美さんとの3ショットで女侠客のコスプレを披露したシーンで、もちろん3人の中では最年長(撮影時24歳)ということもありますが、コスプレお遊びなんだけど不思議なしっとり感があるんですよね。単に着物が似合う、襟足シニヨンが似合うという世界の話じゃない。内からにじみ出てくる感じです。

 あぁこの子は早めに家庭に入るかも…と思っていたら、いきなり2008年の昼帯ドラマ『愛讐のロメラ』でダークな情念ヒロインに来たのはびっくりしました。愛と憎に復讐がからまり、くねるねじれる。想像ですけど、それまでの役柄で見せた彼女の、元気溌剌で陽性キュートな“だけではない”、秘めてにじみ出る静かな“湿り気”のようなものがこのドラマのアンテナに引っ掛かり、呼び寄せたんでしょうな。

とにかく行動が“ためてためて、極端に振れる”ヒロインだったため、陽性な笑顔を封印しての演技は引き出しが少なく演り辛そうでしたが、自分へのチャレンジとハラくくってぶつかってる感じはビンビン来ていました。いま手もとに、『ロメラ』オリジナルサウンドトラックCDがありますが、コントラストの強いライティングで、ダークな目ヂカラで見つめるいとうさんのバストアップジャケ写、整ったお顔立ちをもったいなくもキッツく幸薄そうに見せる、眉間に入り込むくらい深く、先端を尖らせた眉頭の描き方など、かーなりがんばっていたんだなーと思います。

結婚されて、持ち前のしっとり感が活かせて女優の仕事も幅が広がりプラスになるのではないかと思いますが、気がつけば29歳、ご本人は早くお子さんがほしいところかな。昼帯ウォッチャーとしては色艶に磨きのかかったところでもう一度、今度はもっとはんなり女らしい役で…なんて欲かいてしまいますが、とりあえずお幸せに。ジューンブライドを予定しているという挙式時には『アバレンジャー』同窓生も集合するかしら。らんるちゃんひとすじだったヤツデンワニはせつないだろうな(来るかな)。

再放送の『眠れる森』は第4幕まで録画しましたが、どうも脱落の腰つきです。前にも書いたように犯人が誰かはなぜか(なぜだ)知ってるので、アノ人犯人ですべてがつながる伏線がどう敷かれているのかを一度見たいと思って録画始めたものの、見れば見るほど、コレ、結局アイドルドラマなんですよね。大人の本格的ミステリーサスペンスらしき装いにはなっているけど、“キムタク文句なし萌えモテ男”“ミポリン文句なし美人さん”という大前提にまずは乗って視聴始めることができないと、あらゆる描写が持ってまわった牛歩戦術に見えてしまう。

『アバレン』関連から書きはじめたついでに引き合いに出すと、戦隊ものなんかは100パーセント、ヒーロードラマですから、「かっけー」「かわえー」「燃える!」「萌える!」ノリが、大人の身でもどこかに微量なければ、ツジツマ合わないやら他愛無いやらで、とても1年間週イチ、付き合えるしろものではありません。

このドラマは、観客をミステリー展開に“乗せる”ための燃料として、主演2人のオーラ、催萌性にあまりに多くを頼りすぎている。あらかじめ木村拓哉さん中山美穂さんのそれまでの作品、キャラやアイドル露出に、じゅうぶんジュクジュク耕されきっている客なら何の問題もないけれど、誰も、何もカッコいいと思わないしくすぐられもしない態勢で、謎解き、心理ドラマだけに嵌まり込むのはコレ、はっきり言って無理でしょう。無理を通して道理を引っ込ませ過ぎ。“記憶喪失”“記憶改変”と“フラッシュバック”を口実に、謎の眼目をマスキングし続けて話数を引っ張る構成も、野沢尚さんが実力と(故人となられてもなお)定評のある作家さんだから安心して言いますけど、ミステリーとしてずるいし、芸がない。

月河としては、仲村トオルさんの、いきなりウラオモテありげな完璧なフィアンセぶりを鑑賞するつもりだったのですが、『黒革の手帖』、『けものみち』、『華麗なる一族』では適度にねじくれて輝いていた仲村さんも、ここでは(叙述的にホレ、ああいう事情がありますから、序盤から前に出るわけにいかなかったのはわかりますが)いまいち繊弱で迫力に欠けます。

ただ、時代(=本放送199810月期)のたまものというか、キャスト依存だろうが無理があろうが道理が引っ込もうが、とにかく「ミステリーとして作る!」という根性が決まっていることはもっと評価してあげていいと思いました。悪く言えば遊びがないとも言えるんだけど、最近のドラマなら、ミステリー主眼の作品でも、まったりした家族劇や青春劇、あるいはギャグ、コメディ、はたまたエロ、グロなど、必ず“ミステリーからはずれた息抜き要素”が入っている。

『眠れる森』は、隅々まで隙間なくミステリー。ミステリーでない場面はひとつもない。12年前、大手銀行が相次いで破綻したり毒物混入事件があったり、決しておだやかな年ではなかったはずですが、まだこの時代は、TVの観客にも“無酸素呼吸”に耐えられる体力があったのだなあ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする