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イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

おイモがポテッと

2009-05-16 17:35:05 | 昼ドラマ

えー、『エゴイスト egoist~』を視聴中の皆さんの中で、『特捜戦隊デカレンジャー』のホージー役から林剛史さんに好感を持って視聴始めた向きはどれくらいおられるのでしょうか。月河は確実にそのひとりですが。

その後、お元気ですか。清水由貴子さんが残念なことになって日も浅いのに“お元気ですか”ってのもナンなんですけど、まー絵に描いたような、優柔不断昼ドラダメ男になっちゃいましたね、林さん扮する郷田俊介坊ちゃま。

昼帯この枠に、ママさんたちのあこがれ特撮ヒーロー俳優さんの参戦は毎度のことですが、残念ながら特撮ヒーローのように“全方位カッコよく、男も惚れる男らしい男”“女性なら誰もがぜひ恋人に、理想の夫にと夢見るタイプ”の男性キャラが登場したためしがないのが昼帯でもあるのです。

昼帯は、おもに女性の情念のベクトルの衝突ともつれ合いでもっている世界ですから、男性キャラ、特にヒロイン相手役は、あるときはヒロインにラブラブ、あるときは恋敵にコロリ、またあるときは第三の女性にフラフラ、女性キャラの嫉妬や対抗意識やプライドを煽り刺激し油を注いで、ストーリー前進の原動力となす“ツール”のような存在でしかないことが多い。

それも、観客として「あれだけの男なら、絶対手放したくないよね」「ヒロイン頑張れ、略奪しちゃえ、男もこっち向け」と思えるような男であることはほとんどありません。「あんなの敵役にノシつけて譲っちゃいなよ」「いっそヒロインと恋敵たちとで仕事に趣味に楽しく暮らして、男は野垂れ死にでいいよ」と思うこともしばしば。

今作で林さん扮する俊介坊ちゃま、手近な女性(しかも女性同士身内)と軽率に関係しては→「責任は取る。」のリフレインで、15日には身ごもった明里(吉井怜さん)にすら「誰にでもそう(=結婚しようと)言うのね」とあきれられてる始末。

亡き父の後妻で義母たる玲子(川島なお美さん)とは、ニッパチで俊介のほうが重症の共依存(玲子には女優のプライドと体面意識あり)、明里とは“こんなボクでもしてあげられることがある”“ボクと似た孤独を背負っているこのヒトに、できるだけのことはしてあげたい”との同情寄りの共感、香里(宮地真緒さん)とは大切なものを横からかっ攫われた腹いせ同士。その場その場の、でもその場限りは一応真剣な感情で、次々関係結ぶ結ぶ。

この3人の中で、誰が本命かと言えば、ドラマ的に純粋なのは明里への思いでしょうが、見ようによっては全員、“緊急避難”ともとれるんですね。

香里とのそれに至っては、“正当防衛”にすら近い。俊介から“狩りに行って次々落として鼻高々”なわけではない、居心地いいほう、ラクなほう、摩擦抵抗の少ないほうを採っていったら、あらら、こうなっちゃったという“なしくずし草食系だめんず”です。

確信犯的にあっちの女、こっちの女と“攻めて自滅”な、肉食というか、雑食だめんずも昼帯には少なくないわけですが、昼帯のメイン客層が既婚女性、未婚でも若さ爆発ではない年代の女性であることを考え合わせると、女性には“白馬の王子様”願望と同じくらい、「アンタがダメなのよっ、しっかりしなさいよ、この腰抜け!」と“男を思うさまどやしつけたい願望”もあるのでしょう。昼帯ドラマはそこを見越して掬い取っているのです。

結局女性は、男性と向き合うとき、恋人でも夫婦でも、師弟でも上司部下でも、「しっかりしてよ、しっかりしてくれないとワタシが困るのよ」「もっと出来るコだと思うから期待するし、要求するのよ」「外でどんなにダメでも、ワタシだけは貴方を信じてるし見守ってるんだから、よそで甘えずにワタシを頼ってね」「ホラ、やっぱりワタシがついてないとダメでしょう、ついていたら出来たでしょう」という、“母⇔息子のターム”に帰着してしまうのかもしれない。

逆に、“母親役”のしんどさ、間尺に合わなさ、やってられなさが身にしみて、女性たちがそこから尻込みし嫌悪し始めているから、恋愛ドラマも、恋愛小説も低調になってきたとも言える。

男女間すべからく“母⇔息子”性の普遍に、年齢差や地位差も関係ない。NHK『つばさ』の真瀬(宅間孝行さん)も、いくら威張っても怒っても、どんどんオカンつばさ(多部未華子さん)の掌で踊る息子化してきましたね。

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こっくりふっくり

2009-05-12 23:24:06 | 昼ドラマ

次クール61日からの昼帯ドラマ『夏の秘密』の情報で、もうひとつ楽しみなのは、昨年の夏クール作『白と黒』に続いて岩本正樹さんの音楽に再び会えることですね。こちらも昨年に続くメイン演出登板の奥村正彦監督がご自身のブログで情報を提供して下さいました。

06年の『美しい罠』以降、この枠でCD化された岩本さんのサウンドトラック作品はコンプリートしてきましたが、気がつけばここ最近は、洋・邦を通じていちばんの個人的ヘヴィーローテーション盤シリーズになっています。

『美しい罠』、07『金色の翼』08年『白と黒』と、ドラマ本編も見応えのある作品が続き、いまでも録画したビデオやDVD(『金色~』だけは本放送中デジタル未対応だったので、VTRのみ。再放送熱烈待望)をよくリプレイしているのですが、全60数話からある帯ドラマを、暇々の時間を見つけては再生完走するのは、観はじめると容易に途中で抜けられない高吸引力作ばかりだけに、実は結構難儀だったりします。

その点、サントラCDは、時間的には1時間少々程度のヴォリュームで、脳内、胸のうちに、物語を映し出してくれます。

もちろんセリフや映像のある、“ドラマそのもの”ではありませんが、ドラマのあの場面、このシーンで喚起された情緒を、音によって何度でも揺り覚まし、照らし出してもくれる。何度も何度もここで書いている通り、岩本さんのドラマ音楽は、よく化粧品のCMで喧伝されているヒアルロン酸じゃないけど、“保力”というか、“保力”、“保力”がものすごいんですね。食べ物に喩えれば、ふっくり煮しめてじゅわっと汁のにじみ出るふろふき大根のようでもあり、ドライフルーツやナッツや洋酒の風味がこっくり浸み込んでふんわりふくらんだパウンドケーキのようでもあります。

90年代中葉からこの枠のドラマの劇伴を担当されている岩本さんの作品が、06年以降の3本しかCD化されていないのが返す返すも残念ですが、ドラマ録画を数話分ずつまとめて再生視聴したいけれどもその時間もエネルギーもないとき、後片付けや持ち帰り残業の傍ら、これらのサントラを流しているだけでもかなり脳神経系のリフレッシュに。

そうする時間さえもなく、とにかくバタンと寝るだけしかない!という夜には、就眠前にせめてジャケ裏の曲タイトルリストを読んでみます。

“漆黒の波~月が映した想い~樹々の葉の囁き~なだらかな斜面~朝露~誰もいないテーブル…”(『白と黒』)

“風に揺れる葦~逍遙~海と川のクロス~小鳥たちの庭~もう一人の私~雨と傘の色~波打ち際…”(『金色の翼』)

“名前の無い風景~断層~砂の心~花びらの重さ~夕焼けの匂い~苦い水~閉ざされた部屋~禁じられた祈り…”(『美しい罠』)

……06年、07年の2作の場合、ジャケ表は左柱←←←に掲示してある通り、「…おい!」とツッコミのひとつも入れたくなる画像ではあるのですが、ジャケ裏のタイトルリストページは実にシンプルで、曲名の持つ豊穣な、かつ繊細な感覚をひとつも邪魔しません。あぁこのタイトルはこんな旋律だったなとひとわたり目を通して、最後に『白と黒』ラストの『ひかり』インストヴァージョンが脳内で流れ始めれば、自然に眠りへ………

………となれば理想的ですが、あの名曲もオリジナルタイトルは“誰も寝てはならぬ”って言うくらいですから、さらさら眺めるだけのつもりが「第○話のあの場面だけもう一度観て寝っか、いや第△話だったっけか」と起き出してビデオをごそごそやり始め、結局寝つきそびれたこともたまさかあったり。岩本正樹さんの音楽は、タイトルだけでかなり罪作りです。

次回作も楽曲だけでなく、タイトル、ジャケデザインでも耳目の栄養となり保養となってくれることでしょう。

『美しい罠』では星空、『金色の翼』では海の波濤と青空、『白と黒』では高原と森、と、曲想のベースとなる風景がさりげなく提示されていましたが、今作はどんな眺めになるのかな。

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密度 温度 深度

2009-05-09 21:40:21 | 昼ドラマ

先日の記事に続き、“昼帯ドラマにおけるテンポと話数の問題”について、いま放送中の『エゴイスト egoist~』を見守りつつ考察しようと思っていたら、同枠来月6月からの次クール作の情報がサンスポ東京中日スポーツと相次いで掲載されました。

 タイトルは『夏の秘密』。今年も夏クールのこの枠のメイン演出を手がけられる奥村正彦さんのブログでもすでに明かされていますが、61日~828日の3ヶ月13週、全65話と、今作は前クールまでのスケールに戻りました。

 奥村さんの演出とともに、脚本金谷祐子さん、こちらはこの枠07年『金色の翼』からほぼ2年ぶり。

満を持しての帰還と申し上げていいでしょう。金谷さんの06年『美しい罠』公式サイトインタヴューで「人物がそのとき、どう感じたか、どういう気持ちになったかという心情のリアリティさえ掴めれば、どんな展開でも書きます」と語っておられた、金谷さんのシナリオメイカーとしてのこの輝ける信条が実地に炸裂すれば、月河が先般の駄記事で書いた「“展開が遅い”と感じるのは、観客の喚起された情緒を劇中人物の言動やストーリーが掬ってくれないから」という問題はきれいに雲散霧消します。

この枠に限らず、不発に終わった連続ドラマのほとんどは、“イベント(≒出来事・アクシデント)数・局面転換数を隙間なく詰め込みさえすればテンポのいい、見逃せないドラマになる”と考え違いして、人物の心情をなおざりに上っ面だけの波乱万丈で視聴者をしらけさせ置き去りにしたことが敗因です。

心情を丹念に追い、追われて浮かび上がる情動のうねりが劇的な場面を演出し、ストーリーを深いところで衝き動かして、ストーリーの波乱がまた人物に新たな情動を惹起させる、途絶えない波濤の感じられる脚本を書いていただければ、3ヶ月だ2ヶ月だなどという些末な形式部分とは無関係に、必ず魅力的な作品になるはずです。

昨年の同クール作『白と黒』は金谷さんではなく、おもに2時間ドラマで実績ある坂上かつえさんを初めとする3人の複数脚本家体制で3ヶ月書き継がれましたが、視聴していて一再ならず、昼帯の勝手を熟知した金谷さんがこのテーマを書いていたら…と思うことはありました。状況や出来事の“基礎工事”は十分と思えるものでしたが、「あの人物がこう来れば、この人物はこう動くだろう」「自分が彼女(彼)ならばこう感じ、これこれな言動に出たいところ」という観客の心情に、実際画面で展開される場面場面、セリフセリフがなかなか寄り添ってくれず微動のままで、結果「展開が遅い」「飽きる」のそしりを免れませんでした。

また月~金の週日5日で2ヶ月という“容積”を、書き手が過小に見積もり過ぎていて、盛り込むイベント数、と言うより、脇・端役を含めた人物の人間性の凹凸・陰陽など、画素数ならぬ“話素(わそ)”数が絶対的に不足だったことも作品を残念にしていました。

毎話正味24分とあなどるなかれ、この器に盛り込み得る情報量は半端でないのです。セリフの片言隻句、フレームの四隅、人物の目線の向け方切り方ひとつで、夜時間帯の54分枠のドラマよりはるかに密に、高体温に物事を伝え、観客の心理の琴線を揺さぶり震わすことが出来るのに、時間を水道水のように使い流すところがやや多過ぎた。テーマ性や俳優さんの役配置は決して間違っていなかったと思えるだけに、“肉付け”の薄さで痩せてしまい、いささか損した作品でした。

2年ぶりの金谷脚本投入で、奥村監督によれば早くも“パワフル且つパッショネートな「愛」と「憎」のディアレクティーク”でスタッフを魅了してくれているとのこと。例年に増して期待できそうです。

キャストの中では、ヒロイン・紀保役の昼帯初主演山田麻衣子さんもさることながら、月河がいちばんシンパシー持って見守りたいと思うのは、不幸な事件からアクシデンタルに彼女と共闘することになる伊織役の瀬川亮さんですね。

03年~04年放送の『超星神グランセイザー』で主役の弓道天馬を演じた頃は“体当たりぶりが好感持てる新人さん”以上の何ものでもなかったのですが、その後NHK朝ドラ『ファイト』や大河ドラマ『風林火山』、あるいは土曜ワイド劇場『法律事務所』のゲスト出演などいくつかのドラマで出会いがしらにお顔を見かけると、すっかり役者の面構えになっておられて軽い驚きでした。

特撮ヒーロー俳優さんのこの枠来演はほぼ恒例になっていますが、雑誌・CMモデルやイメージボーイ出身が多いヒーロー組の中では、ガタイ的に“小ぶり”な瀬川さんは、俳優を志すまでの経歴とともにちょっと異色の存在です。そして奥村監督の言葉「“”と“”のディアレクティーク」というイメージに、気がつけば思いのほか嵌まりのいい俳優さんなんですね。

単なる“ヒーローっぽいカッコよさ”“催萌性”にとどまらない、目の中に“愛”と“憎”、“”と“”、“”と“”、“”と“”、“”と

”など相反する要素を両方宿すことのできる人だと思います。瀬川さんにも新境地作になる可能性十分。殻を一枚破るベクトルが、作品にとっても大きな推進力になってくれるといいですね。

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速度 密度 質量

2009-05-07 20:58:05 | 昼ドラマ

ここで何度も書いたように、『エゴイスト egoist~』は、2ヶ月8週全40話に短縮することによりテンポアップ、スピード感、密度の濃さを前宣伝でアピールされ、期待された作品です。めでたく功を奏したかどうか、その点だけは見届けたいと思い録画視聴を続けている次第。

この枠の東海テレビ製作作品に限ったことではなく、帯ドラマ、連続ドラマで不人気な作品に決まって見られる苦情や悪評に「展開が遅い」があります。

ネット上の掲示板やBBS「飽きる」「退屈」「1エピ見逃しても残念と思えない」などの表現で書き込まれていることもありますが、観た人が言わんとするところはほぼ一緒です。

ここで製作陣に何としても勘違いしていただきたくないのは、「展開が遅い」と不満を訴える視聴者が、何も毎日、毎話、敵味方が寝返り合ったり、出生の秘密が発覚したり、それがまた嘘だと発覚したり、暴行や望まぬ妊娠流産や、刃傷沙汰や交通事故死を見たいと思っているわけではないということです。

ある人物がどんな出生で、どういう状況にあって、どんな願望を持ってどう生きているか。対立する(敵対でなくても、恋心でもいい)誰かがその人物に対して、どうなってほしいと思ってどういう行動に出たか。セリフのやりとりや行動の衝突、作為または偶然による行き違い、それがもたらす状況の変化において、「この人物なら、こうなったらこんな気持ちになり、こういう言動に出るのではないかしら」「出てほしい」と思って観ているのに、人物がさっぱりそういう表現をしてくれない、表現をしないから状況が次の局面に向かって胎動しない。あの人物もこのキャラも、「ここは普通、激怒でしょう」「絶縁でしょう」「こっちはやめて、あの人物について行けばいいのに」と思ってもさっぱりそう動かない。こんな沈滞した流れになってしまったとき視聴者は「展開が遅い」「飽きる」と訴えるのです。

言葉を変えれば、“観ていて喚起される情緒、情動を、ドラマ・人物のほうが掬い取ってくれない”という苛立ちこそが、「展開が遅い」訴えの底流にある。不評ドラマの感想におけるもうひとつの最大頻出意見「主人公に感情移入できない」「気持ちを沿わせて、幸せになってほしいと願って見れるキャラがいない」と、根幹、意味するところは同じなのです。

『エゴイスト』に話を戻すと、2ヶ月クールになって、どうも“速ければ薄くていい”と思って作っているふしが、特に連休で始まった5週め辺りから目についてきました。

幼い頃から服飾が大好きで、働く母が不在がちの淋しい幼児時代から着せ替え人形を手放さず、先輩や担当女優にグズ能なしと罵倒され嫌がらせを受けてもスタイリストを目指していたはずの明里(吉井怜さん)が、「産んだ実の子の私を捨てても女優の地位を貴女は選んだ」「女優とはそんなに価値があるのか見届けるために、私は女優になります」と玲子(川島なお美さん)に啖呵切ってからというもの、スタイリストがらみの話題はまったく出なくなりました。現時点では、女優宣言する前の明里は普通のOLでも、道具係でも、女優と対極な人目をひかない地味な仕事でありさえすれば何設定でもよかったようなものです。

「とても貴女には安心して仕事を任せられない」と明里をクビにした先輩スタイリスト・トシ子さんなんか、その明里がまさかの女優デビュー、しかもあの西条玲子さんと共演2番手と知ったら、「フジモトすごいじゃない!」「でもアナタに演技なんて…どこを見込まれたのかしら」と真っ先に飛んできて目を白黒させそうなものなのに。

明里が、かつて夢みたスタイリストに“今度は女優として注文つけ駄目出す立場”になった心理の揺れを表現する場面は、トシ子をからめずとも一度は入れるべきだった。

姉は大女優の娘、ならば自分がなりすまして大女優に「貴女の娘です」と名乗りをあげ、自分が女優として売って出る足がかりに利用しようと企てた香里(宮地真緒さん)に、明里は「ウソでつかんだ名声で幸せになれる?」と問うていましたが、いまや“対マスコミ・世間上は香里が玲子の娘”“同じく世間上は明里は玲子のマネージャー上がり”“但し部外者の中では、唯一SPドラマ原作者の春木柊二朗(佐々木勝彦さん)だけ玲子から実子は明里と打ち明けられている”というイビツな、危なっかしい状況が、玲子を頂点とし明里、香里&綾女(山本みどりさん)との三つ巴の“女優の地位・プライド”をめぐるさや当てに、いつの間にかほとんど影を落とさなくなってしまった。香里が玲子の娘と表向き言い張り、明里が逆に表向きそれを伏せていることが、物語の緊迫感アップにほとんど貢献しなくなってしまったのです。

玲子に“老獪なタヌキ”と断じられていた春木先生が、筆の上でも律義に秘密を共有してくれ続けるとも思えません。

他にも一場面、一モチーフずつあげつらっていくと切りがありませんが、どうも“物語的イベント数”“局面転換のコーナー数”を2ヶ月8週に押し込むのに汲々として、“視聴者が自然に持つだろう情緒・心情を置き去り”という根本的な問題点のほうはあまり解決していないように思います。

NHK『つばさ』は、こういうのもアリかなという安定感も出て来ました。予想通りちょっとギヴアップな高齢組に代わり、非高齢家族がおもに夜1930~のBS再放送で熱心に追尾していますね。ROLLYさんの歌に合わせひとりミュージカルになるつばさ(多部未華子さん)、可愛いし、結構高スペック。ノロくさくてイモっぽいようで、勘はよく、自覚なく鋭いところをついてくる“多部ちゃんのつばさが魅力的だから見る”というのがいちばんストレスのない沿い方かな。

NHK朝ドラ、ヒロインがうんと幼い時の物語の間は仕方がないけれど、思春期を迎え社会人になろうかという段階まで“家族・身内がらみの話”に終始するのは勘弁してほしいなと思っていたので、家族でもなければ身内でもない、そんなに気心知れ合ってるとも思えない他人たちがヒロインの周りにうじゃうじゃ出たり入ったりする雑駁感は、月河もかなり好きですね。

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あなたもがんばってね

2009-05-05 23:04:17 | 昼ドラマ

『エゴイスト egoist~』は主要キャストの誰よりも、綾女(あやめ)役の山本みどりさんがチャレンジングな演技をしているかもしれませんね。TBS系のポーラテレビ小説出身で、東海テレビ製作のこの枠でも80年代の『ふれ愛』シリーズなど昼帯と縁の深い山本さん、06年の『新・風のロンド』では一族唯一の良心ともいうべき温和で情愛深いお母さん、お祖母ちゃま役で長丁場で味を出してくれましたが、今作では実らなかった若き日の恋のトラウマを引きずったまま更年期=女としての晩年にさしかかってしまった、“母になりきれない女の怖さ痛さ”を披露してくれています。

綾女は突然、俄かに人格豹変して母親をかなぐり捨てたわけではありません。第1話ですでに、「スタイリストとして念願だったひとり立ちができた、大女優西条玲子(川島なお美さん)さんの担当を任された」と心はずませ報告する明里(吉井怜さん)に、芸能界の汚さを延々述べ立て、「元の堅いOLに戻ってほしい」とかき口説く姿は、“このお母さん、なりふり構わず働いて子育てしたっぽいけど、どっか狂ってるな”という説得力がじゅうぶんありました。

どんな理由や動機があるにせよ、我が子が幼い頃から好きで得意としている分野(明里は洋服)で就職して上を目指す夢に、露骨に嫌悪を示し全否定するような母親は、いくら身を粉にして働いて稼いでくれても、美味しいご飯を食べさせてくれても、いい母親、優しい母親とは言えないと思う。案の定、明里は綾女の実子ではなく、かつて結婚を約束した男を玲子が略奪してもうけた子でした。

“実の娘の香里(宮地真緒さん)ちゃんのようには、私を愛してくれていない”と気づいても、「お母さんはどこまで行ってもたったひとりの私のお母さん」と綾女を慕い続ける明里は、誕生直後に実親と切り離されれば、ゴムの玩具でも刷り込まれ親と思ってついて泳ぐアヒルの子のよう。

いまさら川島さんの西条玲子が“芸能界に君臨する大女優に見えない”、その実娘の、吉井怜さんの明里が“玲子を凌ぐ女優の資質を秘めた原石に見えない”なんてケチなツッコミを入れるのは止しときましょう。このドラマでは、事務所社長に扮する藤堂新二さん、玲子付きのマネージャーから明里について独立する近松寿美子マネ役・蘭香レアさんに出会えたのも大きな収穫。

藤堂さんは『相棒 season6“正義の翼”以来久しぶりにTVでお顔を見たような気がしますが、実写版『スパイダーマン』で鍛えた持ち前の長身ガタイと“カッコつけてて偉そうだけど、ハラにいちもつ、ひとクセありそげ”以上に、これだけ“胡散臭&ナサケナコミカル”方向にツブしのきく俳優さんとは思わなかった。

蘭香さんは言うまでもなく元・宝塚スターで、ダンスに秀でた男役として鳴らし、同期には現・宙組トップ大和悠河さん、花組トップ真飛聖さん、元・花組トップ娘役ふづき美世さん、同雪組トップ娘役舞風りらさんらが顔を揃えている華々しいキャリアをお持ちです。劇中設定として、「昔、女優を目指してちょっと、いろいろやっていたことがある」けど、西条玲子と出会って「女優の才能ではかなわない」と悟り(………え?)、「この人を輝かせるためサポートに徹しよう」と決心した、その過程でZプロダクション善場社長とどういう具合に接点を持ち今日まで来たのか、社長役の藤堂さんとのやりとりを見ていると、そこばくと察しられるところがある。「○年前私がこれこれしたときアナタはああ言ってどうしてこうして、こうなったんだったわね?」式の説明台詞や、回想シーンがなくても人となりや、物語に入る前の時制での行動が想像できる、これぞドラマというものでしょう。

この枠ではナサケナ系の、善人よりむしろ小悪党役が多い野添義弘さんのエロプロデューサーも実にいいですな。シロウトがイメージする“ろくでもないギョーカイ人”の類型化としてこの上ない。脇役さんたちの過不足ない仕事っぷりで、かなり助けられているドラマです。

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