弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【書評(20-03)】「なぜ倒産 -平成倒産史編-」

2020年04月27日 09時08分10秒 | 書評
おはようございます!
曇り空の@湘南地方です。

Stay Homeな中、少しでも鬱屈感を減らすべく、
今日はブラインドを全オープンで開放感を演出して仕事中。

さて、思い出したかのように書評の連投。
以前神奈川県中小企業家同友会の例会で報告者の方が紹介してくれていた掲題の本

…まあタイトルからもわかるように、総じて明るい話じゃあない。
生命保険を決済に充てるために自死した例なんかもあって、気持ち的にいっぺんには読めない。

多くの事例に共通しているのは、
確かに環境的に苛烈な時期(バブル崩壊とかリーマンショックとか震災とか)であったという「不運」はあるものの、
仔細に見ていくとその前から経営の綻びが見えていたところ、環境をきっかけにそれが噴出した、というのが実際のところ、という点。
事例によっては、倒産までを記者が時系列でドキュメント的に綴ったあとに
「会社を潰した経営者の告白」
として、関与した経営者のインタビューを載せているものもある。
その両者のコントラストが面白くもあり読んでいてツラくもあり。。
一番厳しい言い方をすれば、
“ああ、その見方だから潰れてしまったんだよな”
という。
だいたい、「環境が悪かったんだよね」から入る。

もちろん自分が同じ立場だったとして同じ轍を踏まない自信があるかというと厳しいのだけど、
当事者として目先の危機を超えなければいけなくて、自分の視点だけから思いつく選択肢を辿っていったら
行きつく先が破綻だった、、ということなんだろうなと。

で、じゃあ頼りになる番頭や外部人的リソースを頼ればいいじゃないかと思うけど、
それも簡単じゃない。渡る世間は鬼ばかり。事業承継で先代を慕っていた幹部は流出。。
落ち目になるとなぜか寄ってくる、怪しい投資話。

中でも職業柄ちょっとピクッと反応してしまったのが、
「ふきこぼれない鍋」のヒットで一大ブームを巻き起こした「セイコー製作所」。
冒頭の元社長の一言がこちら。

「経営のミスもあったが、日本の旧態依然とした知的所有権政策に押し潰された。」

旧実用新案法での出願(=実体審査もある時代)。不服審判まであがったので登録までに8年を要した。
その間に競合の参入を防ぐことができず、安価な模倣品に市場を乱され、
新商品開発に手を出したが期待通りの売れ行きにはならず在庫を抱えて資金繰りが悪化。

ざっと検索してみると、問題の鍋のほかにも数十件単位で出願している…のだけど
事業の参入障壁として機能するような戦略的なかたちだったのかはやや疑問。

商品の性質からいって、8年経ったらブームなんてとっくに終わってるよなぁ。
知財の権利化については、現在は早期審査も充実しているので、時代が違えば…という側面もある。

ただまあ、(少なくとも当時は)「そういう制度であること」を念頭に置いて事業も進めなければいけなかったんじゃないかな、と思う。
と同時に、そうした事情を外部有識者がちゃんと伝えていたか。
判断するために必要な情報を伝えなければ、選択を間違える。
PEST分析でも何でもよいけど、多面的に情報を捉えなければ、
極端な話1つの得られるべき情報が欠如していただけで真逆の結論にもなり得る。
決断をするのはクライアント、そのために必要な情報を提示するのが外部支援者の役割。


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