弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【知財記事(商標)】イベントワクワク割

2022年04月11日 08時34分30秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
かすかに薄曇りな@湘南地方です。
しっかしまあ、ここ数日、一気に春というかもう初夏というか。
季節が急激に変わりすぎて気持ちが追い付かない、、、とも言っていられないので、
こちらの気持ちも一気にアゲていきます。

さてさて、今日はこんな記事

(zakzak by 夕刊フジ より引用)
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「ワクワクイベント」はドクター・中松の商標か 本人は使用歓迎も…困惑の経産省、ワクチン接種を促進する「イベントワクワク」との混乱も

若者の新型コロナウイルスワクチン3回目接種の促進や、イベント業界の需要喚起を目的に政府が「Go To イベント」に代わって検討している「イベントワクワク割」。一部で「ワクワクイベント」と報じられたが、実はその名称は、発明家のドクター・中松こと中松義郎氏(93)が特許庁に商標を出願したものだった。中松氏にその真意を聞いてみた。

(以下略)
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(引用終わり)

経産省のイベントワクワク割のページはこちら
2割相当の割引をする、っていったって、その原資は税金なわけだから、
タコが無理やり自分の足食わされているようなもんだ。

ま、政策としての是否はここでは措いといて。

ドクター・中松の出願内容はこちら

まあ突っ込みどころ満載なのだが、ポイントを一部挙げると以下の通り。

(1)そもそも商標は「選択物」。商標法は「言葉の創作性」を保護する制度ではない
 記事の中に以下のようなくだりがある。
“出願の理由について中松氏は「私は発明家といわれるが、『国際創造学者』であり、物だけでなく言葉も発明している。『ワクワク』はワクチンとかけている。一部で疑念を持たれるワクチンだが、前向きに接種することで新型コロナを防御しようという思いだ」と明かす。”

 もちろん、創作の価値そのものは否定しないが、「言葉も発明」と言われると…まあそうだけど、、でもそのことが理由で保護されるわけじゃないんだよねぇ、という思いが先行する。
 いや、ドクターもちろんご存じなのだろうとは思うが。

(2)商願2021-122032の指定商品(指定役務)について
 商標登録出願においては、その保護を受けたい範囲=指定商品(指定役務)を、ルールに沿って明確に記載する必要がある。
 ここで、本件出願の指定役務の記載はこんな感じ。
 “第16類 ワクワクイベントの印刷物,パンフレット,雑誌,印刷物
  第35類 ワクワクイベントのキャンペーンによるイベント促進,その他35類
 (ほか、第38類、第41類について出願している。詳細省略)” 
 ↓
 ① 自ら「言葉も発明」といっているように、「ワクワクイベント」は造語と認識される。
   そうとすると、指定商品(指定役務)において「ワクワクイベントの~」という表記は、その意図するところが不明確と判断される。
 ② 「その他35類」との表示は、不明確であり認められない。
  →仮にこれを、例えば「商品役務類似審査基準」に沿って補正したとしても、要旨変更とされる可能性が高い。
   登録までの道のりは、ちょっと遠そう。

(3)商標として、「ワクワク イベント」と「イベントワクワク」は類似するか??
 「ワクワク」「イベント」前後が入れ替わっただけ、といえばそうなのだけど構成全体としては十分区別がつく範疇ではないかな
 (つまり、ドクターの先願は、仮に上記(2)の問題が解消したとしても、経産省の出願の障害にはならないんじゃないかな)、と思われる。
 「イベントワクワク割」ならば、なおのこと非類似。

ドクター中松、世の中を良くしようとこれまでいろんなアイデアを生み出してきた方だし尊敬に値する方だけれど、
記事でも触れている「スーパーメン」、当職も(話題の種として)購入したけど、送られてきたのは申込してから3か月以上も後だったしなぁ…。
コロナ絡みではちょっとどうなんだろう…?という印象です。

ともあれ、ヘンな混乱が生じることなく、また当該政策自体も、必要以上にムダなコストが投下されることがないことを祈りつつ、
新しい週のスタート頑張ります。

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