弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

事務所開設12年目!
本ブログがKindle本に!「アマゾン 三色眼鏡」で検索!!

体重測定機付体脂肪測定器

2013年02月01日 08時47分54秒 | 知財記事コメント
おはようございます。

今日はこんな記事から。。

======(以下引用_産経ニュースより)============================

オムロン側がタニタを提訴 体重計の外観「酷似」
2013.1.31 22:14
 表面にガラスを使用した体重計の外観が酷似しているとして、オムロンヘルスケア(京都府向日市)がタニタ(東京)に生産差し止めなどを求め、東京地裁に提訴、タニタは31日の第1回口頭弁論で請求棄却を求めた。2社はいずれも業界大手。

 問題となったのは、オムロンの「カラダスキャン HBF-212」など2機種と、タニタの「フィットスキャン FS-100」。どちらの製品もガラスの表面に電極部分があり、体脂肪率などが液晶に表示される。

 訴状によると、オムロンは2011年3月に意匠権を出願し、同年9月から販売。約1年で100万台超を売り上げた。12年10月に発売したタニタの商品について「実質的に同一。消費者が混同する可能性が極めて高い」と主張している。


=========================(引用おわり)========================

係争中の案件なので、類否について突っ込んだコメントはしないですが、
思ったことをつれづれと。。

2011年3月の出願ということから、
請求のもととなっている登録意匠は、
①第1429730号(部分意匠)
②第1425945号(全体意匠)
③第1425652号(盤面のバリエーション)
のうちのいずれか一又は複数、と推察されます。

が、
①の部分意匠は、「支持部」(=脚部分)の外角につけられたバンパーのような部材
についてのもので、写真で見る限りタニタの商品はこれを備えていません。

そうすると、②or③ということになりますが、
②と③の相違は静電容量スイッチの配置の違いだけ。
電極版の配置、個数については一致するものの、その形状については差異がみられます。
また、一致点である「電極版の配置、個数」については、
およそ通常の体脂肪計付き体重計では同様のものが以前から見られ、
これがために類似というには苦しいように思います。

おそらくデザインのキモは、【意匠の説明】にも記載があるように
「本体正面を構成するガラス板は透明体であり、該ガラス板の表面には
 縦長矩形形状の電極部分が4つ貼り付けてある。」という部分、
つまり透明ガラスの表面に電極を張り付けたスマートな外観、というところ
なのかなぁ、と想像されます。
そしてその点において一致しており、需要者も混同している、と。

【意匠の説明】も「願書の記載」ですから、
登録意匠の範囲を定める根拠となります。
ただ、“透明ガラスの表面に電極を張り付け”ればすべて類似になるかというと、
必ずしもそうではないでしょう。
係争場面において、登録意匠の効力範囲=類似の範囲は、
需要者による混同の有無、という“事前には予見可能性の低い”基準で判断されることになります。


ベンチマークする他社としては、そうした予見可能性の低さのなか、
需要者の動向も踏まえたデザイン開発をすることが必要となってきます。
一方で不必要な迂回も避けたいところ。
物品によっては好ましいイメージというのがどうしても一極に集中するものもあり、
そうなるとデザインコンセプトとしても被ってくるところはあるでしょうし…。
弁理士をやってても、このあたりの線の引き方は、いまだに悩みが尽きません。
(創作説なのであれば、ある意味割り切りやすい面があるんですけどね。)

ともあれ、こうした生のケースを追いかけておくことで、
今の時代の感覚からズレないように意識しておかなければいけないなあ、と思います。




コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« リバイバル…? 代替機材…? | トップ | こういうのは、業種を問わな... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

知財記事コメント」カテゴリの最新記事