弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【知財記事(特許)】ジャパン・パッシング

2019年11月26日 08時44分03秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
曇り空の@湘南地方です。

…昨日インフルエンザ予防接種をした左上腕がやや痛い。。
まあ、そこまで腫れているわけではないので心配することはないのでしょうが、気にしてしまうレベルの痛み。

さてさて。
今日はこんな記事

(日経電子版より引用)
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特許出願、日本素通り進む

企業にとって重要な特許は複数の国で登録されることが多い。ただ最近は欧米に続き、中国で特許を出願しても、日本では出願しない、いわゆる「ジャパン・パッシング」が進んでいる。
特許庁によると米国、欧州、中国に特許出願したにも関わらず、日本では出願しない割合が高まっている。米国籍、欧州籍の場合、2008年に日本で出願しない比率は4割前後だったが、15年は、それぞれ6割に上昇した。

英国知財専門誌「IAM」が17年、特許購入時に優先する国・地域を事業会社に聞いたところ、日本は6位だった。英米だけでなく、中国、韓国にも出遅れている。費用をかけても訴訟する価値がある国について聞いたところ、企業の43%が米国、36%がドイツを選んだ。日本は0%だった。
(以下略)
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(引用終わり)

この点、特許庁が発表している「特許行政年次報告書2019」においても、切り口はやや異なるけど、
「五庁間の特許出願状況」で少しだけ触れられている。
日本、EU、アメリカ、中国、韓国相互の特許出願状況として、各リージョンの出願人が各リージョンにどれだけ出願しているかがまとめられている。
いずれのリージョンとの関係においても、
「日本の出願人が相手国に出願している件数」>「相手国の出願人が日本に出願している件数」なわけだが、
その比率がえげつない。日米間、日韓間で約3~4:1、日中間では約10:1。
欧州との間では数字上ほぼ同数だけれども“各EPC加盟国への出願件数は含まれていない”なので、実際はダブルスコア以上だろう。

原因は何なのか?
“日本の企業が積極的に海外展開しており、知財保護も未然に図っている”というポジティブな面も、無いわけではないだろう。
しかしそれよりは、
“日本という市場に魅力がない”ということを端的に表している、というのが一つの素直な見方。
もう一つが、
“日本で特許をとっても権利行使しづらく使えない”ということの表れなのかもしれない。
このあたりは、上記記事において「費用をかけても訴訟する価値がある国」として、日本は「0%」だった、という点とも関連がある
(アメリカは43%、ドイツは36%)。

そんな声を反映しての話かは定かではないが、来春(見込)に特許法改正で
・証拠収集場面における専門家による現地調査(査証)制度
・損害賠償額の推定規定の修正
が図られる。
プロパテントに舵を切っていく姿勢は見えるが、ムラ社会に起因する争いごとを好まない国民性が急に変わるとも思えない。
そのあたり、どのような運用が図られていくのかも意識して注目していきたい。






コメント
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