弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【恒例】流行語大賞で学ぶ商標2019(第2回)

2019年11月10日 21時18分39秒 | 実務関係(商・不)
こんばんは!
日曜日の夜。なんだか事務所にいる私。

まあ、昨日は大学サークルのOB会があったりで思うように仕事進んでないからねぇ。
で、年齢的にも管理職になっている方々が集まってする話題が「働き方改革」とかだったりする…。
当方自営業にて、“働く自由”があることを実感した昨日今日…はあ。


さて、恒例のシリーズ第2回。今日はこちら。

(2)“プリンセス”を巡る争い(「スマイリングシンデレラ」)

今年スカッとした出来事の一つは、女子ゴルフ。全英女子オープンでの渋野日奈子の優勝。
常に笑顔を絶やさない彼女に着いたニックネームが冒頭の「スマイリングシンデレラ」。
渋野を含めた“黄金世代”の活躍は、見ていて面白い。

さてさて、「シンデレラ」。
世が世なら彼女だって働き方改革を叫んでよい一人(笑)とまあそれはさておき。

「スマイリング」は措いておいて、「シンデレラ」単体で他人間で多数の併存登録がある。
J-Platpatで「商標(検索用)」のボックスに「シンデレラ」と打ち込むと…あることあること実に21件。

「シンデレラ」といったら“ガラスの靴”でしょ。
ということで調べてみると、「ダイアナ株式会社」が平成2年に登録を受けている(第2257249号)。



「ガラス製の」という特定はないものの、「第25類 履物」について登録されている。

ところで、上記の中に「審判番号」というところに「2008-300513」と番号がはいっている。
どうやら、不使用取消審判が請求された経緯があるらしい。その審判を見てみると…請求人は「ディズニー エンタープライゼズ インク」。
「不使用取消審判」とは、文字通り商標権者が一定期間(継続して3年間)登録商標を使用していない場合に何人でも請求できる審判のこと。
裏を返せば、権利をつぶしたいと思っても異議/無効理由はなかったということ。
※当然ながら「童話のタイトル」は普通に独占適応性を満たす(但し「第16類 書籍」や「第9類 録画済みビデオディスク及びビデオテープ」については独占性がないと判断される)。

さて、その取消審判。商標権者による使用の事実が認められ、ディズニーの主張は退けられ、登録が維持されている。
実は商標権者による使用の証拠は、登録されている2段書きのものではなく、筆記体風の「Cinderella」。これが婦人靴の中敷中央部に表示されていたことを立証することで主張が認められた。
本来的に、登録商標について「使用」とは登録商標と「同一」の商標の使用をいう。
しかしそうはいっても時代の変遷などにより使用態様にバリエーションは生じるもの。
そこで法律上、「登録商標の使用」のストライクゾーンは「同一」から「社会通念上同一」まで広げられている。
※このストライクゾーンの拡張は、飽くまで不使用取消審判においてに限られている点は注意。

この「社会通念上同一」、じつはどうしてどうしてなかなか幅が広い。
詳しくは審判便覧に事例が載っているので興味ある方はご覧になると良いと思うけど、
本件でのポイントは、
“2段書き商標の場合、そのうちいずれか一段についてのみの使用でも「社会通念上同一」と認められ得る”ということ。
なので、
“ネーミングは決めたしアルファベットとカナ両方使う可能性あるけどどっちか一方だけになるかも。
 出願費用は抑えたいしなぁ”
というときには2段書き商標での出願は有効。

さて、上記で触れた以外にも20件の「シンデレラ」絡みの商標登録がある。しかしこれらのうち何件が本当に使用の事実があるのかは、不明。
良い感じの名前なのでひとまず登録したり維持しているけど、、というケースもしばしばある(「ストック商標」ということがある)。
他社としても通常の出願費用+不使用取消のコスト+時間がかかるため、どうしてもこだわりが無ければ敬遠しがち。


さて、「スマイリングシンデレラ」から「シンデレラ」にフォーカスしてしまったけれど、
“本家(?)”のスマイリングシンデレラである渋野日奈子は現在女子ゴルフ賞金ランキング争いの真っただ中。
今週鈴木愛が勝って順位が入れ替わった…のかな?
2019年のツアーも残り3戦。目が離せないところ。

ということで、また次回。
コメント
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