から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

ファーゴ シーズン3 【感想】

2018-01-26 08:00:00 | 海外ドラマ


昨年末にイッキ見をした海外ドラマ「ファーゴ」のシーズン3の感想を残す。

全10話だったが、BDレコーダーの故障により第1話と第4話が消えてしまうという悲劇に見舞われる。スターチャンネルオンデマンドで見逃し配信をやっているが、全話を配信してくれるわけではなく最終話が放送された頃には第4話以前は消されていた。なので、その回のあらすじについてはネット上のネタバレ情報で補完した。

双子の兄弟が主人公。駐車場経営で成功する兄(エミット・スタッシー)と、前科人の更正を手伝う保護司の弟(レイ・スタッシー)。この兄弟の確執と、彼らに襲い掛かる犯罪集団との騒動を描く。双子兄弟をユアン・マクレガーが1人2役で演じる。

シーズン3はシーズン1の5年後にあたる2005年の設定で、シリーズで御馴染みのミネソタ州が舞台だ。またもや季節は凍てつく冬。シーズン1,2で登場してきたソルヴァーソン一家(シーズン1のモリーとシーズン2のルー)など共通キャラの登場はなく、完全にリセットした物語が展開する(ごく一部を除いて)。

途中見ていないエピソードがあるので、歯切れよく賛否を判断することはできないけれど、それを差し引いても、このシーズンは見劣りする。シーズン1に続き、シーズン2も傑作レベルで面白かったため、昨年の目玉作品として期待していたのだが、残念だった。これまでのシーズンと比べると、シーズン3は物語が一方通行だ。予想もつかない展開という点では引き付けられる要素はたくさんあるが、それだけではシリーズのファンは満足できない。他の海外ドラマと相対的に見れば十分に面白いけれど。

ドラマ「ファーゴ」の醍醐味は、どこにでもいる一般ピープルが、小さな欲をかいたことや、思わぬ事故に巻き込まれたことによって、予想だにしない天国/地獄に落ちていくスリルにある。本作ではスタッシー兄弟がその役回りだ。そして彼らを取り巻く形で登場するのが、個性的で魅力的なキャラクターたちであり、各キャラクター同士が複雑に絡み合い、ブラックユーモアを湛えたスリラーが描かれる。シーズン3については、どれもボリューム不足だ。

デキの良い兄とデキの悪い弟。毛髪フサフサの兄と、頭皮が目立つハゲ気味の弟。顔の作りは瓜二つの双子であるが、何かと対照的な2人だ。兄のエミットと比べると日陰の存在である弟のレイが、結婚という幸せを手に入れるタイミングで兄弟喧嘩が勃発。レイの結婚相手は保護観察対象である前科人という反則技w。兄弟喧嘩を機に、エミットへの憎しみを抱いたレイの些細な計画が、思わぬ事故に発展する。この流れはまさに「ファーゴ」だ。



時を同じくして、エミットが経営する会社に疫病神が巣食うことになる。目的は会社の乗っ取りだ。それは3人の犯罪グループで、いずれもクセが強い。3人の中でボスである男は歯並びが気になるのか常に歯の隙間を道具でイジっている。その仕草がイチイチ気持ち悪い。その男の手下であり「仕事人」として動く残りの2人は、屈強なロシア人と体の小さいアジア人のコンビだ。違和感たっぷりな組み合わせと、彼らが手を下す残酷な暗殺描写がエグい。ドラマ版の「ファーゴ」に足された、映画「ノーカントリー」の「シガー」のような絶対的暴力の系譜であり、本シーズンでもスリラーの源泉になる。



3人の犯罪グループの魔の手はやがて弟レイの方にも及ぶことになるが、主人公であるスタッシー兄弟にとって「脅威」として居座り続けるのがつまらない。しかも、ひたすら暴力によるもの。これまでのシーズンであれば、この犯罪グループと対立する第三のキャラクターが出てくるのだが本シーズンには登場せず、力関係の構図に変化が現れない。厳密にいうと、終盤でようやく流れが変わるのだが、スタッシー兄弟とは直接関わりのない所で事件が発生する。せっかく1人2役を演じるユアン・マクレガーが面白いのに、そのキャラクターをスリルの真ん中に持ってこない。一連の事件を通して、平凡であった主人公らの個性が大きく変わるダイナミズムもない。この点も、シーズン1、2との違いだ。

本ドラマのエンジンがかかるのは8話目から。シーズン1で登場した最強のヒットマン「マルヴォ」。マルヴォに病室で殺されなかった、聾唖の怪力男「レンチ」が現れるのだ。その登場シーンに思わずテンションが上がる。全く偶然のタイミングで、3人の犯罪グループに復讐しようとするレイの婚約者に協力することになる。これまでやりたい放題の3人組だったが、新たに結成されたこの男女コンビが一泡吹かせる流れとなり、ようやくドラマが面白くなる。ここにスタッシー兄弟が絡めばもっと面白かったけど。



スタッシー兄弟と並び、主要キャラクターとして登場するのが事件の真相を追う女性警官だ。自動ドアのセンサーなどに反応しない特異体質(?)という捻った個性をもたせているが、シーズン1のモリーやシーズン2のルーといった、これまで登場してきた警官役と比べると明らかに魅力不足だ。キャラクターの作り込み不足は彼女だけでなく、今回の悪役となる3人グループのボスもそうだ。何かと比喩を使った能書きから会話を始めるが、その内容があまりにも意味不明で、終盤になると「またそのパターンか」とウンザリしてくる。

「ファーゴ」らしい内容で楽しめた部分も多いが、やはりこれまでのシーズンと比べると物足りない出来栄えだ。最後のオチもやや拍子抜け。もっと面白くできたはずだ。

次のシーズン4の予定はなく、このシーズン3で終了というニュースも流れているが、ファンとしては是非シーズン4も製作してもらって、再びあの興奮を味わわせてほしいと思う。

【65点】

ファーゴ シーズン2 【感想】
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする