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キングスマン: ゴールデン・サークル 【感想】

2018-01-13 08:00:00 | 映画


2018年1本目の劇場映画。

とても面白かったが、何かと「Too much」な続編でもあった。パワーアップはサイズを大盛りにすることにあらず。「毒っ気」や「お遊び」は前作のボリュームに抑えてほしかった。カンボジアの「地雷」はネタに使ってほしくないし、カメオ出演のあの人はさすがに出過ぎだ。一方、アメリカ機関との連携や、ついに実現されたエグジーとハリーの共闘など、本作で追加された要素で大いに楽しませる。アンチシリアスな世界観と、荒唐無稽ハイテンションアクションはキレ味抜群で文句なしにアガる。

2年前に公開された「キングスマン」の続編。「ドラッグを合法化しろ」という新たな敵が現れ、キングスマンが再び世界を救うための戦いに身を投じていく様を描く。

007シリーズやMIシリーズなど歴代のスパイ映画を一気に抜き、自身のベストスパイ映画に躍り出た前作。続編である本作を見終わったあと、自宅でブルーレイを見返したが、やっぱり傑作だった。本当によく出来ているなーと惚れ直す。「最近のスパイ映画はシリアス過ぎる」というセリフに頷いてしまう。その続編ともなれば期待が高まるものの、先に公開された欧米での評価は芳しくなく気がかりだった。公開初日だったこともあるが、劇場は満席状態で驚いた。2年前の前作とは大違いな盛況ぶりで、この2年間で前作のファンになった人も増えたようだ。

映画ポスターにある「秒でアガる」のキャッチコピーに偽りなし。いきなり始まる車内での激しい接近戦や、ロンドンの町を猛スピードで走る抜けるカーアクションにボルテージが急上昇する。アクションが激しいだけでなく、そこかしこにスパイ映画ならではの仕掛けや本作らしいユーモアが挟まれる。前作で落第した同期生による襲撃というのも自然だ。本作を待ち望んでいたファンの期待に応えるかのような見事な滑り出し。

その後、主人公のエグジーが会うのは前作で「お尻合い」に過ぎなかったはずの女子だ。知らぬうちに2人の関係は純愛に発展していたみたいだが、前作の関係がお下劣過ぎたゆえ、どうにも違和感はぬぐえなかった。エグジーと彼女の交流を通して、エグジーの成長した姿がみられる。テーブルマナーのクダリでハリーを回想し、胸が熱くなる。エグジーにとってハリーは恩師であり恩人であったことを思い返す。そんな彼が前作の途中で殺されたのは大きな衝撃だった。しかし、予告編でのネタバレ通り、ハリーは本作で復活する。

前作の大きな成功要因は、ハリー演じるコリン・ファースのキャスティングだろう。この手のアクション映画とは無縁の人で、知的な顔立ちに長い手足、美しくスーツを着こなし、そのビジュアルから想像も付かないほど激しいアクションを繰り出す。どんな動きになってもスタイリッシュなバランスを保ち、彼が演じるハリーというキャラクターにすっかり魅了された。ハリーのいない「キングスマン」は考えられないため、本作での復活はご都合主義というツッコミよりも、喜びのほうが圧倒的に勝る。前作ほどハリーの活躍は本作では見られないが、それでもいい。

英国らしさ全開の「キングスマン」と同様に、今回新たに登場する、アメリカらしさ全開の「ステイツマン」の設定が面白い。外国人がアメリカの象徴的なイメージとして思い浮かべるカウボーイを、そのまま諜報員のスタイルにしている。このベタさが本作らしくて良い。カウボーイの投げ縄による攻撃も、新たなアクションパターンを見せてくれる。前作の「人口減らすために殺し合い」と比べると、悪役のモチベーションの設定は甘いが、舞台となるアメリカの癌である「ドラッグ」を持ってきたのは納得感がある。

前作から15分ほど長い上映時間だ。アクションを中心にスピード感のある作りに見えるが、それなりに長さを感じてしまう。前作のヒットにより増やされた製作予算を、前作でやったことの上塗りに投下している。そして「ここが面白いギリギリのライン」という前作のレベルを節度なく超えてしまっているのがいただけない。2人の友の死、女性の体内に仕掛ける下ネタ、不謹慎なカンボジアの地雷、人肉ミンチの多用など「そこじゃないんだよ」と何度も首を傾げる。一番気になったのはカメオ出演(?)で登場する大物歌手があまりにも多く顔を出し過ぎていること。気持ちいいアクションの流れを淀ませ、コメディ色が一気に強くなる。ザ・英国的存在であるため登場させるのはわかるが、キングスマンの活躍にあそこまで介入するのは邪魔だった。

本作のヒールは、ジュリアン・ムーアが演じる。一見まともだけれど、実は頭のネジが1本飛んでいるサイコキラーを余裕たっぷりに演じる。「マイティソー」のケイト・ブランシェットもそうだったように、演技が巧い人は何をやってもハマるんだなと感じる。キングスマンが彼女を打ち倒すクライマックスは、前作と比べるとやや見劣るがそれでも大いに楽しい。本作でもアイデアたっぷりのスパイアイテムを駆使して、ド派手な殴りこみをかける。師弟のハリーとエグジーが力を合わせて戦う様子に胸が熱くなる。途中、犬型ロボットとの対決やカメオ出演者の活躍でテンションが一時的に下がるものの、その後のメインデッシュバトルで再燃。ハイセンスなBGMも手伝い、痛快なアクション劇を堪能する。

前作が良くでき過ぎていたこともあり、欠点が目立つ続編だった。もちろん監督のマシュー・ボーンはそれらを欠点として捉えておらず、前作で魅力と感じたポイントが自分とズレていただけと考えた。今回、アメリカ機関を登場させたのは面白い展開だった。もし続編が作られ、日本にも同じような諜報機関があるとすれば、サムライや忍者になるのだろうか。それも一興だ。

【65点】
コメント (2)
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