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少年は残酷な弓を射る 【感想】

2012-07-09 00:46:23 | 映画
1週間前の7月1日の映画の日、注目の新作「少年は残酷な弓を射る」を観た。

上映館が日比谷のシャンテシネのみということで、
日曜日だったがわざわざ有楽町まで出向き観る。

日曜日の夜の回だったので空いているかな~と思ったが、
1000円の日、そして公開2日目ということもあって、大入り満員だった。
自分同様、安く映画を観たい映画ファンって多いんだな~と思う。

で、本作。
昨年、カンヌで絶賛されたり、英国アカデミー賞でも複数ノミネートされていたりと
かなり前評判が良かったため、期待値も相当高かった。

でも、結果はイマイチだった。

本作はティルダ・スウィントンとジョン・C・ライリー演じる夫婦の間にできた、
息子が悪魔(モンスターという表現が適当?)でトンデモな事件が起きるという話。

物語はその「事件」が終わったと思われる現在から
ティルダ・スウィントン演じる母親の視点から過去を回想する形で語られていく。

序盤、住居や車を真っ赤なペンキで塗られる悪質ないたずらにあったり、
母親が街中を歩いていたら「地獄に落ちろ」と突然オバチャンに顔面をグーで殴られたり、と
理由なしに語られる理不尽なシーンが続く。
そして母親はその苦境に対して、無抵抗に黙って耐え抜く。
「なぜこんな目に合うのか」「なぜ抵抗しないのか」
「(回想シーンでは家族がいたのに)そもそも現在はなぜ1人なのか」
さまざまな憶測が頭をよぎり、背筋がゾクゾクするような感覚に襲われた。

本作の監督はリン・ラムジーというイギリス人女性監督らしい。
この人の過去作を観たことないので初見の印象だけど、
物語の導入部分に血を彷彿とさせるトマトまみれのシーンを持ってきたり、
楽しいはずのハロウィンの風景を母親の悪夢の象徴として魅せたりと、
作品の世界を表現するために、随分と切れ味鋭い演出をするな~と舌を巻いた。

だけど、息子の誕生のシーンから、徐々にハマらなくなってきた。

「おぎゃー」しか言わない赤ん坊の時から、
母親であるティルダ・スウィントンに、徹底的に刃向かい、徹底的に苦しめる。。。

事件が起こる、息子の少年期まで終始一貫、
目に見えてわかる「悪」の化身として描かれる息子の姿に、
個人的には勿体なさを感じた。

全体を包む「得たいの知れぬ」恐怖や歪みが本作の面白さだろうに、
その底が知れてしまう悪(息子)の姿に、作品の勢いがトーンダウンした印象。
「そのままなんだ~」と物語が進むにつれて残念なつぶやきが多くなる。

本作で製作も兼ねた主役のティルダ・スウィントンは圧巻の演技。
恐怖が肥大化し、張りつめた画面と、彼女の存在感との相性の良さよ。
絶望とともに大いなる十字架を背負う母親の姿を全身全霊で体現。
前回のオスカーはミシェルよりも彼女がノミネートされるべきだったな~。

ハリウッド1、ブリーフが似合う(と思っている)ジョン・C・ライリーとの
夜の営みのシーンは結構リアルで、エグかった。大いに結構。

問題の息子役のエズラ・ミラーは、超美形少年で、
ただならぬカリスマオーラありだが、やっぱ、その役柄の描き方で勿体なし。
今後の活躍に期待。

レディオヘッドが担当した音楽は、日本の雅楽を取り入れたりと面白かったが、
チャレンジングな意欲さだけが際立ち、個人的にはちょっとミスマッチだった。

【60点】




















コメント
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