から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

八日目の蝉 【感想】

2012-02-05 00:48:49 | 映画
映画「八日目の蝉」を観た。

間違いなく2010年を代表する邦画の一本。
映画館で観なかったことを悔いた。

今年(昨年)のキネ旬ベストで高く評価されていた本作。
邦画は個人的にハズレ率が多いので、園子温や、西川美和、山下敦弘など、
好みの監督意外は特段アンテナを張っていないものの、一応抑えておかなければ、と、
DVDレンタルで既に準新作扱いなった本作を今更ながら観た。

本作はNHKのドラマでもやっていたので、ある程度内容はかじっていたが、
映画という枠をきちんと抑えた、繊細かつ重厚な人間ドラマに仕上がっていた。

この映画は、母性愛という普遍的テーマを通して、
明日へ人が生きるための「魂の解放」を描いたものだった。

演者が素晴らしい。

メインキャストの永作博美、井上真央、小池栄子
そして井上真央の幼少期を演じた渡邉このみ。

キネ旬の女優賞を受賞した永作博美と小池栄子に大納得。

多くを語ることが野暮なほど、永作博美の演技は神がかっていて、
ブラックスワンでナタリー・ポートマンを観た時と似た凄みを感じた。

小池栄子が演じた千草はとても難しい役ドコロだ。
一見遠目で見ると、井上真央演じる恵理菜にただ付きまとうだけのしつこい女だ。
しかし、その千草にも意思ときちんとした目的(魂の解放)があって、
そのために千草には恵理菜が必要であって、同じく恵理菜にも千草が必要だった。
それが不思議な因果で結ばれていたよう。彼女の通る声も役柄にベストマッチ。
本作に一層の深みと広がりを与えた、小池栄子の素晴らしい助演ぶりに拍手だ。

井上真央もこれまでのイメージを払拭するような熱演。
恵理菜の幼少期で起きた事件が、彼女の成長にどのような影響を及ばしたか、
成長した彼女の表情から、その生き様が透けて見えるようだった。
劇団ひとりとの濡れ場ではもっと大胆に脱いでほしかったけど。。。無理か。
女優として本作の出演が、彼女にとって大きな転機となることは間違いなさそう。

そして、恵理菜の幼少期を演じた渡邉このみ。
芦田愛菜のようなあざとさがない自然で子どもらしい演技。もう抱きしめたくなるような可愛さ。
「泣く」のではなく、感情を押し殺し「涙ぐむ」姿に、希和子との絆の深さを知る。
2人の逃避行の最期。物語の結末が見えていても、おかげでこっちは涙をこらえることができない。

演出が素晴らしい。

監督成島出の手腕によるものと思われるが、現在と過去の交錯させ、
安堵と緊張といった相反する状況を対比させながらも、軸が全くブレずに突き進む。

散りばめられる伏線が、キャラクターの感情の終着点にスッとつながるような脚本にも唸った。
脚本家を調べたら、私の大好きな「サマー・ウォーズ」を手がけた奥寺佐渡子という人。
余計な説明を加えず、絶妙な間をとって、観る人の想像とセンスに委ねる端的なセリフ回しである。

原作は実際どうかわからないが、過去と現在の人物を交わらせず、
「写真館」での再会の一本に絞った判断も潔く、「魂の解放」に見事結実した。

希和子が恵理菜に誓った「美しいモノをこれからたくさん見せる」
希和子と恵理菜が流れ着いた小豆島の美しい風景が一層、心に染み入った。

興行的には、さほど振るわなかった本作だが、
リピーターが多かったという記事を見て、納得だ。

映画館でも基本エンドロールを無視する自分だが、
その余韻のあまり、DVDであったものの最後まで見送った。

さっそくBDを買いたい。でも極端に高い。どうするか。。。

あと、邦画の食わず嫌いはダメだな。
今年は昨年より邦画多めで見ることにしよう。

【90点】









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永遠の僕たち 【感想】

2012-02-04 02:57:27 | 映画
ガス・ヴァン・サントの新作「永遠の僕たち」を
劇場公開終了ギリギリで観た。

本作は、死にとりつかれた青年と、
余命3ヵ月の少女とのラブストーリーである。

まず、青年イーノックを演じたヘンリー・ホッパーが、
おととし逝去した実父、デニス・ホッパーと顔が瓜2つなのにビビッた。
アゴのライン、鼻の形など、これほどまで親のDNAを受け継ぐ2世俳優も稀有だ。

イーノックは過去の交通事故で経験した臨死体験から、
加瀬亮演じる日本の特攻隊員の幽霊(ヒロシ)と友達になる、
というトンデモない設定なのだが、加瀬亮の存在感からか、
監督の演出によるものかわからないが、すごいフィット感。
そこには不自然なのに自然という不思議な空気感がある。

少女アナベルを演じたのは、ミア・ワシコウスカ。
ミア・ワシコウスカ、ミア・ワシコウスカ、ミア、わし、こうスか。。。
なぜか何度も言いたくなる名前だ。
昨年彼女は、ジェシカ・チャステインと並び、
アルバート・ノッブスやジェーン・エア等の良作に出演し、
大きなキャリアップを果たした女優として知られている。

自分はまだ、キッズ・オールライトでのむっつりスケベな印象しかないが、
本作でも、彼女が監督たちに好かれそうな存在感をもっているなーと思った。

しかし、個人的に本作の彼女はダメだった。

チャーミングとは言い切れない、ちょっとキツめの顔立ちが、
本作のエキセントリックな雰囲気がありつつ、
全てを肯定するような柔らかいオーラを纏うアナベルのキャラに合わず。

また「死の喪失感」というものが本作の最大のテーマだと思われるのだが、
余命3ヵ月なのに、体型も変わらず基本元気で、死にそうな感じもない。

「ヒロシ」という幽霊が存在するように、ある意味メルヘンな映画なので
あえてそうしてるのかもしれないけど、自分は賛成できず。「死」は「死」なのだ。
よって「死の喪失感」→「からの希望」という最終的なメッセージも弱い。

ガス・ヴァン・サントっぽい若さをみずみずしく描くタッチは健在。

センスのない邦題が多い中、本作の「永遠の僕たち」はドンピシャ。
本作を一言で言い表す素晴らしい邦題だと思うが、内容がちと残念。

【55点】


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J・エドガー 【感想】

2012-02-03 23:10:23 | 映画
今月2月から4月にかけて、アカデミー賞は勿論のこと、
各前哨戦を賑わせた話題作が続々と日本公開される。
これは毎年の流れで、アカデミー賞を絡めたプロモーションという、
配給会社の思惑によるものと考えられる。
米国本土との長すぎる公開タイムラグは非常に不本意であるが、
この3ヵ月、一気に映画テンションが挙がる。

2/4人生はビギナーズ, 2/10ドラゴンタトゥーの女, 2/18ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
2/25 ヤングアダルト, 3/1ヒューゴの不思議な発明, 3/2戦火の馬, 3/10シェイム
3/16マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙, 3/24マリリン7日間の恋
3/31ヘルプ, 4/7アーティスト.....といったラインナップ。

そんな中、これまた今年(作年)の賞レースで賑わせた、
ディカプリオの新作であり、イーストウッドの新作でもある、
「J・エドガー」を観た。

本作は前情報通り、アメリカの初代FBI長官となった
実在の人物、ジョン・エドガー・フーヴァーの伝記映画であったが、
個人的には、男と男のラブストーリーという印象が強かった。

映画の世界で何かと聞く「FBI」という機関の名前。
それが起こった社会的背景。自由の国アメリカでかつてあった、赤(共産党)狩り、
ギャングとの抗争、犯罪捜査の転機となったリンドバーグの子供誘拐事件など、、、
イーストウッド特有の明暗のコントラストの強い画を通して鮮やかに描かれていく。

エドガーは権力にひたすら固執して。29歳から77歳の死に至るまで、FBI長官であり続けた。
相手の弱みを握る術に長けていて、最高の国家権者であるはずの大統領ですらも恐れる存在に。
また、あのキング牧師を糾弾するなど、極度の人種差別主義者でもあった。

まさにモンスターという表現が相応しいキャラクターを、
演技派ディカプリオの熱のこもった怪演で魅せてくれるのだが、
エドガーの若年期と、老齢期を交互に見せる構成から、彼を取り巻く、
人物関係、背景がとらえにくくて、イマイチ、その人物の求心力が弱く感じられた。
前日の夜ふかしから、睡魔に多々襲われたことがその要因だったかもしれないけど。。。

しかし、そんな中、途中、眠気を吹っ飛ばしてくれたのは、
エドガーの右腕となるクライド演じるアーミー・ハマーの存在。
彼の匂い立つような男色ぶりを見るだけでも本作は必見の価値ありだ。
愛するエドガーを見る眼差し、発せられる眩くて柔らかい色気。
これぞ演技派と言わんばかりの素晴らしい演技にすっかり魅了された。
お互い想い合いながらも、同性愛が市民権どころか差別の対象となっていた時代。
2人が休暇をとって泊まったホテルで、エドガーの悲しい告白に端を発したシーンは、
同性愛に全く興味がない私も思わず涙ぐむほど、切なくて、本作で一番好きなシーンだ。
クライドが去ったあと「愛してるよ」と涙ながらに呟いたディカプリオの表情が印象的。
彼が若い時に演じたロミオそのものだったな~

次世代のハリウッドを担う若き俳優たちが結集した昨年公開の「ソーシャルネットワーク」。
主人公マークを訴えるヨット部のイケメン兄弟(2役)を演じたアーミー・ハマーが本作でブレイク。
同作のアンドリュー・ガーフィールドは今年公開のスパイダーマンの新作で主役を張るし、
マークの元カノ演じたルーニー・マーラは、ドラゴンタトゥーで本年度のオスカーに堂々ノミネート。
監督フィンチャーのキャスティング能力、ホントすごいな。。。
オスカー候補となった主役のジェシーがパっとしないのが残念だけど。

本作、後半に差し掛かるほど、エドガーとクライドのプラトニックな関係に焦点が当たってくる。
いずれも味わい深いシーンが続くのだが、イーストウッド(映画)音楽のパターンである、
同じフレーズの音楽を何度もリピートして差し込む編集が、水を差す。

日本の映画ファンの大半が好きと思われるグラン・トリノも
「パララ~パララ~」の音楽の連呼で、自分は嫌になったし。

イーストウッドの映画が、やっぱりイマイチ好きになれない格好になったが、
同性愛モノ映画として抑えておきたい一本となった。

【65点】

























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スーパー!【感想】

2012-02-02 00:23:36 | 映画
劇場で見逃してしまった新作を中心にレンタルDVDを見る。
面白い映画があったので感想を残す。

その前に寸評。

「ブリースト」【45点】
大好きなヴァンパイアネタだが、想定外のつまらなさ。
敵役がヴァンパイアである必要なし、そりゃないよ。どっかで見た普通のアクション映画。

「ウソツキは結婚のはじまり」【60点】
見どころは二コール・キッドマンの見事なコメディエンヌぶり(面白い!)と、
男子必見、ブルックリン・デッカーの天然モノのナイスバディなビキニ姿。
主演のジェニファー・アニストンのビキニ姿と比べると気の毒。
ブルックリン・デッカーの旦那、プロテニスのロディックが羨ましすぎる。。。

「ピラニア」【55点】
スプラッター×おっぱいの典型的なホラースタイルに安心感あり。
乱舞するおっぱいは、どれも人工的(シリコン注入系)で興奮できず、残念。

「あぜ道のダンディ」【60点】
脚本のクセが苦手ながら、そのプロットが面白そうで
いつも気になってしまう石井裕也の新作。
主演のベテラン性格俳優光石研の好演に救われ、今回はシックリきた。

「モールス」【55点】
名作スウェーデンホラー「ぼくのエリ 200歳の少女」のハリウッドリメイク。
主役に日本でも人気のあるクロエ・モレッツを配するなど、
演者たちのクオリティは格段に上がったが、ひたすらダークな空気感。
オリジナルの魅力である、光と闇、純粋さと残酷さ、といったコントラストはなし。
クライマックスのプールでの殺戮シーンは断然オリジナルがよい。

で、想定以上に面白かったのは「スーパー!」だ。

本作は、容姿、生き方、すべてがダサい中年男の悲喜を描いた話。
リヴ・タイラー演じる美しい妻を、ケビン・ベーコン演じる麻薬ディーラーに奪われた男が、
神の啓示を受け、正義に目覚め、ヒーローとして悪に立ち向かい、
最終的に妻を麻薬ディーラーから奪還するという流れ。

特殊能力はなく、お手製ツギハギの赤いコスチュームに身をまとい、
素人ヒーロー「クリムゾンボルト」となり、街の治安を守る自警団的な行動をとりだす。

素人ヒーローというテーマは、スマッシュヒットとなった「キックアス」に似ているが、
中身はまるで異質だ。

キックアスの敵は、確実に悪者であったりするので「退治」という言葉が似合うが
クリムゾンボルトは、あくまで彼の独断と偏見のもと、
妄想に近い判断で悪いと思った奴に、怒りの鉄槌を下していくのだ。

その武器は工具のレンチで、人を殴り倒すスタイル。
キックアスでヒットガールが繰り出すような爽快感のあるアクションとは違い、
レンチで人を殴り、返り血を浴びるような描写で、生々しくて痛い。。。
ニュースでの彼の取り上げられ方も、ヒーローではなく神出鬼没の通り魔だ。
あくまでB級コメディなノリなのだが、ここを笑えるかどうかで、
この映画の好き嫌いが分かれそうだ。

途中から、、エレン・ペイジ演じるボルティーが
クリムゾンボルトの相棒として半ば強引に加わる。
極度のヒーローオタクで、頭がイかれていて、
セックス好きビッチな役のエレン・ペイジが何とも楽しい。
彼女の、吐き気を催すような壮絶な最後に笑えた。

また、物語のラスト、B級テイストな笑いをそのままに
ハッピーエンドで終わるかと思いきや、想定外の展開になって驚いた。
彼がヒーローになったのは、冴えない人生を送る中で
「パーフェクトな自分」を少しでも増やすためだった。
「自分を変えられるのは所詮自分だけ」
「物事をどう捉えるかも自分の想い次第」。。。
そんなメッセージがさりげなく添えられているように感じた。

他にも、B級テイストに紛れて、
善悪の概念の捉え方など、映画の見方をいろいろ模索できる映画かも。
そんな狙いはなかったかもしれないけど。。。

あと、オープニングのご機嫌なナンバーを初めとして、
使われる音楽がかなりセンスが良い。調べてみて
TSARのCalling All Destroyersとか
Lisa PapineauのTwo Perfect Momentsとか。。。全然知らなかった人たちだけど。。。
音楽オンチな自分が映画音楽を調べたの「500日のサマー」以来。

【75点】










オープニングがご機嫌だ。

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