から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

灼熱の魂 【感想】

2012-02-18 01:47:38 | 映画
以前にこんな偶然があった。
10年前、自分がまだ学生だった頃、 旅行先で泊まったバルセロナの宿で、
自分の上のベッド(2段ベッド)にいたアメリカ人青年と、
社会人となった5年後に、地元埼玉のコンビニで再会したというものだ。
これを必然として捉えれば「運命」というヤツなのだろうけど、
その後、彼とは一回のメールをしただけで終わったので、
単なる「偶然」として考えた。

今日観た「灼熱の魂」を反芻する中で、そんな記憶を思い返した。

「灼熱の魂」。

これまで「衝撃を受けたー」などと言ってきた、
映画とは全く別次元の映画。

映画を見終わって、しばらく立ち上がれないという本気の衝撃を初めて体感した。
しばらくして日比谷の街中に出ても、体の感覚が麻痺したまま。
酸欠な状態でふらふらになって歩く。
(自分が物事に影響されやすい性格だからかもしれないけど。。。)

本作はカナダに住む双子の姉弟が、
亡くなった母親の遺言に従って、母の故郷である某中東国に向かい、
まだ見ぬ彼らの「父」と「兄」を探し出し、亡き母から託された
各1通の手紙を渡すという話だ。

その道中、亡き母の知られざる半生と、
彼ら自身の出生にまつわる真実が明らかになっていく。。。

なので本作は紛れもないミステリー。

過去と現在が交錯し、散らばった謎が中盤以降、次々とつながっていき、
それらがすべて一つの真実に結実していく。

このテのミステリー映画は他にも多々あるのだけれど、
本作は並のミステリー映画とは似て非なる、突出した映画だ。

それは人類の汚点ともいえる忌まわしい史実に基づいた、
想像を絶するほどエモーショナルで、ダイナミックな人間ドラマだということ。

どんな神も望んでいない、異教徒同士の血で血を洗う抗争。

愛情も一握りで潰してみせる、憎しみと復讐の連鎖。

女性であることの性。。。。

そして偶然がもたらす大いなる残酷。

映画はそれらの情景を観る側に何の躊躇もなく、突きつける。

物語の結末(真実)は、切ないや悲しいを通り越して破壊的だ。

正直、今現在でもショックのあまり、
物語の終着点である、肝心の母の秘められた想いが、
十分に咀嚼仕切れていない。

本作は昨年のアカデミー賞で外国語映画賞にノミネートされていたが、
昨日観た「未来を生きる君たちへ」が同賞を受賞した。
この結果に対しては当時、本作が受賞すべきだったという声が結構挙がったらしい。

個人的には再度観てみたい「未来を~」の方が好きなのだが、

「2011年を代表する一本を挙げろー」と言われたら、
本作「灼熱の魂」を迷わず挙げると思う。

身体が震えるほどの映画の力を、
本作でまざまざと見せられたからだ。

【採点不能】


コメント
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