から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

ナイスガイズ! 【感想】

2017-02-24 09:00:00 | 映画


劇場が爆笑で湧いた。キマりそうでキマらない。キマらなそうでキマる。ズレとハズシを動力にして突っ走る本作は、その悪ノリ加減も含めて好みが分かれそうなコメディ映画だ。自分はド真ん中のツボに入ってしまい、楽し過ぎて堪らなかった。ドタバタアクションの中に、豊かな想像力と緻密な計算あり。70年代の空気が気持ち良いの何の。ラッキーとアンラッキーの表裏に、人生のリアルを感じてしまうのは過大解釈かな。アクションコメディとしては「21ジャンプストリート」以来の傑作。主演2人のケミストリーが絶品。ライアン・ゴズリングの間抜け顔が最高ッス。パッケージ化されたら購入必至。

暴力でコトを解決する示談屋と、酔っ払いのヘタレ私立探偵が、ポルノ女優の変死事件をきっかけにタッグを組み、事件の解決に乗り出すという話。

舞台は1977年のロサンゼルスだ。同時期を描いた過去のアメリカ映画を見るにつけ、憧れに近いイメージをもっていた。その決程打となったのが97年の「ブギーナイツ」であり、その時代の喧騒に強烈に魅かれた。ベトナム戦争の疲弊からどこか気だるい空気が充満していて、煌びやかなディスコ音楽と原色使いのファッションといったサブカルが台頭、映画という娯楽産業の中にはポルノが浸透し全盛期を迎えていた。

本作は「ブギーナイツ」と時代設定がちょうど重なっており、ダーク・ディグラーが活躍した場所と身近であるのを感じた。当時の様々な社会背景をふんだんに盛り込んだ本作は、より70年代の色が濃いように思う。そして、本作で登場するキャラクターが異質なのも特筆すべき点だ。1人は、金さえ払えば自慢の剛力にモノ言わせて事態を収拾する示談屋であり、もう1人はシングルファーザーの男で、金にケチでアルコールに目がない私立探偵だ。2人とも正義とは無縁であり、社会の異端のような位置づけにいる。彼らがタッグを組んだのも、事件解決による報酬目当てである。自らの保身のためにリスクを冒さない正直さが、ヒーローとして安易に描きがちなプロットを崩している。これが面白い。

勇猛な示談屋とヘタレな私立探偵という凸凹コンビだ。2人の掛け合いが絶妙でいちいち笑いが止まらない。序盤のトイレシーンが最初の爆笑地点だ。「そこをイジるんかい!」というツッコミよろしくな描写をかなり長めに追いかける(笑)。実にしょーもないのだが、あのクダらなさが堪らない。示談屋を演じたラッセル・クロウと、探偵を演じたライアン・ゴズリングの鮮やかな勝利だ。とりわけ、ライアン・ゴズリングの巧さが光る。ヘタレで間抜けでどうしようもないのに憎めず魅力的。あの胡散臭い口髭と、70年代ファッションの着こなしもグッド!「ラースとその彼女」「ブルーバレンタイン」「ラブ・アゲイン」「ドライヴ」に続く、彼の代表作がまた1つ誕生した。2017年はゴズリングイヤー、再来の予感。

そんな2人の凸凹コンビの間に割って入るのが、私立探偵の1人娘で13歳になる少女だ。彼女も彼らと常に行動を共にして活躍する。好奇心旺盛で頭がキレる女子であり、2人のオッサンのボケ(行動)に対して、的確にツッコミをいれていく。男2人のバディムービーであると同時に、トリオ漫才のような様相を呈する。ダメな親に対して、デキる子どもという構図はよくパターンだが、彼女にはもう1つの役割がある。主人公が馬鹿を繰り返すだけのコメディではなく、2人の成長ドラマとしての側面も強く感じる。日銭稼ぎの日々の中で「正しくありたい」と願う示談屋と、「幸せになりたい」と願う探偵であり、その手助けをするのが彼女である。本作におけるドラマパートのキーマンといえる。

その1人娘を演じたアンガーリー・ライスは今後要注目だ。おませな女子なのに嫌みがなく、物語のなかで唯一の「良心」として強い存在感を放つ。2人の2大俳優とも堂々と渡り合っており大器を感じる。凄いコが出てきたな~と感心していたらパンフ情報より、早速、次のスパイダーマンやソフィア・コッポラの新作に出演するとのこと。ハリウッドは目をつけるのが早い。

主人公らが事件の真相に手を掛けたとき、事件の巨大な陰謀が明らかになる。その展開自体はさして面白くもないのだが、その事件の顛末をいかに面白く描くかに本作は成功している。クライマックスでのホテルのアクションシーンが秀逸だ。正統派アクションなら、カタルシスを狙って徐々に構成を積み上げていくのに対して、本作は何も積み上げていないしょっぱなから崩しに入る。どう収拾するのか読めないスリルと、矢継ぎ早に繰り出されるマヌケな展開の波状攻撃に笑いが止まらなくなる。一見、無造作なアクションの中にも細かい仕掛けが仕込まれていて素晴らしい。

人間はプールに落ちる人間と、プールの外に落ちる人間の2つに分けることができるのかもしれない。偶然と必然、ラッキーとアンラッキーが折り重なって、ありもしない展開が続いていくのだが、人生ってきっとそんなもんだよな~と勝手に解釈していた。

やや過剰なバイオレンス描写含め、なかなかクセが強い作りだ。アクション映画の常套手段をことごとくハズしていくやり口に対して、ノリノリでついていけたのは主演2人の手腕によるところが大きかったと思う。知人に胸を張って勧められる映画ではないけれど、個人的には大好きな映画だった。

【85点】

コメント
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