から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

キネ旬と映画秘宝のベストテンが2016年もニアミスった件。

2017-02-09 22:00:00 | 映画


映画秘宝に続き、キネマ旬報のベストテン号を入手した。昨年に引き続き、決算特別号と別冊になるようで、苦しい出版事情があるといえ(これで少しでも儲けようという算段!?)、1冊だけでも1600円と高いのに、2冊に分けるのとかマジで勘弁してほしいわ。キネマ旬報の選考委員(シニアな映画評論家)によるベストテンや各個人賞の結果は、既に発表されているが、本誌でのみ明かされる「読者選出」の結果が気になるところであった。

まず、昨年の結果を振り返ると、キネ旬と映画秘宝のベストワンが「マッドマックス 怒りのデスロード」という未曽有の傑作によって、初めて一致するという奇跡が起こった。もう2度とこんな事態は起こるまいと思っていたが、今年も惜しいニアミスが起こった。



【キネマ旬報】(ベストテン)
<日本映画>
①この世界の片隅に、②シン・ゴジラ、③淵に立つ、④ディストラクション・ベイビーズ、⑤永い言い訳、⑥リップヴァンウィンクルの花嫁、⑦湯を沸かすほどの熱い愛、⑧クリーピー 偽りの隣人、⑨オーバー・フェンス、⑩怒り
<外国映画>
①ハドソン川の奇跡、②キャロル、③ブリッジオブスパイ、④トランボ ハリウッドに最も嫌われた男、⑤山河ノスタルジア、⑥サウルの息子、⑦スポットライト、⑧イレブン・ミニッツ、⑨ブルックリン、⑩ルーム

【キネマ旬報】(読者選出)
<日本映画>
①この世界の片隅に、②シン・ゴジラ、③怒り、④君の名は、⑤リップヴァンウィンクルの花嫁、⑥64ロクヨン、⑦湯を沸かすほどの熱い愛、⑧永い言い訳、⑨海よりも深く、⑩淵に立つ
<外国映画>
①ハドソン川の奇跡、②キャロル、③スポットライト、④ルーム、⑤レヴェナント、⑥オデッセイ、⑦ブリッジオブスパイ、⑧スターウォーズ フォースの覚醒、⑨ブルックリン、⑩トランボ

まず、キネ旬で選考委員(シニア評論家)による「ベストテン」と、シニアな読者投票による「読者選出」の結果を比較する。邦画洋画ともにいずれも自身の趣味に近いのは「読者選出」であり、娯楽作品を好む一般的な映画ファンの感覚にも近い(毎年の傾向だけど)。日本映画では「ベストテン」「読者選出」ともに「この世界の片隅に」が1位だった。納得というよりも安堵に近い結果。公開館数が圧倒的に多い「シン・ゴジラ」を抑えての1位は大変な快挙といえる。ライトな映画ファンを含んだ「Filmarks」のベストワンは「君の名は」だったが、単純に見た人が多い映画だった結果であり、「君の名は」信者の大半は「この世界の片隅に」を見ていないと思われる。このあたりは50を過ぎたおじさんばかりの読者とはいえ、キネ旬の読者はかなりのヘビー層であることを再認識させる。また、洋画のベストワンはどちらも「ハドソン川~」であり、キネ旬の読者もイーストウッド信者であったことを忘れていた。イーストウッドの名を覆面にして公開していたら、そこまで評価が高くなる映画ではない。北米でもなく日本ならではの傾向だ。

続いて、映画秘宝の2016年のベストテンの結果。映画秘宝のほうは、邦画と洋画の区別なし。

【映画秘宝】
①シン・ゴジラ、②この世界の片隅に、③デッドプール、④アイアムアヒーロー、⑤クリーピー、⑥キャプテンアメリカシビルウォー、⑦オデッセイ、⑧エクスマキナ、⑨ボーダーライン、⑩ゴーストバスターズ

昨年に続き、自身のベストワンとかなりカブった。「クリーピー」を除いては割と納得感のある結果。映画秘宝のベストワンの予想は「デッドプール」が堅いと思っていたが、まさかの3位。1位は「シン・ゴジラ」で、結果を見れば映画秘宝らしい選出といえる。驚くべきは、キネ旬でダブルで1位となった「この世界の片隅に」が、映画秘宝でも2位になったことだ。一般的な映画ファンと比べてかなり偏った映画愛を持つ映画秘宝の選考委員たちさえも、この映画を支持したということ。改めてスゴい。結果、「シン・ゴジラ」を含めてキネ旬の1位と2位が映画秘宝の順位とニアミスるという事態になった。それだけ良い映画が、2年連続で生み出されたということがいえるかも。

今週、キネ旬の授賞式が行われ、その模様がYoutubeに上がっていた。キネ旬選考委員と読者選出の監督賞受賞と合わせ、3冠を達成した「この世界の片隅に」だが、その授賞式で、すずさんを演じた「のん」が登場するという粋な演出があった。個人的には今年の主演女優賞は間違いなく彼女であったため、彼女のスピーチが聞けて嬉しかった。こんなにメディアで話題になっているのに、事務所の独立問題が尾を引いていて、キー局へのテレビ出演がシャットアウトされている事態が続いている。本当に気の毒だ。それを慮ってか、授賞式では彼女を称賛し彼女を応援する会場の空気を強く感じた。なんだか「この世界の片隅に」をもう1回観に行きたくなってきた。

各映画賞の総ナメ状態のなか、北米での公開がいよいよ決まった。戦争映画ではなく、人生賛歌の映画であることが伝わって欲しいと思う。