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ドクター・ストレンジ 【感想】

2017-02-05 13:00:00 | 映画


圧倒的な勝ち組であるマーベル映画から、また新たなスーパーヒーローが誕生した。操るのは「魔術」という異色ぶり。見終わったあとの興奮から一段落すると、内容について「こーして欲しかった」などと勝手な注文をつけたくなったが、とにもかくにも空間を自在に操った映像体験が素晴らしい。本作は完全にIMAX3D仕様な映画だった。2Dで観ていたらここまでの感動はなかっただろう。映画の進化は止まらないなぁ。

交通事故での大怪我により両手の機能を失った外科医の男が、魔術と出会い、正義に目覚め、世界を救う戦いに身を投じるという話。

まず、冒頭のシークエンスで掴まされる。主人公の師匠になる「至高の魔術師」がめちゅくちゃカッコいい。細身な外見だが、強力な魔術と俊敏な武術によって幾人もの魔術師たちを手玉に取る。演じるティルダ・スウィントンは原作と違う人種のようだが、中性的な彼女の雰囲気もあって全く違和感はなかった。彼女が扱う武器は「エルドリッチ・ライト」と言われるもので、異次元のエネルギーを引き出すことで作られるパワーであり、光のように可視化される。ドラゴンボールや幽遊白書の世代である自分には堪らないプロットだった。

主人公は凄腕の神経外科医だが、名声を好み、傲慢さが鼻につく性格。そんな彼が外科医にとって命ともいえる、両手を交通事故によって神経もろともズタズタに壊される。どんな治療方法を試しても直らない重症であり、人づてに聞いた話を頼りにワラをも掴む思いでネパールに向かう。。。。アイアンマンやハルクなどにも共通するように、自身の特殊な職業や生き様ゆえに皮肉ともいえる悲劇が起こり、結果、世界を救うヒーローへと変貌する形は本作にも共通するところだ。ヒーローとしての働きぶりは派手で明るく見えるが、背景としては暗い過去を抱えている、この表裏がマーベル映画(あるいは原作)の魅力の1つだ。

主人公が辿りついたネパールで出会うのが魔術だ。医療という現実世界で生きてきた主人公が、その超自然的な存在を受け入れざる得なくなる「トリップ」に圧倒される。それは自身の肉体から離れて、精神世界を旅するというものであり、サイケで幻想的な異次元の空間を、目まぐるしい変化をつけて映像化してみせる。これを3Dで見ると、今まで味わったことのない感覚に落ちる。もしかするとドラッグを体内に注入すると、こんな風景が見えるのかなと想像したりした。

その後、厳しい修業の末、魔術を体得し、世界の存亡をかけて闇の魔術師らと戦うことになるのだが、このバトルシーンでも視覚効果が大量に投下される。ニューヨークの高層ビル街を何重にも折り曲げ、重力の所在がわからなくなる舞台を作り出す。3Dで得られる奥行き感がそこに加わり、高所恐怖症な自分は吸い込まれそうになった。何が何だかわからなくなるほど「ここまでやるか」という徹底した作り込みであり、体感的に凄いの一言だった。どうしたらあんな空間設計を考えつくのだろう。

とにかく映像が面白い。その一方で、主人公が魔術を体得し、強力なヒーローとして変化する過程はもう少し丁寧に描いて欲しかったところだ。修業の大きなステップであった「山頂置き去り」は何で成功したのか、主人公の強い味方となる「マント」はなぜ彼を選んだのか(「気まぐれ」だけ?)など、事態の結果だけが描かれていてよくわからなかった。本作で描かれる魔術は外部から得るものではなく、自身の潜在能力を引き出すことで得られるものと説明していたのだから、「なるべくしてなった」というプロセスが欲しい。この点がしっかりしていれば「アイアンマン1」と並ぶ傑作になったと思う。

主人公演じるのはカンバーバッチ。「シャーロック」からのファンであるが、彼がアメコミ映画の主人公を演じる日が来るとは思わなかった。知的でクセのある個性の表現は、彼が得意とするところであり、マーベル映画ならではユーモアもお手のモノで、鮮やかにマーベルユニバースの仲間入りを果たした。ヒロイン役のレイチェル・マクアダムスは相変わらず可愛かった。シリアスパートをしっかり演じられるのは勿論のこと、コメディパートも巧く演じられるのが彼女の魅力だ。主人公の幽体離脱と向き合うリアクションがキュート。本作の敵役はマッツ・ミケルセン。疑いのない実力派俳優なのに、ハリウッド大作には何でも出ちゃう雑食系な人だが本作では彼のキャリアに傷がつかなくて良かった。またいつかレフン映画に戻って欲しい。

最後のラスボス戦は、もっとスッキリした終わり方にしてほしかったが、これも本作の独自色といえるかも。エンディングにはお決まりの、今後の繋がりを予告するシークエンスあり。そういえば、オープニングの「マーベル」のロゴ映像のなかに、初めて「アベンジャーズ」の面々と「ガーディアンズ」の面々が並んで映されていた。アベンジャーズに、本作の「ドクター・ストレンジ」が加わり、そして「ガーディアンズ」の一行も加わる。どんだけ広がるんだマーベルユニバース。大丈夫かな~と期待と少量の不安に胸が膨らむ。

【70点】