から揚げが好きだ。

映画とサウナ。

グリーン・ルーム 【感想】

2017-02-18 10:00:00 | 映画


日本公開を楽しみにしていた1本。「パンクバンドVSネオナチ」というキャッチだけで興味を持ち、どんなキワモノ映画かと思っていたが、中身はおふざけなしのスリラーだった。ライブハウスを舞台に繰り広げられるバトルは、食うか食われるかのサバイバル劇。リアリティを優先した演出が印象的。投下されるバイオレンス描写が痛点を刺激する。監督の前作「ブルー・リベンジ」と作家性が一貫している。

売れないパンクバンドが、田舎のライブ公演に行ったところ、会場のライブハウス内で起きた事件に巻き込まれるという話。

「舞台はネオナチの巣窟だった」という事前情報は、多少、盛っているようで、実際にはナオナチという言葉は一切出てこず、ライブハウス内のちょっとした小道具や、ライブシーンの観客のリアクションで「そう言われれば、この人たちネオナチかも??」と臭わせる程度だ。なので、脚本も「ナオナチ」であることを意識して作られていない。自分はナオナチの生態に興味をもっていて、それが物語上でも機能していると勝手に期待していた。仕方なしだが、この点は肩すかしだった。

「予期せぬ事態に巻き込まれ型」&「箱型バトルアクション」でいえば、昨年末に公開されたばかりの「ドント・ブリ―ズ」と共通項が多いが、あっちはホラーに対して、こっちは完全なスリラーだ。本作で戦い合うキャラクターは、常人が理解できうる動機によって命を賭けた戦いに身を投じる。事件を目撃しただけのパンクバンドは命を狙われ、自身の生き残りのために戦う。一方のネオナチ軍団は彼らが目撃した事件を隠ぺいするために皆殺しに挑む。その後、ネオナチ軍団が事件の隠ぺいにこだわる別の理由が明らかになるが、その展開はよくある話で特に珍しくない。

注目するのは、生と死の境界に立たされた生身の人間の挙動だ。自身が生き残るため、そして友人を殺された怒りに任せ、攻撃する相手に非情な反撃を喰らわす。人間性が吹っ飛ぶ様子がリアルだ。死に対する抗いが強い一方で、死は呆気なく訪れるものでもある。息をしていた人間が、肉片となるスピードの早さよ。その描き方は、パンクバンド側だけではなく、敵対するネオナチ側にも貫かれ、彼ら自身もパンクバンドの命を奪うミッションに対して、自身に降りかかるであろうリスクから恐怖を感じている。殺るか殺られるか、血みどろのバイオレンス描写を多用し緊迫感あるバトルが描かれていく。

リアリティの濃さに面白みがある一方で、密室スリラーとしては仕掛けが少なくて物足りなかった(それが本作の狙いでなかったとしても)。パンクバンドとネオナチの双方ともに、その行動パターンにあまり変化がなく、意外性のある展開が訪れない。過剰な味付けをしないことが本作の魅力である一方で、クライマックスから終点までの過程はさすがにあっさりし過ぎているかも。映画的にもっと盛り上げてくれたほうが自分は好みだ。ワンちゃん(闘犬)の無双ぶりはもう少し工夫してほしいところ。

主人公を演じたのは昨年27歳の若さで亡くなったアントン・イェルチンだ。強くはないがシブといキャラクターを熱演している。ナオナチのボスを演じたのはパトリック・スチュアート。彼の悪役は新鮮だったが、単純なワルではなく頭脳派でクールなキャラだった。彼から放出される底知れない空気が本作をいっそう不気味にさせた。

【65点】

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ハイ・ライズ 【感想】

2017-02-18 09:00:00 | 映画


新作DVDレンタルにて。
40階建てのタワーマンションで繰り広げられる暴動を描く。舞台となるマンションは変わった外観をしていて、下層に貧民層、上層に富裕層が住み、明確なヒエラルキーが形成されている。しかし、それぞれの階層に住む住人たちはプールやジム、買い物をするスーパーまで共用しており、日常的に接触する状況下にある。優先されるのは上層階の富裕層であるため、その後、予想通り、ある事件をきっかけに下層階住民の暴動が起こり、マンション内のヒエラルキーが崩壊する。上層階住民が下層階住民に駆逐されるのではなく、暴動によって無法地帯となったことで上層階住民が支配力を強めるのがミソ。外界から閉ざされたSF設定ゆえ、物資は枯渇し、奪い合いの争いが始まる。欲望が剥き出しになった住民たちは原始化が進み、暴力とセックスが乱れ飛ぶ、何が何だかわからないカオスな世界に変貌。その様子を万華鏡のように映し出した映像が面白い。が、中盤以降、その退廃の空気を作り出すことに終始し、肝心のストーリーが停滞するのがつまらない。話自体は進行を続けるのだが、煙に巻かれ、展開についていけなくなる。寝不足で見ていたら、まともに見れなかった。主人公を演じるのはトム・ヒドルストン。海ドラ「ナイトマネージャー」に続き、美しい肉体美を披露。本作の世界観にマッチしているが、彼が演じる主人公が、タワーで起きる騒動に対して傍観者を決め込むのが勿体なかった。
【60点】
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マッド・ドライヴ 【感想】

2017-02-18 08:00:00 | 気になる映画


新作DVDレンタルにて。
レコード会社で歌手の発掘・契約・育成をする仕事につく男の狂った日々を描く。舞台は1990年代のイギリス。音楽レコードが最も売れた時代であり、音楽業界は群雄割拠、生き馬の目を抜く世界だった。売れるアーティストを発掘する主人公は、結果は出さねば「クビ」のプレッシャーに追われると共に、己の出世を激しく欲する上昇志向に取り憑かれている。彼のガソリンはドラッグとアルコールであり、狂った精神状態に埋没する日常が続く。他者への思いやりも皆無で同情の余地のない主人公は、自らの利益のためだけに次々と悪事に手を染めていく。そんな主人公の転落劇になるか、それとも成功劇になるのか、その見極めに注視していく展開となるのだが、その結果がどうにも気持ち悪い。コトの顛末がなるべくしてなったという主人公の実力と紐づかず、個人の才能によって支えられる音楽業界において、本作のアプローチに納得しないという自身の考えも邪魔した。せめて主人公にそれでも引き付けられる魅力が欲しかった。主人公演じるニコラス・ホルトは果敢に汚れ役に挑む。巧い。巧いが、拭いきれない人の良さは、どうしようもない個性の問題。いくら崩れても美しい顔立ちだ。「フィルス」で悪徳警官を演じたジェームズ・マカヴォイ並みに弾けてほしかった。
【60点】
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