ンディアエ・ローズ流太鼓


 (上の写真、ワークショップの方々の出演する無料コンサートですから、たぶんブログに載せてもいいと思いましたが、不都合がありましたら削除いたします)

 というわけでスキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド21日のオープニングステージは、世界のアーチストに直々に教わった地元の方々の演奏でした。
 ずっと雨が降っていたので野外ステージはしんどいな、と思っていたら、ステージ開始の10分前くらいに止んで、終了しばらくしてまた降り出すという絶妙の空の演出でした。
 なんだか神様に助けられたような。

 それぞれに素晴らしい演奏でしたが(前のエントリーにも書いたとおり素人の方々でも習う伝統があるからでしょうか、プロにそんなにひけを取らないと思えるほど凄かったです)、わたしはやっぱりドゥドゥ・ンディアエ・ローズの息子のワガンさんWagane N'diaye Roseが指導された太鼓パーフォマンスにいちばん圧倒されました(↑)。
 存在に直接バチがばしばし決め込まれる、という感じです。

 アフリカというだけじゃなくて、セネガルというだけじゃなくて、このンディアエ・ローズ流太鼓というのがすごいんでしょうね。
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スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド


 花のお江戸ではワールドミュージック関係のイベントが乏しい感じで、少々さびしい2009年の夏です。
 あのリミッティの奇跡の日本公演を実現してくれた「東京の夏」も今年で終了ということですし。

 ただひとつ気を吐いているのが富山県は南砺市福野で開かれる「スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド」

 このイベント、いろんなアーチストを招いているだけでなく、アーチストによるワークショップで地元の人たちに世界の文化を伝える活動もしているのです。
 今年で19回目ですから、このイベントの初期にスチールパン演奏を習った子たちはすでに成人して、今の子供たちに伝統を伝えられる態勢にあるわけですね。

 料理教室もありますし(ことしはトーゴ、モンゴルのをやってます)、シンポジウム(「ジンバブエの現実。アーチストたちができること」)も開催され、充実してます。

 福野は金沢から車で一時間もかからないです。
 行ってみました。

 上は、駐車場から会場までの道筋に置いてあるぼんぼりです。
 
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アイト=メンゲレットは何を歌っているか

(前のエントリーに続く)

 このアルバムの一曲目 Ettes, ettes...『甘い薬よ...』の冒頭をちょっとだけ訳してみます。

 眠りを忘れた人よ
 わたしの国なら眠りがみつかるよ
 眠りが人を癒すなら、それはよいものだ
 眠りは人をわがものとするのだ
 眠りを乱してはならない
 ひとり目覚めるものがいるなら
 揺すって寝かしつけよう

<以下くりかえし>
 眠れ、眠れ、もう一度眠れ
 まだ目覚めるには早すぎる
 まだ話すことはできないのだから

 アルジェリアの中でカビル人のアイデンティティ擁護の要求は、1962年のアルジェリア独立直後の理想に燃えた時代が終わり、フランスによる植民地支配が一部の特権的アルジェリア人による支配に変わっただけだという幻滅が広がるとともに活発になったと言えるでしょう。
 国家の統一のために言語をアラブ語で統一するというのが独立アルジェリアの基本政策ですが、そのために圧殺されて瀕死の状態になってしまったカビル語(ベルベル語)とその文化をなんとしても再興し、守らねばならない・・・

 今日カビル歌謡の歌手たちは多かれ少なかれこのカビル文化擁護の姿勢をとっています。
 もっとも戦闘的だったのが、殺されたマトゥーブだったわけです。

 
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アイト=メンゲレット


 えー先日エルスールさんでブカックのアルバムと一緒に買ったのがこのアイト=メンゲレットAit-Menguelletのアルバム。

 タイトルありません。品番が「CTM 022」というだけです(こういうの、気負いがなくてわたし好きです。ちなみに製作・配給はIntermede E.L.Mとなってます)。

 これまでわたしはアイト=メンゲレットのアルバムは十枚くらいは聴いたと思いますが、その中でこれはベストと言える出来です。買ったの大正解でした。

 彼の曲は長大で単調なのが多いのですが、このアルバムの六曲は、例によって歌と生ギターと打楽器だけながら仰々しさがなくメロディアスで、カビル人伝統歌謡の良さをうまく生かしている感じです。
 曲名には順にA1 A2 A3 B1 B2 B3と付記してありますから、これはアナログレコードの復刻CDなのでしょうか。それなら70年代くらいの古い録音なのかもと思いますが、音質は良いですよ。

 アイト=メンゲレットといっても知らない方が多いと思いますが、カビル歌謡が現在のような大きなムーヴメントになる最初のインパクトは彼によって与えられたのです。今でも活躍していますが、イディールIdirやマトゥーブMatoub LounesやタクファリナスTakfarinasたちが名をあげる以前に、アイト=メンゲレットがいたのです。国際的知名度が彼らより低いのは、彼の活動がだいたいアルジェリア国内にとどまっているからかなと思います(このあたりはよく確かめる必要がありますが)。

 フォークギターの弾き語りというスタイルが示すように、彼も1960年代に世界を覆ったフォーク・ムーヴメントの波がアルジェリアに及んで生まれてきたアーチストです。

(ちなみに彼のフルネームはLounis Ait Menguelletルーニス・アイト=メンゲレットです。息子のDjaffar Ait Menguellet ジャファールも歌手として活躍しています)
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ブカク

 
 フランス・モンプリエの移民系バンド、ブカック Les Boukakes がニューアルバム『マッラ』Marraを出しました。

 綺麗なジャケットですね。

 音の方は、ほぼ完璧にロックと言っていいもので、抜群のノリです。
 たしかに『クッチェ』のころのハレドの音も入ってますが、それより時々ロバート・フリップやニルヴァーナみたいな音が聞こえてはっとさせられます。ずっと継続してロックの音を追い続けている方には、もっといろんなロック・アーチストの音が聞こえることでしょう。

 この一作だけで判断するのは早いですが、あるいはフランス在住移民系バンドはフランスでの支持定着を主眼において欧米ロック志向を強くしてきているのかもしれません。

 このあたり、アイデンティティ的にフランス人になる必要もないハレドの『リベルテ』のアラブ志向とは対照的といえるでしょう。
 (このハレドの新作については、まだこのブログでは本格的に考察しておりません。明らかに大きな転換点を画する作品なので、評価を下すのは少なくともフランスでの反応を現地で確かめてからにさせてください)
 
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エッフェル塔三十六景


(前のエントリーの続きです)

 リヴィエール展のカタログ、ほんと見てて見あきないです。この人知らなかったなんて、わたしも浅学を恥じ入るばかりです。
 Henri Riviere (1864-1951)は、日本に来たことはないんですが浮世絵に完璧にはまった人で絵と、彫りと、摺りを全部ひとりでやっちゃってたそうです。

 「トレブルのいわし漁船の出帆」の波とか、
 「自然の様相 山」の山肌とか、
 「時の魔術 最後の陽光」の光とか、

 いいですね。
 これはさすがに勝手に写真にしてブログに載せてはおこられるでしょうか。残念です。
 
 北斎の名高い『富嶽三十六景』にならって『エッフェル塔三十六景』Les Trente-six vues de la Tour Eiffelというのも作ってます。
 浮世絵の影響とリヴィエール本人の創意工夫が興味深いですが、わたしはその中の「エッフェル塔の工事現場」に別の意味で興味をひかれました。完成したエッフェル塔の眺めではなくまだ作っているところの描写で、もちろん働く人たちが描かれています。

 ・・・これらの労働者のかなりの部分は、アルジェリアのカビル地方から呼び寄せられた人たちだったはず。
 そして当時のアルジェリアの僻地と世界の大都パリとでは、想像を絶する文明の懸隔があったはず。

 労働者たちは、国に帰った後も「あれは俺達が作ったんだ」という誇りを持ち続けていたことでしょう。
 ちょうどリミッティ婆ちゃんのガスバ奏者アブデルマリクさんが、ルーヴル大改装工事やスタッド・ド・フランス建設を誇りにしていたように(このエントリーの下の方をご覧ください)。
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浮世絵とフランスBDのあいだ


 「フランスの浮世絵師アンリ・リヴィエール展」(於石川県立美術館、8月23日まで)。

 フランス関係の展覧会なのでとりあえず、と見に行ってみたら、一見してはっとさせられました。

 Henri Riviere は基本的に版画家ですが、彼の線、色使いはフランスのBDでよく見る線や色使いとそっくりです。

 考えてみれば当たり前のことですが、浮世絵からフランス版画を経てフランスBDに至る流れが確実に存在するので、これをあとづけて展覧会でも企画すれば、かなり有意義な仕事になるはずです。

 残念ながらわたしには無理な仕事です。どなたかやっていただけないでしょうか・・・
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陰獣!


 シアターN渋谷といえば、22日から『陰獣』INJUレイトショーですね。

 実はね… この映画、一部金沢でロケをやってるんです。
 そのロケを、実はわたし野次馬で見に行ったんです。ブノワ・マジメルが来ているというのを聞きつけて。
 2年前のことです。調べてみると2007年11月17日でした。

 大急ぎで東茶屋街に駆けつけて、ずっと待ってました。
 御神輿のシーンを撮影するところは見ましたが、マジメル君はどこにいたのか、結局見られずじまいでした。

 あの日は天気悪かったです。
 上の写真も狭い通りで光もさし込まないもんだから、まだ完全に日は落ちてなかったのに、すでに暗くてなんだかわかんないですね。シュローダー監督の後ろ姿が写ってるはずなんですが。

 そのへんにいたスタッフの方が、気象情報では何時から何時まで雲が切れるということなのでそのタイミングを狙って撮影、とか言っているのを聞いて、さすがプロは大変だわ、と思ってました。

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意志の勝利


 『意志の勝利』見てきました。シアターN渋谷で28日までやってます。

 ドイツではいまだ上映が許されない、禁断のナチス映画です。
 1934年のニュルンベルク党大会を記録した1935年公開の作ですから、その後ナチスやドイツがどういうことになったかを知っている我々としては、気色が悪いことこの上ないです。
 でも史上名高い映画ですから一度は見ておく価値があります。

 わたしと同じようなこと考える人は多いと見えて、客席は満員でした。

(ちなみにこの映画、ほんの一部ですが、フランスはカーンのメモリアルミュージアム(第二次大戦の記憶を後世に伝えるものです)ですごく小さい画面に映写していたのを、わたしは1998年の研修のときに見てます。あれは、たぶんまだやっているでしょう)

 ヒトラーの演説をたっぷり聞かせてもらいました。

 あんまりヒトラーの演説を引用したりするのははばかられるのですが、彼は若者たちに「将来のドイツに階級や身分は要らない」「人間のあらゆる所産や行為はやがて消える。我々も世を去る。しかしながら、ドイツは諸君の中に生き続ける」という言い方をしていたのですね。

 こういうことに念を押すのもすでに危険かもしれませんが、当然ながらDas Dritte Reichというのは第三「帝国」ではないし、ヒトラーは導く人Fuhrerであって皇帝ではないんですね。

 わたしは今は、ナチスムというのは知性に対する反逆なのかなと考えてます。それがナチスムの一番の核になる本質かどうかは別として。
 たぶんヒトラーは、知性そのものがはらんでいる欠陥、悪弊を突いたために、あれだけ強い力を持つことになったのだと思います。

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すきやきか、ぶら汁か


 最近は花のお江戸でもワールドミュージックの面白いコンサートがあんまりない感じで、さびしい限りです。

 北陸在住者としてはこの21日から「スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド」が富山県南砺市福野で開かれますので、ありがたく見させていただきますね。

 今週末東京におられる方は、とりあえずオペラシティコンサートホールでブラジルの作曲家ヴィラ=ロボスの「ブラジル風バッハ」全曲演奏会(22日)など聞かれてはどうでしょうか?(こういうの、ワールドミュージックとは言わないかもしれませんが)

 とくに第5番は素晴らしく美しくて、わたしも大好きな曲です。

 このコンサートではこの曲もオリジナルのソプラノ+8本チェロ版で演奏されるんですね。
 実はこの曲には作曲者自身によるギター伴奏版があるんですが・・・

 よくみたらギタリスト益田正洋演奏のロビーコンサートというのが間にはさまってますが、このギター版の第5番は演奏されるんでしょうかね。チラシにもどこにも曲目が書いてないですし、そもそもソプラノさんがいないと第5番は曲にならないわけですけど。

 豪快な8本チェロ版もいいですけど、ギター1本のも実に可憐ですよ。
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