別所沼だより

詩人で建築家 立原道造の夢・ヒアシンスハウスと別所沼の四季。
     

詩のことば

2010-11-03 | 別所沼だより

2004.11

  屋根が緑の苔に覆われた、 高原の林のみずみずしい生命を持つ家である。立原は追分村から浦和へと、時空を超えて天使のように飛翔し、ヒアシンスハウスで、水晶の十字架を持つ別れた少女と再会する夢を見る。 そして語りかける。 
                「浅間山麓の幻想」 永峰富一 (抜粋)

          -☆-

 第6回 ヒアシンスハウス夢まつり in 別所沼 
  午後の部
 ■<ああ 私は生きられる> -講演とシンポジウム- 
 (1)講演 「言語と建築-立原道造に考えさせられたこと」
                               
 原 子朗
  ※ プロフィール等 詳細はこちらを拡大してご覧ください。

  (以下にメモ書き。  敬称略)
  講師の膨大な引き出しからあふれ出る ことば、 ことばは 詩(ことばの寺)・詞(ことばを司るなんて。 支配できるものではないとの意味でしょうか)からはじまった。 深遠な話題 こころが踊る。
 
 ・多様な日本語、奥深さ ・道造が病をおしてまで何故長崎に向かったか、 当時の医学は長崎から(と考えたか) 茂吉の例も。
 ・建築家で詩人の立原道造。 詩と建築は似ている。詩は言語による建築。 ともに 組み立てられ。 空間に支えられている建築、 空白に支えられる詩 「ことば」。 いつかは廃墟となる建築に対して、 がっちり組み立てられた「ことば」はいつまでも残る。 
 限りなく広がり 「宮沢賢治語彙辞典」刊行のことや 「墨戯展」開催中とのこと、 特異の話術で盛りあがり興味深い話も時間を縮めて終わる (浅い受け手にいただくものが多すぎました。 誤字、表現など間違っていたらお詫びします) 
 
  参考 ・竹山 廣歌集   ・立原道造全集第4巻
  

 (2)シンポジウム 「願い・不安・虚無-立原道造の光と影」
  
司会:北原立木
  報告:
 
星 善博 「立原道造、詩に潜む虚無の影」Ⅲ
  ここで言う「虚無」は、普通に使われるような否定的な意味ではなく
 
 自己の存在そのものに迷い、何らかの問題を前にしても本質的な解決策を積極的には見出そうとせず、結果的に現状に安住し逃避してしまう傾向にあること、といった意味で 

  道造の詩の本質に迫り、こまやかに分析された。 今資料を読みかえし纏めようにもみなさんのことばがごちゃ混ぜになってしまいました。 ことば ことば ことばが頭を渦巻いています。

  心に残ることばを拾います。

  道造の詩は一見
 
無内容、 俳句にいわれる 無思想(石田波郷) に感じられる。 

  そういうことばが詩になっている。 それがこころを打つ、
 
 こころに響くのだ。
   
   
 種田元晴 「建築家・立原道造の原風景」
  立原は透視図を多く用いた。 着彩したものも多く、建築の背景として自然風景の描写が特徴。 建物だけ中央に配するのではなく、 山や樹木など細密に描かれている。詩作とも通ずる抒情的な(田園的建築観)と呼べるもの、 浅間山麓への憧憬…

 あらためて、 みずみずしい淡彩画のように鑑賞したい。  
 建築図面が にわかに身近になり あたたかみをおびてくる。

 高橋博夫 「意中の詩篇」
  「或る風に寄せて」 
 立原はなぜこのような詩篇を書いたのだろう
  
読めば読むほどに文脈をたどるのが困難だが それでいて惻々と伝わってくるのは そこはかとない寂寥感、喪失感…
  道造は詩集の覚書に 詩を「音楽の状態をあこがれてつくつた…」と書いた。

  読んでいると風に乗るようなリズムを感じた。 でも 文脈がよく分からない。 伺ううちに、 自分だけの疑問がとけたような、 すこし近づいてうれしかった。 彼の詩は寂しいが こころが洗われる、 透きとおるような繊細さ。 ことばの感度をあげて、 その手紙もなんども読み返す。 ガイドしながら読み、 お客さまにお聴かせしたりもする。  
   

 ・立原のご友人 小山正孝氏 その詩集。 ご子息により、会場に 立原のパステル画や設計図など所蔵品が展示された。  


 ■<夢みたものは ひとつの幸福>
  -埼玉詩人会のメンバーによる立原道造の詩の朗読-

    朗読: 小林登茂子・対馬正子・ふじわらなほこ
  それぞれ立原の詩二篇と 自作の詩を朗読してくださった。 
  目を閉じて聴く。想像する

 ■ <昨日の風は鳴つてゐた 林を透いた青空に>
       -フルート独奏-  
演奏 柴山祥子

  曲目 木管フルート 「シューストア」 ジャズのスタイルで
   「涙のパバーヌ」詩の朗読
   「枯葉」 「笛の楽園」 
  小鳥に歌を教える曲
 毎晩鳥に聴かせて 覚えた鳥は貴族に高値で売れた
  ソプラノリコーダー  ムクドリ、森ヒバリ、スズメ ほか (順不同) 
  
   フルートの音色に包まれて 過ごす時間。 初対面のひとも 
   おなじ思いにつながれて、 すぐにうち解ける  
  
   夕やけが美しいレース編みで西の空を飾ること。
    もう、とほい思ひ出はいらなくなった…  「立原道造」

  色づきはじめた沼に 
夕暮れがせまった。
   
 ■懇親交流会  
 (1)ハウスガイドを慰労する会  
 (2)演奏:小坂真周(オカリナ奏者) 
  黄昏れの別所沼にやさしく流れるオカリナの調べ。 こころに沁みる。 楽しみ、 酔い、メモを取るのも忘れた。 曲の数々と 歓談…

  ・「人形のまち」 詩 槇 晧志  曲 小坂真周 


 

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2 コメント

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すてきな会でした (小山正見)
2010-11-08 08:46:34
当日寄せていただいた小山正見です。
講演の原子朗さんの語り口にあっとうされましたし、シンポジウムも短い時間ながら、印象的な切り口が示され、大変刺激になりました。
詩の朗読、フルートの演奏など、地域に溶け込んだすてきな会で、とても感動的でした。
ありがとうございました。
このホームページもすてきですね。
返信する
ありがとうございます ()
2010-11-08 10:43:38
 ようこそ お出でくださいました。ありがとうございます。お父上の詩集をきちんと読んでみます。
 講演をもっと聴きたかったですね。お忙しくて残念でした。シンポジウムもゆっくりかみしめています。「あえて現実に向きあおうとしなかった…」というところ、「甘い夢の誘ひと潤沢な眠りに縁取られた薄明」のなかに生きてこそ…に合点しています。
 学びはじめですが、父の喪失感と母への思いなど、体験者としてよくわかります。
 中味の濃い 忘れられぬ会でした。これからもどうぞよろしくお願いいたします。 
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