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預言者伝56

2013年12月26日 | 預言者伝関連
178.マッカ出発への準備とハーティブ・イブン・アビーバルタアの手紙
  アッラーの使徒(祝福と平安あれ)は人々にマッカに向かうことを知らせ、そのための準備をするように命じて言われました:アッラーよ!われわれがクライシュの土地に彼らの知らないうちに入れるよう、彼らに(われわれのマッカへの旅を)知らせるスパイを取り除いてください。

  人民的イスラーム社会が実生活、人間の感情、自己の思いとその欲求の中で人間の社会として生きる時、その中に存在する個々人は正解に辿りついたり間違えてしまったりします。また彼ら自身の振る舞いや決めごとにおいて自分らで解釈を求めることで、正解を得られることもあるでしょう。それは、自由と信頼を満喫出来ている人間社会の特徴の一つです。そこでアッラーの使徒(祝福と平安あれ)は間違いを認めない場合、人々に言い訳の余地を与えようとし、彼らをゆるそうとしました。彼は間違えてしまう者たちを大目に見る心の広いお方です。また彼らの徳とジハードにおける彼らが受けた災難、そして彼らが初期にイスラームに帰依したことを最も良く知るお方でした。ハディースや預言者伝、イスラームの歴史の本がこのような珍しい出来事を収録しています。

  これらの珍しい出来事の一つが、ハーティブ・イブン・アビーバルタアに起きたことです。彼はマッカからマディーナに移住した一人で、バドルの戦にも参加した人物です。かつて預言者(祝福と平安あれ)が人々に彼がマッカに行かれることを知らせ、その事実はお隠しになり、人々がその準備に取り掛かると、ハーティブはクライシュにアッラーの使徒(祝福と平安あれ)がマッカに向かうことを手紙で知らせようとしました。手紙はある女に預けられ、報奨を得る代わりにクライシュに手渡されるよう約束されました。女は手紙を頭に隠して、出発しました。代わってアッラーの使徒はハーティブが成したことの知らせを天より受け取ったので早速アリーとアッ=ズバイルを呼び付け、ラウダ・ハーフ(マッカとマディーナの間の地名)に向かいなさい、クライシュへの手紙を持った女がいるから、と言われました。二人は馬を早く走らせて女を追いました。すると女は言われたとおりの場所にいました。二人は彼女に乗り物から下りるように言い、手紙を持っているか尋ねました。女はないと答えるので二人は彼女の荷物の中を探りましたが何も見つかりません。そこでアリーは言いました:アッラーの使徒(祝福と平安あれ)が嘘を言われないこと、そしてわれわれが嘘をついていないことをアッラーに誓おう。さあ手紙をだしなさい。さもないとぬがすぞ。女はアリーたちが本気であることを悟ると、後ろを向いてください、と言いました。アリーが背を向けている間に女は頭に隠していた手紙を取り出して、二人に差し出しました。アッラーの使徒がその手紙を開くと、なんとハーティブがクライシュにアッラーの使徒(祝福と平安あれ)が彼らの許に向かっていると知らせていることが分かりました。

  アッラーの使徒(祝福と平安あれ)に呼ばれたハーティブは言いました:アッラーの使徒さま、私への処罰をどうかお急ぎにならないでください!アッラーに誓って、私はアッラーとその使徒を信仰していますし、背教もせず、宗教を変えてもいません。ただ私はクライシュの出ではないため、あの地にいる私の家族や子どもには彼らを守ってくれる親戚がおらず心配なのです。あなたさまと共にいる人たちには親戚がいるので彼らが守ってくれるでしょうが。そこで事前に家族を守ってくれる人を確保するために手を打とうと思ったのです。ウマルは言いました:アッラーの使徒さま、こいつの首を切らせてください!こいつはアッラーとその使徒を裏切って、信仰を偽ったのですから。アッラー使徒(祝福と平安あれ)は言われました:ウマルよ、彼はバドルの戦に参加したのです、おまえに何が分かるというのでしょうか!もしかするとアッラーはバドルの戦に参加した人たちの様子を御存知で、「さあ、おまえたち、好きなことを成せ。われはおまえたちを赦そう」と仰せになったかもしれないのだから。するとウマルは目を涙でためて言いました:アッラーとその使徒が最もよく御存知です。

  アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はヒジュラ暦8年ラマダーン月にマッカへ10000人を連れて出発しました。クライシュは彼の到来の事実を知ることはありませんでした。

179.不正なる者を放免する:
  アッラーの使徒(祝福と平安あれ)は道中で、いとこであるアブースフヤーンに出会いましたが、今まで彼から受けて来た激しい悪さのためもあって、彼を無視しました。それを気にしたアブースフヤーンはアリーに訴えました。「アッラーの使徒さま(祝福と平安あれ)の面前に行って、ユースフの兄弟がユースフに言ったように【アッラーに誓って、まことにアッラーはあなたをわれらの上に優遇し給いました。まことにわれらこそは誤った者でした】(ユースフ章91節)と彼に言いなさい。彼はご自分よりも誰かが話すことにおいて彼に優ることに満足されないから」と助言しました。アブースフヤーンはアリーに言われたとおりにしたところ、アッラー使徒(祝福と平安あれ)は彼に言われました:【今日、おまえたちに咎めはない。アッラーはおまえたちを赦し給う。彼は慈悲ある者たちのうちの最も慈悲あるお方】(ユースフ章92節)。その後アブースフヤーンは態度をあらため、イスラームに帰依した後は、アッラーの使徒(祝福と平安あれ)に対する羞恥心から彼の前では頭を上げることはありませんでした。

(参考文献:①「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P332~335)
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