グリーンズ・テイブル

ppのピアニッシモな戯言でござ~い☆

詩とファンタジー№20

2012-10-31 10:28:04 | 

詩とファンタジー№20秋雅号 20号記念号
投稿詩とイラストレーション
責任編集:やなせたかし
かまくら春秋社

記念号特集:沖縄の詩と芸術
巻頭特集:たゆたう詩人 山之口獏

今号も被災地からの応募作品がたくさん掲載されています。

あの空の下
    大空美南
あの大空の下で
もう一度 思いっきり深呼吸がしたい

あの森の中を
もう一度 次の日も疲れが残るくらい、駆けまわりたい

あの山の前で
もう一度 焦るように 紅葉をみつけたい

あの風の中で
季節の移ろいを 匂いで味わいたい

あの川の中で
飲み水になっていく澄んだ水に触れたい

あの陽差しの下で
深い雪と凍てつく寒さを耐えた春の喜びを味わいたい

あの小さな街で
知っている顔に会って 慌てるように いつもの挨拶がしたい

あの田畑の脇道を
何もかも忘れたように 駆け抜けたい

あの人に会って
新米と獲れたての野菜や果物の自慢を聞きたい

こんなときになって
「何もないところ」っていう言葉が、誉め言葉たと知った

もう一度 あの「ひととき」を取り戻したい


今を生きる
   サトウエリ
たったそれだけのお金で
なかったものにしてと言われても
私は納得できるでしょうか
これからの先行きが不安で
生き甲斐を失ったあの方は
自宅にほんのひととき戻れたとき
自らの手で
自らの命を絶ったのです
そのような方が
一人、二人、また一人と
ニュースで報じられるたびに
私の胸は苦しくなり、呼吸がどうしようもなくなるのです
その後すぐに
バラエティ番組がいつものように東京から流れる
私はその瞬間
叫びたくなった
本当に見つめているのでしょうか
本当に終わったのでしょうか
私たちは今も生きている


喉元過ぎればにならないように。
少なくとも苦しみや悲しみに拍車をかけることの無いように。


手紙
   福田ゆかり
お元気ですか と手紙を送ると
三年後に 元気です とだけ返事が来た

三年間は元気じゃなかったのか と
また手紙をかこうかと思ったが

あの人が貼った八十円切手の
コスモスがとてもきれいだったので

あと五年後くらいでもいいか と
手にとった万年筆をひきだしにしまった

絵・網中いづる



お風呂屋さん
  レイコ
電信柱の傘電球が灯る頃
溝から しろい 湯気がたちのぼり
どぶと石鹸の匂いがながれてくる

むかーし 自分に約束したんだ
(死にたくなったら お風呂屋さんに行こうって)

湯船につかったら
ぼんやり ぼんやり
考えたって仕方のないことなんて
もう 何も考えない

もやもやも イライラも
ぜーんぶ洗い流して
ピカピカになって 生まれ変わって
もったいない もったいない まだまだいけるよ
って つぶやいて

お風呂屋さんは やっぱりいいなぁ

脱衣所で サイダー飲み干したら
「てゃんでぃ 負けるもんか!」と 自分にはっぱをかけて
帰り道 煙突の上のお月さんに ウィンクするんだ

絵・稲嶺成祚



てゃんでぃ、温泉に行きたくなったぜ!!

楽しいこと、美味しいものは……新しい力にかわってくれる☆

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