POWERFUL MOMが行く!
多忙な中でも,美味しい物を食べ歩き,料理を工夫し,旅行を楽しむ私の日常を綴ります。
 





 日本での季節性インフルエンザの年間死者数は、どのくらいなのでしょう。2005年のデータでは感染者数がおよそ1,000万人強(罹患率8%弱)と推計されています。そのうち、死者数は1,800人ほど(これに基づくと0.02%弱の致死率)です。しかし、この死者数というものは不確実なものです。インフルエンザによる死亡は、炎症が上気道に留まらず肺に達して肺炎という疾患を起こすためによるものが圧倒的に多いのです(少ないが「脳症」もある)。死亡診断書には「肺炎」と記載され、インフルエンザによる死亡にカウントされないこともあります。そこで、超過死亡者という考え方が導入され、肺炎等死亡者のうち、インフルエンザの流行があったために増えたであろう死亡者をもインフルエンザによる死亡にカウントします。2005年では、15,000人がインフルエンザによる死亡(これに基づくと0.15%ほどの致死率)と推定されています(年間の交通事故死者数は6,000人ほど)。総人口に対しては、0.01%になり、毎年1万人に1人はインフルエンザで亡くなっていることになります。

 この死亡者の多くは、ハイリスク群に属しています。ハイリスク群とは、インフルエンザに感染すると、重症化や合併症を引き起こす可能性の高いグループのことで下記の人たちです。
 (1) 65歳以上の高齢者
 (2)妊娠28週以降の妊婦
 (3)慢性肺疾患(肺気腫、気管支喘息、肺線維症、肺結核など)を持っている人
 (3)心疾患(僧帽弁膜症・鬱血性心不全など)を持っている人
 (4)腎疾患(慢性賢不全・血液透析患者・腎移植患者など)を持っている人
 (5)代謝異常(糖尿病・アジソン病など)を持っている人
 (6)免疫不全状態の患者

 2009年5月11日配信の時事通信の記事です。

 中米コスタリカの保健相は9日、新型インフルエンザに感染した男性(53)が同日死亡したことを明らかにした。…。米ワシントン州保健当局も同日、死亡した同州の30代男性が感染していたと発表し、米国での死者は3人となった。…。コスタリカで死亡した男性は、首都サンホセ市内の病院に1週間以上入院していた。糖尿病などの持病があったという。ワシントン州の男性は心臓を患っており、新型インフルエンザの合併症とみられる肺炎で死亡した。

 2009年5月9日配信の読売新聞の記事です。

 メキシコの保健相は8日、同国で同日までに新型インフルエンザに感染して死亡した45人のうち、4人に1人が肥満だったと明らかにした。糖尿病や高血圧、狭心症など持病のある人も多かったという。また、昼の気温が30度を超す海岸沿い地域で感染した人は少なく、暑さが苦手なウイルスの特徴が示されたという。

 この観察が正しければ、もし日本でも「新型インフルエンザ(インフルエンザA)」の流行が始まっても、夏が始まれば終息するということになります。夏に北半球には旅行に出かけてもリスクは低いということになります。これを裏付けるかのように、暑さを特徴とするタイ、シンガポール、マレーシア、インドネシアといった東南アジアには現在までのところ、国内感染者は出ていません。





 (出典:WHO)

 2009年5月7日の夕刊フジの記事からです。

 通常のインフルエンザは、抵抗力の弱い高齢者にとってハイリスクとされるが、今回の新型インフルエンザの患者は15~50歳代が中心。…。ひとつ考えられるのは、60歳以上の人が新型インフルエンザに抵抗できる抗体を持っている可能性。新型インフルエンザの前身である豚インフルエンザは、過去に米国で人が感染したケースがあった。1976年には200人以上が感染し、1人が死亡した。この時期に感染したものの軽症で症状は出なかった人たちが抗体だけを体内に持ったという説である。海外の研究では、高齢者に新型インフルエンザの抗体はないという説の一方、何らかの抗体が免疫力として反応している可能性も示唆されている。…。
 もうひとつ考えられるのは、若者ほど人込みに出かける機会が多く、それゆえに感染しやすいという説。米ニューヨークでは、高校で新型インフルエンザが広がった。行動範囲の広い若者ほど現時点では患者が多いとの見方だ。…。
 抗体を持たず行動範囲の広い若者は、新型インフルエンザの餌食になりやすい。その逆に、60代以上は行動範囲が狭いうえ、過去の感染体験もあって、かかりにくいのかもしれない。


 2009年5月10日発表のWHOの“Influenza A(H1N1) - update 24”というメッセージの中の1文です。

 WHO is not recommending travel restrictions related to the outbreak of the influenza A(H1N1) virus. (世界保健機関は、インフルエンザA型(H1N1)ウイルスの発生があるからといって旅行を控えることを勧めてはいません。)

 インフルエンザウイルスの拡散の可能性ということでは、旅行を控えてもらった方がよいけれども、現在までのところ新型インフルエンザウイルスの毒性が季節性のインフルエンザウイルスと大きく変わらないことから、経済への影響を考え、このメッセージになっているのでしょう。

 Individuals who are ill should delay travel plans and returning travelers who fall ill should seek appropriate medical care. These recommendations are prudent measures which can limit the spread of many communicable diseases, including influenza.
 (もちろん、病気であれば、旅行を先に延ばし、旅行中に病気になったならば、適切な治療を受けるべきです。インフルエンザを含む伝染病の蔓延を小さなものにするためにこのような手段を慎重に講じてください。)

 WHOとしても、ワクチンがいまだ製造されてはいないが、季節性インフルエンザとその症状、対処方法、致死率などに大きく違わないものに過剰に反応してしまうと、毒性の強い「鳥インフルエンザ(H5N1)」などの重篤な症状のあるエマージングウイルスが現れたときに世界的な協力が得られるとは限らなくなってしまうと考えているのでしょう。

 人的被害に比べて、経済的損失が格段に大きくなっています。狼(毒性の強いインフルエンザウイルス)が来ると叫び続けると「狼少年」になってしまい、本当に「狼」が出現したときに拡大防止の初動の段階で協力が得られなくてつまづくことになります。WHOもやがて「警戒」のレベルを下げることになるでしょう。

 このことを厚生労働省も気づき始めていて、「鳥インフルエンザ(H5N1)」などの毒性の強い「新型インフルエンザ」対策に準備された「新型インフルエンザ対策行動計画」は手直しされて実施されることになるでしょう。

 厚生労働省は5月8日の記者会見で、世界保健機関(WHO)などが新型インフルエンザウイルスについて感染性や重篤度などの評価を確立した際には、「新型インフルエンザ対策行動計画」や「新型インフルエンザ対策ガイドライン」に基づく態勢を変えていくのは必要だとし、新型インフルエンザの重篤度が低い場合は対策を緩和する可能性を示唆した。
 厚生労働省によると、現行の新型インフルエンザ対策ガイドラインは、H5N1など強毒性のインフルエンザウイルスを想定して定めたもの。厚生労働省では、内閣の対策本部が今後の対策を見直す際には、専門家を招いて会議を開き、行動計画やガイドラインに沿ってどの程度の対策が必要か意見を求めたい考えだ。


          (この項 健人のパパ) 

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2009年5月5日、スポーツ報知のコラム「舛添要一の永田町奮戦ルポ」からです。

-大臣を始め、過剰に反応することで、国民が必要以上に不安を感じるのでは?
 
 「危機管理は最悪の状況を想定して取り組むものだが、日本人はとかく楽観主義だ。私は海外経験が長かったが、外国人は自分の身に降りかかる脅威に対する意識が高いように思う。もちろん国民には冷静な対応を求めるが、危機管理に“やり過ぎ”はない。」




 危機管理とは、組織が受ける不利益を「可能性」の段階から予防し、それでも発生する「被害」は最小限に抑制することを目的とした対策を意味します。しかし、危機管理には費用がかかり、「費用対効果」の点で「徹底的、完全」にといった対策は講じることができません。危機管理には生産性はなく、その対策を講じたとしても「獲得利益」はないのですから、その対策を講じなかったことによる「逸失利益」を「費用」と利益考量するしかありません。

 舛添厚生労働大臣は、今回の事態に際して、「積極的な対応」を心掛け、当事者としての主導権を握っていて、時には無責任な報道に走るマスコミやマスコミに扇動される世論を封じています。専門家の意見を取り入れながら対応策を決め、問題解決のために努力する「積極的な姿勢」を見せているのでしょう。危機管理としては望ましい姿といえます。

 「情報は基本的に公開して提供できるものは提供する。もちろん個人のプライバシー等は伏せますが、それが一番の危機管理の基本だと思っております。」 (大臣発言2009年5月1日)

 しかしそれでも、新型インフルエンザの日本侵入は防ぐことはできないでしょう。それを舛添大臣も認めています。「検疫」では新型インフルエンザの日本侵入を防ぐことはできず、各自治体の国内体制が整うまでの「時間稼ぎ」だと舛添大臣は考えているようです。さらに望んで、ワクチンを開発するまでの時間稼ぎをしたいというのが正直なところと言えそうです。

 「(政府の行動計画の)何段階とかいうのが大事ではなくて、国内で発生したという途端に発想を変えないといけません。これが大事です。ですから、私が昨日(2009年4月30日)深夜に会見をしたのは、発想を変えないといけない、「全国民が発想を変えてくださいよ」と言うためです。大幅に変える必要があると思っております。」「くしゃみをするだけで百万から二百万のウイルスが飛散するわけですから、感染力は非常に強いと思います。基本的には体制を大きく変える。だから国内で戦う、具体的に言えば医療、初期出動の体制、それでなくても医師不足で困っているのですが、そこに重点的に人を当てます。」「国内体制に切り替わった時に現場の自治体がしっかりしているか、首長がしっかりしているかで全く様相が違います。ですから、ある街に住んでいたら命が助かるのですが、この街に住んでいたら命が助からないということが起こりうるのです。ですから地方自治と口でいうのは簡単ですが、それだけ厳しい重いものなのです。」「我々は全面的に協力します。ですが、現場が一番大事です。大変御苦労ですし、自治体の職員の皆様も、首長も大変だと思いますが、ここが正念場ですから第一線ががんばっていただきたいと思います。」 (大臣発言2009年5月1日)

 医療関係者も「検疫」で、すべての「新型インフルエンザ」感染者を見つけ出せるとは考えていないようです。そのため、東京都内の病院で、「インフルエンザ」に特徴の「発熱」などの症状がある患者の診察を拒否する例が起こっているようです。病院がパニックに陥っているのです。

 2009年5月5日の毎日新聞の記事です。

 「新型インフルエンザへの警戒が強まる中、東京都内の病院で、発熱などの症状がある患者が診察を拒否される例が相次いでいることが分かった。」「新型への感染を恐れたためとみられるが、感染者が出た国への渡航歴などがない患者ばかりで、診察拒否は医師法違反の可能性がある。」「拒否の理由について都は「万一、新型インフルエンザだった場合を恐れているのでは」と推測する。拒否されたため、都が区などと調整して診療できる病院を紹介した例も複数あった。「保健所の診断結果を持参して」と患者に求めた病院や、成田空港に勤務しているとの理由で拒否した例もあった。友人に外国人がいるというだけで拒否された患者もいたという。」

 比較的軽度といわれる「新型インフルエンザ(H1N1型)」でこのようなことが起こるのですから、「鳥インフルエンザ(H5N1型)」では医療知識がある病院ですら大きなパニックになることが予想されます。頼りないことこの上ない。

 厚生労働省新型インフルエンザ対策推進本部は、2009年5月6日付けで「国内未発生期における発熱外来を置かない医療機関への発熱患者の受診について」という文書を各都道府県衛生主管部医務担当者に向けて出しました。

○ 蔓延国への渡航歴や患者との接触歴が認められる発熱患者が、発熱相談センターを通じずに発熱外来を置かない医療機関を受診したり、電話による相談があった場合には、まず発熱相談センターに電話で相談し、必要に応じて紹介される適切な医療機関を受診するように勧めること。
○ 発熱相談センターの指導に従って発熱者が発熱外来を置かない医療機関に受診した場合は、患者にマスク等を使用するように指導するなど、感染予防に必要な指導を行った上で、当該医療機関が診察すること。


 熱帯雨林へ人間の侵入、人口増加による公衆衛生環境の変化、抗生物質の濫用による薬剤耐性菌の出現などで、従来みられなかったウイルス感染症が突然に出現(emere、エマージ)しています。HIV(ヒト免疫不全ウイルス、human immunodeficiency virus)感染症であるエイズ(AIDS、acquired immune deficiency syndrome、後天性免疫不全症候群)が「エマージング・ウイルス(emerging virus)」の代表的なものといえます。人類はこの「エマージング・ウイルス」との戦いを余儀なくされています。豚インフルエンザウイルスや鳥インフルエンザウイルスは、人類にとって、既知のウイルスですが、そのウイルスとの戦いも必要なのです。

 「問題はH5N1の鳥インフルエンザ、強毒性を想定した行動対処方針です。ですから本当に弱毒であって、死者の数がメキシコ以外ではさほど拡がっていないということを考えますと、そのままH5N1用の対処方針でいいのかどうなのかというのはあります。やはり、皆様外出したり、お買いものに行ったりしますし、学校も休校しない方がいいわけです。国民の利便性、経済活動もありますし、それと生命も守らないということとのバランスを、ウイルスの特性、国際情勢を見て、全体状況を把握しながら行動したいと思っておりますから、(政府の行動計画を)何段階上げるとか、下げるとかいうことではなくて何が一番国民にとっていいのか。」 (大臣発言2009年5月1日)

 メキシコに端を発した「新型インフルエンザ」は、「鳥インフルエンザ」対策の有効性を試す機会です。シミュレーションを政府と国民がともに体験している面があります。私たちはこの機会を十分に活用しなくてはなりません。人獣共通感染症の脅威に私たちは曝されているのです。 

 病院は頼りない。感染してしまうと、自分の身を守れそうにもありません。感染しないように対策を講じなくてはいけません。そこで、厚生労働省のホームページから個人が取れる対策をみてみます。

2)感染拡大の防止
○ 発症した人がマスクをすることによって他の人に感染させないという効果は認められており、自分が発症した場合にはマスクを着用することが必要である。他方、まだ感染していない者がマスクをすることによってウイルスの吸い込みを完全に防ぐという明確な科学的根拠はないため、マスクを着用することのみによる防御を過信せず、お互いに距離をとるなど他の感染防止策も講ずる必要がある。
○ 食料品・生活必需品等の買出しや重要業務を継続するためなどのやむを得ない出勤等の場合を除き、感染を回避するため、不要不急の外出は自粛するとともに、やむを得ない外出の際にも、混雑した公共交通機関の利用を避けるなどの工夫が必要である。

(別添2)
個人での備蓄物品の例
○日用品・医療品の例
 マスク(不織布製マスク)、体温計、ゴム手袋(破れにくいもの)、水枕・氷枕(頭や腋下の冷却用)、漂白剤(次亜塩素酸:消毒効果がある)、消毒用アルコール(アルコールが60%~80%程度含まれている消毒薬)、常備薬(胃腸薬、痛み止め、その他持病の処方薬)、絆創膏、ガーゼ・コットン、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、保湿ティッシュ(アルコールのあるものとないもの)、洗剤(衣類・食器等)・石鹸、シャンプー・リンス、紙おむつ、生理用品(女性用)、ごみ用ビニール袋、ビニール袋(汚染されたごみの密封等に利用)、カセットコンロ、ボンベ、懐中電灯、乾電池


 殆どが我が家にあるが、足りないものは買いに行かなくては。

(追記) 厚生労働省は、カナダのオンタリオ州オークビル市から米デトロイト経由で成田空港に帰国した3人の「新型インフルエンザ」感染を確認しました。3人はいずれも大阪府在住の男性で、46歳(引率教師)が1人と10代(高校2年生)が2人。8日午後4時半過ぎ、ノースウエスト航空25便で成田空港に到着し、簡易検査でA型インフルエンザと判定されので、ウイルスの遺伝子検査が行われていました。

          (この項 健人のパパ)

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 日本はその食料を多く外国に依存しています。日本の食料自給率は現在では40%ほどだといいます。1960年代には70%ほどあったものが、1970年代には50%ほどに低下。その後、ほぼ横這いに推移していましたが、1980年代には再び大きく低下し始めます。現在では40%ほどで横這い状態で推移しています。

 カロリーベースで、私たちが口にする食べ物の60%も海外の生産者が生産し、海外の流通網に乗って、日本にやってきた物だということになります。食料安保(外国からの供給の途絶などに備えて、食料を自給すべきという考え方)の面から、食料自給率を向上させようという主張もあります。しかし、現代農業には石油などのエネルギーが不可欠で、エネルギー自給率が極端に低い(4%ほど)日本にあっては選択肢が殆どありません。

 新型インフルエンザが、メキシコ、アメリカ、ヨーロッパなどで感染者を増やしていますが、日本への食料の供給地であるアジアではまだ感染者を増やしてはいません。厚生省の「個人、家庭及び地域における新型インフルエンザ対策ガイドライン」という文書があります。PDF形式で厚生省のホームページから見ることができます。(

 その中に「新型インフルエンザが海外で大流行した場合、様々な物資の輸入の減少、停止が予想され、」という記述があります。気付きませんでした。新型インフルエンザのパンデミック(世界的大流行)は、「食料」という面からも重大事なのです。食料の「生産」の担い手がこの病に冒されると、食料生産が減少し、また、「流通」の担い手にも被害が出ると、日本への食料供給は途絶する可能性があるのです。

 現在までのところ、この新型インフルエンザの爆発的拡大は抑えこまれているように見えます。また、その毒性は低いものと見られています。昔の中国の杞(き)という国の人のように、天が落ちてきはしないかと憂える(「杞憂(きゆう)」)必要はないのでしょうが、食料供給の途絶の可能性をまったく否定するわけにもいかないでしょう。

 厚生省の「個人、家庭及び地域における新型インフルエンザ対策ガイドライン」から一部抜粋してみます。

4)家庭での備蓄
○ 新型インフルエンザが海外で大流行した場合、様々な物資の輸入の減少、停止が予想され、新型インフルエンザが国内で発生した場合、食料品・生活必需品等の流通、物流に影響が出ることも予想される。また、感染を防ぐためには不要不急の外出をしないことが原則である。
○ このため、災害時のように最低限(2週間程度)の食料品・生活必需品等を備畜しておくことが推奨される。(別添2参照)

(別添2)個人での備蓄物品の例
○食料品(長期保存可能なもの)の例
 米、乾めん類(そば、そうめん、ラーメン、うどん、パスタ等)、切り餅、コーンフレーク・シリアル類、乾パン、各種調味料、レトルト・フリーズドライ食品、冷凍食品(家庭での保存温度、停電に注意)、インスタントラーメン、即席めん、缶詰、菓子類、ミネラルウォーター、ペットボトルや缶入りの飲料、育児用調製粉乳




 穀類の生産地、アメリカやカナダではかなりの数の感染者が出ていますが、いずれも大きく免疫力の低下していた人以外には死亡者は出ておらず、軽度の症状で回復しているようです。いま、特に何をすべきということも何ができるということも考える時期ではないでしょうが、パニックにならないように対策を講じる心の準備は必要のようです。

 ひたすら、この新型インフルエンザウイルスの流行が早く静かに終焉を迎えることを願っています。

         (この項 健人のパパ)

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 「インフルエンザ」は、インフルエンザウイルスが呼吸器に感染することによって起こる病気で、鼻水、鼻づまり、微熱、きわめて短期間の軽度の悪寒といった「風邪(普通感冒)症状」とは異なり、発熱(38~40℃)、筋肉痛、関節痛、全身倦怠感、強度の悪寒といった症状をみせます。気管支炎、インフルエンザ肺炎、細菌性肺炎、インフルエンザ脳症といった合併症を引き起こし、二次感染や急性脳症により死亡することもあります。

 インフルエンザに感染すると、合併症を引き起こす可能性の高い、気管支喘息など慢性肺疾患を持つ人、糖尿病など代謝異常を持つ人、HIV患者など免疫不全状態の人、65歳以上の高齢者、妊娠28週以降の妊婦などには死に至るリスクの高い病気です。しかし、インフルエンザワクチンの接種を受ければ、高齢者を中心としたハイリスク群で、肺炎などの合併症の発生や重篤な健康被害を減少させる効果が期待できます。

 ワクチンは身体の免疫機構を利用します。ウイルスを分解して精製したHA蛋白などの成分を体内に入れて(「HAワクチン」)抗体を作らせておき、本物のウイルスが入ってきても感染させないようにするものです。そのため、ワクチンの製造にはウイルスが必要です。ウイルスをなんらかの「細胞」で大量に増殖させる必要があるのです。A型インフルエンザはヒト以外にトリ、ブタなどを自然宿主とする人獣共通感染症でもあります。 そこで、インフルエンザウイルスは、鶏卵(「トリ」の卵)で増殖させることが行われます。

 現在のインフルエンザワクチンは、ワクチン製造用のインフルエンザウイルスを「発育鶏卵(孵化鶏卵、有精卵が孵化するまでの発育過程の鶏卵)に接種して増殖させ、漿尿液から精製・濃縮したウイルスをエーテルなどの脂溶性溶剤を加えて、免疫防御に関与する部分を取り出し(「成分ワクチン」)、更にホルマリンで不活化したものです(死滅させた病原体を含む「不活化ワクチン」で、弱毒化してあるが生存している病原体を含む「生ワクチン」とは異なる)。

 河出書房新社(1997年刊)、山内一也(北里研究所、国立予防衛生研究所、東京大学医科学研究所教授、日本生物科学研究所を経て、東京大学名誉教授)著の「エマージングウイルスの恐怖-人獣共通感染症の恐怖を超えて」の記述からいくつか拾ってみましょう。

 「ウイルスの研究は、このようにして動物で始まった。しかし、数多くの動物を用いることは困難であり、しかも動物の個体差や、ウイルスによってはすでに感染してしまっている動物も混じったりするため、実験成績も不安定になる。この欠点を補うものとして登場したのが、動物の代わりに孵化鶏卵を用いる方法である。これは1931年に、米国のグッドパスチャー(Ernest William Goodpasture)らにより発表され、その後、ウイルス研究の重要な手段となった。」

 「彼らが用いたのは、鶏痘ウイルスで、これは牛での牛痘に相当するニワトリのウイルスである。ニワトリの卵は21日で孵化するが、その途中12日前後になると、卵の殻の膜の下に漿尿膜がはっきりしてくる。これはニワトリ胎児(胚)を包む膜で、血管に富んだ組織である。この膜の上に鶏痘ウイルスを加えると、2、3日でウイルス感染した場所の組織が増殖したウイルスの作用で盛り上がり、斑点として見えてくる。」



 「この斑点の数は接種材料の中に含まれるウイルスの量を反映している。それまでは、実験動物を使って行っていたウイルス研究に、卵という単純な宿主が利用できるようになったのである。孵化鶏卵を用いる方法は、その後いろいろと改善され、多くのウイルスで利用されるようになった。現在でもインフルエンザウイルスの分離や、インフルエンザワクチンの製造には孵化鶏卵が用いられている。」

 インフルエンザワクチンの製造にはまず、100万単位のウイルスフリーの有精卵が日々用意されます。ワクチンは人体に注射するものですから、目的のインフルエンザウイルス以外にいかなる微生物も含まれていてはいけないのです。

 ウイルスフリーの無菌な有精卵を、孵卵器で11日間ほど成育させてから、卵殻に小さな穴をあけて、「將尿膜腔」にインフルエンザウイルスを注入し、その穴をふさぎます。孵卵器に戻し、3日ほど温めた後で、ウイルスの増殖した將尿液を採取します。

 採取されたウイルスを含む將尿液は、遠心分離機にかけられて、ウイルスが分離されます。分離されたウイルス全体をワクチンとして用いると(「全粒ワクチン)、無毒化しておいても不純物などで発熱などの副作用が強く現れるので、ウイルス粒子の中で感染防御に関与する部分だけを分離・精製し、感染防御に役立たない部分・副作用を起す部分を除いておきます。

 最後に、安全性と有効性を確認する試験が製造所(「北里研究所生物製剤研究所」など)と「国立感染症研究所」で二重に行われます。「無菌試験」には1か月ほどかかるようです。ワクチン内にウイルスや細菌の汚染がないかが検査されます。いかなる微生物も生存していてはいけないのです。「発熱試験」は実験動物にワクチンを注射して発熱を起こさないことの確認です。さらに、「有効性試験」で実験動物にワクチンを注射して免疫抗体を充分に作られることが確認されます。免疫を与える力が弱いと廃棄されることになります。

 インフルエンザワクチンの製造は、細心の注意を払って全行程を無菌で管理しなければならず、また、安全性と有効性の確認に何か月か要します。インフルエンザワクチンが製品になるまでには数か月に及ぶ大変な作業を経ているのです。

 新型インフルエンザワクチンの製品化が北半球が冬季に入って襲ってくるであろう新型インフルエンザの第2波の攻撃に間に合うことを願って止みません。

“USA TODAY”の記事からです。

Flu vaccine production
 Developing a vaccine to combat the swine flu strain could take months, based on current production methods. For comparison, this is how the seasonal flu vaccine is made:
January, February, March
 ■An FDA advisory panel selects three flu strains it believes will be circulating in the coming season.
 ■The FDA distributes samples, or seed virus, of the strains to the manufacturers.
 ■Seed virus is injected into chicken eggs. Each virus strain is made separately and later combined to make one vaccine.
April, May
 ■Millions of specially prepared eggs are used, each one is cleaned with a disinfectant spray and injected with one strain.
 ■Virus multiplies in incubated eggs.
 ■Virus is harvested.
June, July
 ■FDA tests for purity and potency.
 ■The strains are blended into one vaccine.
 ■FDA licenses the vaccine.
August
 ■Vaccine is filled into vials and syringes, packaged. It is kept in cold storage.
September
 ■Vaccine is shipped.
October
 ■Vaccination; imunity developes about two weeks after getting the shot.


          (この項 健人のパパ)

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 新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の世界的大流行(「パンデミック、pandemic)」の懸念が高まる中、「世界保健機関(WHO)」の緊急委員会委員を務める「国立感染症研究所」のインフルエンザウイルス研究センター長が述べています。「誰も(新型インフルエンザに対する)免疫を持っていないから流行が広がりやすく、ある程度は重症化するだろうが、基本的には、通常の(季節性の)インフルエンザと同じだろう。」「(新型インフルエンザが)いろいろな国に広がり、そこで連続した感染が広がるようになれば(警戒レベルを現在のフェーズ5から6に)引き上げられる。早ければ週明けぐらいには可能性がある。」

“USA TODAY”の2009年5月5日の記事からです。

 Experts say the next few days will determine whether the swine flu outbreak will keep expanding or if it will recede in the fashion of seasonal flu at this time of year.  (専門家の述べるところによれば、この豚インフルエンザが拡大し続けるか、季節性のインフルエンザと同様に終息するかがここ数日で決まる。)
 "What happens this coming week will be essential in determining the fate of this outbreak," says pandemic model specialist Alessandro Vespignani of Indiana University in Bloomington.  (「今週に何が起こるかが感染拡大を判断する上で不可欠だ。」とその専門家は述べている。)



 20世紀に入ってから、1918~19年、1957~58年、1968~69年と3回のパンデミックを人類は経験しています。いずれもA型インフルエンザで、第一次世界大戦中の「スペインかぜ(スペインインフルエンザ)」(H1N1亜型)、それからほぼ40年後の「アジアかぜ(アジアインフルエンザ)」(H2N2亜型)、さらにほぼ10年後の「香港かぜ(香港インフルエンザ)」(H3N2亜型)です。

 「アジアかぜ」の時間的推移を見ていきますと、1957年2月下旬に中国のある地域で流行が始まった「豚インフルエンザ」は、3月には国中に拡大し、4月中旬には香港に到達しました。香港へ到達した後、6ヶ月もたたないうちに世界中に拡大したといいます。5月の中旬には、シンガポールと日本でこのインフルエンザウイルスが分離され、WHOは世界に「パンデミック」の発生を宣言し、ウイルスサンプルは世界中のワクチン製造者に配布されていました。ワクチンはアメリカでは8月に、イギリスでは10月に、日本では11月に投与されるようになりましたが、広く使用するのは少なすぎる量だったといいます。この「アジアかぜ」による死亡者は200万人以上でした。

 それでも、死亡者4000万人以上に及んだ「スペインかぜ」と比べると20分の1ほどです。それは、(1)アジアかぜは、スペインかぜより毒性の低いウイルスによって起こった、(2)スペインかぜの死亡者の多くは細菌の二次感染による肺炎によるものであったが、アジアかぜのときは細菌性肺炎を治療する抗生物質が開発されていて投与された、(3)1933年にインフルエンザウイルスが初めて分離されて、1950年代にはワクチンが利用できた、からだといいます。

 毒性が弱くても新型インフルエンザが脅威なのは、 膨大な感染者が発生すると、医療機関の許容量を超えてしまい、医療システムそのものが破綻することです。感染者が適切な治療を受けられなくなってきます。抗生物質などの医薬品が底をつき、医療従事者も罹患(りかん)することから、患者に対応できなくなってしまいます。ワクチンもすぐには供給できないのです。アジアかぜでは、インフルエンザウイルスを分離して(5月)から、供給開始(11月)まで6か月かかっています。

 日本国内への新型インフルエンザウイルスの侵入を防ぐことはかなり難しいことと思われます。潜伏期間(今回の新型インフルエンザは最長で10日間と言われています)というものがあるからで、感染と発病の間には時間的開きがあります。感染に気付かず、ウイルスを日本国内に持ち込んでしまうことは十分にありえるのです。感染拡大を極力防ぎ、医療機関の対応能力の限界内におさめ、ワクチンの供給を待つしかありません。

 季節性インフルエンザの流行の時期を迎える南半球の国々を注視する必要がありそうです。北半球に住む我々には時間的な余裕があります。スペインかぜの時に、オーストラリアは、入国において厳密な「検疫」行い、国境を事実上封鎖して、インフルエンザウイルスの国内侵入を遅らせることができたといいます。しかし、人の流動性の高い現代では、経済に対する打撃も大きくなり、そのような手段は到底とることはできません。南半球で「感染爆発」が起こらないことを心底望みます。

 個人でできることといえば、極力人込みを避け、外出しなければならないときはマスクを適切に着用することでしょうか。海外旅行はしばらくお預けということにします。海外旅行を扱う旅行業者に不況下でも明るい兆しが見えていたのに、この新型インフルエンザの影響は大きなものになりそうです。

(追記) 本日(2009年5月6日)の“US TODAY”によると、アメリカでメキシコ国境近くに住んではいるがメキシコへの渡航暦のない30歳代のテキサス州の女性がこの「新型インフルエンザ」でなくなったそうです。持病の疾患で健康状態の優れない状態にあった女性のようです。

 State officials said a Texas woman who died this week was infected with H1N1. She is the first U.S. resident whose death has been linked to the virus. The woman was in her 30s and lived near the Mexican border, although there is no indication she had traveled to Mexico recently, says Doug McBride of the Texas Department of State Health Services. She had underlying health conditions, McBride says.

        (この項 健人のパパ)

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(参考) 「新型インフルエンザ対策行動計画」と「感染症法」とメキシコと

(参考) 新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)と宗教-豚の受難

2009年4月24日、エジプトで、毒性の強い「鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)」に感染していた女性(33)が死亡しました。鳥インフルエンザ(トリインフルエンザ、Avian influenza, bird flu)とは、A型インフルエンザウイルスが鳥類に感染して起きる「鳥類」の感染症です。

鳥インフルエンザは、「トリ」のインフルエンザであり、「ヒト」が感染するインフルエンザとは別の物です。鳥インフルエンザウイルスがヒトに直接感染する能力は低く、また感染してもヒトからヒトへの感染は起こりにくいと一般的には考えられています。この鳥インフルエンザの中には、非常に高い病原性を持つ(致死率が極めて高い)ものがあり、そのタイプ(H5N1型)を「高病原性鳥インフルエンザ」と呼んでいます。

この女性の死亡で、エジプトでは2006年に感染が初めて確認されてから、通算で死者が26人となりました。2009年に入ってからのエジプトでの感染報告数は17例で昨年の同時期の倍なのだそうです。2009年では4人目の死者となります。感染していても発症していない(「無症状感染者」)の存在も懸念されています。この数字は鳥インフルエンザ多発国のインドネシアと比べると大きな数字ではありません。インドネシアでは2008年の時点で既に100人を超えています。しかし、感染者数で世界第3位ともなると、深刻にならざるを得ません。世界保健機構(WHO)によると、2009年3月30日現在で、2003年以降で鳥インフルエンザのヒトへの感染例は次のようになります。



「鳥インフルエンザ(H5N1型)」とは、その毒性が比べ物にならないほど低い(季節性のインフルエンザの致死率は、高齢者や幼児、糖尿病患者など抵抗力の弱い人を中心に0.2%ほどと言われる)「豚インフルエンザ(H1N1型)」に関するニュースです。

毎日新聞の2009年4月29日の記事です。

 新型インフルエンザの世界的流行を受け、エジプト政府は国内で飼育されているすべての豚約20万頭の殺処分を検討している。29日の関係閣僚会議で判断する見通し。エジプトでは感染例は確認されていないが、人民議会(下院)が処分を勧告していた。一部自治体は既に独自に処分を決めている。人民議会の広報担当者によると、ソロル議長は28日、ナジフ首相への書簡で国内の豚全頭を処分すべきだとの議会勧告を実施するよう求めた。
 エジプト政府は当初、豚の人口密集地域からの移転を検討していたが、移転先の議員らから強い反発が出ていた。カイロの北に位置するカリュービーヤ県では28日に県内のすべての豚の殺処分を決定した。エジプトの一部メディアによると、実施を始めた自治体もある。イスラム教では豚は不浄の動物とされるが、エジプトではキリスト教系コプト教徒らが飼育している。エジプト政府はコプト教指導者に対しても殺処分に理解を求める方針だ。


“USA Today”の2009年4月29日の記事(Egypt orders slaughter of all pigs over swine flu)からです。

 Egypt began slaughtering the roughly 300,000 pigs in the country Wednesday as a precaution against swine flu even though no cases have been reported here, infuriating farmers who blocked streets and stoned vehicles of Health Ministry workers who came to carry out the government's order. (エジプト政府は、国中の30万頭に及ぶ豚の殺処分を開始した。現状では感染は報告されていないが、豚インフルエンザに対する予防処置として行われている。豚を飼育している農民は抵抗し、道路を封鎖して、殺処分担当職員の車両に投石している。)
 The measure was a stark expression of the panic the deadly outbreak is spreading around the world, especially in poor countries with weak public health systems. Egypt responded similarly a few years ago to an outbreak of bird flu, which is endemic to the country and has killed two dozen people. (公衆衛生が貧弱な貧困国では特に、世界的に疫病が拡大するというパニックに際して、極端な対策がとられる。エジプト政府は数年前に20数人が死亡するという鳥インフルエンザの際も同様な対策をとった。)
 At one large pig farming center just north of Cairo, scores of angry farmers blocked the street to prevent Health Ministry workers in trucks and bulldozers from coming in to slaughter the animals. Some pelted the vehicles with rocks and shattered their windshields and the workers left without killing any pigs. (カイロのすぐ北にある養豚場では、抵抗する農民が道路を封鎖してトラックやブルドーザーに乗った厚生省の役人の進入を阻み、豚の殺処分を逃れようとした。投石でフロントガラスが割れ、役人は任務を遂行できずに引き上げた。)
 "We remind Hosni Mubarak that we are all Egyptians. Where does he want us to go?" said Gergis Faris, a 46-year-old pig farmer in another part of Cairo who collects garbage to feed his animals. "We are uneducated people, just living day by day and trying to make a living, and now if our pigs are taken from us without compensation, how are we supposed to live?" (集めてきた野菜くずなどで家畜に餌を与えている農民は語っている。「ムバラク大統領は言ったじゃないか。俺らもエジプト人だと。大統領は俺らにどこへ行けというんだ。俺らに教育はない。日々ようやく暮らしていっているんだ。補償もなく豚を取り上げられたら俺たちはどうやって生きていけるというんだ。」)
 Most in the Muslim world consider pigs unclean animals and do not eat pork because of religious restrictions. One Islamic militant website carried comments Wednesday saying swine flu was God's revenge against "infidels." (イスラム世界では、殆どの者が豚を「不浄」と考えており、宗教的戒律から豚肉を食べない。急進的なイスラム教のウェブサイトには、豚インフルエンザは異教徒に対する神の報復であったと書き込まれている。)

毎日新聞の2009年5月1日の記事からです。

 新型インフルエンザの世界的流行を受けエジプト政府が決めた国内の豚全頭の殺処分を、国際獣疫事務局(OIE)や国連食糧農業機関(FAO)が批判している。現状で豚から人間への感染を示す科学的データはないため殺処分は感染予防につながらず「不適切」との内容だ。OIEは「感染監視の強化などを優先すべきだ」と指摘している。OIEは声明で殺処分への「強い反対」を表明。豚や豚肉からの感染は確認されていないとし、エジプトを含む同事務局加盟国に対し、豚の疾病監視や、豚を扱う場所での感染対策強化を行うべきだと勧告している。エジプトでは新型インフルエンザの感染例は報告されていないが、同国政府は29日、人民議会(下院)の勧告に沿う形で、国内の豚約20万頭すべての処分を決定した。一部地方自治体は独自の判断で処分を始めていた。飼育業者らからは強い反発が出ている。

毎日新聞の2009年5月4日の記事からです。

 カイロ市内で5月3日、新型インフルエンザ対策として殺処分する豚の運搬で訪れたエジプト政府関係者に対し、反発した住民らが投石、警官隊が威嚇射撃や催涙弾の発射を行い、負傷者が出た。衝突が起きた地区は貧困層住民が多く、集めたゴミで豚を飼育している。殺処分担当職員が来ると住民ら約300人が「生活の道が奪われる」などと投石を始め、警察が制圧のため発砲した。エジプトでは新型インフルエンザの感染例は未報告。政府は国内の豚すべての殺処分を決定したが、国際獣疫事務局(OIE)は「不適切」と批判した。イスラム教で不浄な動物とされる豚の飼育は、エジプトではキリスト教系コプト教徒が主に行っている。地元紙によると、同教徒の飼育業者は殺処分をやめさせるよう宗教指導者に介入を要請した。

エジプトのキリスト教系コプト教徒(Coptic Christians)の歴史は古く、1世紀に遡るといいます。しかし、キリスト教徒からイスラム教徒への改宗が進み、9世紀ころまでには少数派へと転落していったようです。現在、エジプト・エチオピアなどを中心に、コプト教徒は5000万人ほどがいるようです。エジプトでは、500万人ほどがいるようで、エジプトの人口の7%ほどになります。コプト教徒たちは都市に集まる傾向にあり、北部ではカイロ市に最も多く集中しているようです。
コプト教徒たちは伝統的に、子供への教育に熱心であり、エジプトでも重要な役割を果たす人たちを多数輩出しています。エジプトの国際法学者で、第6代国連事務総長であったブトロス・ガリ氏(Boutros Boutros-Ghali、Butrus Butrus Ghālī)がコプト教徒であったことは有名です。ブトロスという名前自体がイエス・キリストに従った使徒たちのリーダー「ペトロ(Saint Peter、Saint Pierre、Simon Petrus)」に由来しています。

毒性はそれほど強くなく、その感染力も現在のところ大きくはない新型インフルエンザに過剰に反応することで、イスラム教とキリスト教、同じキリスト教徒内の富める者と富まざる者、先進国と発展途上国の亀裂を浮き彫りにしようとしています。この新型インフルエンザは、望まないことですが、やがて季節性のインフルエンザになって、この事態は終息していくのでしょうが、浮き彫りになった亀裂は解消されることなく、社会不安を招きかねません。冷静に行動することを望むところです。

        (この項 健人のパパ)

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2009年2月17日に「新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザに関する関係省庁対策会議」が開催され、「新型インフルエンザ対策行動計画」が改定されました。この「対策行動計画」は、新型インフルエンザ対策を迅速かつ確実に講じるため、「WHO Global Influenza Preparedness Plan(WHO 世界インフルエンザ事前対策計画)」に準じて、2005年12月に策定され、幾度かの改定を経ています。

さらに、2008年4月に、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び検疫法の一部を改正する法律」が成立し、水際対策など新型インフルエンザ対策の強化が図られています。

検疫法の条文を挙げてみましょう。

(目的)
第1条  この法律は、国内に常在しない感染症の病原体が船舶又は航空機を介して国内に侵入することを防止するとともに、船舶又は航空機に関してその他の感染症の予防に必要な措置を講ずることを目的とする。

(検疫感染症)
第2条  この法律において「検疫感染症」とは、次に掲げる感染症をいう。
1 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に規定する一類感染症
2 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に規定する新型インフルエンザ等感染症
3 前2号に掲げるもののほか、国内に常在しない感染症のうちその病原体が国内に侵入することを防止するためその病原体の有無に関する検査が必要なものとして政令で定めるもの

(隔離)
第15条  前条第1項第1号に規定する隔離は、次の各号に掲げる感染症ごとに、それぞれ当該各号に掲げる医療機関に入院を委託して行う。ただし、緊急その他やむを得ない理由があるときは、当該各号に掲げる医療機関以外の病院又は診療所であって検疫所長が適当と認めるものにその入院を委託して行うことができる。
一  第2条第1号に掲げる感染症 特定感染症指定医療機関又は第一種感染症指定医療機関
二  第2条第2号に掲げる感染症 特定感染症指定医療機関、第一種感染症指定医療機関又は第二種感染症指定医療機関
2  検疫所長は、前項の措置をとつた場合において、第2条第1号又は第2号に掲げる感染症の患者について、当該感染症の病原体を保有していないことが確認されたときは、直ちに、当該隔離されている者の隔離を解かなければならない。


感染症法(「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」)の第7章(「新型インフルエンザ等感染症」)の条文も挙げておきましょう。第44条の2から第44条の5と全4条から成ります。

(新型インフルエンザ等感染症の発生及び実施する措置等に関する情報の公表)
第44条の2 -略-

(感染を防止するための協力)
第44条の3 都道府県知事は、新型インフルエンザ等感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者に対し、当該感染症の潜伏期間を考慮して定めた期間内において、当該者の体温その他の健康状態について報告を求めることができる。
2  都道府県知事は、新型インフルエンザ等感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、前項の規定により報告を求めた者に対し、同項の規定により定めた期間内において、当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の当該感染症の感染の防止に必要な協力を求めることができる。
3  前2項の規定により報告又は協力を求められた者は、これに応ずるよう努めなければならない。
4  都道府県知事は、第2項の規定により協力を求めるときは、必要に応じ、食事の提供、日用品の支給その他日常生活を営むために必要なサービスの提供又は物品の支給に努めなければならない。
5  都道府県知事は、前項の規定により、必要な食事の提供等を行った場合は、当該食事の提供等を受けた者又はその保護者から、当該食事の提供等に要した実費を徴収することができる。

(建物に係る措置等の規定の適用)
第44条の4 -略-

(新型インフルエンザ等感染症に係る経過の報告)
第44条の5 -略-




「新型インフルエンザ対策行動計画」によると、新型インフルエンザの海外での発生は確認されているが、国内での発生がない現時点での「行動」は、「海外発生期」として規定されています。この段階では、ウイルスの国内侵入をできるだけ阻止することを目的とした行動が取られます。すでに行動計画に沿って、「検疫」など水際対策の強化が図られています。これを「新型インフルエンザ対策行動計画」の記述からみてみましょう。

【第一段階】海外発生期
目的:
 1)ウイルスの国内侵入をできるだけ阻止する。
 2)国内発生に備えて体制の整備を行う。
主な対策:
 1)海外での発生状況に関する継続的な情報収集及び国内外の関係機関との情報共有を進める。
 2)発生国に滞在する在外邦人に対して必要な情報を速やかに伝達し、退避・帰国支援等必要な支援を行う。
 3)新型インフルエンザ発生地への渡航自粛、航空機・旅客船の運航自粛等によりウイルス侵入のリスクを軽減する。
 4)感染地域からの入国便に対して検疫を行う空港・海港を集約するとともに、入国者に対する健康監視・停留等の措置を強化する。
 5)発生国からの外国人の入国を制限するために、査証審査の厳格化や査証発給の停止の査証措置をとる。


「発生国からの外国人の入国を制限するために、査証審査の厳格化や査証発給の停止の査証措置をとる。」という行動計画に基づいて、日本政府は来日するメキシコ人の査証免除を4月29日から一時的に停止しました。これに対して、メキシコ外務省は不快感を示しているといいます。しかし、メキシコが属するラテンアメリカのアルゼンチンやキューバ、エクアドル、ペルーも、新型インフルエンザの発生を受けて、メキシコ便の受け入れを停止しているのです。

5月1日、上海経由で香港入りしたメキシコ人男性が新型インフルエンザに感染していることが判明したことから、中国政府はメキシコ発上海行きの航空便受け入れを停止させました。

これを受けて、北京のメキシコ大使館関係者によると、中国国内でメキシコ人約70人が新型インフルエンザの症状がないにもかかわらず、「隔離」されているそうです。このうち北京のホテルに10人が隔離され、メキシコ大使館関係者の面会が拒否されているといいます。これは過剰反応のような気がします。

メキシコ外相は5月2日の会見で、「症状のないメキシコ人が受け入れがたい環境に隔離された。科学的根拠もない人権侵害は正当化できない」と中国を強く非難し、中国当局に不当な扱いを受けるとして、中国への渡航を避けるようメキシコ国民に呼びかけたそうです。

新型インフルエンザの発生源であり、感染者が最も多いメキシコは、外交において他国と摩擦を抱える事態になっています。メキシコ経済に大きな影響のあることでしょう。日本は国内へのこの新型インフルエンザウィルスの侵入を防ぎ、国内での爆発的な感染拡大を阻止しないと、この新型インフルエンザの毒性が低いもので人類に対する大きな脅威にならないとしても、輸出に大きく依存する日本経済に対する大きな脅威となってしまいます。

        (この項 健人のパパ)

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「香港灣仔軒尼詩道41-49号(41-49 Hennessy Road, Wanchai, Hong Kong)」にある「メトロパーク・ホテル・ワンチャイ(Metropark Hotel Wanchai、灣仔維景酒店)」は、旧のニュー・ハーバー・ホテル(New Harbour Hotel)で、数10億ドルをかけて改装されたばかりでした。MTR灣仔駅から徒歩5分ほどのところに建つ16階建て全173室の4つ星のホテルです。

メキシコ人男性(25)が4月30日早朝、アエロメヒコ航空(AeroMexico)機でメキシコ市から上海に到着、中国東方航空機に乗り換えて香港入りしました。上海経由時の検疫では、異常は発見されなかったといいます。 ところが、香港到着後に発熱し、5月1日夜に病院で診察を受けた結果、新型インフルエンザ感染が確認されることになります。男性は友人2人と旅行しており、香港人男性1人とも接触していました。この3人は「濃厚接触者("close contact")」とされ、病院で検査を受けることになります。

「濃厚な接触」とは、同じ家に居住するような近接した対人関係を言い、(1)キス、抱擁、1m以内という距離での会話(kissing or embracing, close conversation (within 3 feet))、(2)食器などを共用するような飲食(sharing eating or drinking utensils)、(3)医療現場での診察(physical examination)が例に挙げられています。「サーズ(SARS、Severe Acute Respiratory Syndrome、重症急性呼吸器症候群)」が香港で約300人という死者を出したときに、アメリカ疾病予防管理センター(CDC、Centers for Disease Control and Prevention)が例示しています。

罹患者(感染者)の脇を歩いて通ることや待合室などで短時間だけ感染者の向かいに座ること(activities such as walking by a person or briefly sitting across a waiting room or office)は、「濃厚な接触」に含まれないといいます。感染者の2メートル以内に近づいた者を「高リスク接触者」と、同じ建物や交通機関にいただけの者を「低リスク接触者」と分けることもあるようです。

中国政府は5月2日、上海経由で香港を訪れたメキシコ人男性(25)の新型インフルエンザ感染が確認されたことを受けて、(1)メキシコ発上海行きのアエロメヒコ航空(AeroMexico)機の受け入れを停止することを決め、(2)この男性が利用した航空機便(メキシコ-上海間のアエロメヒコ航空、上海-香港間の中国東方航空)の搭乗客を調査し、男性の近くに座っていた乗客を隔離して健康状態を1週間観察することにし、(3)感染者が宿泊していた「メトロパーク・ホテル・ワンチャイ」は、防護服にマスク姿の衛生当局者や警察官によって封鎖作業が行われた、そうです。

衛生当局がホテルを封鎖した結果、日本人旅行者8人を含む宿泊客と従業員300人ほどがホテルで「隔離」されることになってしまいました。この封鎖は1週間続く見通しで、その間、健康状態の経過観察が行われるようです。

この新型インフルエンザは、米国ではほとんどの感染者が軽症で、毎年流行する季節性のインフルエンザと同じ「気道症状」(肺炎を起こすまでには至らない)にとどまり、タミフルなどの治療薬を投与しなくても回復しているということから、感染者数が今後増加しても、多くが軽症ですみ「重症例は少ない」可能性が高いとされています。ウイルスの性質についても米国の疫学調査から「弱毒性」と判断されたようです。季節性のインフルエンザの致死率は、抵抗力の弱い高齢者や幼児を中心に0.2%ほど。適切な治療がなされれば、極端に恐れる必要はありません。

しかし、世界保健機関(WHO)の当局者が5月1日に示した見解によると、感染が広がる新型インフルエンザに対して、従来の季節性インフルエンザのワクチンがほとんど効力を持たないのだそうです。新型インフルエンザウイルスが、毎年冬に流行する「Aソ連型」ウイルスと似たタイプ(H1N1亜型)のため、ワクチンが効力を持つとの期待もあったのですが、残念です。新型インフルエンザに対する免疫を「ヒト」はまだ獲得していないため、ワクチンが感染拡大を最小限にできます。

新型インフルエンザのワクチンの供給体制が整うまでには半年以上かかるようで、このインフルエンザに罹ったとしても多くは軽症で済むのですが、「隔離」という事態は防がねばなりません。「濃厚接触者」として扱われることも防がねばなりません。

やはり、この事態が沈静化するまでは海外旅行を控え、次の旅行の目的地の情報を収集しているより方法はないようです。

          (この項 健人のパパ)

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人は呼吸をする(吸気)と、空気が鼻や口から入り、のど(咽頭)を通って肺に達します。この空気の通り道を「気道」と言います。気道は大きく2つ、上気道と下気道に分けられ、鼻腔から咽頭・喉頭(声帯のある部分)までの部分が「上気道」です。この上気道部分にライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルスといったウィルスが感染し、増殖すると喉痛(咽頭炎)、咳、くしゃみといった「風邪症状」が現れます。

インフルエンザウィルスも、この上気道の粘膜で増殖するウィルスです。インフルエンザ罹患者の咳やくしゃみなどによって飛散する体液の粒子(飛沫)にはウィルスが乗っています。インフルエンザウィルスは、この飛沫を移動の乗り物としているのです。罹患者がマスクをしている場合、この飛沫が飛散することなく、その多くはマスクの内側の繊維に付着してインフルエンザウィルスの感染という悪意ある試みは失敗に終わります。

「風邪症状」が現れたと思ったら、他人への感染を防ぐため、マスクを着用するという配慮を常識にしてもらいたいものです。西欧人にはマスクを着用することに抵抗感があるようで、街中でマスクをしている人を見かけることはほとんどありません。マスクをしている人は感染性の呼吸器炎症の「重病患者」であると考えるようです。しかし、私たち日本人には「花粉症対策」でマスクをかける人も多くなって、マスク姿に違和感を感じなくなってきています。ぜひ、「風邪症状」が現れたら、マスクを適切にかけてください。

日本では、成田などの国際空港で、新型インフルエンザ発生国からの帰国者や入国者にたいして、「検疫」を行っています。風邪症状のある人やインフルエンザは発熱という症状を伴うことから、熱のある人の喉や鼻の粘膜を採取して、「迅速診断キット」を用い、約15分で診断を行います。

「迅速診断キット」は、インフルエンザウイルスが持つ蛋白質(抗原)を調べ、ウイルスタイプがA型かB型かを区別する診断器具で、新型インフルエンザウィルスであることを判別することはできません。Aソ連型、A香港型といったA型のインフルエンザウイルスへの感染を確認するにとどまります。

A型インフルエンザウィルスへの感染が確認されると、まず「隔離」され、感染の拡大を防ぐため、他人との接触が禁止されます。次に、ウイルスの型の解析をしやすくするために、PCR法を用いて、採取した試料にごく少量含まれるウィルスの遺伝子の断片を次々に複製し、増幅させます。

PCR法(Polymerase Chain Reaction、ポリメラーゼ・チェーン・リアクション、ポリメレース・チェーン・リアクション)は、ポリメラーゼという酵素を使って、特定の遺伝子の断片を次々に複製し、増幅させる方法で、それに要する時間が2時間程度と短いようです。

複製・増幅が完了すると、ウイルスの粒子表面にあるヘマグルチニン(赤血球凝集素、haemagglutinin、HA)の型の判別が行われます。HAは現在16種類の型があるようです。新型インフルエンザウィルスは、H1という型に分類され、A香港型はH3に分類されます。

米国から帰国した名古屋市のトヨタ自動車社員が、「迅速診断キット」の診断結果から新型インフルエンザへの感染を疑われましたが、H3に陽性反応がでたことから、「A香港型」への感染であり、通常のインフルエンザ治療が施されることになりました。

同じように、新型インフルエンザの「疑い」とされた横浜市の男子高校生は、H3に陰性の反応が出て、新型インフルエンザの可能性が出てきました。しかし、結果は「Aソ連型」に感染していることが判明し、これも通常のインフルエンザ治療ということになりました。新型インフルエンザとAソ連型インフルエンザのウイルスは、ともにH1型なのです。彼の場合、接触者が多く、新型インフルエンザであったとしたら、「二次感染」(日本国内での感染の広がり)という事態を引き起こしかねませんでした。

しかし、韓国では「二次感染」が疑われる事例が発生したといいます。「濃厚接触者」に新型インフルエンザへの感染が疑われているのです。その女性(44)は、4月26日、仁川国際空港に帰国した新型インフルエンザ罹患者と現状では推定されている韓国人の修道女(51)を車で迎えに行き、宿舎である共同施設で4月28日まで共に過ごし、インフルエンザの症状が現れたといいます。(追記:韓国政府は5月2日になって、メキシコから帰国した韓国人女性が新型インフルエンザに感染していたことを確認したと発表しました。)

日本の「水際作戦」は、現在までのところ、うまく行っているようです。「検疫」の網をすり抜けて、新型インフルエンザが日本国内に持ち込まれないことを強く願っています。いずれは、「Aメキシコ型」(「A北米型」?)として、好ましいことではありませんが、季節性のインフルエンザの仲間入りをするとしても、ワクチンの製造が軌道に乗ってからにしてもらいたいものです。

            (この項 健人のパパ)

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 インフルエンザの「簡易検査」では、A型か否かの判断しかできません。海外渡航暦が直近にあり、渡航先の地域で新型インフルエンザの感染者がいて、その簡易検査で陽性になれば、一旦「隔離」されることになります。

 4月30日にアメリカからノースウエスト機で成田空港に帰国した日本人女性(25)が、機内のインフルエンザの簡易検査で陽性反応が出たため、特定感染症指定医療機関に指定されている千葉県成田市の成田赤十字病院に運ばれ隔離されていました。彼女の座っていた座席周辺の乗客も「濃厚接触者」としての扱いを受けることになりました。感染の拡大を防ぐために「濃厚接触者」も移動が大きく制限されます。

 5月1日、女性は「PCR法」で複製・増幅したウイルスの遺伝子検査の結果、季節性インフルエンザのA香港型(H3N2型、新型インフルエンザはH1N1型)だったといいます。「濃厚接触者」の移動制限も解除されたことでしょう。感染の拡大を防ぐために必要な処置ですが、海外旅行中にこのような事態に巻き込まれると非常に辛い立場に置かれます。

 この状況が沈静化するまでは、海外旅行を控えた方がいいのでしょうか。

(追記) インフルエンザ感染の特徴は、「高熱」を出すことです。2009年5月20日に「国立感染症研究所感染症情報センター(IDSC、Infectious Disease Surveillance Center)」は「2009年5月19日現在の神戸市における新型インフルエンザの臨床像(暫定報告)」という報告を出しています。その中から、いくつか情報を拾ってみましょう。

 43例の入院時の臨床像は以下のようなものである。約90%に38℃以上の高熱を認めた。60~80%の頻度で挙げられた症状は倦怠感、熱感、咳、咽頭痛であった。鼻汁・鼻閉、頭痛は約半数において認められた。嘔吐や下痢の消化器症状は約10%弱に、結膜炎は7%に認められた。

 このことから判断すると、今回の「インフルエンザA」は、(1)38℃以上の高熱、(2)からだのだるさ、(3)咳、(4)のどの痛み を特徴とするといっていいようです。鼻水、鼻づまり、頭痛は必ずしも伴わず、ごく稀に嘔吐や下痢をする場合もあるというところでしょうか。季節性のインフルエンザと症状に変わりがないですから、今回の「インフルエンザA」と「季節性のインフルエンザ」との識別は、ウイルスの遺伝子検査をしないと判明しないことになります。(追記部分終わり)

 横浜市に住む高校生(17)は、新型インフルエンザの感染者が発見されたカナダのブリティッシュコロンビア州に4月25日まで修学旅行に行っていました。帰国後、インフルエンザの症状である、発熱、咳、痰の症状が出ていたといいます。

 この高校生は簡易検査でインフルエンザA型の陽性反応が出たことから、現在は感染症専門の施設で治療を受けているようです。ウイルスの遺伝子検査が行われ、新型インフルエンザか季節性インフルエンザかの結果判明には1日程度かかります。

 記者会見した舛添厚労相は、「新型インフルエンザということであれば、対応が遅れてはならない。早期に発見し、治療すればタミフル、リレンザの投与で治る。大事を取りたいと思っている。正確な情報をお知らせするので、落ち着いて行動していただきたい。(新型インフルが)判明したわけではない。」と語っています。

 新型インフルエンザウィルスは、現在知るところでは毒性も弱く、季節性のインフルエンザウィルスと対処方法に変わるところはありません。でも、私たちは、不要不急な外出を控えて、人との接触を避けて行動するしかありません。経済活動が停滞して不況にある世界経済にあって、この状況は大きなマイナスです。積極的に行動したい、でも自分が新型インフルエンザウィルスを撒き散らすことはしたくはない、難しい状況に置かれています。

 次の旅行の目的地をどこにするか、その国の政治状況、経済状況、治安、インフルエンザ感染情報、、、調べることは多くあり、休みの日は家に籠もって、パソコンに向き合う日々になってしまっています。

        (この項 健人のパパ)

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