POWERFUL MOMが行く!
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(参考) 「新型インフルエンザ対策行動計画」と「感染症法」とメキシコと

(参考) 新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)と宗教-豚の受難

2009年4月24日、エジプトで、毒性の強い「鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)」に感染していた女性(33)が死亡しました。鳥インフルエンザ(トリインフルエンザ、Avian influenza, bird flu)とは、A型インフルエンザウイルスが鳥類に感染して起きる「鳥類」の感染症です。

鳥インフルエンザは、「トリ」のインフルエンザであり、「ヒト」が感染するインフルエンザとは別の物です。鳥インフルエンザウイルスがヒトに直接感染する能力は低く、また感染してもヒトからヒトへの感染は起こりにくいと一般的には考えられています。この鳥インフルエンザの中には、非常に高い病原性を持つ(致死率が極めて高い)ものがあり、そのタイプ(H5N1型)を「高病原性鳥インフルエンザ」と呼んでいます。

この女性の死亡で、エジプトでは2006年に感染が初めて確認されてから、通算で死者が26人となりました。2009年に入ってからのエジプトでの感染報告数は17例で昨年の同時期の倍なのだそうです。2009年では4人目の死者となります。感染していても発症していない(「無症状感染者」)の存在も懸念されています。この数字は鳥インフルエンザ多発国のインドネシアと比べると大きな数字ではありません。インドネシアでは2008年の時点で既に100人を超えています。しかし、感染者数で世界第3位ともなると、深刻にならざるを得ません。世界保健機構(WHO)によると、2009年3月30日現在で、2003年以降で鳥インフルエンザのヒトへの感染例は次のようになります。



「鳥インフルエンザ(H5N1型)」とは、その毒性が比べ物にならないほど低い(季節性のインフルエンザの致死率は、高齢者や幼児、糖尿病患者など抵抗力の弱い人を中心に0.2%ほどと言われる)「豚インフルエンザ(H1N1型)」に関するニュースです。

毎日新聞の2009年4月29日の記事です。

 新型インフルエンザの世界的流行を受け、エジプト政府は国内で飼育されているすべての豚約20万頭の殺処分を検討している。29日の関係閣僚会議で判断する見通し。エジプトでは感染例は確認されていないが、人民議会(下院)が処分を勧告していた。一部自治体は既に独自に処分を決めている。人民議会の広報担当者によると、ソロル議長は28日、ナジフ首相への書簡で国内の豚全頭を処分すべきだとの議会勧告を実施するよう求めた。
 エジプト政府は当初、豚の人口密集地域からの移転を検討していたが、移転先の議員らから強い反発が出ていた。カイロの北に位置するカリュービーヤ県では28日に県内のすべての豚の殺処分を決定した。エジプトの一部メディアによると、実施を始めた自治体もある。イスラム教では豚は不浄の動物とされるが、エジプトではキリスト教系コプト教徒らが飼育している。エジプト政府はコプト教指導者に対しても殺処分に理解を求める方針だ。


“USA Today”の2009年4月29日の記事(Egypt orders slaughter of all pigs over swine flu)からです。

 Egypt began slaughtering the roughly 300,000 pigs in the country Wednesday as a precaution against swine flu even though no cases have been reported here, infuriating farmers who blocked streets and stoned vehicles of Health Ministry workers who came to carry out the government's order. (エジプト政府は、国中の30万頭に及ぶ豚の殺処分を開始した。現状では感染は報告されていないが、豚インフルエンザに対する予防処置として行われている。豚を飼育している農民は抵抗し、道路を封鎖して、殺処分担当職員の車両に投石している。)
 The measure was a stark expression of the panic the deadly outbreak is spreading around the world, especially in poor countries with weak public health systems. Egypt responded similarly a few years ago to an outbreak of bird flu, which is endemic to the country and has killed two dozen people. (公衆衛生が貧弱な貧困国では特に、世界的に疫病が拡大するというパニックに際して、極端な対策がとられる。エジプト政府は数年前に20数人が死亡するという鳥インフルエンザの際も同様な対策をとった。)
 At one large pig farming center just north of Cairo, scores of angry farmers blocked the street to prevent Health Ministry workers in trucks and bulldozers from coming in to slaughter the animals. Some pelted the vehicles with rocks and shattered their windshields and the workers left without killing any pigs. (カイロのすぐ北にある養豚場では、抵抗する農民が道路を封鎖してトラックやブルドーザーに乗った厚生省の役人の進入を阻み、豚の殺処分を逃れようとした。投石でフロントガラスが割れ、役人は任務を遂行できずに引き上げた。)
 "We remind Hosni Mubarak that we are all Egyptians. Where does he want us to go?" said Gergis Faris, a 46-year-old pig farmer in another part of Cairo who collects garbage to feed his animals. "We are uneducated people, just living day by day and trying to make a living, and now if our pigs are taken from us without compensation, how are we supposed to live?" (集めてきた野菜くずなどで家畜に餌を与えている農民は語っている。「ムバラク大統領は言ったじゃないか。俺らもエジプト人だと。大統領は俺らにどこへ行けというんだ。俺らに教育はない。日々ようやく暮らしていっているんだ。補償もなく豚を取り上げられたら俺たちはどうやって生きていけるというんだ。」)
 Most in the Muslim world consider pigs unclean animals and do not eat pork because of religious restrictions. One Islamic militant website carried comments Wednesday saying swine flu was God's revenge against "infidels." (イスラム世界では、殆どの者が豚を「不浄」と考えており、宗教的戒律から豚肉を食べない。急進的なイスラム教のウェブサイトには、豚インフルエンザは異教徒に対する神の報復であったと書き込まれている。)

毎日新聞の2009年5月1日の記事からです。

 新型インフルエンザの世界的流行を受けエジプト政府が決めた国内の豚全頭の殺処分を、国際獣疫事務局(OIE)や国連食糧農業機関(FAO)が批判している。現状で豚から人間への感染を示す科学的データはないため殺処分は感染予防につながらず「不適切」との内容だ。OIEは「感染監視の強化などを優先すべきだ」と指摘している。OIEは声明で殺処分への「強い反対」を表明。豚や豚肉からの感染は確認されていないとし、エジプトを含む同事務局加盟国に対し、豚の疾病監視や、豚を扱う場所での感染対策強化を行うべきだと勧告している。エジプトでは新型インフルエンザの感染例は報告されていないが、同国政府は29日、人民議会(下院)の勧告に沿う形で、国内の豚約20万頭すべての処分を決定した。一部地方自治体は独自の判断で処分を始めていた。飼育業者らからは強い反発が出ている。

毎日新聞の2009年5月4日の記事からです。

 カイロ市内で5月3日、新型インフルエンザ対策として殺処分する豚の運搬で訪れたエジプト政府関係者に対し、反発した住民らが投石、警官隊が威嚇射撃や催涙弾の発射を行い、負傷者が出た。衝突が起きた地区は貧困層住民が多く、集めたゴミで豚を飼育している。殺処分担当職員が来ると住民ら約300人が「生活の道が奪われる」などと投石を始め、警察が制圧のため発砲した。エジプトでは新型インフルエンザの感染例は未報告。政府は国内の豚すべての殺処分を決定したが、国際獣疫事務局(OIE)は「不適切」と批判した。イスラム教で不浄な動物とされる豚の飼育は、エジプトではキリスト教系コプト教徒が主に行っている。地元紙によると、同教徒の飼育業者は殺処分をやめさせるよう宗教指導者に介入を要請した。

エジプトのキリスト教系コプト教徒(Coptic Christians)の歴史は古く、1世紀に遡るといいます。しかし、キリスト教徒からイスラム教徒への改宗が進み、9世紀ころまでには少数派へと転落していったようです。現在、エジプト・エチオピアなどを中心に、コプト教徒は5000万人ほどがいるようです。エジプトでは、500万人ほどがいるようで、エジプトの人口の7%ほどになります。コプト教徒たちは都市に集まる傾向にあり、北部ではカイロ市に最も多く集中しているようです。
コプト教徒たちは伝統的に、子供への教育に熱心であり、エジプトでも重要な役割を果たす人たちを多数輩出しています。エジプトの国際法学者で、第6代国連事務総長であったブトロス・ガリ氏(Boutros Boutros-Ghali、Butrus Butrus Ghālī)がコプト教徒であったことは有名です。ブトロスという名前自体がイエス・キリストに従った使徒たちのリーダー「ペトロ(Saint Peter、Saint Pierre、Simon Petrus)」に由来しています。

毒性はそれほど強くなく、その感染力も現在のところ大きくはない新型インフルエンザに過剰に反応することで、イスラム教とキリスト教、同じキリスト教徒内の富める者と富まざる者、先進国と発展途上国の亀裂を浮き彫りにしようとしています。この新型インフルエンザは、望まないことですが、やがて季節性のインフルエンザになって、この事態は終息していくのでしょうが、浮き彫りになった亀裂は解消されることなく、社会不安を招きかねません。冷静に行動することを望むところです。

        (この項 健人のパパ)

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