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 生物の分類における階級のひとつに「綱(class)」があります。生物は、域、界、門、綱、目、科、属、種と分類されていきます。「細菌(真正細菌、bacteria、バクテリア)」の綱の一つに「モリクテス綱(Mollicutes、中国語:柔膜菌綱)」があります。この綱の特徴は、細胞壁がないことで、細胞膜がじかに外環境と接しています。そのことから、ラテン語で「柔らかい皮膚(mollis「柔らかい( "soft" or "pliable")」 +cutis「皮膚("skin")」)」を意味する“mollictes”(モリクテス、モリキューテス、モリカテス)と名付けられています。

 細菌域、細菌界、テネリクテス門(Tenericutes、中国語:柔膜菌門)、モリクテス綱は、「マイコプラズマ目(Mycoplasmatales)」、「エントモプラズマ目( Entomoplasmatales)」、「アコレプラズマ目(Acholeplasmatales)」、「アナエロプラズマ目(Anaeroplasmatales)」、「ハロプラズマ目(Haloplasmatales)」に分類されます。

 「マイコプラズマ科(Mycoplasmataceae)」、「マイコプラズマ属(Mycoplasma)」には、100以上の「種(species)」があります。Mycoplasma gallisepticum、Mycoplasma genitalium、Mycoplasma hominis、Mycoplasma hyopneumoniae、Mycoplasma laboratorium、Mycoplasma ovipneumoniae、Mycoplasma pneumoniae などです。この中で、「マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae、肺炎マイコプラズマ)」は人に悪さをし、肺に炎症を惹き起します。これを「マイコプラズマ肺炎」といいます。

 12月4日(日)配信の産経新聞の記事からです。

 「マイコプラズマ肺炎」が流行している。国立感染症研究所によると、11月14~20日の受診患者数が1定点医療機関当たり1.26人となり、調査を開始した平成11年以降、過去最多となった。患者の8割が14歳以下と小児に多い。高齢者は重症化しやすく、有効なワクチンがないことから、手洗い、うがいなどの感染予防を呼びかけている。

 同肺炎は、せきやくしゃみを介してマイコプラズマという病原体が体内に入り込むことで感染する。潜伏期間が2~3週間と、インフルエンザなど他の呼吸器疾患に比べて長い。最初は発熱や全身倦怠、頭痛などの症状があり、その後は乾いたせきが出ることが多い。せきは3~4週間近く続くこともある。

 国立感染症研究所が全国500カ所の定点医療機関を調べた結果、今年は患者数が6月下旬以降、過去と比べて最も多い状態が継続。累積患者数も、11月に入った時点で、すでに過去最多だった昨年の年間患者数を上回っている。




 マイコプラズマ・ニューモニエは体内に侵入すると、粘膜表面の細胞の外で増殖を開始し、上気道(咽頭、喉頭など)や下気道(気管、気管支、細気管支、肺胞など)の粘膜上皮を破壊します。そのために、粘膜が剥離したり、潰瘍ができたりすることになります。症状は、発熱、全身倦怠、頭痛などで始まります。そののち、3~5日で痰を伴わない咳(「乾性咳嗽(かんせいがいそう)」、「空咳(からせき)」)が出始めます。

 マイコプラズマは、台湾では「黴漿菌(ばいしょうきん、mei jiang jun、2-1-1声)」(大陸では、「支原体(zhi yuan ti、1-2-3声)」)と呼ばれます。“mycoplasma”という命名は、「黴(かび、fungus)」を意味するギリシア語の“mykes ”に「鋳型で作られた物(something molded) 」を意味する“plasma”を組み合わせたものです。「黴菌(ばいきん)」という語の間に「漿(plasma)」という語を挟み込んだ台湾での呼称は、命名法に忠実に漢字に変換しています。

 乾性咳嗽で始まる「肺炎マイコプラズマ」が原因の咳は、経過するに従い、徐々に強くなり、熱が引いた後にも3~4週間という長い期間続くといいます。その頃には、痰を伴う「湿性咳嗽」となっていることが多いようです。喘息様気管支炎を呈することは比較的多く、急性期には5人に2人ほどに「喘鳴(ぜんめい、ぜーぜーという呼吸」が認められるそうです。



 マイコプラズマ肺炎の治療は、「抗生物質(antibiotics)」による化学療法で行なわれます。抗生物質とは、細菌を殺したり、その増殖を抑制したりする働きのある物質です。しかし、ペニシリンなどのβ-ラクタム系抗生物質は、細菌特有の細胞壁合成酵素を阻害することで、抗菌作用を待つことから、細胞壁を持たない「マイコプラズマ」には何の効果もありません。

 マイコプラズマ肺炎に用いられる抗生物質は、「エリスロマイシン (erythromycin) 」、「クラリスロマイシン(clarithromycin)」などのマクロライド系抗生物質です。この抗生物質は、細菌のリボゾームの一定部分に結合して、細菌のタンパク合成を阻害して、増殖を抑制します。

 12月11日(日)配信の「女性自身」からの記事です

 今年に入り、マイコプラズマに感染した子どもが急増。かつては4年に1度流行る“オリンピック病”ともいわれたが、新薬の開発により90年代に入ると罹患者は激減。なりを潜めた病気のはずだったが……。

 「マイコプラズマは細菌で、ウイルスと違い一生に何度も発症することがあります。そのため、耐性菌が増えていき、マイコプラズマ肺炎の特効薬である『クラリスロマイシン』などが効かない人も現れ、入院するケースも増えています。」そう話すのは、マイコプラズマ学会理事で、札幌徳洲会病院小児科の成田光生先生。特効薬も効かない、いわば“ハイパーマイコプラズマ肺炎”が出現しているというのだ。

 咳と高熱が長続きし、肺炎を引き起こして感染を疑われることの多いマイコプラズマ。一般的なマイコプラズマ感染者は、症状として通常の風邪とは異なり、鼻水はほとんど出ず、痰のからまない乾いた咳がしつこく続くのが特徴。潜伏期間は2~3週間と長いが、実は肺炎など重症化することなく、自然に治ることも少なくないという。しかし、この自覚症状のない場合が実は厄介で、知らないうちにマイコプラズマを幼稚園などでまき散らしているケースもあるという。


 今年(2011年)のマイコプラズマ肺炎の大きな全国流行は、1984年(ロサンゼルスオリンピックがあった年)と1988年(ソウルオリンピックがあった年)に大きな流行があって以来となります。罹患年齢は幼児期、学童期、青年期が中心で、病原体分離例でみると7~8歳(小学校低学年)にピークがあるそうです。感染は、感染患者からの飛沫感染や接触感染によりますが、感染が広がるには、濃厚接触が必要と考えられています。

 「濃厚接触者」とは、具体的には(1)罹患者と同居する者、(2)罹患者の診察、処置等にマスク等の装着なしに直接携わった医療関係者、(3)手で触れること、会話することができるような距離で、罹患者と対面で会話等の接触のあった者などをいいます。学校などでの短時間での暴露によって、感染が拡大する可能性は高くはなく、友人間での濃厚接触が感染拡大には必要だといわれています。

 肺炎マイコプラズマへの感染を防ぐ特異的な予防方法はないので、流行期には手洗い、うがいなどの一般的な予防方法の励行をして、ひどく「咳」をしているなどの感染をしている可能性のある人との濃厚な接触を避けることです。マイコプラズマ肺炎の流行する時期はインフルエンザの流行する時期と重なりますので、インフルエンザへの感染予防をしているとよいのでしょう。

                  (この項 健人のパパ)

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