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 赤血球に含まれる「ヘモグロビン」の構成物の一つにヘムがあり、その分解代謝物にビリルビンがあります。ビリルビンは、胆汁や尿から排出されますが、異常に濃度が上昇することがあり、それは何らかの疾病への罹患を意味しています。ビリルビンの濃度が上昇して、眼球や皮膚といった組織や体液が黄色く染まった状態を「黄疸(おうだん。jaundice、ジョーンディス)」といいます。

 黄熱(yellow fever)は、発熱を伴い、重症患者に黄疸が見られることから、「黄」+「熱」と命名されています。黄熱は、黄熱ウイルス (yellow fever virus) を病原体とする感染症で、黄熱ウイルスは、フラビウイルス科(Flaviviridae)のフラビウイルス属(Flavivirus)に属します。この学名の由来は、黄熱ウイルスにちなんでおり、ラテン語の“flavus”(フラーウゥス)は、黄色または橙色の意味です。

 大豆などに含まれ、女性ホルモンの「エストロゲン」と似たような作用を持つといわれている「イソフラボン (isoflavone)」にも、“flavo-”という語幹が含まれています。また、植物体を太陽の紫外線から守る役割をしており、黄色などを発色させる植物色素に「フラボン (flavone)」がありますが、これにも“flavo-”という語幹が含まれています。

 話しを戻しますが、フラビウイルス属には、黄熱ウイルス以外に、日本脳炎ウイルス(Japanese encephalitis virus)やウエストナイルウイルス(west Nile virus、西ナイルウイルス)があります。このいずれもが蚊を媒介として、ヒトに感染するウイルスです。黄熱は、ネッタイシマカ (Aedes aegypti、エイイーディーズ・イージプタイ) などの蚊によって媒介されるウイルス感染症です。

 国立感染症研究所 病原微生物検出情報 (IASR) 2013年8月号によると、黄熱(黄熱病)は、「感染すると無症候の場合もあるが、通常ウイルス曝露後3~6日で発症し、発熱、筋肉痛などの非特異的症状が急激に始まる。一時緩解した後、15%のヒトでは2~24時間後に症状が再燃し、腎不全、黄疸、出血傾向、心筋障害が起こる。肝腎不全に至ると、20~50%が通常発症から7~10日で死亡する。」とあります。

 ネッタイシマカは、一般的には“yellow-fever mosquito”(黄熱蚊?)と呼ばれており、学名“Aedes aegypti”は、「エジプト縞蚊(しまか)」といったところでしょうか。“aedes”(エイイーディーズ)は、ギリシア語を語源とするらしく、「嫌な(hateful)」、「嫌で堪らない(repulsive)」という意味を持つようです。洋の東西を問わず、吸血する蚊は嫌われ者なのですね。ちなみに、英語“mosquito”は「小さなハエ」というだけの意味を、中国語「蚊(蚊子、wenzi、2-軽声)」はその羽音(昔の音は、wenでなくbun?)という意味を持っているようです。

 双翅目カ科ヤブカ属シマカ亜属は、胸部の背面などに白い縞模様(白条)があることから、縞蚊(しまか)と呼ばれ、昼間に活動して吸血します。ネッタイシマカのほかに、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus、エイイーディーズ・アルボウピクタス、その見た目から tiger mosquito(タイガー・モスキートウ))、その生息場所から forest mosquito(フォレスト・モスキートウ))などがいます。“albopictus”は、「白条」を意味し、学名も「一条縞蚊(ひとすじしまか)」といったところです。

 ヒトスジシマカ(Asian tiger mosquito)は、アメリカ合衆国にも生息範囲を広げており、合衆国の東半分の州にはすでに生息しているといいます。ハワイ州を除くアメリカで、ヒトスジシマカが最初に発見されたのは、テキサス州ヒューストンで、1985年。すでに30年ほどが経っています。日本や台湾から輸入された古タイヤとともに、侵入してきたといわれています。

 あるサイトでは、“In the United States, the Asian tiger mosquito may spread diseases such as West Nile fever and encephalitis.”(アメリカで、ヒトスジシマカは、ウエストナイル熱やウエストナイル脳炎のような感染症を広げるかも知れない)と述べています。

 国立感染症研究所の感染症情報「ウエストナイル熱/ウエストナイル脳炎とは」によると、「ヒトにおける潜伏期間は3~15日である。感染例の約80%は不顕性感染に終わる。発症した場合多くは急性熱性疾患であり、短期間(約1週間)に回復する。一般的に、3~6日間程度の発熱、頭痛、背部痛、筋肉痛、筋力低下、食欲不振などがみられる。皮膚発疹が約半数で認められ、リンパ節腫脹を合併する。 時にデング熱と似た熱型を取る。」、「重篤な症状を示すのは感染者の約1%といわれている。これらは主に高齢者にみられ、致命率(患者数に対する死亡者の比率。致死率ともいう)は重症患者の3~15%とされる。アメリカ合衆国の患者のデータでは、筋力低下を伴う脳炎が40%、脳炎が27%、無菌性髄膜炎が24%にみられている。」と述べられており、また、

 「媒介蚊は主にイエカの仲間であるが、我が国では、日本脳炎のベクター(媒介動物)であるコガタアカイエカやヤマトヤブカなどもなり得ると考えられる。本ウイルスが本邦に侵入すると、蚊や鳥を介して広範囲に拡がる可能性がある。」、「ウエストナイルウイルスは成熟期のメス蚊の吸血時に増幅動物である鳥類に伝播され、腸で増殖後、唾液腺へ運ばれる。鳥類は曝露に続いて1~4日の間にウイルス血症を起こす。流行には渡り鳥の存在や感染蚊の移動の関与が示唆されている」という記述もあります。

 アメリカなどでウエストナイルウイルスの媒介が可能であるとされた蚊は、アカイエカ(house mosquito、culex、キューレックス)、ネッタイイエカ(southern house mosquito、culex quinquefasciatus、キューレックス・クウィンケファシエイタス、「5つ帯の家蚊(いえか)」といったところでしょうか)、コガタアカイエカ、ヒトスジシマカ、ネッタイシマカ、キンイロヤブカ、ヤマトヤブカなどであり、このうちのネッタイシマカを除けば、すべて日本に存在する蚊です。ウエストナイルウイルスは、日本脳炎ウイルスが、主にコガタアカイエカが媒介するのとは異なり、いろいろな蚊によって媒介されるのです。

 日本脳炎のワクチンを接種している私は、蚊に刺されることは、それほど気にはしていませんでしたが、蚊に刺されると刺された場所が大きく腫れるため、蚊に刺されることを極端に嫌う妻のように、これからは黄熱ウイルス(ワクチンはあるが、日本では一般的でない)、デングウイルス(ワクチンは開発の最終段階だが、まだ上市されていない)、ウエストナイルウイルス(ワクチンはない)などへの感染を防ぐため、蚊の活動する季節は蚊に刺されないように虫よけのスプレーをして、外出すべきなのでしょう。

(参考) 「感染患者報告数の少ない日本脳炎の予防接種は受けるべきではないか?

 2007年の生活衛生((社)大阪生活衛生協会(2011年に解散)が出版) Vol.51 No.4に掲載された「日本人はウエストナイルウイルスに交差免疫を持つか」(大阪市立環境科学研究所研究主幹「今井長兵衛」(現在:千里金蘭大学生活科学部食物栄養学科教授)著)には、次の記述があります。

 「ウエストナイルウイルスに対する交差免疫機能を期待できる日本脳炎抗体を保有する住民は年を追って減少しており、とりわけ大都市において、その傾向が著しい。したがって、ウエストナイルウイルスが不幸にして日本に侵入したときには、全国民、とりわく都市住民がウイルスの危険にさらされ、少なくとも日本脳炎抗体を保有していないヒトの間でウエストナイルウイルスが猛威を振るう恐れがある。

 ハムスターの感染実験で、日本脳炎ウイルスを接種した個体にウエストナイルウイルスを接種したところ、抗原抗体反応が起こったという報告があります。このことは、日本脳炎に感染した経験があれば、ウエストナイルウイルスに対して、発症予防の効果があるということになります。

 このような「交差免疫反応」は、抗体の側に「特異性の低さがある」(譬えれば、欧米人にはアジア系の人種を見分けることが難しくて、日本人もベトナム人も中国人と思ってしまうようなもの)、抗原の側に「抗原性の類似がある」(譬えれば、日本人の中にも韓国人や中国人に極めて似た面立ちの人がいるようなもの)ときに起こります。

 「ウエストナイルウイルスの日本侵入経路の一つとして、ウイルス感染渡り鳥のカナダ南部・米国北部からの渡来が懸念されていた。ところが、2005年になって新たな事実が判明した。シベリア東部のウラジオストック周辺で2003年から2004年に死亡した野鳥からウエストナイルウイルスが検出されたというのである。シギ・チドリやカモなどの大部分の渡り鳥の繁殖地であるシベリア東部にウエストナイルウイルスが常在するとなれば、ウイルス感染渡り鳥の飛来経路が短縮されるばかりでなく、個体数も劇的に増加する可能性がある。

 「日本脳炎ワクチンによる西ナイルウイルの感染に対する交叉防御」には、「沖縄本島では156人の被検血清の96%はJEV中和抗体陽性であり、抗体陽性者の55%からWNV交差中和抗体が検出されている」という報告があります。これをどう読むかというと、沖縄本島で、156人から血清を調べさせてもらったところ、150人は日本脳炎ウイルス(Japan Encephalitis virus, JEV)に対する抗体を持っており、その中の85人の血清はウエストナイルウイルス(West Nile virus, WNV)に対しても反応したということです(65人の血清は抗原抗体反応は起こらなかった)。

  -この記事は、徐々に記述していきます-

 2014年9月8日配信の産経新聞の記事からです。

 厚生労働省は9月8日、新たに東京都内でデング熱6人の感染者が確認されたと発表した。いずれも最近の海外渡航歴はなく、東京・代々木公園とその周辺を訪れていた。重い症状の患者はいないという。国内での感染者は計80人となった。

 厚生労働省によると、新たにデング熱と確認されたのは東京都の20代~60代の男女6人。デング熱の国内感染が確認された後に代々木公園を訪れて感染した人はいない。


 国立感染症研究所の報告した「デング熱国内感染患者 現時点での疫学情報のまとめ(平成26年9月8日)」によると、第75症例(40代男性、発症日8月29日、潜伏期間6日)、第76症例(20代男性、8月31日、不明)、第77症例(30代女性、8月28日、5日)、第78症例(40代男性、8月12日、5日)、第79症例(60代男性、不明、不明)、第80症例(20代男性、8月31日、不明)の6症例です。

 2014年9月8日配信の産経新聞の記事からです。

 静岡県疾病対策課は9月8日、県東部に住む50代の男性からデング熱の感染が確認されたと発表した。男性は8月30日に1人で代々木公園を訪れており、最近の海外渡航歴はないため公園付近で感染したとみられる。県内でデング熱の感染者が確認されたのは初めて。

 静岡県疾病対策課によると、男性は今月5日に38度以上の発熱や頭痛などの症状が表れ、自宅近くの医療機関で受診。9月8日になっても熱が下がらなかったため、再び同じ医療機関で受診していた。男性は胸部や腹部などに発疹がみられ、「代々木公園でトイレを利用した」「公園内で蚊に刺されたかもしれない」と話したため血液検査をしたところ、デング熱の感染が確認された。


 これが第81症例になるのでしょうか。50代男性、発症日9月5日、潜伏期間6日になります。

(追記‐2014年9月9日) 2014年9月9日配信のJNNニュースからです。

 「デング熱」の国内感染で、初めて東京以外で感染したとみられる患者が報告されました。厚生労働省によりますと、千葉市・稲毛区に住む60代の男性は8月31日、発熱や倦怠感の症状が出て、9月8日、「デング熱」の感染が確認されました。現在は入院中で容体は安定していますが、この男性は「代々木公園」や、その周辺など、最近、東京都内を訪れたことはないということです。

 男性は、稲毛区内の社会福祉施設に住んでいて、この施設の周辺で感染した可能性がありますが、今のところ男性以外に入所者の感染は確認されていません。千葉市と厚労省は施設周辺の蚊の調査を行い、感染場所の特定を進めています。これでデング熱の国内感染者数は9月9日までに、合わせて86人となりました。


 そろそろデング熱も終息するのではないかと考えていたのですが、新たな展開になってしまいました。(追記-2104年9月10日) 厚生労働省はこの症例について「9月9日に公表した、千葉市稲毛区在住のデング熱の患者については、国立感染症研究所におけるウイルス解析の結果、この患者から検出されたウイルスの血清型は、デングウイルス1型であり(デングウイルスには、DEN-1、DEN-2、DEN-3、DEN-4と4つの型がある)、遺伝子配列は、代々木公園周辺、新宿中央公園、神宮外苑又は外濠公園への訪問歴のあるデング熱の患者から検出されたものと一致しました。」と9月10日の報道発表資料で述べており、同時多発でなかったことになります。今のところ、代々木公園に端を発しており、それが各場所に、例えば、新宿中央公園に広がったと考えられます。

 ここまで追記を加えたところ、展開が早くこの記事が実際に起きていることに追いついていけなくなっています。千葉県に住む50代男性が、勤務先の東京都台東区松が谷周辺で蚊に刺され、デング熱に感染したとみられるのだそうです。また、神奈川県在住の20代男性は、東京都千代田区の外濠公園か港区の青山公園で感染したとみられるそうです。このウイルスも遺伝子配列が感染場所が代々木公園のウイルスと一致するのでしょうか。(追記の終わり)

 「デング熱国内感染患者 現時点での疫学情報のまとめ(平成26年9月9日)」によると、第82症例(10代男性、発症日8月30日、潜伏期間不明)、第83症例(40代女性、9月1日、11日)、第84症例(50代女性、9月5日、不明)、第85症例(20代女性、9月5日、9日)が新たにデング熱の発症者として追加されており、千葉市・稲毛区の60代の男性の発症は第86症例として、9月10日に発表になるのでしょう。

 デング熱は「ヒトが感染しても、発症する頻度は10%~50%」であるとされています。つまり、1人発症すると、その周辺に1人から9人ほどの感染しても発症しなかった人(不顕性感染者)がいることに理屈的にはなります。しかし、不思議なことに、報道ではデング熱の発症者の周辺に感染者はいません。8月25日から代々木公園北側の宿泊施設に滞在していた、デング熱を発症した大阪府高槻市の10代女性3人(発症はそれぞれ8月30日、8月31日、9月1日)を含むグループ24人のうち半数以上が「蚊に刺されたと思う」と話しているという報道があったのですが、このグループからの発症者はそのあとに報告されず、また感染者の報告もありません。

 これまでに80人を超えるデング熱の発症者が報告されています。ならば、感染者10人に発症者は1人(10%)であれば、800人ほどが感染しているはずであり、感染者2人に発症者1人(50%)であれば、160人ほどが感染しているはずです。報道が過熱して、住民に冷静さを失わせて、パニックを作り出すと考えて、保健衛生関係者は報道への通知を控えているのでしょうか。(追記の終わり)

                     (この項 健人のパパ)



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