全身に、体表だけなく内臓にも、膿疱が生じ、呼吸器に生じた膿疱により肺が損傷を受け、重篤な呼吸不全によって、死に至る(致死率は40%前後といわれた)こともある「天然痘(疱瘡、痘瘡、smallpox、variola)」は、「天然痘ウイルス(variola virus、バリオラウイルス、痘瘡ウイルス)」によるウイルス感染症で、ヒトのみに感染し発病させます。20世紀だけでも2~3億人が死亡したとされる天然痘は、1980年5月に世界保健機関(World Health Organization、WHO)が「天然痘根絶宣言」を出しています。
今春から中国で感染者が相次いだ鳥インフルエンザウイルス(H7N9型)の特徴を、さまざまな哺乳類を使った実験で解明したと、東京大などのチームが7月10日付の英科学誌ネイチャー(電子版)に発表する(“Characterization of H7N9 influenza A viruses isolated from humans”)。日本人は感染や悪化を防ぐための抗体を持っていないことも判明した。チームの河岡義裕・東京大教授は「パンデミック(大流行)を起こした場合、肺炎患者が増える可能性がある」と指摘する。H7N9型ウイルスは、遺伝子解析から、ヒトの細胞に感染・増殖しやすい特徴があると予想されていた。チームは、上海市と安徽省で見つかった最初の2人の患者から採取したウイルス( A/安徽/1/2013 (H7N9)、A/上海i/1/2013 (H7N9))で、哺乳類のフェレットやマウス、サルなどに感染させた。その結果、両方のウイルスは、フェレットの鼻やのどなどの上気道で増殖しやすかったほか、サルでは上気道に加え肺でも増殖した。また、安徽省のウイルスでは、飛沫感染を起こすことをフェレットで確認。マウスの実験では、既存の抗ウイルス薬が、2009年に大流行したH1N1型に比べ、症状を抑える効果が低いことも分かった。さらに、日本人500人を調べたところ、全員がH7N9型のウイルスに対する抗体を持っていなかった。