POWERFUL MOMが行く!
多忙な中でも,美味しい物を食べ歩き,料理を工夫し,旅行を楽しむ私の日常を綴ります。
 





 北海道札幌市で創業された(1983年、今から30年ほど前)チョコレートの会社に「株式会社ロイズコンフェクト」があります。英語名は、“ROYCE' Confect Co., Ltd.”です。「ROYCE'」を「ロイズ」と読ませています。この名称の由来に興味を抱く人も多く、検索すると出てきます。創業者(現取締役社長)は「山崎泰博(Yamazaki Yasuhiro)」氏です。自分の名前を会社名にするということはよく行われることです。「森永太一郎」氏が「森永製菓」を設立するといったことです(正しくは、「森永西洋菓子製造所」(1899年~)→「株式会社森永商店」(1910年~)→「森永製菓株式会社」(1912年~))。

 ちょっと洒落て、「石橋正二郎」氏が1931年に設立したのは、「株式会社ブリヂストン(英語名:Bridgestone Corporation)」でした。この社名は、英語の「ブリッジ(bridge、橋)」と「ストーン(stone、石)を合成したもの。「石橋」という姓を英語にして、語呂をよくするために、前後を入れ替えたものです。

 山崎泰博氏は、自分の名「ヤスヒロ(Yasuhiro)」を社名にしようとします。しかし、このままでは社名としては響きが悪い。後ろから読んでみることにします。「ロヒスヤ」。「ロヒス屋」という響きになりました。和菓子を製造販売する「株式会社虎屋」の英語名は、“Toraya Confectionery Co., Ltd.”です。‘confectionery’(コンフェクショナリー)には、「菓子製造業」という意味があります。そこで、「屋」を「コンフェクト」とします。「ロヒスコンフェクト」をもう一歩進めて、「ロイスコンフェクト」。さらに進めて、「ロイズコンフェクト」。それに「ROYCE’」という英語綴りを与えることにします。「ROYCE’S」(ロイスズ)の‘S’を省略したものという解釈をしています。

(参考) 「チョコラティエ「ゴディバ(Godiva)」の名前の由来は、それだったの?

 ロイズは新千歳空港の国内線旅客ターミナルビルと国際線旅客ターミナルビルを結ぶ連絡施設に国内初の空港内チョコレート工場とミュージアムを開設しています(営業時間:8:00~20:00 (※ファクトリースペースは、8:30~17:30))。



 私は北海道に生まれ、東京の大学に進学するまでは北海道に暮らしていました。北海道を離れて40年以上も経ちますが、郷愁という感情を持ちません。北海道はすぐそこにあるのです。行こうと思えば、バスに乗って1停留所行けば着けるような心理的距離なのです。そこに妻「あみ」は観光に行こうと言い出しました。北海道の新千歳空港から台北に飛ぶ航空券が格安だったので、すでに購入したというのです。新千歳空港から飛ぶ前に札幌の観光もいいかなと考えて航空券をとっているというのです。成田→札幌(新千歳空港)→台北→成田という旅程にしたのだそうです。

 私にも同じ旅程での旅行を提案してきました。しかし、我が家には自分からは勉強をしない高校1年生の息子「健人」がいます。2学期の中間テストが控えています。テスト準備をさせるためには、10日間も家を空けるわけには行きません。成績が悪くなれば、授業料免除という特待生の資格を取り消されてしまうのです。

 最初は全行程を一緒にと言ってきたのですが、札幌の3日間は同行するという妥協案にOKを出しました。妻は旅行好きです。若いころに北海道はすでに10数回も行っているというのです。でも、私とは異なり、そこは非日常が味わえる心理的にも遠い都市なのでしょう。札幌行きにあまり関心もないので首を横に振り続けていたのですが、妻の粘りに根負けしてOKを出したのが、出発の間際。それでも航空券は取れるのですね。バニラという格安航空会社の航空券でした。40年以上も前に千歳空港から羽田に飛んでいたときよりも安く航空券が買えたのです。



 今回の旅行で最も関心を抱いたのが、国際線旅客ターミナルビルで妻の台北行きを見送ったあとで、国内線旅客ターミナルビルへ移動するときに、連絡施設で見学したロイズ・チョコレート・ワールドにある「ミュージアム」。展示物の数は少なく、小さな小さな博物館ですが、チョコレートの知識を得るのにはよくまとめられていると言えます。

 物理的距離は近いのですが、心理的距離は遠く、ベルギーにはるばる来たようです。妻がいれば、「何を興奮しているの」と言われそうですが、ショコラティエール(chocolatiere、ショコラを作る道具)が、チョコレートポットとモリニーリョ(Molinillo、撹拌棒)の現物が見られるのです。

(参考) 「ブルージュの「チョコレート博物館」へチョコレートの知識を深めに

妻「嬉しそうね」
私「目の前に本物があるんだよ」
「チョコレート、好きよね」
「好きだね」
「甘い物といえばチョコレートぐらいしかない時代に育った?」
「おいおい、失礼な」
「チョコレートとケーキがあったらどっち選ぶ?」
「チョコレートかな」
「やっぱり、好きよね」

 妻がその場にいれば、モリニーリョやココアポット(チョコレートポット)を見ながら、そんな会話を交わしていそうです。



 上の画像は、モリニーリョという攪拌棒です。中米(メソアメリカ)のマヤ族は、カカオ豆を乾燥させて、石臼で挽いて、トウモロコシの粉と水を加えて飲料として口にしていました。どろっとしている(トウモロコシの粉がとろみを出している)がざらざらもしていて、舌触りが悪いことから、泡立てることで舌触りを良くして、飲んでいたようです。マヤ族は、器から器へと勢いよく注ぎ込むことで泡立てていました。16世紀、スペイン人たちは、泡立てるために攪拌棒を使い始めます。それが、モリニーリョ(Molinillo)なのです。



 Royce' Chocolate World のミュージアムでの解説を引用してみます。

 メソアメリカでは、マノ(すりこぎ棒)とメタテ(石臼)でカカオ豆やトウモロコシをすりつぶし、水に混ぜて飲んでいました。また、飲みやすくするため、高いところからポットやジャーに注ぐことで泡立てていました。



 そもそも、カカオとは何でしょう。常緑樹であるカカオノキ(学名:Theobroma cacao、テオブロマ・カカオ)は、中央アメリカから南アメリカの熱帯地域を原産としています。赤道を挟んで、北緯20度あたりが生育の北限、南緯20度あたりが南限で、年間平均気温27℃以上の高温で、規則的な降雨(ただし、排水のよい土壌が必須)、湿潤な気候が必要であり、標高約300メートル程度の丘陵地に自生するといいます。樹の高さは5~10m程度のようです。2階建てや3階建ての家屋程度の高さの樹木です。

 カカオノキは、発芽成長に強い光よりも湿度を必要とするため、ほかの木の陰で生育させる必要があります(「陰樹」)。このため、カカオノキは、広大な面積の土地に単一作物を栽培する大規模プランテーションの樹木には向いていないといわれています。これをミュージアムでは「甘えん坊のカカオ(Cacao - The Pampered Child)」というタイトルで次のように説明しています。

 カカオの木への直射日光や風あたりを和らげるために「シェイド・ツリー」というバナナやヤシなどの背の高い木を周囲に植えます。その下で栽培されることから「甘えん坊の木」と呼ばれます。

 コーヒーの木も直射日光が強いと木の新芽が焼かれてしまって発育を妨げられることから、コーヒー農園ではバナナやマメ科の木などの背の高い樹木をコーヒーの木と一緒に植えて、適度な日陰を作るということが行われることがあります。このときのバナナやマメ科の高木を「日陰樹」(shade tree、シェイド・ツリー、シェード・ツリー)と呼びます。

(参考) 日陰樹(ひいんじゅ)と陰樹(いんじゅ)の違い
 日陰樹は、その樹木の作る日陰が利用できるもので、樹冠(じゅかん、樹木の上部にある枝と葉の層で太陽光を受ける)の大きな樫(カシ、oak)、楓(カエデ、maple)、楡(ニレ、elm)、梣(トネリコ、ash)、菩提樹(ボダイジュ、linden)などの樹木をいいます。例えば、アラビカ種のコーヒーノキは乾燥に弱いことから、直射日光から守るために、日陰樹を植えることがあります。日陰樹に日傘のような役割をさせるわけです。こうすることでコーヒーノキに適度な陽射しを当てることができるのです。
 樹木はすべて光のない暗所では育たず、光を必要としますが、直射日光(日当たり)を好むもの(陽樹、intolerant tree)からあまり好まないもの(陰樹、tolerant tree)まで、多様です。その成長、枝や葉の密生度が日照の強さと日照時間に影響を受けるのです。日当たりをあまり好まない樹木を日当たりの強い環境に置くと、例えば「葉焼け」を起こします。少ない光エネルギーで光合成を行っている種類の樹木に過剰な光エネルギーを与えると、余剰の光エネルギーが活性酸素を発生させ、葉の細胞を傷害します。葉の一部の緑色が薄くなったり、葉の周辺が褐色となって部分的に枯死する現象が葉焼けです。
 “shade tolerance”と言えば、「陰光耐性、耐蔭性(耐陰性)」を指すことになります。ブナ(山毛欅、Japanese beech)、カエデ(楓、maple)などは陰樹に分類され、比較的低い光量でも成長が可能な(陰光耐性がある)樹木です。(参考の終わり)




 カカオノキは樹齢4年程度で花を咲かせ、直径3cmほどの花を新しく伸ばした枝ではなく幹に直接つけるといいます(「幹生花」(cauliflory、コーリフローリ))。幹生花(かんせいか)は、温帯に住む私たちにとっては珍しいものですが、熱帯ではそれほど珍しいものではないようです。でも、幹や太い枝に花が咲いていると寄生植物が花をつけているようにも見えますよね。



 花はやがて果実をつけますが、やや小振り(長径で20cmほど)のラグビーボール(26cm~30cm)のような形をしています(カカオポッド、cacao pod)。幹に直接実がなっているのは、やはり珍しいですね。カカオポッドの中には白いパルプ質の果肉に包まれたカカオ豆が30粒から40粒ほど入っています。花が5弁ですから、入っている豆の数も5の倍数なのかな。



 カカオ豆は、カカオポッドから白いパルプごと取り出され、発酵という過程を経ることになります。バナナの葉を被せたり発酵槽に入れたりして発酵をすすめると、1粒ずつカカオ豆を包んでいたパルプは1週間ほどで溶けてしまいます。発酵はパルプを取り除くだけの目的で行われているのではなく、カカオ豆と果肉であるパルプ(果汁を含む)とを反応させるという目的もあります。



 カカオ豆がどのように出荷されるかをミュージアムの解説で見てみます。

   1 収穫 カカオの木からカカオポッドを収穫します。

   2 採果 カカオポッドよりパルプ(果肉)に覆われたカカオ豆を取り出します。



   3 発酵 バナナの葉を被せたり、発酵槽を使うなどして発酵し、パルプ(果肉)を取り除きます。

   4 乾燥 カカオ豆の水分がおよそ8%以下になるまで乾燥します。

 水分量は幅があるらしく、日本のチョコレート・ココアの製造者の団体である「日本チョコレート・ココア協会」のサイトでは「発酵の終わった種子は水分を6%以下に乾燥させます」とあります。



   5 袋詰め カカオ豆60~70㎏を麻袋に詰め、出荷します。



 長くなったので、続きは次回の記事にします。


                  (この項 健人のパパ)



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