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多忙な中でも,美味しい物を食べ歩き,料理を工夫し,旅行を楽しむ私の日常を綴ります。
 





 8月に入り、日本でもインフルエンザA(H1N1)(いわゆる「新型インフルエンザ」)による死亡者が「ハイリスク群」を中心に出始めました。アメリカ疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention、 CDC)の集計したデータによると、アメリカで2009年4月15日から7月24日までにインフルエンザAに罹患した人は、25歳未満で10万人に24.8人の割合になり、25歳以上で10万人に4.06人と比べると、6倍になります。若年層が今回のインフルエンザAに感染しやすいことは明白です。

 インフルエンザの流行初期には、学生を中心に感染者が多く出ましたが死亡する人はいませんでした。アメリカで流行初期に感染し死亡した268例を調べたものでは、0歳から4歳までは2%、5歳から24歳までの死亡者は16%、25歳から49歳までは41%、50歳から64歳までは24%、65歳以上は9%となっており(残り8%は年齢の確認ができなかったもの)、25歳以上の人たちは感染しにくく、入院もしないことが多いが、その死亡者は74%と多いということになります。

(参考) データが裏付けた若年層のインフルエンザAへの感染しやすさ

1例目(産経新聞による)
男性、57歳、慢性腎不全、沖縄県
9日午後、喉の痛みを訴えた。
10日の透析治療中に37度台の熱があったが、簡易検査は陰性だった。
12日の透析中に39度まで熱が上がったため再度、簡易検査を実施。インフルエンザA型陽性と判明した。
男性はタミフルを投与され、別の医療機関に入院した。
15日早朝に死亡した。肺炎を併発し、敗血症を起こしたことによる。

2例目(読売新聞による)
男性、77歳、高齢、神戸市
16日に38度の熱が出る。
17日朝、市内の透析医院で受診。簡易検査でA型陰性だったが、肺炎の疑いがあるとして総合病院に入院した。
同日午後、再検査でA型陽性を示し、呼吸困難などの症状があったため、医師がタミフルを投与した。
18日午前6時20分、急性気管支炎による肺気腫の悪化で死亡した。

3例目(毎日新聞による)
女性、81歳、心疾患、名古屋市
13日に39.5度の高熱があったため救急外来を受診してそのまま入院。
15日になって咳がひどくなったため個室に移った。簡易検査でA型陽性となる。
18日に遺伝子検査(PCR検査)の結果、新型インフルエンザと確認される。
19日午前1時半ごろ重症肺炎により死亡。

4例目(時事通信による)
女性。84歳、高齢、名古屋市
24日午前9時半ごろ、38.5度の熱が出たので、簡易検査を実施したが陰性。
25日に呼吸困難に陥った上、熱が上がったため、再び簡易検査したところ陽性だった。
同日午前10時25分ごろに誤嚥性肺炎で死亡した。

5例目(時事通信による)
男性、30代、慢性心不全、長野市
20日に咳や下痢などの症状を訴える。
23日に37.9度の熱が出たため市内の医療機関を受診。
25日に症状が改善せず、同市の病院に入院した。
26日朝呼吸不全となり、集中治療室(ICU)で治療を受けていた。
27日昼すぎ肺炎による呼吸不全で死亡した。

6例目(読売新聞による)
女性、60歳代、肺癌、枕崎市
27日に発熱。
28日に新型インフルエンザの感染が確認された。
29日未明に急性呼吸器不全で死亡した。

7例目(読売新聞による)
女性、38歳、たつの市
27日、発熱や咳、倦怠感などの症状があり、自宅近くの医院で受診し、A型インフルエンザの診断を受け、タミフルの処方を受けた。
29日午前1時30分頃、自宅で容体が急変し、姫路市内の病院に搬送されたが、午前4時過ぎ、死亡が確認された。

(追記)
8例目(産経新聞、毎日新聞による)
女性、40歳代、高血圧、北海道
29日に38.7度の発熱があり、稚内市内の医療機関を受診した。簡易検査で陽性と診断されたため、抗ウイルス薬、タミフルの投与を受けた。この日は同市内のホテルに宿泊した。
30日午後2時ごろ、ホテルの室内で意識がなくなった状態の女性を従業員が発見、病院に搬送されたが、間もなく死亡が確認された。女性の死因は急性心不全。女性の死後、詳細(PCR)検査を行い、新型への感染が確認された。女性は新型インフルエンザ患者の聞き取り調査などに従事していたが、感染経路などは不明。医療従事者の死者は初めて。

 日本の季節性インフルエンザの年間死者数は1万人であり、新型インフルエンザでのこの死者数は驚くにあたらないとする論調があります。本当に従来の季節性インフルエンザで年間1万人ほどの死亡者が出るのでしょうか。ここにデータがあります。2000年から2006年までの「インフルエンザによる死者数」の統計です。

2000年  575人
2001年  214人
2002年  358人
2003年 1,171人
2004年  694人
2005年 1,818人
2006年  865人

 平均で年800人ほどが死亡しています。この事実にも驚きますが、年間の死亡者が1万人という数字はどこから出てくるのでしょう。ここに「超過死亡者」という考え方があります。インフルエンザによる死亡は、炎症が上気道に留まらず肺に達して肺炎という疾患を起こすためによるものが圧倒的に多いのです(少ないが「脳症」もある)。そのため、死亡診断書には「肺炎」と記載され、インフルエンザによる死亡にカウントされないこともあります。そこで、肺炎等の死亡者のうち、インフルエンザの流行があったために増えたであろう死亡者をもインフルエンザによる死亡にカウントします。すると、上記の数字は次のように変わります。

2000年 13,846人
2001年   913人
2002年  1,078人
2003年 11,215人
2004年  2,400人
2005年 15,100人
2006年  6,849人

 大流行のある年とそうでない年で「超過死亡者数」で大きく変動がありますが、大流行のあった年では、年間1万人がインフルエンザに感染したことが原因で亡くなっていることになります。「ハイリスク群」を守るべきことがこの数字から理解できます。厚生労働省の「新型インフルエンザ対策」が功を奏して、10月以降にインフルエンザの本格的な流行期を迎えても、大流行のない年のように、この数字がなるべく小さくおさまることを期待してやみません。

        (この項 健人のパパ)

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 多くの地域で9月1日から新学期が始まります。これがインフルエンザA(H1N1)(いわゆる「新型インフルエンザ」)の感染急拡大につながることはほぼ間違いのないことと言えそうです。

 都教育委員会のまとめたところによると(都内の公立小中高校ではすでに新学期が始まっている)、8月27日までに学年閉鎖、学級閉鎖を決めたのは小学校6校、中学校1校、高校1校の計8校となり、都内の公立小中高校で、夏休み中に新型インフルエンザに集団感染した児童、生徒が計808人(小中学生が345人、高校生が463人)に上っているのだそうです。多くは部活動や学校行事などで感染したようです。

 アメリカ疾病予防管理センター(米疾病対策センター、Centers for Disease Control and Prevention、 CDC)は、“Novel H1N1 Flu: Facts and Figures” というページで、“How have different age groups in the United States been impacted by novel H1N1 flu in terms of infection rates?”(感染率に関して、各年齢層によってどの程度の違いがあるのですか?) という問いに答えています。



 結論から言うと、5~24歳の人たち(若年層)は65歳以上の高齢者に比べ、20倍も新型インフルエンザにかかる可能性が高いとする報告をしています。26.7÷1.3=20.5となります。また、アメリカで2009年4月15日から7月24日までにインフルエンザAに罹患した人は、25歳未満で10万人に24.8人の割合になり、25歳以上で10万人に4.06人と比べると、6倍になります。これは有意な数字であり、若年層が今回のインフルエンザAに感染しやすいことは明白です。

 “How have different age groups been impacted by novel H1N1 flu in terms of hospitalization rates in the United States?”(入院率に関して、各年齢層によってどの程度の違いがあるのですか?) という問いにも答えています。

 これは0歳から4歳までの幼児が10万人に4.5人入院して、25歳から49歳の1.1人と比べると、4倍以上多いことが分かります。厚生労働省が8月27日に開いた、専門家や薬害被害者団体などとの会合で、「新型インフルエンザ」のワクチン接種について、「持病のある人」、「妊婦」(妊婦(110万人)ならびに産後6か月以内の婦人(55万人)を日本産科婦人科学会は要望した)、「6歳未満の小児」、「患者を診察する医療従事者」を優先する方向が固まっています。幼児は明らかに感染しやすく、感染すると入院を必要とすることにもなります。罹患すると5人に1人は入院を必要としたことになります。厚生労働省のガイドラインによると、幼児はインフルエンザへの感染が疑われるときは速やかに抗インフルエンザ薬を投与するとことしています。ところが、5歳から24歳までの若年層は感染しやすいが入院は13人に1人と重症化しにくいことがみてとれます。(Graph B (below) shows the estimated novel H1N1 flu hospitalization rate in the United States by age group from April 15 to July 24, 2009. These estimates are based on the 4,738* hospitalizations that were reported to CDC during this time period. The reported hospitalization rate per 100,000** people was highest among children in the 0 to 4 years of age group. The hospitalization rate of children in the 0 to 4 age group with novel H1N1 flu illness was 4.5 children per 100,000. The next highest reported hospitalization rate was in the 5 to 24 years of age group, which had a hospitalization rate of 2.1 per 100,000 people. The hospitalization rate for people in the 25 to 49 years of age group was lowest at 1.1 per 100,000 people. The hospitalization rate for people 50 to 64 years of age was 1.2 per 100,000 people, and the hospitalization rate for people 65 years and older was 1.7 per 100,000.



 国立感染症研究所感染症情報センターによると、今年第28週(7月6-12日)から第33週(8月10-16日)の間に、全国の定点医療機関から報告されたインフルエンザ患者(1万8438人)の年代別の割合は0~4歳10.6%、5~9歳20.3%、10~14歳21.0%、15~19歳17.9%、20~29歳15.7%、30~39歳6.6%、40~49歳4.1%、50~59歳2.0%、60歳以上1.8%だったそうです。

 これによると、罹患者の約85%に当たる1万5768人が20歳代以下だったことになります。ただ、このデータは年齢構成比を考慮してはいないので、若年層が感染しやすいとするアメリカのデータと比較することはできません。しかし、日本の年齢構成比は、若年層の割合が多いピラミッド型ではなく、各年齢層の割合が大きく変わらない釣鐘型ですから、日本でも若年層が感染しやすいとは言えます。

 “How have different age groups been affected by novel H1N1 flu in terms of deaths?”(死亡に関して、各年齢層によってどの程度の違いがあるのですか?) という問いにも答えています。(CDC studied the hospital records of 268 patients hospitalized with novel H1N1 flu early on during the outbreak. The number of deaths was highest among people 25 to 49 years of age (39%), followed by people 50 to 64 year of age (25%) and people 5 to 24 year of age (16%) This is a very different pattern from what is seen in seasonal influenza, where an estimated 90% of influenza-related deaths occur in people 65 years of age and older.



 これは流行初期に感染し死亡した268例を調べたもので、5歳から24歳までの死者は16%、25歳から49歳までは41%、50歳から64歳までは24%などとなっており、25歳から49歳までの年齢層に属する人たちは感染しにくく、入院もしないことが多いが、その死者は多いということになります。

 私はこの年齢層に属しませんがその上の年齢層50歳~64歳も24%と高い。これはこの年齢層の人たちの中に糖尿病などの「ハイリスク群」や肥満が多いことを意味するのでしょうか。このデータだけでは知ることができません。インフルエンザAでの日本での死者の1例目は、男性で57歳でした。慢性腎不全を患っていたようです。5例目は、男性で30代。慢性心不全でした。

 これらのデータから言えることは,インフルエンザAへの感染は若年層が中心で、インフルエンザAでの死者は、壮中年層が中心にあると言えそうです。働き手を突然失うことになるのですから、家庭に対するインパクトは大きなものとなります。インフルエンザAのウィルスを子どもたちが家庭に持ち込まないように、玄関先にアルコール消毒の容器を置いて、帰宅した子どもたちに使わせる、手洗いを十分にさせるなどの感染予防策を講じて、特にリスク要因を抱えた家庭は気をつけて欲しいものです。

              (この項 健人のパパ)


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 上気道の感染症の一つ、インフルエンザは、重症化すると気管支、細気管支などの下気道にも炎症が及び、気管支炎、肺炎などを起こし、呼吸不全になり、場合によっては死に至ります。インフルエンザA(いわゆる「新型インフルエンザ」)も同様の過程で、死者を増やしていっています。

 2009年8月27日配信の時事通信の記事からです。

 名古屋市は8月26日、新型インフルエンザに感染した疑いのある同市在住の女性(74)が25日に死亡したと発表した。女性には基礎疾患はなく、死因は誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)だった。同市によると、女性は市内の病院に長期入院していたが、24日午前9時半ごろ、38.5度の熱が出たので、簡易検査を実施したが陰性。翌25日に呼吸困難に陥った上、熱が上がったため、再び簡易検査したところ陽性だった。同日午前10時25分ごろに死亡した。女性は新型インフルエンザ感染の疑いがあるが、PCR検査を実施していないため感染者かどうか確認は取れていない。全国ではこれまで感染者3人の死亡が確認されている。 別室に入院していた患者2人と、女性と接触したとみられる看護師1人の感染が確認されている。

 「ハイリスク群」の人たちが危険に晒されています。ハイリスク群とは、インフルエンザに感染すると、重症化や合併症を引き起こす可能性の高いグループのことで下記の人たちです。
 (1) 65歳以上の高齢者
 (2)妊娠28週以降の妊婦
 (3)慢性肺疾患(肺気腫、気管支喘息、肺線維症、肺結核など)を持っている人
 (3)心疾患(僧帽弁膜症・鬱血性心不全など)を持っている人
 (4)腎疾患(慢性賢不全・血液透析患者・腎移植患者など)を持っている人
 (5)代謝異常(糖尿病・アジソン病など)を持っている人
 (6)免疫不全状態の患者

 2009年8月22日配信の読売新聞の記事からです。

 肥満などメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)や妊娠は、新型インフルエンザによる死亡の危険性を高める恐れがあることが、フランスの研究チームの分析で明らかになった。肥満は、これまでの季節性インフルエンザでは死亡の危険因子とは考えられておらず、新型の特徴である可能性もある。研究論文は欧州の専門誌(電子版)に掲載された。
 研究チームは、世界保健機関などが発表したデータをもとに、4月~7月に新型インフルエンザで死亡した27カ国の574人を分析。生前の健康状態が分かる241人のうち9割に持病があった。最も多かったのが、そのうちの3割を占める肥満や糖尿病などのメタボ患者。妊婦は、死亡した20~39歳の女性の3割で、季節性インフルエンザと同様に新型でも死亡の危険性が高まるとみられる。


 インフルエンザに対抗するためには、感染を防ぐか感染しても重症化しないように免疫力を高めておくしかないのです。免疫力を高めるには、健康を維持する(肥満も解消しておく)以外にインフルエンザワクチンを接種するという方法があります。現在、日本には概数で、妊婦 100万人、基礎疾患のある人 1000万人、基礎疾患のない高齢者 2100万人がいると言います。妊婦と基礎疾患のある人の合計だけで1100万人になり、日本のインフルエンザワクチンメーカーの製造能力にほぼ達してしまいます。それに、基礎疾患のない高齢者 2100万人を加えたとすると、3200万人になります。しかし、これでも足りません。インフルエンザ患者の治療にあたる医療従事者 100万人をまず守らなくては、医療が崩壊してしまいます。ここまでの合計が3300万人です。これに、厚生労働省は、1~6歳の乳幼児 600万人と7~18歳の小中高生 1400万人も加えて、5300万人分のワクチンが必要だとします。

 ワクチンは現在、国内4社のメーカーが製造しており、12月末までに1300万~1700万人分が供給される予定ですが、製造を2月末までに延ばしても3000万人分が限界のようで、必要とされる5300万人分にはまるで及びません。不足分を補うために政府は輸入を検討していて、海外のワクチンメーカー数社と交渉中のようです。一部の企業は副作用(副反応)が出た場合の責任を免除することを求めているようです。日本にはアメリカにあるような「無過失補償制度」がないからです。

 インフルエンザの予防接種を受けた後に、発熱やショック症状、肝機能障害などの「副反応」とみられる症状を起こす人は、日本では、年間100人から150人ほど。この「副反応」の発症例は、分母(接種を受けた者)がいくつか不明です。分子(「副反応」の発症者)もすべてが報告として上がってくるとは考えにくい。1万例をサンプリングしたところ、100例ほどあったとする報告もあります。これだと、副反応がでるのは1%ほど。症状は発熱が最も多く、次いでショック症状、肝機能障害、浮腫、ぜんそくなど呼吸器症状、注射部位のはれ、発疹の順となっています。「副反応」を起こす年齢層は、10歳未満と70歳代が多いそうです。予防接種後に心肺停止や、肝不全などで死亡する例は、年間5人前後だそうです。

 アメリカでは、1988年に、National Vaccine Injury Compensation Program (VICP)が設立され、ワクチンによる副反応で障害が生じたときには、十分な補償を受けることができるようになっています。(The National Childhood Vaccine Injury Act of 1986, as amended, (the Act) established the VICP. The VICP went into effect on October 1, 1988 and is a Federal "no-fault" system designed to compensate individuals or families of individuals, who have been injured by covered childhood vaccines, whether administered in the private or public sector.) それまでは、副反応で障害が生じた場合は、訴訟を起こして賠償金を請求するしか方法はなかったものが、VICPができたことによって、ワクチンメーカーや医療関係者、国などの責任追及をせずとも、補償を受けることができるようになりました。

 この制度のおかげで、ワクチンメーカーは製造上の瑕疵がなければ、訴訟のリスクを負わなくて済むようになりました。日本にはこれがないので、責任を免除しろと言ってきているわけです。しかし、この責任を免除すると、ワクチン禍の被害者は救われないことになります。日本は感染症対策の後進国です。法律の整備すらなされていません。はしか(麻疹)がいまだ流行する先進国は日本以外にはないそうです。

 2009年8月26日の読売新聞の記事からです。

 舛添厚生労働相は8月26日、新型インフルエンザ用のワクチン接種によって、副作用(副反応)が出た場合に、被害者を救済する補償体制構築をめざす特別措置法を、衆院選後の国会に提出する意向を明らかにした。政府は国内生産で不足するワクチンを輸入する方針だが、海外メーカーは副作用が出た場合も免責するよう求めているため、輸入の前提として補償体制の構築を急ぐべきだと判断した。

 ワクチンなどの医薬品を輸入する場合、安全性を確認する臨床試験(治験)が行われ、5年程度かかります。それでは今回の状況では間に合わないため、舛添要一厚生労働相は8月25日の会見で「特例承認になると思う」との見解を示しました。「特例承認」は、緊急時に限ってですが、日本と同程度の審査態勢が整った国であれば、最小限の治験で承認が可能となる制度です。いままで適用された例はありません。制度上は治験を行わずに輸入することも可能なのだそうですが、「数100人でもいいから治験はすべきだ」(国立感染症研究所感染症情報センターの岡部信彦センター長)と指摘する人もいます。海外メーカーの新型インフルエンザ用のワクチンは免疫力を強めるための製剤を添加するなど国内メーカーのワクチンと製造方法が異なるため、安全性に疑問を抱く専門家も多いのだそうです。



 数ヵ月後には、世界ほぼ同時にインフルエンザワクチンが接種されることになります。インフルエンザワクチンの有効性が世界規模で検証されることになります。ワクチン禍が起こる確率(安全性の問題)とワクチンの有効性をめぐって、壮大な試験場に世界はなるのです。過去の例によると、予防接種後に心肺停止や肝不全などで死亡する人は、5300万人に接種が行われたとすると、およそ18人になります。輸入ワクチンを用いると、これを「少なくとも18人」という表現にすべきかも知れません。ワクチンによって重症化せずに命を救われる人たちがこの数百倍ほどもいたとしても、この数字を日本人は冷静に受け止めることができるのでしょうか。

          (この項 健人のパパ)

(追記) 2009年8月27日の時事通信の記事からです。

 新型インフルエンザの感染拡大を受け、舛添要一厚生労働相は8月27日、記者会見し、「9月中に政府方針を決定し、10月下旬からワクチン接種を開始する」と述べた。不足分を補う輸入ワクチンについては「安全性を確保したい」とし、臨床試験(治験)を実施する方針を明らかにした。舛添厚労相は接種開始を急ぐ意向を示してきたが、26日の専門家との会合で、出席者から「輸入ワクチンには添加物があり、副作用の有無が不明」と慎重な判断を求める意見が続出。こうした声を受け、同相は「100例でも治験をやりたい」と説明した。
 
 2009年8月27日の時事通信の記事からです。

 長野市は27日、新型インフルエンザに感染し肺炎を併発、重症となっていた同市近郊の30代の男性が同日死亡したと発表した。死因は肺炎による呼吸不全で、重い慢性心不全を患っていたという。国内で新型インフルエンザ感染者の死亡が確認されたのはこれで5人目。
 同市によると、男性は20日に咳や下痢などの症状を訴え、23日に37.9度の熱が出たため市内の医療機関を受診。症状が改善せず25日に同市の病院に入院したが、26日朝呼吸不全となり、集中治療室(ICU)で治療を受けていたが、27日昼すぎ死亡した。


 どのような状況でどのように病状が進行すると危険なのかを知ることが自分の身を守るのに役に立つであろうと考え、しばらくニュースを追跡します。

1例目(産経新聞による)
男性、57歳、慢性腎不全、沖縄県
9日午後、喉の痛みを訴えた。
10日の透析治療中に37度台の熱があったが、簡易検査は陰性だった。
12日の透析中に39度まで熱が上がったため再度、簡易検査を実施。インフルエンザA型陽性と判明した。
男性はタミフルを投与され、別の医療機関に入院した。
15日早朝に死亡した。肺炎を併発し、敗血症を起こしたことによる。

2例目(読売新聞による)
男性、77歳、高齢、神戸市
16日に38度の熱が出る。
17日朝、市内の透析医院で受診。簡易検査でA型陰性だったが、肺炎の疑いがあるとして総合病院に入院した。
同日午後、再検査でA型陽性を示し、呼吸困難などの症状があったため、医師がタミフルを投与した。
18日午前6時20分、急性気管支炎による肺気腫の悪化で死亡した。

3例目(毎日新聞による)
女性、81歳、心疾患、名古屋市
13日に39.5度の高熱があったため救急外来を受診してそのまま入院。
15日になって咳がひどくなったため個室に移った。簡易検査でA型陽性となる。
18日に遺伝子検査(PCR検査)の結果、新型インフルエンザと確認される。
19日午前1時半ごろ重症肺炎により死亡。

4例目(時事通信による)
女性。84歳、高齢、名古屋市
24日午前9時半ごろ、38.5度の熱が出たので、簡易検査を実施したが陰性。
25日に呼吸困難に陥った上、熱が上がったため、再び簡易検査したところ陽性だった。
同日午前10時25分ごろに誤嚥性肺炎で死亡した。

5例目(時事通信による)
男性、30代、慢性心不全、長野市
20日に咳や下痢などの症状を訴える。
23日に37.9度の熱が出たため市内の医療機関を受診。
25日に症状が改善せず、同市の病院に入院した。
26日朝呼吸不全となり、集中治療室(ICU)で治療を受けていた。
27日昼すぎ肺炎による呼吸不全で死亡した。

(追記)
6例目(読売新聞による)
女性、60歳代、肺癌、枕崎市
27日に発熱。
28日に新型インフルエンザの感染が確認された。
29日未明に急性呼吸器不全で死亡した。

7例目(読売新聞による)
女性、30歳代、姫路市
27日、発熱や咳、倦怠感などの症状があり、自宅近くの医院で受診し、A型インフルエンザの診断を受け、タミフルの処方を受けた。
29日午前1時30分頃、自宅で容体が急変し、姫路市内の病院に搬送されたが、午前4時過ぎ、死亡が確認された。

(追記)

 2009年11月13日配信の毎日新聞からです。

 厚生労働省は11月13日、新型インフルエンザワクチンを接種した富山県の70代男性が、接種翌日に急性呼吸不全で死亡したと発表した。男性には肺気腫の基礎疾患があり、主治医は「持病が原因で、ワクチン接種との関連はない」と判断している。厚労省は専門家に因果関係の検討を依頼し、安全性を改めて評価する。ワクチン接種後の死亡例は初めて。
 厚生労働省によると、男性は11日午後、通院先の医療機関でワクチンの接種を受けた。特に異状はなかったが、翌日夜、家族が死亡しているのを見つけた。男性は肺の機能が低下し、慢性呼吸不全の状態だったという。
 使われたワクチンは化学及血清療法研究所(熊本市)の製品で、同じ製造番号のワクチンは約2万6500本(約48万回分)出荷されている。13日までに、この死亡例以外に58件の副作用報告があったが、頻度は他製品と大差ないという。


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 ローマの観光スポットは、バチカン市国を除くと、その殆どが北のスペイン広場(スパーニャ広場)、南のコロッセオ、東のテルミニ駅、西のナヴォーナ広場を頂点とする菱形の内部に納まります。対角線の長さは2kmほど。対角線をまっすぐ進める通りはありませんが、直線で歩けるならば30分ほどになります。





 この菱形の右上と右下の辺には地下鉄が走っています。テルミニ駅から北西方向へ、レプブリカ、バルベリーニ、スパーニャ、、、と続く地下鉄A線と、テルミニ駅から南西方向へ、カヴール、コロッセオ、、、と続く地下鉄B線です。ローマの地下鉄は、Xの字状に2路線走っており、その交差するところがテルミニ駅です。



 映画「ローマの休日(Roman Holiday)」でオードリー・ヘップバーン(Audrey Hepburn)がジェラートを口にした137段の階段のある「スペイン広場(Piazza di Spagna)」(最寄り駅は「スパーニャ」)には、この地下鉄A線でテルミニ駅から行けそうですが、「テルミニ」駅から「スパーニャ」駅までは1600mほど。徒歩でも20分ほどで行くことができます。サンタ・マリア・デリ・アンジェリ教会(共和国広場に面している)、サンタ・マリア・デッラ・ヴィットリア教会(ベルニーニの「聖テレーザの法悦」という彫刻がある)、サンタ・マリア・デッラ・コンチェツィオーネ教会(「骸骨寺」)などに立ち寄りながら向かうには、やはり徒歩がいいのでしょう(教会は12時から16時という時間帯は避けた方が賢明です。入場できないことが多いからだそうです)。

 観光スポットへのアクセスは宿泊場所から考えるのが正しいでしょう。ヨーロッパのホテルは、東南アジアのホテルと比べれば、総じてかなり高い。宿泊コストをかけないためには、部屋の広さやアクセスのよさを犠牲にしなければなりません。アクセスのよさを犠牲にすると、「ホテル・アルバーニ・ローマ」は選択肢に入ってきます。観光スポットの集中する地域から北に離れ、ボルゲーゼ公園の北東の端の近くにあります。このホテルのある場所は、「スペイン広場」と「テルミニ駅」でほぼ正三角形を描きます。つまり、「スペイン広場」に行くにも「テルミニ駅」に行くにも徒歩で20分ほどかかることになります。ホテルのサイトでは、タクシーを利用すると、「テルミニ駅」から10分ほどで、10ユーロ(1300円ほど)程度で来られるとあります。

(info) AppleWorldでの「ホテル・アルバーニ・ローマ」(HOTEL ALBANI ROMA)の情報。






 食べる物にはお金をかけるが交通手段にはお金を渋る妻。でも、歩くのが苦手な妻。1300円をどう考えるでしょうか。歩くのは苦にならない私。食べることには関心の薄い私。さて、妥協点はあるのでしょうか。え! ホテルは街中にとる? そういう考え方もあったか。でも、高いよ。歩こうよ。

           (この項 健人のパパ)

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 紀元1世紀初めに、パレスチナで活動した「ナザレのイエス(Jesus of Nazareth)」と呼ばれた人物は、ユダヤ教の宗教的指導者である「ラビ(rabbi)」でした。ユダヤ教の1宗派の「エッセネ派(The Essenes)」の「洗礼者ヨハネ(John the Baptist)」から洗礼(入信の儀式)を受けていました。宗教的活動を始めたイエスは、様々な教えを説き、奇蹟を起こした結果、弟子の集団が構成されたといいます。ユダヤ教では、イスラエルを再建してダビデの王国を回復し、世界に平和をもたらす「救世主(Messiah、メシア)」という存在を考えます。ナザレのイエスがそのメシアであると考えるユダヤ教の1派がやがて「キリスト教(Christianity)」となっていきます。

 イエスの弟子の集団には高弟(弟子の中でも特にすぐれた者)が12人いて、「12使徒(Twelve Apostles)」と呼ばれます。ペテロ(Peter)、ヨハネ(John)、アンデレ(Andrew)、大ヤコブ(James the Greater)、ピリポ(Philip)、バルトロマイ(Bartholomew)、マタイ(Matthew)、トマス(Thomas)、小ヤコブ(James the Lesser)、タダイ(Thaddeus) 、シモン (Simon)、イスカリオテのユダ(Judas Iscariot)の12人です。「使徒行伝(Acts of the Apostles)」では、マティア(Matthia)を加えることでイスカリオテのユダ(Judas Iscariot)を12使徒から除きます。

 12使徒の1人、マタイは聖書(「マタイによる福音書9:9~13」、「ルカによる福音書5:12~39」)では次の記述に登場するだけです。

 さて、イエスはそこから進んで行かれ、マタイという人が收税所に座っているのを見て,「わたしに従ってきなさい」と言われた。すると、彼は立ち上がって、イエスに従った。それから、イエスが 家で食事の席についておられた時のことである。多くの徴税人や罪人たちが来て、イエスや弟子たちと共にその席に着いていた。パリサイ人たちはこれを見て、弟子たちに言った。「なぜ、あなた方の先生は、徴税人や罪人などと食事を共にするのか」。イエスはこれを聞いて言われた。「丈夫な人には 医者はいらない。いるのは病人である。『わたしが好むのは、哀れみであって、生贄ではない 』とはどういう意味か、学んできなさい。わたしが来たのは、善人を招くためではなく、罪人を招くためである」。
 (And as Jesus passed forth from thence, he saw a man, named Matthew, sitting at the receipt of custom: and he saith unto him, Follow me. And he arose, and followed him. And it came to pass, as Jesus sat at meat in the house, behold, many publicans and sinners came and sat down with him and his disciples. And when the Pharisees saw it, they said unto his disciples, Why eateth your Master with publicans and sinners? But when Jesus heard that, he said unto them, They that be whole need not a physician, but they that are sick. But go ye and learn what that meaneth, I will have mercy, and not sacrifice: for I am not come to call the righteous, but sinners to repentance.

 マタイ(「ルカによる福音書」ではレビ(レヴィ、Levi the publican)は「徴税人 (tax-collector)」でした。徴税人は、ローマ帝国に代わって税金の徴収を請け負っていました。当時の地中海周辺の世界を制覇したローマ帝国は、自ら税金を徴収するのではなく、現地から人を雇って「徴税人」にし、徴税の業務を請け負わせていました。現地採用の徴税人は現地の情報に精通しているので脱税行為を減らすことができ、また、ローマ帝国に対する反発も「徴税人」に吸収させることができたでしょう。

 徴税人は忌み嫌われる職業であったことは想像できます。侵略者であるローマ帝国の手先として行動するのですから、尊敬されるわけもありません。徴税人の多くは、自分の懐を肥やすためにローマ政府が決めた税額よりも多く税として徴収し、ピンハネをしていたことでしょう。また、金持ちの脱税を賄賂をもらって見逃したこともあるでしょう。マタイもその徴税人の1人でした。しかし、自分の職業に疑問を持ち苦悩していたと思われます。マタイは「イエス」の説得に応じ、イエスに従うことになります。

  イタリアバロックの先駆者と目されるカラヴァッジョ(カラヴァッジオ、Michelangelo Merisi da Caravaggio、1573-1610)は、聖書のこのエピソードを「聖マタイの召命(Vocazione di san Matteo)」として描きます。およそ3m四方(322×340cm)の大きな絵画です。マテュー・コンテレー(Matteu Contreil、イタリア語:Matteo Contarelli)枢機卿(フランス人、「マテュー」とは「マタイ」のフランス語音)が使徒マタイの故事を題材にした絵画を依頼したのです。「聖マタイの召命」は、「聖マタイの殉教(Martirio di san Matteo)」および「聖マタイの霊感(San Matteo e l'angelo)」との3連作です。



 イエスが入ってきたのにも気付かずに、うつむいて銭を数える若い男、徴税人の「マタイ」。周りの男たちはイエスの出現に驚愕している様子が見てとれます。やがて、イエスの言葉に気付き、マタイも顔を上げるでしょう。イエスが入ってきたドアから漏れる一筋の光が、顔を上げたマタイを照らすことになります。マタイは立ち上がり、イエスに従います。演劇的な表現に満ちた、動きの感じられる絵画です。

 静的なルネサンス絵画とは対照的に、バロック絵画は動的で、いまにも次のシーンへと動き出しそうです。明暗の対比をはっきりとさせ、舞台にあたるスポットライトのように光が描かれます。演劇的であるとか映画的であるとかと言ってもいいかも知れません。映画ファンの私は、ルーベンス、カラヴァッジョ、ベラスケスといった画家が好きです。その筆使いも映画フィルムの1コマのような輪郭のはっきりしない荒々しいものです。画集ではなく、原寸大の実物をぜひ見てみたいものです。

 ミケンラジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ(「カラヴァッジョ村のミケンラジェロ・メリージ」)によって1600年頃描かれた「聖マタイの召命」は、イタリアはローマのサン・ルイージ・デイ・フラチェージ教会(Chiesa di San Luigi dei Francesi、フランス人管轄教会)内のコントレー聖堂( Cappella Contarelli)に掲げられています。

 ローマには、観光スポットを巡る「110オープンバス」というバスがあります。このようなバスは多くの観光都市にあります。私たちが最近経験したところでは、クアラルンプールの「ホップオンホップオフバス」です(参考:「マレーシアへ」-KLでは、ホップオンホップオフバスに乗ろう!).。 「110オープンバス」は2階がオープンデッキになったバスで、約1時間30分で1周し、料金は20ユーロ(約2,600円)です(FULL PRICE TICKET Stop&Go validity 24 H € 20,00)。予めローマパスを購入しておくと、15ユーロで済みます(For Metrebus pass-holders or Roma Pass holders bus ticket valid 24 H € 15,00 )。

(参考) 「イタリアへ」-個人旅行のローマ観光にはローマパスが必需のようです。



 サン・ルイージ・デイ・フラチェージ教会は、ナヴォーナ広場(Piazza Navona)の近くにありますから、この広場の観光も兼ねて出かけてみるつもりです。「110オープン」のバス停は6番(Piazza Navona Stop)のようです。This stage winds its way from Piazza Sant' Andrea della Valle to Castel Sant' Angelo. Along the way, in Piazza Navona are the Fontana dei Fiumi and the Church of Sant' Agnese in Agone. This route also takes you past Palazzo Braschi, the Barracco Museum, Palazzo della Cancelleria, the Oratorio dei Filippini and the Churches of Santa Maria in Vallicella and San Giovanni dei Fiorentini.

          (この項 健人のパパ)

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 公立の小・中学校の場合、夏休み期間(「夏季長期学校休業期間」)は学校を管轄する市町村教育委員会が定めています(公立の高等学校の場合は、都道府県教育委員会)。夏休み期間は全国一律にはならず、地域により期間の長短があります。7月21日頃から8月31日頃までが一般的ですが、北海道、東北地方、甲信地方の寒冷多雪地域などでは、8月20日頃までとしていて、夏休みが10日ほど短くなります(代わりに冬休みが長い)。

 新聞報道(8月22日配信の読売新聞)によると、8月19日(水曜日)に2学期を向かえた札幌市内のある公立小学校では、新学期初日には4人だった欠席者が翌20日には20人に増え、21日には全校児童の1割に当たる60人が欠席し、32人が早退したといいます。このうちの25人がインフルエンザA(いわゆる「新型インフルエンザ」)と確認され、22日から1週間の臨時休校になりました。

 大阪府教育委員会は「長期の休業は影響が多いとの意見が多く寄せられため」、感染力や潜伏期間などを考慮して(5~6月の新型インフルエンザの罹患者のデータ分析から、潜伏期間は2~3日、患者と接触しても5日目以降は発症しないと確認)、学級閉鎖の基準を緩和。学級閉鎖を実施する感染者数を5人以上とし、学級閉鎖の日数を4日間に改めたそうです。

 東京都の公立の小中学校1945校のうち、その18%ほどにあたる350校では、25日(火曜日)から2学期が始まります。感染爆発の引き金となる「濃厚接触」の「場」としての「学校」。感染を抑止する手段を講じておかないと(といって、何か有効な手段があるのでしょうか)、学校から地域へと急速に感染が広がっていきます。「ハイリスク群」の人たちを脅かすことになります。しかし、学級閉鎖、学年閉鎖、休校という手段をとってもいつまでも続けられるわけもなく、感染して免疫を獲得する者が増えて、「集団免疫」という壁ができあがるまでは、感染拡大はしばらくの間続くことになりそうです。

 東北大学大学院医学系研究科微生物分野教授「押谷仁」氏のお話しによると、インフルエンザA(H1N1)に感染して重症化する場合、基本的にはウイルス性肺炎で、急性呼吸窮迫症候群(Acute respiratory distress syndrome、 ARDS)という重症の肺の障害を起こすのだそうです。ウイルス性肺炎は、高度な医療でも、治療が非常に難しく、このような状態になってから抗ウイルス薬で治療しても、容易には救命は望めないようです。肺に空気が入っていかなくなり、呼吸不全で亡くなっていくそうです。

 インフルエンザウイルスが下気道にも達し、肺が重度の炎症を起こすとインタ-フェロンなどのサイトカイン類はウイルスを攻撃して死滅させようとしますが、正常な細胞まで攻撃してしまいます。その結果、正常の肺の機能である酸素を取り入れて二酸化炭素を排出する働きができなくなり、呼吸困難が生じることになります。症状としては、肺機能の低下により、1回の換気量が少なくなり、頻呼吸が現れます。これを急性呼吸窮迫症候群と言います。

 2009年08月19日の読売新聞の記事です。

 神戸市は18日、新型インフルエンザに感染した同市垂水区の男性(77)が市内の病院で死亡したと発表した。
 発表によると、男性は16日に38度の熱が出て、17日朝、市内の透析医院で受診。簡易検査でA型陰性だったが、肺炎の疑いがあるとして総合病院に入院した。
 同日午後、再検査でA型陽性を示し、呼吸困難などの症状があったため、医師がタミフルを投与したが、18日午前6時20分、急性気管支炎による肺気腫の悪化で死亡した。約9時間後、遺伝子検査で新型インフルの陽性が確認された。


 「ハイリスク群」に属さない、若くて基礎疾患を持たない健康な人たちが、割合は少ないが重症化しているのだそうです。若い人たちはウイルスに対してほとんど免疫を持っていない。そのため、ウイルスが体内に入ったとき、呼吸器を中心として、おそらく通常の季節性インフルエンザよりもずっと速く体内で増殖する。それをコントロールできなくなった人たちが重症化していると考えることができるようです。

 2009年08月20日の沖縄タイムスの記事です。ぜんそくも重症化するかなり大きな危険因子であること、感染初期段階の「簡易検査」の信頼性がかなり低いことが読み取れます。

 沖縄県新型インフルエンザ対策本部は8月19日、県内で3人の新型インフルの重症患者が確認されたと報告した。県中部地区在住の13歳女子中学生、南部地区在住の1歳男児、同じく11歳女子小学生の3人。1歳男児にはぜんそくの基礎疾患があったが、ほか2人はなかった。いずれも入院中で、人工呼吸器で管理されている。
 基礎疾患がなかった13歳女子は16日に発熱し、17日から咳や呼吸困難があった。18日に呼吸の状態が悪化したため集中治療室(ICU)に入院した。同じく11歳女児も16日から38.5度の発熱。簡易検査では陰性だったが、18日に再受診した際にA型陽性が判明。呼吸困難があったためICUに入院し、インフルエンザ性の心筋炎と診断されている。


 重症化してウイルス性肺炎を起こした人はICU(集中治療室)で人工呼吸器を使う必要があります。しかし、医療崩壊が進む日本では、ICUのベッド数や人工呼吸器の数が非常に限られているそうです。救える命も救えなくなる事態が起こりえます。感染拡大で、医療従事者に大きな負担がかかり、医療行為自体が立ち行かなくなることも予想されます。

 小学生を持つ私たちはどのように行動すればよいのでしょうか。感染を免れることが「最善」でしょうが、感染爆発で医療体制が崩壊する前に感染して手厚い治療を受けた方が「次善」ということにもなりそうです。

                 (この項 健人のパパ)

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 妻「あみ」が不満を漏らしています。妻は旅行に出かけたいのですが、私は、インフルエンザA(H1N1)(いわゆる「新型インフルエンザ」)の世界的大流行で、海外で感染することを恐れて、ワクチンの接種を受けられるようになるまでと、待たせています。

妻「ワクチンの生産が間に合わないんだって?」
私「そう。国内のメーカーは今年中には1400万人分ほどしか生産できないんだって。」 
「それって、どの程度の量なの?」
「毎年のワクチン需要は1000万本から1200万本程度だそうだよ。」
「それじゃ、間に合うんじゃないの。」
「そうは行かないんだ。普段はワクチンを打たない人たちも今回は受けるだろうから、それじゃぜんぜん足りないだろうね。」
「どうしてそんなことになるの。そんな貧弱な製造体制なの。」
「そうだね。これが鳥インフルエンザだったらどうするんだろうね。」
「そうよ。どうするのよ。」
「日本のワクチン行政の貧困だね。」
「なぜなの。」
「1990年代に予防接種禍集団訴訟というのがあってね。」
「知ってる。」
「それでね、予防接種法が改正されて、予防接種は義務接種から勧奨接種になって、大手メーカーはワクチン製造から撤退してしまったのさ。」
「それで、製造能力が低い、、、」
「そう。」
「アメリカはどうなの?」
「アメリカでも同じようなことが起きたんだけど、アメリカでは法律を作ったんだ。無過失補償制度だね。」
「それは何?」
「ワクチン1本あたり75セントの税金をかけて基金を作り、そこから接種禍の被害者に補償をする制度さ。」
「日本にはないの?」
「ない。」
「話を戻すけど、ワクチンが足りないのをそのままにしておくの?」
「輸入しようとしているのさ。アメリカでは大手のメーカーが作っているからね。製造能力が高いんだよ。」
「じゃ大丈夫なんじゃない。」
「どうだろう。無過失補償制度のない日本に訴訟リスクを承知で輸出してくれるか、、、」
「そんな!」

 アメリカでは、1988年に、National Vaccine Injury Compensation Program (VICP)が設立され、ワクチンによる副反応で障害が生じたときには、十分な補償を受けることができるようになっています。(The National Childhood Vaccine Injury Act of 1986, as amended, (the Act) established the VICP. The VICP went into effect on October 1, 1988 and is a Federal "no-fault" system designed to compensate individuals or families of individuals, who have been injured by covered childhood vaccines, whether administered in the private or public sector.) それまでは、副反応で障害が生じた場合は、訴訟を起こして賠償金を請求するしか方法はなかったものが、VICPができたことによって、ワクチンメーカーや医療関係者、国などの責任追及をせずとも、補償を受けることができるようになりました。

私「君はワクチンさえあれば大丈夫だと考えているかもしれないけど、そうでもないんだよ。」
妻「さっきのワクチン禍ね。」
「そう。まず安全性の問題だね。副反応は100人に1人くらいは起こるものらしいよ。発熱や発疹だね。」
「私もインフルエンザのワクチンを打つと風邪にかかったような症状が2~3日続くの。」
「それも副反応と言うのかも知れないね。でも、重篤な副反応は大原麗子が患っていたギランバレー症候群だろうね。」
「運動神経が侵されて、手や足に力が入らなくなる病気ね。よく転んでしまったそうね。大原麗子さん、亡くなったのよね。」
「かわいそうだったね。」
「ほんとよね。孤独死だものね。」
・・・
「つぎは有効性の問題。」
「効き目があるかってことね。」
「そう。学説によっては、感染を防ぐ効果は低く、ただ重症化を防ぐ効果があるに過ぎないとするものもあるんだ。」
「でも重症化しなければ、ハイリスク群でない私たちにはある意味十分じゃない?」
「そうは言えるね。アルゼンチンの厚生省が新型インフルエンザの感染者の追跡調査をしてレポートを出しているんだけど、死亡者の半分はハイリスク群ではなかったそうだよ。」
「えっ!そうなの。」
「女性の死亡者の5人に1人は妊婦さんだったようだけど、この人たちはハイリスク群の人たちだよね。それと同じ5人に1人は肥満だったそうだよ。心疾患や慢性呼吸器疾患の人よりも死亡率は高いんだ。」
「肥満ってどのくらいのものを言うの?」
「それはわからない。病的なものを言うのかも知れない。タイでも111人の死亡者のなかで肥満の人の割合が高いそうだよ。」
「肥満で基礎疾患があると、リスクは高いということね。」
「そう。」
・・・
「で、今年中にイタリアには行けるの?どうなの?」
「わからない、、、」

 妻の苛立ちは続きます。

(参考) IDSCの「新型インフルエンザの臨床像(暫定報告)」を読む(1)
     IDSCの「新型インフルエンザの臨床像(暫定報告)」を読む(2)

(追記) 2009年8月22日配信の読売新聞の記事からです。

 肥満などメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)や妊娠は、新型インフルエンザによる死亡の危険性を高める恐れがあることが、フランスの研究チームの分析で明らかになった。肥満は、これまでの季節性インフルエンザでは死亡の危険因子とは考えられておらず、新型の特徴である可能性もある。研究論文は欧州の専門誌(電子版)に掲載された。
 研究チームは、世界保健機関などが発表したデータをもとに、4月~7月に新型インフルエンザで死亡した27カ国の574人を分析。生前の健康状態が分かる241人のうち9割に持病があった。最も多かったのが、そのうちの3割を占める肥満や糖尿病などのメタボ患者。妊婦は、死亡した20~39歳の女性の3割で、季節性インフルエンザと同様に新型でも死亡の危険性が高まるとみられる。


         (この項 健人のパパ)

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 現在、日本のインフルエンザ・ワクチンの製造メーカーは、「鶏胚細胞培養法(purified chick embryo cell culture、PCEC)」という方法で製造しています。

 米国カリフォルニア州の感染者から分離されたインフルエンザA(H1N1)(いわゆる「新型インフルエンザ」)のウイルス株2種が、「アメリカ疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention、CDC)」から、5月初めに日本に送られてきました。国立感染症研究所(National Institute of Infectious Diseases、NIID)は、そのうちの1株を使い、ワクチン製造用の種株を作製し、6月には日本のワクチンメーカーの手に渡しました。 ワクチンメーカーは、その種株を「発育鶏卵(孵化鶏卵、有精卵が孵化するまでの発育過程の鶏卵)に接種して増殖させます。増殖したワクチンから、免疫防御に関与する部分を取り出して、加工してワクチンとする(「成分ワクチン」)のです。

(参考) 人獣共通感染症と「豚インフルエンザ」、「鳥インフルエンザ」

 ところがです。当初、年内に2500万本のワクチンの生産が可能としていたものが、ウィルスの増殖能力が低く、7月には年内生産量をその60%ほどの1400万~1700万本に下方修正。種株のインフルエンザウイルスに「卵アレルギー」があったかのようです。インフルエンザ対策として、症状の重症化を防ぐ効果が期待されるワクチンを、「5300万人分を用意したい」とする厚生労働省。輸入によって2000万本を確保することも打ち出していますが、それでも「5300万人分」には届かないことになります。多くの国がワクチンを渇望する中でうまく輸入することができたとしても、総計で3400万~3700万本なのです。望む数の60%強にしかならないのです。

 そこで、ワクチン接種に優先順位をつけて対応せざるを得なくなります。まず最優先されるべきは、医療関係者。インフルエンザAとの闘いで最前線に立つのはお医者さんと看護士さんです。彼らに無事でいてもらわなければ、インフルエンザ感染時に適切な治療が受けられません。つぎは、いわゆる「ハイリスク群」の人たち。インフルエンザに感染すると重症化して、ときには死に至る可能性がある人たちです(8月21日現在で、「ハイリスク群」から3人の死亡者)。

 いまのところ、日本では「非ハイリスク群」からは死亡者は出ていません。やはり、「ハイリスク群」>「非ハイリスク群」 となるのは当然のことと言えます。運悪く、ワクチンを接種できるようになる前にこのインフルエンザAにかかったとしても、適切な治療を受ければ「非ハイリスク群」に属する私たちは重症化することなく回復し、守備範囲の広い、ほぼ「永久」の免疫を獲得できる(ワクチンによって獲得した免疫は1年も持たず、型が完全に一致したものにしか効き目がない)のです。

 私たち「非ハイリスク群」は、数少ないインフルエンザワクチンに先を争って群がることは慎みたいところです。インフルエンザAに感染しても、「永久免疫の獲得」という特典が付いてくるのです。毎年、「新型インフルエンザ用ワクチン」の接種を受ける必要はないのです。ただ、好んで感染する必要は当然ありません。手洗い、マスク着用は励行したいものです。「ハイリスク群」の人たちの周辺にウイルスを持ち込むことになるからです。

 また、マスクが売れ出しているといいます。数日前には、マスクを買い求める人は多くはありませんでした。きょうは店頭に「1人2箱(60枚入り)まで」と制限が加えられていました。「泥縄式」(泥棒を捕まえてから縄をなう(作る)というリスクコントロールのなさを言う)に行動する人が多いのでしょうか。タイでは、2009年7月30日の時点で、8,877人がインフルエンザAに感染し、そのうち65人が死亡していたのです。8月18日の時点では111人が死亡。この出来事を「対岸の火事」だと考えていたのでしょうか。テレビも多くはこのことについて語りませんでした。マスコミにも責任があります。女性芸能人の覚醒剤使用に必要以上に多くの時間を割く必要はありません。インフルエンザAについて手を抜いた報道をすることは許されません。的確に情報を与える(不安を煽らずに)ことがマスコミの使命なのです。

(参考) 深刻化するタイのインフルエンザ拡大 - 秋の日本との相違は?

          (この項 健人のパパ)

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 オランダのユトレヒト大学の研究グループは、アメリカとカナダで確認されたインフルエンザA(H1N1)(いわゆる「新型インフルエンザ」)の患者3400人のデータを基に、発症した人のうち何人が死亡するのかを示す「致死率」を計算したようです。その結果によれば、新型インフルエンザ致死率は0.5パーセント程度と推定されるようです。季節性インフルエンザの致死率が高くて0.1パーセントであるのに比べると桁違いに高いことになります。季節性インフルエンザでは罹患者1,000人に1人が亡くなりますが、インフルエンザAでは200人に1人は亡くなってしまうのです。

 タイに旅行に出ようとして、インフルエンザAの大流行で断念したために、タイのインフルエンザAの感染状況を観察していますが、タイの厚生省の発表では、タイ国内での死者は111人に達したそうです。8月9日から15日の間の死者は男性7人、女性7人で、その多くが、肥満、糖尿病、慢性肺疾患、腎臓疾患などの基礎疾患があったようです。(Of them, most have underlying diseases such as lung problems, obesity, diabetes and kidney disorder. August 18,2009、THE NATION) いわゆる「ハイリスク群」に属する人たちですね。

 ハイリスク群とは、インフルエンザに感染すると、重症化や合併症を引き起こす可能性の高いグループのことで下記の人たちです。
 (1) 65歳以上の高齢者
 (2)妊娠28週以降の妊婦
 (3)慢性肺疾患(肺気腫、気管支喘息、肺線維症、肺結核など)を持っている人
 (3)心疾患(僧帽弁膜症・鬱血性心不全など)を持っている人
 (4)腎疾患(慢性賢不全・血液透析患者・腎移植患者など)を持っている人
 (5)代謝異常(糖尿病・アジソン病など)を持っている人
 (6)免疫不全状態の患者

 タイでは、雨季から冬の季節へと移行する時期(通常、10月で雨季は終わり、11月から乾季に入る)にインフルエンザA(H1N1)は一層容易に蔓延するので、警戒を緩めてはいけないようです。日本人観光客にとっても、危険な時期と言えましょう。(Paijit urged people not to lower their guard against the influenza A(H1N1) because the disease would likely spread more easily during the upcoming transition period from rainy season to winter.

 タイの医療関係者のアドバイスは、私たちにも有用です。妊娠していたり、肥満であったり、慢性疾患があるなどの「ハイリスク群」の人たちは、高熱をだしたり、下痢または頭痛がしたらすぐに、診察を受けなければなりません。(People in risky groups such as those having pregnancy, obesity, and chronic diseases should visit a doctor immediately after they have high fever, diarrhoea, or headache.

 「ハイリスク群」に属さない人でも、高熱、下痢、頭痛といった症状が改善しない場合は、症状が出てから24時間以内に治療を受けなければなりません。この時間が抗インフルエンザ治療薬の効果が大きく上がるタイム・リミットなのです。("For others, they should seek medical treatment within 24 hours if the symptoms do not improve," Paijit pointed out.

 心配な事例がいくつかあります。「ハイリスク群」ではない子供たちがインフルエンザAの感染で重症化するケースが報告されるようになってきていることです。沖縄県で、糖尿病や腎不全、心疾患などの基礎疾患のない小学生と中学生が重症化し、小学生はインフルエンザ性心筋炎を起こし、中学生は肺炎を起こして、呼吸困難に陥って人工呼吸器を装着し、集中治療を受けているそうです(8月19日)。また、他県では「インフルエンザ脳症」を起こしたケースも報告され(8月4日、大阪府の5歳の男の子、8月11日、茨城県の4歳の男の子など)、「ウイルスの病原性が変化したとは考えていない」という沖縄県対策本部の言葉も安心を与えてはくれません。

 名古屋市は8月19日、新型インフルエンザに感染した81歳の女性が重症肺炎で死亡したと発表しました。女性には多発性骨髄腫と心不全の疾患があり、免疫力が低下しているところに、新型インフルエンザに感染し亡くなったとみられています。新型インフルエンザ感染者の死亡は全国で3人めで、いずれも「ハイリスク群」に属する人たちです。女性が入院した病院では院内感染が起こったようで、女性を最初に診察した医師と、入院患者2人、看護師3人の計6人が簡易検査でA型インフルエンザ陽性となり、新型の感染が疑われているといいます。

 私たちは、迫りくるインフルエンザAに対して、素手に近い「マスク」と「手洗い」という武器で戦うしかないのでしょうか。我が家には、基礎疾患はないが高齢の母がいます。新学期が始まり、我が子「健人」がウイルスを我が家に持ち込むことを恐れています。

 2009年8月19日配信の毎日新聞の記事からです。

 厚生労働省は19日、新型インフルエンザの集団感染の報告が10~16日の1週間で662件に上り、前週(3~9日)より109件増えた、と発表した。3~9日の定点医療機関1施設当たりの患者数報告は0.99で、流行水準とされる「1」の目前となっており、10日以降は既に1を超えて流行期に入っている可能性が高い。舛添要一厚労相は「第1波の本格的な流行が既に始まったと考えられる」と19日午前の記者会見で述べたが、数字的にも裏付けられた。

         (この項 健人のパパ)

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 残念なことに、インフルエンザA(いわゆる「新型インフルエンザ」)で2人目に死者が出てしまいました(2009年8月18日)。重度の肺気腫と糖尿病、高血圧の基礎疾患があり、腎不全で人工透析を受けていた77歳の男性が急性気管支炎による肺気腫の悪化で死亡してしまいました。1人めの人と同様、いわゆる「ハイリスク群」に属する人でした。インフルエンザ治療薬のタミフルなどを投与されましたが、その効果はありませんでした。インフルエンザA(H1N1)のウイルスがタミフルへの耐性を持っていたのでしょうか、それともハイリスク要因で重症化した感染者には効かないのでしょうか。

 「ハイリスク群」の人たちが危険に晒されています。ハイリスク群とは、インフルエンザに感染すると、重症化や合併症を引き起こす可能性の高いグループのことで下記の人たちです。
 (1) 65歳以上の高齢者
 (2)妊娠28週以降の妊婦
 (3)慢性肺疾患(肺気腫、気管支喘息、肺線維症、肺結核など)を持っている人
 (3)心疾患(僧帽弁膜症・鬱血性心不全など)を持っている人
 (4)腎疾患(慢性賢不全・血液透析患者・腎移植患者など)を持っている人
 (5)代謝異常(糖尿病・アジソン病など)を持っている人
 (6)免疫不全状態の患者

 ワクチンが生産ラインに乗り、私たちが手にできるまでにはまだ2か月以上待たなければなりません。9月になると学校が一斉に始まります。学校は感染を一気に広げる「場」となります。ウイルスを「ハイリスク群」の人たちのすぐ周りに持ち込んでしまいます。「ハイリスク群」の人たちの多くは、私たちと生活をともにしているのです。

  インフルエンザA(H1N1)のウイルスと戦う武器はいまのところ、マスクと手洗いぐらいしかありません。ワクチンという強力な援軍の到着はまだ先なのです。それなのに、大流行という爆弾の導火線には火が点いており、9月の中頃に向けて導火線は短くなっていきます。戦う方法はないのでしょうか。「ハイリスク群」の人たちを見殺しにはできません。知らずに「ハイリスク群」の人たちの密度の高い病院などの施設にウイルスが持ち込まれることはありうることです。

 「感染中断免疫(Aborted-Infection Immunity)」という考え方があります。これは、「新型インフルエンザにかかり、熱が出たらすぐにタミフルなどの抗ウイルス剤で重症化を防ぐために治療を開始します。発熱症状が出てから数時間の間に治療を開始すれば、症状は軽くて済みますし、回復後は免疫も獲得できます。」「我々は感染症に罹患し、回復すると免疫を獲得します。一度罹患することが免疫獲得の条件なわけです。」という考え方です。

 これを敷衍すれば、ワクチンのない現状において志願者に一定の施設内で安全に「免疫」を獲得させることができます。「ハイリスク群」に日常的に触れる人たちなどが「集団免疫(herd immunity)」(集団の構成員の一定数が免疫を獲得すると、集団の中に感染患者が出ても、集団の中で感染が阻止されることを意味し、その結果、子供や老人などの免疫力が弱い(「免疫学的弱者」、「ハイリスク群」)者たちが感染を免れることができる)で壁を作り、護るということもできそうです。このかなり敷衍した考え方は、「pox party」(水疱瘡に対する免疫をつけるために、故意に水疱瘡に感染する行為。大人の水疱瘡は重症化することがあるので、子供のうちに免疫を獲得しておいた方がよいとも言える)の考え方と似た側面を持ち、慎重さも要求されそうです。

            (この項 健人のパパ)

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