POWERFUL MOMが行く!
多忙な中でも,美味しい物を食べ歩き,料理を工夫し,旅行を楽しむ私の日常を綴ります。
 





 夫と二人で軽井沢の「丸山珈琲」の東京進出2店舗目(丸山珈琲は20数年前(1991年)に軽井沢で創業された珈琲店です)、西麻布店の「プレオープン」に行って来ました。その前日、尾山台店(2012年開店)に友人とコーヒーを買いに行った際に、「是非プレオープンに行かれては」と、スタッフの方々に勧められたのです。

 もう最高でした。フルーツジュースのような爽やかな酸味を持ったコーヒーをおいしくいただけて大変に満足しています。

 いろいろなコーヒーの試飲をさせていただきました。フレンチプレスで淹れたもの、ゴールドドリップで淹れたもの、日本に2台しかないというサイフォンを半自動化したような「Alpha Dominche(アルファ・ドミンチェ社)」のコーヒー抽出装置「スチームパンク(steampunk brewing system)」で淹れたもの(スチームパンクの日本最初の導入は、「村澤智之」氏がディレクターを務めるTHE COFFEESHOP ROAST WORKS でした)、といろいろと試飲し、最後にエスプレッソ、カプチーノで締めくくりました。




 このスチームパンクというコーヒー抽出装置は、“A $15,000 American-made machine is the latest entrant to the craft-coffee world”という記事が見つかることから、150万円程度するようです。

 抽出方法それぞれに特徴があります。私の舌が敏感過ぎるのか、フレンチプレスとゴールドフィルターで淹れたコーヒーには雑味を感じてしまいました。夫も私も一番気にいったコーヒーは、フルーツの酸味を感じる、2013年ブラジルレイトハーベストCOE(2013 Brazil Late Harvest Cup of Excellence)3位の「ファゼンダJR(Fazenda Junqueira Reis、ジュンケイラ・ヘイス農園)」でした。

 カップ・オブ・エクセレンス(COE)とは、各生産国において、その年の最高のコーヒーを選出するために開催される、国際的なコーヒー品評会(competition and auction program)です。「カップ・オブ・エクセレンス(COE)」ブラジルは、ブラジルにおける品評会です。

 その中に「レイトハーベスト(late harvest。early harvestに対する言葉)」という部門があります。コーヒーチェリー(コーヒーの木の実のこと。赤く熟したコーヒーの実がサクランボに似ていることから)を生豆に加工処理する方法のひとつに「ナチュラル精製」があり、他に水洗式(ウォッシュト)、セミウォッシュトなどがあります。ナチュラル精製は、収穫したコーヒーチェリーをそのまま自然乾燥し精製する方法で、果肉に含まれる成分がコーヒー生豆に凝縮すると言われているようです。

 水洗式精製と非水洗式精製とでは、コーヒー豆となる種子(生豆)を「乾燥させる→貯蔵庫で寝かせる→脱穀機にかける→生豆」という最終工程は同じなのですが、収穫したコーヒーチェリーをそのまま乾燥させるのが非水洗式(ナチュラル)で、果肉除去機で外皮と果肉を取り除いて、発酵漕に漬け、水洗いするのが水洗式(washed、ウオッシュト)のようです。果肉除去機で外皮を取り除いて、内果皮のぬめりを残したまま乾燥させる、「パルプトナチュラル精製」という精製方法もあるようです。

 レイトハーベストは、ナチュラル精製によって生産されたコーヒー豆だけを集めた品評会です。ナチュラル精製のコーヒーは、コーヒーが持つ自然な「コク」や「甘み」に、フルーツのような甘い香りが加わり、バランスのとれた上質な味わいが特長となります。2013年ブラジルレイトハーベストCOE第1位は、「サン・ジョアキン農園」のコーヒーでした。

 UCCは、ブラジルレイトハーベストCOE第1位「サン・ジョアキン農園」を2013年9月4日から、1杯800円で「珈琲館」などで提供していました。品質や希少性にこだわると、単一の産地(豆の生産地域と生産処理方法が明確で、ブレンドされていない)のコーヒー豆(シングルオリジン、single origin)に嗜好が向くようです。世界最高峰のコーヒーをこだわりの抽出方法で飲んでみたいという欲求が私たちにはあるのです。

(参考) 「この世で最高のコーヒーの行方」(食べログ)

 その順位は、第1位、農園“Sítio São Joaquim”(サン・ジョアキム)」、第2位、“São José”(サン・ジョゼ)、第3位、“JR (Junqueira Reis) ”(ジュンケイラ・ヘイス)でした。第3位のコーヒー豆を入手した丸山珈琲の創業者「丸山健太郎」氏は、日本スペシャルティコーヒー協会の理事であるとともに、カップ・オブ・エクセレンスの国際審査員なのだそうです(Kentaro has been a part of many of the Cup of Excellence juries over the years.)。



 コーヒーの美味しさは「焙煎で全て決まる」と思っていた丸山健太郎氏は、海外で急速に普及していた「スペシャルティコーヒー」という全く新しいコーヒーの存在を知ることになります。カップ・オブ・エクセレンス(COE)のプログラムで産地に行く機会を得て、「本当のコーヒーの品質は生産現場で決まること」を痛感した丸山健太郎氏は、2008年(3店舗目の小諸店開店の年)にグラテマラCOE第1位(スコア93.68。第2位と4ポイント近い差があった)の「エル・インヘルト(El Injerto Ⅰ)農園」のコーヒー豆を当時の史上最高価格で落札することになります。

 大手ではなく、日本の一地方のコーヒー屋が、一番高値をつけたということで、当時海外でもちょっとしたニュースになったようです。コーヒー豆の生産者からは、正当な値段をつけてくれた、という評価を受ける一方、商社などからは、素人が買い付けに手を出すから、市場価格を無視して恥をさらした、と思われたようです。2012年に始まったメキシコCOEでは、2012年の第1位「ラス・フィンカス・デル・ススピロ(Las Fincas Del Suspiro)」を落札します。

 この脈絡で、大手「UCC」のブラジルレイトハーベストCOE第1位「サン・ジョアキン農園」の独占を理解すべきなのでしょうか。業界に丸山健太郎氏の敵多し、と理解すべきなのでしょうか。生産者、商社などの中間業者、消費者、それぞれに主張があり、フェアトレード(fair trade、発展途上国の物品を適正な価格で継続的に購入することで、途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す活動)との折り合いが難しいところです。

 日本のバリスタチャンピオンの方やオーナーの「丸山健太郎」さんとお話しもして来ました。最高に楽しく、おいしい珈琲時間でした。「軽井沢本店」や星野ハルニレテラス内の「ハルニレテラス店」にも行ってみたい。こんなにおいしいのに「雨が降っているから」と出かけるのを渋った夫をまた説得しなくては!

 「ピーツ・コーヒー&ティー (Peet's Coffee & Tea)」、「ジム・レイノルズ (Jim Reynolds) 」 、「スターバックス(Starbucks)」、さかもとこーひーの「坂本孝文」氏など、丸山健太郎氏の周辺には面白い話しがありそうです。またの機会にそれに触れてみたいと思います。

       スチームパンクと鈴木 樹さん

(参考) テレビ東京の2013年10月3日放送のWBS(ワールドビジネスサテライト)特集「広がる地方発カフェ」から

  先週、東京で開かれたコーヒーの展示会。大手から中小まで、高品質なスペシャルティコーヒーをアピールする。会場の一角にたくさんの人が集まっていた。コーヒーを淹れる職人、バリスタの全国大会。地方から腕利きのバリスタが集まった。審査は2人の技術審判がコーヒーマシンを扱う手際や正確さを採点する。バリスタはこの日のために選んだ最高のコーヒー豆で勝負をかける。4人の審査員が香りや味、見た目などを採点する。
 (審査を受けているバリスタ)「チョコレートがコーティングされたような素晴らしい甘さをお楽しみいただけると思います。」
 プレゼンテーションや気配りも評価のポイントだ。
 「第1位は、有限会社丸山珈琲の井崎英典バリスタ」
 1位と2位を丸山珈琲が獲得。優勝した井崎バリスタは大会2連破を達成した。

 丸山珈琲とは長野県軽井沢にある評判のコーヒー店。ペンションの食堂だったという店内。20席ほどの小さな店だ。こちらの客、東京からわざわざ訪ねて来たという。
 (東京から来た客)「おいしいコーヒーが飲めるっていうのを聞いて。ちょっと感動してます。」

 大会で優勝したこのコーヒー店の秘密は、、、丸山珈琲の焙煎工場。社長に案内された倉庫には、世界各地の上質なコーヒー豆が積まれていた。これが生の豆。これを焙煎する。
 「これはコスタリカですね。これは、まあ、あの、トップロットっていうことで、彼らの中でも一番選りすぐりのいいロットだったみたいですね。」
 丸山社長は良質の豆を自分の目と足で探す。カフェ経営者と共同の組織を作り、中小企業でも産地からコーヒー豆を直接購入できる組織を自ら作り上げた。焙煎はもちろん自社で行う。社員が付きっ切りで豆の状態をチェックし、火の強さや温度を調整する。焙煎時間は15分から20分ほど。お湯を注ぎ、出来栄えを確かめる。勢いよく吸い込むと口の中で霧状に拡がり、香りや味がわかるという。
 (丸山社長)「焙煎が上手くいっているかどうかのチェックですかね。まあ、あの、何か異臭がしないかとか。深煎りなんで結構チョコレートみたいな濃い目の味が出ています。」

 焙煎工場の隣りは売店で、豆を買いに来る固定客も多い。
 (静岡県から来た客)「軽井沢に年に1度くらい宿泊に来ていて、必ずここに寄ってっていう、、、」
 (レポーター)「静岡に帰ってからも結構買われるんですか。」
 「そうですね。静岡でインターネットで注文して、、、」
 スペシャルティコーヒーと呼ばれる高品質コーヒーは、産地や生産者ごとに袋詰めされて、店頭に並ぶ。自慢のコーヒー豆はインターネットでも販売し、全国に配送。個人向け販売の3割を通販が占める。
 (丸山社長)「軽井沢は日本でも有数の観光地ということで、日本全国からお客さんがいらっしゃって、豆を買われて帰られて、で、飲まれて、家でもおいしいコーヒーが飲めるということで、じゃ、通販で取ってみようか。」

 去年秋、東京、世田谷区に進出した。この場所を選んだわけは、通信販売の客がもっとも多く住んでいるからだ。通販の客が2番目に多い港区。12月に東京2号店を出す予定だ。その物件の視察に来た。2号店は席数40席の大型店舗。コーヒーに関する講習会を開くイベントルームも備える。
 (丸山珈琲鈴木樹さん)「柱からカウンターになっていまして、そのままコの字形にカウンターができます。バリスタのコーヒーが淹れてる姿をしっかりとお客さまに見て楽しんで頂けるような、、、」
 (丸山社長)「大手の方もそうですし、中規模もそうですし、いろんな方が市場に入って来ている中で、だんだん細分化が進んでいて、スペシャルティの中でも、非常に高品質なものと、ま、あの、スタンダードなものと分かれてきています。スペシャルティコーヒーの中でも、ま、あの、一番上のトップ・オブ・トップといわれている部分を進んで行きたいなと思っています。」

 地方発のコーヒー店の新しい波。私たちの選択肢はますます広がりそうだ。


(参考) バリスタ「鈴木 樹(すずき みき)」さんは、「日本スペシャルティコーヒー協会」が主催する「ジャパン・バリスタ・チャンピオンシップ(JBC)」 で、2010年、2011年と連続優勝し、2011年の「ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ(WBC)」で世界5位、2012年のワールド・バリスタ・チャンピオンシップでは、世界4位でした。



(参考)  SBC信越放送「情報わんさか GO!GO!ワイド らじ☆カン」(月~金曜15:00~18:15)の中の毎週金曜日15時20分からのコーナー「珈琲アラウンド・ザ・ワールド」の「2013年12月20日放送分」から 

(MC 久保正彰)「丸山社長が新しいお店を出す何かきっかけと言うか、今度はこういう店、どこにとか、いろいろ考えられるでしょう。」

(丸山珈琲 丸山健太郎社長)「そうですね、まあ、あの、まず何でお店を増やすかということで言うと、何もその、チェーン店みたいにたくさんわーと作りたいというわけではなくて、実は、その、いいコーヒーが、ま、ま、直接買い付けに行っていますよね、そうすると、やっぱりいいコーヒーがたくさんあるんですよ。で、ついついたくさん買って来てしまうんですんね。お腹空いた状態でスーパーマーケットに行くみたいな感じなんですよ、そういう喩えがいいかどうかわかんないですけど、いいものがあるとちょっともう買わないわけにいかなくなるんですよ。そうすると、常に買い過ぎなんですよ。」

(MC 岸田奈緒美)「ああ、ちょっと豆の量がお店のキャパより多め、、、」

(丸山)「で、まだまだあるんです。私はいいと思う、私が高品質だと思うコーヒーはまだまだたくさんあって、しかもまだ手を付けていない産地もあるし、いずれね、って言われているところもあるんでね。いっぱいある。で、それを売るためにはお店を作んなきゃいけない、っていう感じですね。」

(久保)「それだけおいしいコーヒーを飲んでいただきたい、ということなんですね。何かわかりますね。産地に直接行ってらっしゃるから、あ、これも、これも、ってなっちゃうんですね。」

(丸山)「で、本当はね、通販で売ればいいんじゃないか、もっと売ればいいんじゃないか、例えば、もっと大々的に販売網を作ってやればいいんじゃないか、って言うんですけど。そうは言っても、農家が本当に顔を知っている、非常に小さなマイクロな商品ですので、もちろんそういう流通に流して売るんでもいいんですけど、やっぱりちゃんとわかる形で販売するとなると、直営店ということになるんですね。で、ま、実は、丸山珈琲ってカフェと思われることもあるんですけど、事実上、豆売り店というか、豆屋さんなんで、ま、どこにお店を出すんですかと言われたら、豆が売れるところというか、そのような豆を買ってくださる方がいるところというのが答えで、西麻布も、実は港区のあの辺にはもともとうちのお客さまがたくさんいるということで、そう意味で言うと、丸山珈琲の豆を望んでいる方のいるところはどこでも、というような言い方はある意味できるかも知れないですね。」


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 集団における疾病の発生状況や原因、対策などを研究する「疫学(epidemiology)」で扱う指標の1つに「相対リスク(relative risk、RR)」というものがあります。曝露群と非曝露群、発症群と非発症群で「四分表(分割表、contingency table)」を作り、発症率を2つの群で比較して示すものです。

 例えば、喫煙習慣と肺ガンの発症との関係について疫学的に調査するとします。喫煙習慣のあるグループが「曝露群(exposed group)」であり、喫煙習慣のないグループが「非曝露群(non-exposed group)」になります。タバコを吸うことを「曝露」と考えるのです。そして、将来どのくらいの人が肺ガンになるのかを観察します。肺ガンを発症したグループが「発症群」であり、肺ガンを発症していないグループが「非発症群」になります。



 四分表から、曝露群の発症率を A /(A+B)で、非曝露群の発症率を C /(C+D)で求めることができます。この曝露群の発症率を非曝露群の発症群で割ったものが相対リスクになります。例えば、曝露群の発症率が0.3で、非曝露群の発症率が0.1だとします。0.3/0.1=3 で、相対リスク(RR)は、3 ということになります。



 相対リスクが 1 であれば、曝露群と非曝露群で発症率に違いがないことを意味し、1 より小さければ、曝露群よりも非曝露群で発症率が高く、1 より大きければ、非曝露群よりも曝露群で発症率が高いことを意味します。上記の例で言うと、肺ガンの発症率は喫煙者群で高いことを意味するわけです。

 もう少し具体的に述べてみます。例えば、次のような調査をしたとします。A市の小学校在籍者をインフルエンザワクチン接種群と非接種群に分けます。ワクチンの接種状況は、本人や保護者への聞き取り調査で把握します。インフルエンザの罹患状況は、学校から報告されるインフルエンザ様疾患による出席停止者をインフルエンザ罹患者とします。その結果、小学校在籍者が2036名のところ、接種者は937名(接種率46.0%)であり、インフルエンザ罹患者は627名(罹患率30.8%)だったとします。

 さらに接種群での罹患者数(251名とする)と非接種群での罹患者数(376名)を把握します。ここでは、インフルエンザワクチンの接種を「曝露」と考えています。「曝露(exposure)」には、「風雨に直接曝される(さらされる)こと」から派生した、「細菌やウイルスなどの病原菌や薬品などの物質(通常は有害物質)に曝されること」という意味があります。



 上記の表のインフルエンザ罹患率は、インフルエンザワクチン接種者群で、251÷937=0.2678...から 26.8%であり、非接種者群で、376÷1099=0.3421...から 34.2%になります。26.8÷34.2=0.7638...で、相対リスクは 0.764 になります。1 より小さい数ですから、接種者群よりも非接種者群で罹患率が高いということになります(それぞれの罹患率を比べれば、相対リスクを求めなくてもどちらの群で罹患率が高いかは一目瞭然ではある。その差は 34.2-26.8=7.4)。

 インフルエンザワクチンの有効率をこの相対リスクから求めます。1 から相対リスクを差し引いた値に100を乗じた値(%)がワクチンによる発症予防の有効率となります。(1-0.764)×100=23.6で、有効率は 23.6%ということになります。

 老人福祉施設や病院に入所または入院している65歳以上の高齢者を対象として、インフルエンザワクチンの有効率を調べた研究があります。それによると、罹患の予防には有効率が34~55%であり、死亡を回避するには有効率が80%ほどであったようです。アメリカの65歳未満の健常な成人では、その有効率は70~90%という報告もあるようです。

(参考) 「今年(2011/12年シーズン)のインフルエンザワクチンは効く?効かない?

 ウイルスによる感染症は、最悪の場合、感染する⇒発症する⇒重症化する⇒死亡する、という経過を辿ります。感染しても発症しないこともあります。これを「不顕性感染(inapparent infection)」といいます。免疫機構がその機能を充分に発揮して、身体症状を示すまでには病原体の活動を許さないのです。不顕性感染の臨床上での応用が「弱毒生ワクチン(attenuated vaccine)」です。

 「予防」には各段階に応じて、発症予防(罹患予防)、重症化予防、死亡回避が考えられます。感染しても発症させない、発症しても重症化させない、重症化しても死亡に至らせない、という働きをワクチンに求めることになります。有効率と言っても、罹患予防では40%だが、重症化予防には80%であるということもありえます。

 そもそも「有効率40%」とはどんなことを意味するのでしょうか。これは「相対リスク」が0.6であるということであり、インフルエンザワクチンの接種者の発症率(罹患率)は、非接種者の発症率(罹患率)の6割だということです。ワクチンを接種したことで発症しないで済んだ人が、接種者×(非接種者の発症率-接種者の発症率)/100 人いることに理論上はなります。

(この記事は、未完成です。)

 

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 生物が異なった環境に移されて、次第にその環境に適応するような性質に変わることを「馴化(じゅんか、順化)」といいます。ウイルスを生物と呼ぶには疑問のあるところですが、インフルエンザウイルスは発育鶏卵(孵化鶏卵)内での増殖能力が低いため、ワクチン株に使用するには長期間にわたって、発育鶏卵での継代培養を続けて、「馴化」させなければなりません。

 日本での現在のインフルエンザワクチンは、ワクチン製造用のインフルエンザウイルスを「発育鶏卵(孵化鶏卵、有精卵が孵化するまでの発育過程の鶏卵)」に接種して増殖させ、漿尿液から精製・濃縮したウイルスをエーテルなどの脂溶性溶剤を加えて、免疫防御に関与する部分を取り出し(「成分ワクチン」)、更にホルマリンで不活化したものです(死滅させた病原体を含む「不活化ワクチン」で、弱毒化してあるが生存している病原体を含む「生ワクチン」とは異なる)。



(参考) 「人獣共通感染症と「豚インフルエンザ」、「鳥インフルエンザ」」

 ワクチン株を卵に馴化させる過程で抗原性が変異するということが起こります。ワクチンの元となった株(野生株)と、そのシーズンの流行株が一致したとしても、抗原性変異が起こってしまった製造株でワクチンが作られたとすると、ワクチンの効果が期待通りにはいかないことになります。2012/2013シーズンの季節性インフルエンザワクチンでは、A/Victoria/361/2011(H3N2)という株が製造株に使われていました。しかし、この株は「卵馴化(たまごじゅんか)」による抗原性の変異が大きかったため、このワクチンでの防御効果は低下していたようで、この結果、このシーズンのワクチンは効かなかったという評価が出てくることになりました。

 国立感染症研究所の「病原微生物検出情報 (IASR)2013年11月号」 の「平成25年度(2013/14シーズン)インフルエンザワクチン株の選定経過」という記事では、「2012/13インフルエンザシーズンは、A(H3N2)ウイルスが国内や多くの諸外国で流行の主流であった。このシーズンは、ワクチン効果が低かったと国内外から批判が出ているが、これはウイルス流行予測に基づくワクチン株の選定の問題ではなく、ワクチン株の卵馴化による抗原変異がワクチン効果を低下させていることが原因となっている。」と述べられています。

 流行株が抗原性変異を起こす。 ⇒ インフルエンザワクチンの効果が期待できない。

 製造株が抗原性変異を起こしていた。 ⇒ インフルエンザワクチンの効果が期待できない。


(参考) 「ワクチンが充分には効かない「抗原性変異」と「赤血球凝集抑制試験」と、、、

 生体内に「抗原(antigen(アンチゲン)、例えばウイルス)」が侵入したとき、それに対応して生成され、その抗原に対してのみ反応する蛋白質を「抗体(antibody(アンチボディ))」といいます。抗体が抗原に結合すると、白血球やマクロファージといった食細胞がその抗原と抗体の複合体を認識できるようになり、貪食して体内から除去することになります。

(参考) 「季節性インフルエンザの免疫を持っていれば、重篤化しないのか?

 抗原が姿を少し変えると、生体がそれを抗原と認識し、抗体を生成するようになるのに時間がかかって、その増殖を許してしまうということが起こります。ウイルスが増殖のために細胞を破壊していくのを阻止できない状態が一定期間続くのです。抗原と認識できないほどに変化が起こっていることを、「抗原性変異」といいます。

 喩えてみましょう。町があります。多くの人が流入し、そして流出して行きます。その中には町に損害を与える犯罪者も混じっています。町の治安は警察組織が守っています。その町での犯罪歴がある人物は、警察官はたちどころに認識できます。また他所の町で犯罪歴のある人物は指名手配写真が配られています。指名手配犯が整形手術を受けて町へ入ってきます。警察官は認識できません。町に損害が出始めて初めて犯罪者と認識することになります。

 警察官が犯罪者をそれと認識できないのには、警察官に配られる指名手配写真の作成に失敗してしまって、本人とかなり違ってしまっている場合もあります。卵馴化が原因となります。例えば、インフルエンザA型(H3N2)ウイルスのHA遺伝子のアミノ酸配列の156位で、「ヒスチジン (histidine、His、H)」が「アルギニン (arginine、Arg、R)」に置換されたり、194位で「ロイシン (leucine、Leu、L)」が「プロリン(proline、Pro、P)」に置換されるといったことが卵馴化で起こるようです。その人物の印象を決定する要素が異なっていると、同一の人物だとは認識されません。



 平成25年4月19日の健発0419第3号、国立感染症研究所長が厚生労働省健康局長に宛てた「平成25年度インフルエンザHAワクチン製造株の決定について」では、

 生物学的製剤基準(平成16年3月30日厚生労働省告示第155号)の規定に係る平成25年度のインフルエンザHAワクチン製造株を下記のとおり決定したので通知する。

                      記

 A型株
・・・・・A/カリフォルニア/7/2009(X-179A)(H1N1)pdm09
・・・・・A/テキサス/50/2012(X-223)(H3N2)
 B型株
・・・・・B/マサチュセッツ/2/2012(BX-51B)


とあります。今年度からは、ワクチン株の表記が元株の野生株と区別できるようにするために製造株番号も明記されています。例えば、A(H3N2)亜型ウイルスのワクチン株は、A/Texus/50/2012という元株から増殖されたX-223という製造株に決定されたということになります。

 2012/13シーズンでインフルエンザの流行の主流は、A(H3N2)亜型インフルエンザウイルスで、国内外でインフルエンザ患者から採取され、分離された株の大半は、A/Victoria/361/2011と抗原性が類似していたようで、それならばこれを元株とした製造株(IVR-165)を2013/14シーズンのワクチン株とすればよいはずなのですが、この株は「卵馴化」の影響を強く受け、抗原性が大きく変異してしまうのだそうです。そこで、A/Victoria/361/2011に類似していて、卵馴化の影響を受けにくく抗原性が変異しにくかったA/Texus/50/2012を元株とするX-223という製造株からインフルエンザワクチンを製造することにしたわけです。

 ワクチン株をA/Texus/50/2012(X-223)に変更しても、依然として卵馴化の影響が存在するようですが、その影響はIVR-165血清では96%、X-223血清では9%(赤血球凝集抑制(HI)試験で、HI価16倍を指標にして、それ以上に変化した割合)で、抗原性変異の程度が小さかったようです。

 「平成25年度(2013/14シーズン)インフルエンザワクチン株の選定経過」では、「現行のインフルエンザワクチンが卵で製造される限り、この問題の根本的な解決は極めて困難であり、ワクチンの製造基剤を変えるしかない。現在、国内および諸外国では培養細胞を用いたインフルエンザワクチンの製造に切り替えつつあり、これら細胞培養インフルエンザワクチンに期待したい。」と述べられています。

(参考) 「「卵アレルギー」と「細胞培養法」の新型インフルエンザワクチン

                         (この項 健人のパパ)

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