POWERFUL MOMが行く!
多忙な中でも,美味しい物を食べ歩き,料理を工夫し,旅行を楽しむ私の日常を綴ります。
 





 日本の医薬品市場で、2012年1月~3月の売り上げは病院・開業医・薬局などの医家向製品では2兆2900億円ほど、2012年4月~6月で2兆3600億円ほどなのだそうです。そのうち、薬価ベースで脂質調整剤及び動脈硬化用剤の売り上げが1000億円ほど(2012年1月~3月、4月~6月)。売り上げ金額の多い上位10製品に「リピトール」(薬価:10mg1錠113.6円)が入っており、約200億円を売り上げています(1月~3月)。

 世界最大の売り上げ(2010年度の売り上げは約120億ドル。1ドル80円換算で約9600億円)を誇るファイザーの高脂血症治療薬「リピトール(Lipitor)」の市場独占期間が2011年11月30日に満了を迎えました。2012年4月~6月には日本では「リピトール」は上位10製品から姿を消すことになります。後発品(ジェネリック)が販売されました。例えば、第一三共エスファ株式会社の「アトルバスタチン10mg」は、1錠あたりの薬価が68.9円です。

 通常、成人はリピトール10mgを1日1回服用します。その成分「アトルバスタチン(atorvastatin)」は、肝臓でのコレステロールの合成を抑えます。コレステロールの生合成は夜間に亢進するので、夕食後の服用が効果的とされます。リピトールは、重い肝臓病の人は使用できません。病状を悪化させたり、副作用が出ることがあるためです。また、肝臓病、腎臓病、甲状腺機能低下症、筋ジストロフィー、酒量の多い人、高齢の人などは使用に注意が必要です。まれな副作用ですが、筋肉が障害を受ける「横紋筋融解症」になることがあります。服用して、足のふくらはぎなどに筋肉痛が現れたら、すぐに受診する必要があります。

 心筋梗塞を起こす危険性を低下させるために、リピトールなどのスタチン系薬剤は服用されるもので、喫煙習慣、肥満、高血圧、糖尿などがあることが服用の条件といっていいでしょう。コレステロール値が多少高いだけで、前述のリスク要因が少ないのであれば、必ずしも服用を必要としません。心筋梗塞の発症の少ない日本人女性では特に服用する必要は少ないともいわれます(久山町研究では、1年に1000人中1人弱の死亡例。男性でも2人弱)。


(注)「年齢調整死亡率(人口10万対)」は、年齢構成の異なる年次間で死亡状況の比較ができるように年齢構成を調整した死亡率です。年齢調整死亡率を用いれば、年齢構成の相違を気にすることなく、より正確に年次比較をすることができます。(注終わり)
(注) 高血圧の状態が続くと、心臓の筋肉が太くなり壁が厚くなって、負担に耐えようとしますが、心臓の肥大が進み、心臓が大きくなりすぎると、筋肉が伸びきって負担に耐えきれなくなり、十分に収縮できなくなります。これが「高血圧性心疾患」です。(注終わり)
(注)心疾患は、心臓の疾患の総称で、「心臓病」とも言います。心疾患には、狭心症、心筋梗塞などがあります。脳血管疾患は、脳の疾患の総称で、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血などがあります。(注終わり)

 妻には、喫煙習慣がなく、基準値が-15.9~13.2である「肥満度」では3.2、基準値が90~139である「最高血圧(収縮期血圧)」が118、糖尿もありません。しかし、LDL-C(LDLコレステロール)の基準値が70~139であるところが、169mg/dl。妻はこの数値を心配しますが、このケース、コレステロール低下薬であるスタチン系薬剤の服用は必要ないといえるでしょう。HDL-Cの基準値が45~75であるところが、79mg/dl(日本人間ドック学会の判定区分では、HDL-C 40~119mg/dLを「異常なし」としている)。LDL-Cが高く、HDL-Cが低ければ、危険信号が出たと考えるべきでしょうが、ともに高いのです。

 「大阪府八尾市住民検診の追跡調査」(1997年に日本疫学会学術総会で大阪府立健康科学センタ-内藤義彦部長(現在は武庫川女子大学(兵庫県西宮市にある)の生活環境学部食物栄養学科教授)が発表)は、大阪府立成人病センター集団検診部が八尾市の住民約1万人を検診して、その後約11年間追跡したコレステロール値別の死亡率の研究ですが、それによると、総死亡率は「コレステロール低値群」で高く、コレステロール値の上昇とともに低下する傾向にあるのです。総死亡率が一番低かったのは5つに区分されたコレステロールの高い方から2番め「総コレステロール 240~279mg/dL」でした。異常なしと判定される総コレステロールの基準値は「140~199mg/dL」(日本人間ドック学会の判定区分)であるのに関わらずです。



 これは、コレステロール値が低いと、抵抗力が落ちて肺炎や結核などの感染症にかかりやすいことと、血管壁が弱くなって脳血管障害(脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血)を起こしやすくなることが死亡率に反映されていると考えられています。また、コレステロールの量が不足すると細胞膜が弱くなり、癌を招きやすいとも言われ、癌死亡率はコレステロール値の低下に反して上昇していきます。一方で、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)での死亡率はコレステロール値の上昇とともに増加していきます。

 どうしたらいいのでしょうね。平成23年の全死亡者の28.5%は、「癌」(悪性新生物)で亡くなっています。全死亡者のおよそ3.5人に1人は癌で死亡したことになるのです。一方で、心疾患で亡くなるのは、15.5%。これはおよそ6.5人に1人です。危険度からいうと、心疾患を恐れてコレステロール値を薬を使ってまで下がることはないとも言えます。しかし、これを女性だけのデータにすると、癌で亡くなるのは24.1%(男性は32.5%で、-8%近い差がある)に対し、心疾患で亡くなるのは17.5%(高血圧性心疾患を除いていない。男性は13.9%で、+4%近い差がある)です。6.5%ほどの差に縮まります。



 しかし、平成23年人口動態統計月報年計の「性・年齢階級別にみた主な死因の構成割合」を見ると、「悪性新生物」によって亡くなる中年女性は40%ほどもいることがわかります。それに対して、心疾患による死亡は10%にも及びません。心疾患による死亡は「還暦(60歳)」を過ぎてから、増加してくるもののようです。

 妻にはこう言います。「LDLコレステロールの数値が高くても気にする必要がないよ。医者の勧めに従うことはないさ。君は充分食生活に気をつけているからね。」

 いや、ちょっと待ってください。この話しは妻が私に伊藤園のトクホ、「スタイリースパークリング」を買ってきたことから始まっています。心配すべきは私の身体でした。モノグルコシルヘスペリジンが中性脂肪の気になる年齢に達している私に効果があるかについて調べていたのです。話しが逸れてしまったので、次回に仕切り直しです。続きます。

(参考)「トクホって? チュウセイシボウって? モノグルコシルヘスペリジンって?(1)

(参考)特保って? チュウセイシボウって? モノグルコシルヘスペリジンって?(2)

(参考)特保って? 中性脂肪って? モノグルコシルヘスペリジンって?(3)

(参考)「スタイリースパークリング」という飲み物と「モノグルコシルヘスペリジン」

(参考)禁煙? 運動? モノグルコシルヘスペリジン? そしてフラミンガム心臓研究(1)

(参考)コレステロールには、悪玉も善玉もなく、人体に欠くことができない物質(1)

(参考)コレステロールには、悪玉も善玉もなく、人体に欠くことができない物質(2)

(参考)家族性高コレステロール血症とHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系薬剤)

             (この項 健人のパパ)

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 アメリカの北東部、ニューイングランド地方にあるマサチューセッツ州の「ボストン(Boston)」近郊に人口6万8千人ほどの「フラミンガム(Framingham)」という小さな町があります。タイムズ社から発行される「Money」が毎年行う「アメリカに住むならここ(Best Places to Live - Money's list of America's best small cities)」で、数多くある町の中から、TOP100の38番めにランクインされています(2012年)(ちなみに、1位は五大湖周辺地域(Great Lakes region)にあるインディアナ州のインディアナポリスの郊外「カーメル(Carmel)」(人口約8万5千人))。

 “Best Places to Live”に選ばれるということは、学校が充実していて、就職機会に恵まれていて、犯罪率が低く、公衆衛生の質が高く、子育てに対する援助が多くあるなどの住みやすい町だということです。フラミンガムはアメリカの医療従事者の間では、非常に有名な町です。1887年に設立された合衆国で最も古い医学研究の拠点機関「アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health、NIH)」はいくつかの研究所からなりますが、その一つ「国立心肺血液研究所(National Heart, Lung, and Blood Institute)」は、この町で1948年に長期にわたる疫学的調査を始めます。

 「疫学(epidemiology)」とは、特定の集団を対象として、疾病率、死亡率などの健康に関わる事柄や事象の頻度、時間的変動などを
統計学的に調査する研究です。疫学は、健康に関わる事柄とその要因と考えられるものの間に存在する何らかの関係を解明します。アメリカでは、20世紀初頭には死亡率の20%程度だった心血管系疾患(心筋梗塞、心不全)が1930年代頃からから死因の1位へと躍り出ます。この急激な伸びに対する解明が急がれ、「フラミンガム心臓研究(Framingham Heart Study)」が20年間の予定で開始されます。

 当時のフラミンガムの人口は、3万8千人ほどで、その中で志願してきた5,200人ほどを対象に調査が始まります。年齢構成は30歳から62歳でした。心臓疾患の発症は、生活習慣や環境要因によって影響されるであろうと想定して、「危険因子(risk factor、リスクファクター)」が追求されました。

 「多変量解析(multivariate statistics)」の手法の一つに「ロジスティック回帰分析(logistic regression analysis)」があるそうです。疾患の危険因子を分析するためによく用いられる手法なのだそうで、フラミンガム心臓研究のために開発されたといいます。複数ある危険因子(「多重リスクファクター(multiple risk factor)」)が疾患に及ぼす影響を分析することを目的のひとつにしているのだそうです。

 この研究で1960年代に分かったことは、喫煙は心臓疾患のリスクを増加させるということ、コレステロール値の増加や血圧上昇も心臓疾患のリスクを増加させるということ、運動は心臓疾患のリスクを低下させ、肥満は心臓疾患のリスクを増加させるということでした。これは、いまでは常識となっていますが、この当時は医療関係者はうすうす感じてはいたのですが、証明されてはいないことでした。

 20年を過ぎてもこの疫学的調査は続けられ、1971年には「ボストン大学(Boston University)」も調査に加わり、調査対象者も第二世代となります。1980年代には、高レベルのHDLコレステロールは心臓疾患のリスクを減らすことができるという知見が得られます。

 コレステロールを運ぶ球体の入れ物「リポタンパク(lipoprotein))」はその比重でいくつかに分類されますが、そのうち、余分なコレステロールを肝臓に戻すのが「高比重リポタンパク(High Density Lipoprotein、HDL、直径が5~15nmでリポタンパクの中で一番小さい)」で、善玉コレステロールと呼ばれています(正しくは「善玉リポタンパク」とでも呼ぶべきでしょう)。このHDLが減少すると、血管にコレステロールが溜まりやすくなり、動脈硬化を引き起こします。その血液検査での数値は40~69mg/dLが正常で、40mg/dL未満では動脈硬化のリスクが高まります。



 動脈の内壁に粥状の隆起が生じている状態を「アテローム性動脈硬化(atherosclerosis、 アテロスクレローシス)」といいます。「アテローム(atheroma、アテローマ)」とは、皮膚科では「粉瘤(ふんりゅう)」を指し、皮膚の下に袋状の構造物ができ、角質と皮脂が、外に剥げ落ちずに袋の中に溜まってしまってできた腫瘍の総称です。病理学において「アテローム」は、動脈血管内での固まりを指し、コレステロールや中性脂肪、カルシウム、線維性結合組織を含んだ細胞、細胞の死骸からなる蓄積物です。「粥腫(じゅくしゅ、atheromatous plaques、アテローム性プラーク)」とも呼ばれます。

 このプラークは徐々に成長し、血液を流れにくくしてしまったり(心臓の筋肉に酸素を十分に供給できなくなると、胸痛や胸部圧迫感などの症状がでる「狭心症」になる)、破れて血管内で血液を固め(「血栓」)、その血栓が移動して細い動脈を詰まらせる(「塞栓(そくせん)」)ことがあります。これが脳の血管内で起これば、「脳梗塞(cerebral infarction、セリーブラル・インファークション)」であり、心臓の血管内で起これば、「心筋梗塞(myocardial infarction、マイオカーディアル・インファークション)」と呼ばれます。

 アテローム性プラークは、血管内膜下にリポタンパクが蓄積されて起き、血液の流れの遅い部位によく生じますが、その詳しい仕組みについてはまだよくわかっていないといいます。フラミンガム心臓研究などの疫学研究により、「低密度リポタンパク(LDL)」の血中濃度が高い場合に、「高血圧患者、糖尿病患者、喫煙者」などでは動脈硬化が進行しやすいことは証明されているようです。

 一般的には、LDLの血中濃度が高いのが原因で、アテローム性プラークが生じ、動脈硬化が進行しやすくなると考えられています。しかし、「ウッフェ・ラブンスコフ博士(Dr. Uffe Ravnskov)」や金城学院大学薬学部「奥山治美」教授らは、原因と結果が逆だと主張します。LDLの血中濃度が高いから、アテローム性プラークが生じやすいのではなく、アテローム性プラークが生じると、LDLの血中濃度が高くなるのだといいます。でも、この学説の対立の話しは後に回しましょう。

 フラミンガム心臓研究によると、1年に1,000人中7~8人(男性の場合。女性は4~5人)の心筋梗塞の発症者がいたといいます。また、欧米での報告によると、急性心筋梗塞で入院し生存退院した症例での1年死亡率は8~14%,3年死亡率は14~33%,5年死亡率は19~39%だといいます。非常に怖い病気なのです。血中のコレステロール値を下げる薬剤を創薬できれば、この恐怖心から非常に大きな市場となることが予想され、製薬会社はやっきになります。

 ここからコレステロール合成を抑える「スタチン系薬剤」の話に入り、「モノグルコシルへスペリジン」へと話を進めようと考えていたのですが、話が長くなってしまったので、次回に続けることにします。

(参考)「トクホって? チュウセイシボウって? モノグルコシルヘスペリジンって?(1)

(参考)特保って? チュウセイシボウって? モノグルコシルヘスペリジンって?(2)

(参考)特保って? 中性脂肪って? モノグルコシルヘスペリジンって?(3)

(参考)「スタイリースパークリング」という飲み物と「モノグルコシルヘスペリジン」

(参考)禁煙? 運動? モノグルコシルヘスペリジン? そしてフラミンガム心臓研究(2)

(参考)コレステロールには、悪玉も善玉もなく、人体に欠くことができない物質(1)

(参考)コレステロールには、悪玉も善玉もなく、人体に欠くことができない物質(2)

(参考)家族性高コレステロール血症とHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系薬剤)

              (この項 健人のパパ)

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 「陳皮(ちんぴ)」という生薬があります。ミカンの外皮を陰干しして乾燥させ、1年以上経ったものです。「陳」は、「新陳代謝」と言うときの「陳」であり、「古い」という意味です。つまり、「日の経って古くなった皮」が漢方薬になるのです。医薬品の規格基準書である「日本薬局方」に、「陳皮」はウンシュウミカンの成熟した果皮であり、乾燥物に対し、ヘスペリジンを4.0%以上含む、とあります。鎮咳去痰薬、健胃消化薬などに配合されます。



 (童話風に) みかんの国からやって来た人たちの中に「ヘスペリ人」と呼ばれる人たちがいました。彼らは水が苦手で、水辺の人たちに溶け込むことができませんでした。そこに「ブドウ党」と名乗る一団が現れて彼らに手を貸すことになったのです。ヘスペリ人はブドウ党の人たちと組むことで水辺の人たちの中に溶け込んでいけるようになったのです。

 ヘスペリジンは、温州みかんの果皮、中でも成熟する前のいわゆる「青みかん」の皮に多く含まれることから、そこから抽出され商品化されています。ヘスペリジンは難水溶性のため、消化管内で不溶化してしまい、吸収されずに排出される量の方が多いのですが、酵素処理をして配糖化した「糖転移ヘスペリジン」は水溶性であり、小腸などでの吸収性がヘスペリジンに比べ、3倍ほど向上するという研究結果があります。ヘスペリジン自体は、純度によりますが、中国製で1kgあたり20~50$(1,600~3,900円)程度で取引されています。

 健常成人7名に糖転移ヘスペリジンを経口投与し、経時的に採血し、血清中の糖転移ヘスペリジン量(加水分解された結果のヘスペレチン量)を測定したのだそうです。ヘスペリジン投与群では、ヘスペレチンは、吸収され血中で確認されるまでに約5時間がかかりましたが、糖転移ヘスペリジン投与群では、経口投与後30分程度で血中で検出されたそうです。このことで、糖転移ヘスペリジンは投与後急速に吸収されることが確認されたのだそうです。



 ヘスペリジンの難水溶性を改善したものは、その製造法から「酵素処理ヘスペリジン」、その形態から「糖転移ヘスペリジン」、その構造から「グルコシルヘスペリジン」などと呼ばれます。モノグルコシルヘスペリジンとヘスペリジンの混合物として、東洋精糖は「αG-ヘスペリジン(アルファジーヘスペリジン)」、林原は「林原ヘスペリジンS」を製造しています。



 糖転移ヘスペリジンは、小腸の上皮細胞に膜酵素として発現している消化酵素である「α-グルコシターゼ(α-glucosidase、α-D-glucoside glucohydrolase、EC 3.2.1.20)」によって加水分解され、「ヘスペリジン(hesperidin)」となり、さらに腸内細菌が産出する「β-グルコシターゼ(β-glucosidase、β-D-glucoside glucohydrolase、EC 3.2.1.21)」によって加水分解され、「ヘスペレチン(hesperetin)」となって吸収されます。

 ブドウ党の人と1対1で組んだヘスペリ人は川の流れに乗ってあちらこちらと移動できるようになりました。ヘスペリ人はアスコルビンさんを手伝って、川幅が狭くなっているところを広げたりもしました。川の流れがよくなりました。川が決壊して水が流れ出すことが少なくなりました。

 ヘスペリジンには、壊れやすいビタミンC(L-アスコルビン酸)を安定化させる働きがあり、安定化したビタミンCは、血管の収縮をコントロールする酸化窒素が活性酸素と結合するのを妨げ、活性酸素によって血管が縮んで元に戻らなくなることを阻止します。その結果、血圧の上昇を防ぐようです。

 自然発症高血圧ラット(SHR、Spontaneously Hypertensive Rat)に1日、体重1kgに対し30mgという量の糖転移ヘスペリジンを25週間にわたり経口投与した結果、糖転移ヘスペリジン投与により、血圧、心拍数が減少し、高血圧を改善する作用があることがわかったのだそうです。対照実験も行われ、正常血圧ラットでは、血圧、心拍数に変化はなく、通常の血圧であれば、それ以上血圧を下げる作用はなかったようです。



 「健康増進法(平成14年8月2日法律第103号、栄養改善法に代わる)」の第10条に、「厚生労働大臣は、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基礎資料として、国民の身体の状況、栄養摂取量及び生活習慣の状況を明らかにするため、国民健康・栄養調査を行うものとする。」とあります。この法律に基づき、全国から無作為に300地区が抽出され、その調査地区内の世帯(6,000世帯)および世帯員(約20,000名)を調査対象として、毎年11月に、全国の保健所で実施されるのが、「国民栄養調査」です。

 血液中にトリグリセリド(中性脂肪)が多く存在する(150mg/dL以上)と、「脂質異常症」のうちの「高TG血症、高トリグリセリド血症(以前「高脂血症」といわれた)」と診断が下されることになります。内臓脂肪型肥満の人に多く、日本人の男45%、女33%(1997年の国民栄養調査)が該当すると言われています。国民栄養調査の結果のグラフの推移からみると、1997年の時点で日本人の男性の半数弱程度が高TG血症であったのですから、現在時点では男性の半数強が高TG血症であると推測できます。

 ラットを用いた混餌投与試験では、ヘスペリジンの大量投与が脂質の消化吸収を抑制し、血中中性脂肪を低下させることが報告されていますが、大量投与でない限り、脂質の消化吸収を抑制し、血中中性脂肪を低下させるまでには至らず、ヒト試験においても、脂質の消化吸収抑制により発症する消化管に関する症状は認められないといいます。

 ヘスペリジンが消化酵素「膵リパーゼ(pancreatic lipase、 pancreatic triacylglycerol lipase)」の分泌を抑制するとすると、小腸での脂肪の吸収が阻害され、下痢などの消化管症状が出てきます。食事中に存在するトリグリセリド(中性脂肪)はそのままの形では消化管で吸収されません。膵リパーゼはトリグリセリドを加水分解し、小腸で吸収される脂肪酸に遊離させます。

 ヘスペリジンは、膵リパーゼの分泌を抑制することで血中への中性脂肪の取り込みを妨げているわけではなさそうなのです。それは、下痢という副作用が観察されなかったことで推測されます。では、どのような機序でヘスペリジンが血中中性脂肪を低下させることができるのでしょう。



 ヘスペリジンは、肝臓のコレステロールエステルと中性脂肪を低下させることにより、肝臓から血中へ、過剰なVLDL(Very Low Density Lipoprotein、肝臓から筋肉などの末梢に脂質を供給する超低比重リポタンパク)が分泌することを抑制しているようなのです。そしてそれには、脂肪酸合成系の抑制と、脂肪酸β-酸化系の亢進が関与していると考えられるのだそうです。つまり、脂肪は消化管で消化吸収はされているのだが、肝臓で分解されて、血中には過剰には分泌されないということのようです。

 川沿いに工場が点在していました。この工場群は、原材料が持ち込まれると需要に関わらず製品を生産し続けていました。工場から工場へと半完成品が忙しく移動していきます。生産過剰の製品はあちらこちらに野積みされています。へスペル人は、ひとつの工場に目をつけ、そこの工場の稼働率を下げる工作をしました。すると、みるみる過剰の製品が減っていったのです。工場間は半完成品の移動のために広い道路がありました。しかし、一か所だけ狭い道路があり、ペスペリ人はその道路で半完成品の移動を邪魔すれば、過剰な製品が作られないことに気づいたのです。

 「律速」という言葉があります。A→B→C→Dと物質が変化していく反応において、例えば、A→BやC→Dへの反応速度がいくら速くても、B→Cの反応速度が遅ければ、AからDへの反応はB→Cの反応速度で制限を受けてしまいます。この「化学系の反応の速さを決定する最も主な要素」のことを「律速要素」といいます。「ボトルネック」と似た現象と言えます。

 肝臓に存在するコレステロール生合成系における「ヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素(3-hydroxy-3-methylglutaryl coenzyme A reductase、HMG-CoA reductase、HMGR)」という長い名前の物質がこの律速要素になります。ヘスペリジンには、コレステロール合成の律速酵素であるHMGRを阻害する働きもあるようなのです。

 コレステロール生合成は長い道のりを辿ります。その終わりに近いところで合成を阻害しようとすると、それまでの合成産物が滞留してしまいます。その滞留した物質が原因となって好ましくない身体的症状が発現するかもしれません。しかし、都合のいいことにこの律速酵素である「HMG-CoA還元酵素」はコレステロール合成の初期段階で働くものだったのです。



私「あれ? ここに冷やしてあったスタイリーは?」
妻「あなたがいつまで経っても飲まないから、私が代わりに飲んじゃったわよ。」
私「・・・」
妻「大体ね、スタイリーを飲むのにそんな専門的なことまでなぜ調べなくちゃならないの。そうしないと飲めないなんて、あなたは変!」
私「・・・」
妻「健康食品を疑っちゃキリがないわよ。信じる者は救われるのよ。プラシーボ効果だってあるんだし。」
私「・・・」
妻「もうそんなことで時間を無駄に使うのはいい加減にしなさいよ。睡眠を削れば、その方が健康に悪いのよ。」
私「・・・」
妻「すぐに好奇心が暴走するんだから。夢中になって食事もまともに摂らないし。本当に健康に悪いわよ。」
私「・・・」
妻「よかれと思って、スタイリーを買ってきたのに、こんな結果になるなんて、、、」
私「・・・」

 伊藤園の炭酸飲料「スタイリースパークリング(Stylee Sparkling)」(2012年7月2日新発売)では、500ml中に340mgのモノグルコシルヘスペリジンが含有されており、大正製薬の粉末緑茶「ミドルケア 粉末スティック」(2012年7月1日新発売)では、1包(4g)に340mgのモノグルコシルヘスペリジンが含有されています。伊藤園では、今秋に炭酸を含まない飲料「スタイリーウォーター」の発売も予定しているといいます。スタイリーウォーターも「トクホ(特保、特定保健用食品)」の表示許可を消費者庁から取得済みです。

(参考)「トクホって? チュウセイシボウって? モノグルコシルヘスペリジンって?(1)

(参考)特保って? チュウセイシボウって? モノグルコシルヘスペリジンって?(2)

(参考)特保って? 中性脂肪って? モノグルコシルヘスペリジンって?(3)

(参考)禁煙? 運動? モノグルコシルヘスペリジン? そしてフラミンガム心臓研究(1)

(参考)禁煙? 運動? モノグルコシルヘスペリジン? そしてフラミンガム心臓研究(2)

(参考)コレステロールには、悪玉も善玉もなく、人体に欠くことができない物質(1)

(参考)コレステロールには、悪玉も善玉もなく、人体に欠くことができない物質(2)

(参考)家族性高コレステロール血症とHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系薬剤)

                 (この項 健人のパパ) 

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 生物から単離され、水に溶けない物質を「脂質(lipid)」と呼びます。長鎖脂肪酸あるいは炭化水素鎖を持つ分子で、 アルコールと脂肪酸が結合した「単純脂質 (simple Lipid)」、分子中にリン酸や糖を含む「複合脂質(complex lipid、compound lipid)」、単純脂質や複合脂質から加水分解によって誘導される「誘導脂質(derived lipid)」と分類されます。

 血液中の脂質には、単純脂質に分類される「中性脂肪(主にトリグリセド)」と誘導脂質に分類される「コレステロール(cholesterol)」などがあります。コレステロールの多くは体内で合成され、ヒトの生体膜の構成物質となります。中性脂肪は、エネルギー貯蔵物質として働きます。

 中性脂肪は、(1)食事由来の遊離脂肪酸、(2)肝臓で合成された脂肪酸、(3)脂肪組織から血中を輸送されてきた遊離脂肪酸から、肝臓で合成されます。肝臓では、合成した中性脂肪をコレステロールとともに、球状粒子の「超低比重リポタンパク (very low density lipoprotein、VLDL)」として、血中に分泌します。

 中性脂肪は、食事が摂れなかった場合などに備える貯蔵用のエネルギー源で、体を動かすことなどで消費されます。消費が充分に行われていれば問題はないのですが、中性脂肪の量が消費される量より大きく上回れば、使用されない余分なものとして、皮下脂肪や内臓脂肪といった体脂肪に変換されてしまいます。「肥満」の始まりです。

 「ヘスペリジン(hesperidin)」は、柑橘類の果皮および薄皮に多く含まれる物質で、さまざまな薬理作用を有すると考えられています。毛細血管は、体の組織と栄養や酸素のやりとりをしているので、「適度」に透過性が保たれている必要があります。ヘスペリジンは、過度になった透過性を低下させる働きがあるようです。

 ヘスペリジンには、壊れやすいビタミンCを安定化させる働きがあり、安定化したビタミンCは、血管の収縮をコントロールする酸化窒素が活性酸素と結合するのを妨げ、活性酸素によって血管が縮んで元に戻らなくなることを阻止します。その結果、血圧の上昇を防ぐようです。

 ヘスペリジンには、動脈硬化を引き起こしたり、脳血栓や心筋梗塞の原因にもなるトリグリセリド(triglyceride、トリグリセライド)の濃度を低下させる働きもあるようです。



 中性脂肪が血漿中に安定に存在するには、タンパク質と結合している必要があります。脂質がタンパク質と結合したものを「リポタンパク質(lipoprotein、lipid(脂質)+protein(タンパク質))」といいます。

 毎分数万回転以上の回転数で遠心力を発生させ試料を分離したり大きさを測定したりする装置「超遠心(分離)機(ultracentrifuge)」で血漿を分離すると、カイロミクロン(chylomicron、0.94g/mL未満)、超低比重リポタンパク(Very Low Density Lipoprotein、VLDL) 、0.94~1.006g/mL)、中間比重リポタンパク(Intermediate Density Lipoprotein、IDL、1.006~1.019g/mL)、低比重リポタンパク(Low Density Lipoprotein、LDL、1.019~1.063g/mL)、高比重リポタンパク(High Density Lipoprotein、HDL、1.063~1.21g/mL)と分けることができます。

 このうち、直径が18~28ナノメートルの低比重リポタンパク(LDL)は、タンパク質を25%、コレステロールを50%、リン脂質を21%ほど含み、動脈硬化に関与するなどの悪さをすることから、悪玉リポタンパクと呼ぶべきところを「悪玉コレステロール」と呼ばれます。その一方、直径が5~15ナノメートルの高比重リポタンパク(HDL)は、タンパク質を33%、コレステロールを30%、リン脂質を29%ほど含み、血管内皮に蓄積したコレステロールを落とし、動脈硬化を抑える働きをするので、善玉リポタンパクと呼ぶべきところを「善玉コレステロール」と呼ばれます。

 ヘスペリジンには、トリグリセリドの血漿中濃度を低下させると同時に、悪玉のLDLの濃度を減少させ、善玉のHDLの濃度を上昇させる働きがあったとする動物実験(ラット)の報告があるようです。

 「トレハロース」で有名な株式会社林原生物化学研究所(更生計画に基づき、2012年2月1日付で、株式会社林原に吸収合併された)は、α-モノグルコシルヘスペリジン高含有物の製造方法に関し、2006年7月28日に特許登録されます(出願日は1998年03月13日)。林原は、ヘスペリジンに糖転移をさせ、水溶性を約10万倍に向上させた製品「林原ヘスペリジンS」(淡黄白色~淡黄褐色の粉末)として商品化します。

 ヘスペリジンは、アルカリ性水溶液には可溶ですが、水や酸に難溶であり、例えば、室温(25℃)では、100リットルの水にわずかに2g程度しか溶けません。しかし、「林原ヘスペリジンS」では、25℃の水100gに対する溶解度は、197gもあります。スタイリースパークリングでは、0.5リットル(500ml)にモノグルコシルヘスペリジンは0.34g(340mg)含有しています。



 林原の特許は、ヘスペリジンとα-グルコシル糖化合物とを含有する溶液に、糖転移酵素を作用させることにより、水溶性に優れ、実質的に無味、無臭で、毒性の懸念もなく、生体内で容易に加水分解され、ヘスペリジン本来の生理活性を発揮する「α-グルコシルヘスペリジン」のコストの多くかからない製造方法を見出したことにあります。



 α-グルコシルヘスペリジンを生成させた反応液を多孔性合成吸着剤を充填したカラムに通して、α-グルコシルヘスペリジンを吸着させ、他の夾雑物を流出させた後に、そのカラムに有機溶媒を通液して、α-グルコシルヘスペリジンを溶出させます。このα-グルコシルヘスペリジン高含有溶出液を蒸溜処理して、有機溶媒を溜去した後、適当な濃度にまで濃縮し、または濃縮液を乾燥し粉末化して製品とします。

 このα-モノグルコシルヘスペリジンを含有した炭酸飲料「スタイリースパークリング(Stylee Sparkling)」を伊藤園が「特定保健用食品(特保)」として、2012年7月2日から発売を開始し、妻がそれを購入してきて、中性脂肪の気になる年齢になっている私に勧めてきたという話しでした。ヘスペリジンの効用については、いろいろとあるので、続きはまたの機会にします。

 妻が言いました。「そこまで調べないと、このスタイリーが飲めないの? あなたって、変!」

(参考)「トクホって? チュウセイシボウって? モノグルコシルヘスペリジンって?(1)

(参考)特保って? チュウセイシボウって? モノグルコシルヘスペリジンって?(2)

(参考)「スタイリースパークリング」という飲み物と「モノグルコシルヘスペリジン」

(参考)禁煙? 運動? モノグルコシルヘスペリジン? そしてフラミンガム心臓研究(1)

(参考)禁煙? 運動? モノグルコシルヘスペリジン? そしてフラミンガム心臓研究(2)

(参考)コレステロールには、悪玉も善玉もなく、人体に欠くことができない物質(1)

(参考)コレステロールには、悪玉も善玉もなく、人体に欠くことができない物質(2)

(参考)家族性高コレステロール血症とHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系薬剤)


              (この項 健人のパパ)

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 妻がスタイリーという飲み物を買ってきました。そのときの会話です。

私「チュウセイシボウって何なの? チュウセイって、酸性、アルカリ性と言うときの中性?」
妻「そう、その中性。一般にトリグリセリドのことを言うのよ。」
私「トリって、3つという意味のトリ? それとも空を飛ぶやつ?」
妻「何をふざけているの。脂肪酸が3つ付いているのよ。」
私「グリセリドって、グリセリンと関係あるやつか。」
妻「そう。」

 知識の引き出しをあれこれ漁って必死に防戦です。分かったような問いを発していますが、何にも分かっちゃいない。そこで「中性脂肪」を調べてみました。

 炭化水素の水素原子を「ヒドロキシ基(-OH、hydroxy group)」で置き換えた物質の総称を「アルコール(alcohol)」といいます。お酒の主成分である「エタノール(ethanol、CH3-CH2-OH)」は、炭化水素である「エタン(ethane、CH3-CH3)」の水素原子の1つをヒドロキシ基で置き換えたものです(ethane+-ol→ethanol)。炭化水素である「プロパン (propane、CH3-CH2-CH3)」の水素原子の1つがヒドロキシ基で置き換わると、「プロパノール (propanol、CH3-CH2-CH2-OH(1-プロパノール)、CH3-CH(OH)-CH3(2-プロパノール)」になります。

 プロパンの水素原子の3つがヒドロキシ基で置き換わる(3価のアルコール)と、「プロパントリオール (propanetriol、propane+tri+-ol→propanetriol)」になり、その一つが「1,2,3-プロパントリオール(1,2,3-propanetriol、HO-CH2-CH(OH)-CH2-OH)」です。甘味を持つことからギリシャ語の“glykys”(甘い)にちなんで、「グリセロール (glycerol) 」または「グリセリン(glycerine, glycerin)」と呼ばれます(慣用名)。



 酢に含まれる酸で、強い酸味と刺激臭を持つ「酢酸(acetic acid、CH3COOH)」などは、「カルボン酸(carboxylic acid)」に分類されます。カルボン酸は、少なくとも一つの「カルボキシ基(-COOH、-C(=O)-OH、carboxy group)」を有する酸です。カルボキシ基の水素は、水溶液中で解離して「水素イオン(H)」になり、酸性を示すので、この基をもつ化合物はカルボン酸と呼ばれます。

 炭素は英語で“carbon”、水素は“hydrogen”、酸素は“oxygen”と言い、炭素を中心とする官能基の一つ「カルボニル基」は“carbon+-yl→carbonyl”、水素と酸素が結合する「ヒドロキシ基」は“hydr-+-oxy→hydroxy”と造語されています。カルボキシ基は、カルボニル基とヒドロキシ基が結合した構造であるので、“carbo-(nyl)+(hydro)-xy→carboxy”と造語されます。



 脂肪を加水分解すると得られる「脂肪酸(fatty acid)」もカルボン酸のひとつです。リノール酸(linoleic acid)やオレイン酸(oleic acid)などの脂肪酸は、長い鎖状の炭化水素です。例えば、植物油に多く含まれる「リノール酸」は、CH3-(CH2)3(CH2CH=CH)2(CH2)7-COOH という構造をしています。



 脂肪酸のカルボキシ基がグリセロールのヒドロキシ基と脱水縮合したものが「グリセリド(glyceride、グリセライド)」です。1分子のグリセロール(グリセリン)に1分子の脂肪酸が結合したものを「モノグリセリド (monoglyceride)」、2分子結合すると「ジグリセリド (diglyceride)」、3分子結合すると「トリグリセリド (triglyceride、トリグリセライド)」になります。

 グリセリン(グリセロール)は水溶しても電離しないので「中性」ですが、脂肪酸はカルボキシ基を持つので、水溶すると水素イオンが電離し、弱酸性を示します。しかし、グリセリンと結びつくと「中性」を示すので、トリグリセリドを「中性脂肪」と言うのだそうです。ここで疑問が生じます。酸性脂肪とかアルカリ性脂肪というものはないのです。ならば、「脂肪」と呼べばいいものをなぜ「中性脂肪」とわざわざ呼ぶのでしょう。なぜ?

 「中性脂肪」と言われるときは、まず「血液検査の数値」でしょう。「中性脂肪値(TG値)」は、40~130mg/dℓ程度(年齢によって異なる)が正常とされています。中性脂肪値が140~150mg/dℓを超える(年齢によって異なる)と、食事・運動療法が必要になってきます。中性脂肪値はいつ食事をしたかに大きく影響を受ける検査項目です。中性脂肪値は、食後2時間~3時間でピークを迎えます。空腹時(少なくとも12時間以上は何も食べない)の採血が望ましく、血液検査の前には、食事をしないようにしなければなりません。

※ 中性脂肪(neutral fat)には、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドの3つの形態がありますが、血液中に含まれる中性脂肪のほとんどは「トリグリセリド(Triglyceride、TG)」です。したがって、中性脂肪はトリグリセリドとほぼ同じものと言えます。(※終わり)



 中性脂肪値(TG値)が高い、ということは血液の中に脂肪を多く含んでいるということです。中性脂肪値が高いと血液は粘性を増します。粘性の高い血液は、血管の内壁にこびりつき、血液循環を妨げ、血管に血栓ができやすい状態にしていくといいます。

 これは、脳梗塞や心筋梗塞といった死に直結する可能性のある疾病の原因になります。脳梗塞の致死率は60~70%で、心筋梗塞の致死率は30%~40%と推計されています。日本での脳梗塞の発症数は年間約8万人、心筋梗は約15万人といわれ、脳梗塞の発症平均年齢(男性)は60歳代後半、心筋梗塞は60歳代前半なのだそうです。

 ここまで調べてようやく、妻が私にスタイリーという飲料を勧めてきた意図が分かりました。スタイリーという飲料は、中性脂肪を減らす作用のあるモノグルコシルヘスペリジンを含んでいて、モノグルコシルヘスペリジンが中性脂肪を減らす作用のあることの科学的根拠が医学的・栄養学的に広く認められ確立されていることを消費者庁が保証していて(「特保」)、致死率の高い脳梗塞や心筋梗塞の疾病リスクを低下させるには「中性脂肪」を減らさなくてはならないということでした。

 でも、「モノグルコシルヘスペリジン(monoglucosyl hesperidin)」とはいったい何なのでしょう。それは次回に。

(参考)「トクホって? チュウセイシボウって? モノグルコシルヘスペリジンって?(1)

(参考)特保って? チュウセイシボウって? モノグルコシルヘスペリジンって?(2)

(参考)特保って? 中性脂肪って? モノグルコシルヘスペリジンって?(3)

(参考)「スタイリースパークリング」という飲み物と「モノグルコシルヘスペリジン」

(参考)禁煙? 運動? モノグルコシルヘスペリジン? そしてフラミンガム心臓研究(1)

(参考)禁煙? 運動? モノグルコシルヘスペリジン? そしてフラミンガム心臓研究(2)

(参考)コレステロールには、悪玉も善玉もなく、人体に欠くことができない物質(1)

(参考)コレステロールには、悪玉も善玉もなく、人体に欠くことができない物質(2)

(参考)家族性高コレステロール血症とHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系薬剤)

                (この項 健人のパパ)

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