POWERFUL MOMが行く!
多忙な中でも,美味しい物を食べ歩き,料理を工夫し,旅行を楽しむ私の日常を綴ります。
 





 2012年10月15日、全日本空輸(ANA)は、2000年3月に休止した関空-ヤンゴン線以来、約12年半ぶりのミャンマー直行便となる成田-ヤンゴン線を就航しました。就航したのは、ビジネス席(38席)のみの週3往復のB737。観光需要が興れば、エコノミー席の導入、機材の大型化、週7往復への増便などが検討されるようです。往復運賃を検索したところ、スーパービジ割で25万円ほどからでした。



 ビルマ文字は、英文字のように子音字と母音字が別であるという構造を持ちません。ビルマ文字は、ハングルやタイ文字のように、一つの文字の中に子音と母音が組み込まれ、音節を表します。それはある意味、日本語のひらがなやカタカナのようです。



 しかし、日本語と異なる点は、その音節文字が子音を表す文字と母音記号の組み合わせからできていることです。カタカナの「マ」、「ミ」、「メ」では、共通する部分はありません。それに対し、ビルマ語の/ma/、/mi/、/me/では、「上部の欠けた円+下部についた眼」という部分が共通しており、これが/m/という子音を表しています。/ma/では/a/という母音を表す記号が後ろに、/mi/では/i/を表す記号が上に、/me/では/e/を表す記号が前についています。

 ハングルは、音節を表すのに正方形という形の中にすべてを入れますから、子音文字を上半分、母音記号を下半分に入れたり(母音記号が横棒で構成されるとき)、左半分に子音文字、右半分に母音記号を入れたりします(母音記号が縦棒で構成されるとき)。ハングルで、子音/m/は四角形で表され、母音は縦棒、横棒、点の組み合わせで表されます。

 ハングルは正方形の中に納まるものが1つの音節を表しますが、ビルマ文字はタイ文字のように、1つの音節が左右に広がることが多いため、文字に慣れないうちは、どこまでが1つの音節を表すか判別するのに苦労します。インド、タイ、ミャンマー(ビルマ)、ラオスなどで使われているインド系文字は、音節を構成するとき、左へ、右へ、上へ、下へと記号が付け加わっていきます。



 広い「オ」を使った(日本語以外は狭い「オ」と広い「オ」がある)「ト」という音節を表すのに、ハングルは正方形に収まるのでコンパクトですが、ビルマ文字はタイ文字と同じように左右に広がります。円が4つも並んで、1つの音節なのですから、初学者には音節の区切りを判断するのが難しいといえます(図は、カタカナを除いて、子音を黒字で、母音を赤字で表している)。



 上の表は、緑色の破線で表された円の位置に子音を表す「字母」が入り、その字母が帽子を被ったり、ブーツを履いたり、左側や右側に連れを伴ったりして、「音節(子音+母音、開音節)」を表します。ビルマ文字でややこしいのは、「声調」の情報も文字に含まれていることです。だから、同じ/i/の母音を表すのに、3種類もあるのです。下降調の/i/ならば、真円の帽子を被り、低平調の/i/ならば、真円に下眼のある帽子を被り、高平調なら、帽子を被った上に、服にブローチを2つ上下に付けて歩きます。狭い「オ」ときたら、帽子を被り、ブーツを履き、ブローチを2つ付けています(高平調)。おしゃれ~

 突然に「声調」の話に入ってしまったので、きょうはここまでにして、次回はその「声調」の話に移ります。

             (この項 ビルマに行くのも大変だなあと思い始めた「健人のパパ」

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 青山剛昌の漫画「名探偵コナン」は、2人の息子が夢中になった時期があります。「名探偵コナン」は「週刊少年サンデー」で、1994年より連載が開始され、現在も連載が続いています。単行本も2012年10月現在で、77巻目を数え、41巻目(2003年4月9日発売)までは我が家の書棚に並んでいます。上の息子が夢中になった時期に買い揃えていきました。

 1996年からはテレビアニメの放映も始まり、下の息子も物心がつきだすと一緒に見始めました。下の息子がテレビに飽きてしまってテレビを見なくなると、私も付き合いで見ていた「名探偵コナン」からは遠ざかってしまいました。

 私の記憶の中では、コナンはよく「密室トリック」の謎解きをしていました。それを見ながら、「そんなことは現実には無理だよ。そんなに都合よくいくわけがない。」と心の中でツッコミを入れていました。口に出すと、「お父さんは、ドラマの楽しみ方を知らない。誰も現実に出来るとは思っていないよ。謎解き自体が面白いのさ。」と反論されます。

 しかし、「密室トリック」が岐阜県各務原市で現実に起こり、その謎解きも現実に岐阜県警が行ったというのです。「名探偵コナン」の中だけではなかったのです。

 2012年9月30日午前9時半ごろ、岐阜県各務原市鵜沼川崎町3丁目のアパートの3階の一室に、臨床検査技師の女性(29歳)の父親が訪れます。その日の朝、1人暮らしの娘が電話に出なかったのを不審に思った父親が訪ねてきたのです。父親は娘から2枚あるカードキーのうちの1枚を預かっていました。

 部屋を開けて父親は、娘の無残な死を知ることとなります。居間の床にうつぶせになっていて、首に布のようなものが巻かれて息絶えている娘を見つけるのです。119番通報します。着衣に乱れはなかったのですが、首にタオルが巻きついており、顔は鬱血していたといいます。救急隊は死亡を確認しました。警察が呼ばれます。部屋は施錠されて、窓も閉まっており、物色の跡はありませんでした。侵入した形跡がないことなどから、自殺の可能性が高いと岐阜県警はみている、と報道されます。

 カードキーは複製が極めて難しく、2枚ある1枚は父親が所有し、他の1枚は室内の玄関で見つかったといいます。完全な「密室」です。しかし、捜査員は何か不自然なものを感じます。それは、玄関ドアの新聞受け。事件発覚のとき、新聞受けの内側の箱のふたが開いたままだったそうです。新聞を取っていなかったという被害者がふたを開いたままにするのは考えにくかったそうです。そこで、ドアに何らかの細工をするために、犯人が開けたものなのではないか、と思い至ります。

 父親が交際していた男性のことを娘から聞いていたのでしょう。おそらくそれが捜査員に告げられたのでしょう。捜査員はその日の夕刻から、同じ病院に勤務する臨床検査技師の男性(32歳)から任意で事情を聞くことになります。女性が亡くなったのは、9月29日の夕方前後。アリバイ工作を十分にしていなかったのでしょう。容疑者は女性が殺害されたとみられる時間帯前後の供述に不審な点があることを見抜かれ、追及によって容疑を認めたといいます。容疑者は女性の部屋の「鍵をかけて出た」と供述したのですが、鍵を持っていなかったのです。

 容疑者は、ドアの外から新聞受けを通して内側の鍵にひもを付け、外側からひもを引いて施錠する工作を説明したのだそうです。「名探偵コナン」に出てきそうなトリックです。ことによると、この容疑者は「名探偵コナン」のファンで、よく読んでいたのかも知れません。しかし、「密室」なだけで「自殺」と判断されるわけではありません。「縊死(いし)」と「絞死(こうし)」では、所見が違います。自分で首を吊って「縊死」で亡くなることはあります。いわゆる「首吊り自殺」です。しかし、「絞死」で自殺することは極めて難しい。自分で首を絞めて意識が遠のいていけば、絞める力が弱まります。何かの道具の力を借りないことには無理なのです。

 記事によると、被害者は首に布のようなものが巻かれてうつぶせになって亡くなっていたといいます。一般的にこれは「絞死」です。首を絞められて亡くなったのです。これを自殺と考えるのは極めて不自然です。容疑者は「自殺に見せかけるつもりだった。交際トラブルで殺害した」などと供述したようですが、こんなトリックで警察を騙せると思ったのでしょうか。

 「鬱血(うっけつ)」があったといいます。定型の縊死では、鬱血はありません。頭顔部の鬱血は、「絞死」に顕著な所見なのです。捜査員がそれを知らないということはありません。岐阜新聞の10月20日の記事は読者の興味を引くようにドラマ仕立てに書いてありますが、記者は知ってて書いているようにも思えます。

 9月30日、午前。各務原市のアパートの1室で、遺体が見つかった。着衣に乱れはなかったが、首にはタオルが巻きついており、顔はうっ血。救急隊が死亡を確認した。(岐阜新聞から)

 コミックでは、実際には人は死にません。だから、被害者の苦痛や残された家族の悲痛に心が及ぶことはありません。しかし、これは現実に起きたことなのです。ご家族の悲痛には強く心を痛めます。

※ この記事は、産経新聞、読売新聞、岐阜新聞の記事などから構成しています。この記事内容が必ずしも真実とは限らないということをご承知おきください。iPS細胞に関して、十分に裏を取らずに報道した読売新聞や共同通信(一義的には嘘をついた研究員が悪いがその嘘を鵜呑みにした報道機関がお粗末)、 遠隔操作ウイルスに感染したパソコンから犯行予告が書き込まれた事件で誤認逮捕が相次いだ三重県警や神奈川県警、大阪府警などの警察(サイバー犯罪対策課(室)の人たちは遠隔操作について考慮しておくべきであった)。何が真実なのか、早計に断定できない時代です。

(追記) この記事を掲載して、妻に「私の旅行ブログに殺人事件のことなんか書いて!」と叱られました。しかし、Yahoo!ニュースが紹介していた岐阜新聞の「県警、密室トリック見破る 各務原女性殺害、現場に違和感」(2012年10月20日11:21)という記事を読んで、書かずにはいられなかったのです。

 twitterには、「よくやった!」という評価するコメントがあったのですが、私は逆に「え!このレベル?」と思えてしまったのです。記事には「県警幹部は「事件の線は薄いとの見方は確かにあった」と振り返る。」とありますが、これが事実だとすると疑問です(記者が面白くするためにちょっと作った?)。「縊死」と「絞死」では、所見が違います。「鬱血」があったといいます。それならば、「絞死」を疑うべきです。

 2010年、全国で警察が扱った死体は、17万体ほど。そのうちの834体が「犯罪死体」(全体の0.5%)で、18,383体が「変死体」と判断されました(10.7%。88.8%が「非犯罪死体」)。犯罪死体は検証・実況見分が行われ、変死体は刑事訴訟法第229条の基づいて検視が行われます。検視の結果、非犯罪死体と判断されたものが56.0%。「犯罪死体またはその疑いのある死体と判断された」のが44.0%。

 岐阜県で警察が取り扱った死体は、2,386体(警察庁刑事局捜査第一課に報告のあったもので、交通関係は除かれている)で、そのうちの614体に「検視官」が臨場していました。臨場率は25.7%。臨場率の全国平均が27.8%、最高が沖縄の84.4%で、最低は神奈川県の11.4%です。「臨場」とは、警察組織の人間が事件現場に臨み、初動捜査に当たることを意味します。

 刑事訴訟法第229条には、「1.変死者又は変死の疑のある死体があるときは、その所在地を管轄する地方検察庁又は区検察庁の検察官は、検視をしなければならない。2.検察官は、検察事務官又は司法警察員に前項の処分をさせることができる。」とあります。刑事部捜査第1課あるいは刑事部鑑識課には、一定以上の刑事経験を持ち、警察大学校において法医学を修了した警部または警視以上の階級を有する者がいて、これを「検視官」と呼称しています。

 「平成10年以降に発覚した犯罪死の見逃し等事案について」(刑事局捜査第一課)という報告があります。それによると、「絞死」を「縊死」としてしまったものが3件。1998年、栃木県で男性59歳が実際は絞殺されたもの(同年に発覚)、2000年、男性42歳が実際は妻とその知人に絞殺されたもの(10年後の2010年に発覚)、2002年、警視庁管内で女性81歳が実際は知人に絞殺されたもの(同年発覚)。

 犯罪を見逃した要因は、関係者からの供述を鵜呑みにした、偽装工作を看破できなかった、保険金照会・薬毒物検査を実施しなかった、裏付け捜査が徹底していなかった、が挙げられるようです。

 記事によると、「逮捕は翌日の未明。地検幹部は「事件、事故などあらゆる可能性を排除せず、迅速に犯罪性を見極めた捜査だった」と話す。」とあります。このスピードは褒められてしかるべきでしょう。しかし、この記事の論調は、出来の悪い子がたまたまいい成績を取ったので、褒めちぎっている感があります。スピードを別にして、この事案で「他殺」として事件性を認めるのは警察として当然の気がします。犯罪が見逃されて、自殺として処理された事件はどのくらいあるのでしょう。警察の捜査力の向上を期待してやみません。

(追記) 「死体は語る」、「死体は生きている」、「死体は知っている」、「死体は切なく語る」など法医学に関する多数の著作で知られる元東京都監察医務院長で作家の上野正彦氏は、ニュース番組にビデオ出演して次のようなことを語りました。

 自分で首を絞めて自殺することもまったく不可能なわけではない。その場合、立って首を絞めることはできず、座って首を絞める。首を絞めるために頭をやや後方にのけぞらせるから、意識を失うと後方に倒れる。自分で首を絞めて自殺した場合には、死体は「あおむけ」である。

 上野正彦氏は、「これまでに解剖5,000体以上、検死20,000体以上の死体を見てきた死体の専門家」(wikiより)なのだそうです。こういう知見を警察が共有していないということは、誤捜査を招く不幸な事態です。

(参考) 毎日新聞が2012年12月15日に配信した「4都府県警が公表したPC遠隔操作事件の捜査に関する問題点の検証結果の概要」です。

 ■警視庁 逮捕には相当の理由があったと考えられるが、遠隔操作に対する知識を捜査員が十分に有していなかった。今後はより慎重に逮捕の要否を検討・判断するよう指導を徹底することが必要である。脅迫メールを送信した経緯や動機についての男性の説明には曖昧な点があり、供述にも変遷があった。
 一時的であっても同居の女性をかばって犯人を装っていたと主張するなど、自白の信用性に疑いが生じる余地も多く見受けられた。結果的に虚偽自白を見抜けなかったが、説明態度や内容を鑑みれば、徹底した供述の吟味が必要だった。PC内に証拠が残され、ウイルス検査でも異常が発見されなかったことから、逮捕後も捜査員は犯行が遠隔操作によるとの認識を持つには至らなかった。
 ネット空間の犯罪については、民間との協力体制を一層強化すると共に高度な知識を有する捜査員の育成が急務である。虚偽自白を見抜けなかったことを教訓とし裏付け捜査の徹底や供述吟味担当官の活用、犯人性や秘密の暴露の有無を確実に検討するなど、「捜査の基本」を改めて徹底させなければいけない。

 ■大阪府警 PCの解析結果から得た客観的証拠を犯人性立証の柱としたため、否認供述の掘り下げが不十分で、供述の吟味が足りなかった。高度なネット犯罪は手段・方法が日々変化・複雑化しており、証拠の意味・内容を一層慎重に検討すべきだった。PC内の全ファイルの解析は、高度な技術力や長期の期間が必要で、1都道府県警察レベルでは困難だった。このためインストールされたソフトウエアなどに対象を絞り込んだが、不正プログラムは発見できなかった。
 サイバー犯罪対策部門が不正プログラムの発見、解析を実施していたが、近畿管区警察局大阪府情報通信部や情報管理課と緊密に連携して組織全体としての取り組みを考慮すべきだった。サイバー犯罪対策部門としては、解析能力を有する捜査員を複数投入し、より多角的に解析することも検討したが、解析資機材の数量不足のため実施に至らなかった。
 取調官から聴取したところ、「取り調べを始める際には供述拒否権を告知した」「客観的証拠による立証に重点を置き、淡々と取り調べた」「自白を強要したり、利益誘導したような事実はない」とのことであり、その他の調査結果からも不適正な取り調べは確認できなかった。

 ■神奈川県警 誤認逮捕された男性のパソコンの解析担当者は、(遠隔操作の手法の)クロスサイト・リクエスト・フォージェリの知見がなく、不審な通信履歴を第三者介入の証拠と認識せず、更なる解析を実施しなかった。上司にも報告しておらず、解析作業を組織的に把握・管理していれば、不審な通信履歴の更なる解析ができた可能性がある。
 男性は容疑を認める上申書を作成し、理由を「少年院に送られる不安と一刻も早く社会復帰したいとの思いから」と説明。自分が置かれた状況の苦しさから、うその供述をした状況が認められ、少年の特性である「迎合性」の可能性もある。取調官の刑事手続きの説明は、少年院に入ってしまう不安を助長させた恐れがある。否認している男性に、自らの犯行でないことを具体的に説明するよう求めた言動は、殊更に困惑させた可能性があり、不適正な取り調べにつながる恐れのある行為に該当する。
 ハンドルネームの由来に関する上申書の裏付け捜査を行わず、男性から示された(犯行予告の)「2秒間での打ち込み」に関する疑問に対し、不自然さを解消する捜査を行っていない。男性が犯人であることを打ち消す「シロにする捜査」が十分ではなかった。

 ■三重県警 警察署の捜査員にネット犯罪捜査の専門知識や、遠隔操作ウイルスの十分な知見がなかった。支援を要請された県警本部のサイバー犯罪対策室員も、遠隔操作ウイルスによる犯行との想定をしていなかった。ウイルスチェックは最新の対策ソフトで行ったが、検知されなかった。大阪府警と情報交換し、PCの解析範囲を広げてウイルス発見に至ったが、府警の関連情報がなければ更に時間を要した恐れがある。
 男性の身柄を拘束する前に、動機があるかなど犯人としての適格性について多角的に検討する余地もあった。関与を否定していた男性の供述について、男性が犯人でないとする方向性の検討を十分に行わなかった。豊富な知見を有する取調官を充てることなどを初期段階から考慮すべきだった。無差別殺人を防止しなければならないという焦りもあった。
 釈放後にポリグラフ検査を実施したが、任意捜査段階や勾留前に実施していれば、供述の信用性を吟味する材料として活用できた可能性もあった。取り調べに不適正行為は認められなかった。今後は、捜査部門から情報技術解析部門に初期段階から支援を要請し、連携の強化を図る。


              (この項 健人のパパ)

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 岐阜県美濃市藍川の小児科医院「平田こどもクリニック」で2012年10月17日、同県関市の小学5年生男児(10歳)が日本脳炎の予防接種(阪大微生物研究会の「ジェービックV」。ロット番号はビケンJR155)後に意識不明となり、別の病院に搬送されましたが、約2時間半後に死亡が確認されました。男児は午後5時15分ごろ、ワクチンを接種し、約5分後に「待合室で寝ている男児の様子がおかしい」と看護師が気付き、医師が確認したところ、心肺停止状態であり、午後7時50分ごろ死亡が確認されたといいます。

 厚生労働省によると、「日本脳炎の予防接種では2010年度、接種した約440万人のうち1人だけショック症状の報告があるが、死亡例はない。」としており、日本脳炎の新ワクチン開発に携わった専門家は、「数分で血圧が急激に下がるアナフィラキシーショックの可能性が高いのではないか。年間500万回以上注射されているが、こんな事例は初めてだ」と述べてます。

 厚生労働省は、日本脳炎の予防接種について、重い副作用(ADEM、acute disseminated encephalomyelitis、急性散在性脳脊髄炎)が報告されたことから2005年度から2009年度にかけては、積極的な勧奨を差し控えていました(いわゆる「積極的勧奨の差し控え」)。しかし、日本脳炎の新ワクチンが開発されたため、2010年度から積極的な勧奨を再開しました。再開後のワクチンの副作用による死亡例は、2012年7月にも報告され、5歳から9歳未満の子ども(性別・具体的な年齢は未発表)が接種7日後に急性脳症で死亡しています(ワクチンは「ジェービックV」、ロット番号はビケンJR128)。

 この子どもは、ワクチン接種でのリスクが高くなる「癲癇(有病率は100人に1人から200人に1人と言われています。けっして珍しい疾患ではありません)」(1歳時に発症)で加療中で、超低出生体重児であり、発育遅延でリハビリ中であったようです。

(参考) 「インフルエンザワクチンの副作用(副反応)報告を読む - その2

 ワクチンの専門家によると、「どの予防接種でも、ごくまれにショック症状が出ることがある。また、持病やアレルギーがあればその影響の可能性もあり、詳しく調べる必要がある」そうです。現在、日本脳炎のワクチンは2種類が認可されています(化学及血清療法研究所「エンセバック皮下注用」と阪大微生物病研究会「ジェービック V」)が、死亡した2人は製造のロットが違うものの、同じメーカーのワクチンを接種していたということです。

 厚生労働省は、死亡例が2件続いたことを受け、調査を進め、2012年10月31日に開かれる専門家の会議でワクチン接種との因果関係などについて評価を仰ぐことにしているようです。2012年5月23日開催の第22回厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会で、委員の1人がポリオワクチンが不活化したことに関して次のように述べています。

 「この不活性化ポリオ[ワクチン]の導入は、何かバラ色のように見えるのですが、たしか世界で44例、不活化[ポリオワクチン]だけで、単味[ワクチン](抗原を1つだけ含んでいるワクチン。「混合ワクチン」の対義語)で亡くなっている方がいらっしゃいます。ですから、全く安全ですからということではなくて、麻痺のリスクあるいは死亡のリスクは低くなるかもしれないけれども、我が国で何年間OPV(live oral poliomyelitis vaccine、経口生ポリオワクチン)で死者がなかったか知りませんが、リスクはゼロではないということを公開するべきでは。

 既に資料自体は、たしか前の前か何かに公開されています。担当者は世界にある事実をきちんと背景として知っておく必要があるのではないかと思うんですね。今までのOPVがIPV(inactivated polio vaccine、不活化ポリオワクチン)になったというので世界が変わると思った、そんなことではないと思う。

 なぜ不活化ソークワクチン(Salk vaccine、1955年、米国の細菌学者Jonas Edward Salkが開発したワクチンで、ポリオウイルスをホルマリンで不活性化したものを筋肉内に注射して用いる)が失敗したか、そういうことが過去にありますから、そういうことも含めて、やはりきちんとしたものを押さえておく必要があるのではないかと。

 厚生労働省としての共通の認識のデータを小児科の先生全部に配布するとか、何かそんなことをしておかないと、本当に事が起こったときにワクチンが全部とまるということを考えておかなければいけないと思います。
」(議事録から)

 子を持つ親として、子に病原体が感染して重篤な状態になることを防ぐために受けたワクチン接種で、子を亡くすことの悲痛さは他人事ではありません。インフルエンザワクチンの接種の時期がやってきます。アレルギー体質の子を持つ親として、今年も無事に接種が終わることを強く望んでいます。

(追記) 岐阜新聞によると、接種を行った平田院長は「接種前の問診に異常はなかった。ワクチンの期限や用量は適正だったので、原因が思い当たらない」と話しているようです。男児は就学前に3回受けるのが標準とされる定期接種を受けておらず、今回が初めての接種だったそうで、平田こどもクリニックによると、男児が注射器を見て院内を逃げ回ったため、母親と看護師で押さえ、平田院長が腕に注射したのだそうです。男児の状態が悪くなった後、母親が平田院長に男児が関市内の特別支援学校に通っていることや、別の病院で処方された薬を飲んでいることなどを伝えたと岐阜新聞は報道しています。しかし、これがアナフィラキシーショックの原因になっているとは考えにくい。

 平成22年8月25日に開催された「平成22年度第1回新型インフルエンザ予防接種後副反応検討会」の資料、「推定接種者数及び副反応報告頻度について」にアナフィラキシーショックによって重篤化した事例(回復)が掲載されています。40歳代女性がインフルエンザワクチンの接種後にアナフィラキシーを起こします。その経過を見てみます。

 ワクチン接種30分後…痒み出現。
 1時間後…痒み増強。上半身に皮疹。
 2時間30分後…皮膚科受診。受診時点で全身に蕁麻疹を認め強い痒みを訴えた。直ちにデキサメタゾンリン酸エステルナトリウム1.65mg点滴静注及びヒドロキシジン塩酸塩25mg静注。
 3時間後…蕁麻疹やや軽減するも気道症状(呼吸苦)訴える。
 3時間30分後…皮膚科入院。入院時点で全身に蕁麻疹及び軽度の呼吸苦あり。咳著明。
 6時間30分後…全身ほてり感あるも蕁麻疹軽減。呼吸苦少し。咳軽減。
 8時間後…消灯。咳軽度。
 ワクチン接種翌日(ワクチン接種20時間後)…蕁麻疹少し。呼吸苦も少し訴える。咳あり。
 26時間後…皮疹消失。呼吸苦なし。咳あり。
 27時間後…退院。咳あり。

 岐阜の男児の予防接種後の死亡のケースを見ると、アナフィラキシーショックにしては経過が早過ぎるという印象は持ちます。

(参考) 感染患者報告数の少ない日本脳炎のワクチンは受けるべきではないか?

(追記) 12月13日配信の時事通信です。
 日本脳炎の予防接種を受けた岐阜県の男児(10)ら2人が死亡した問題で、厚生労働省の専門家小委員会と安全対策調査会は13日、新たな調査結果を検討した上で、改めて「直接的な因果関係は認められない」との見解を示した。
 専門家小委などは今後、日本脳炎で緊急性の高い事例が報告された場合、定期的な会合以外に検討会を開くことを決めた。
 

           (この項 健人のパパ)

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 「そんなところに行って、大丈夫なの」
 ずい分何人もの人が同じことを口にした。軍事政権だから。スー・チーさんが軟禁されたままだから。だから、国には緊張が満ち、危険が溢れており、国民はひたすら怯えながら暮らしているのではないか。何かあったら、旅行者などはすぐに身柄を拘束されて、下手をすれば帰れなくなるのではないか ― 多くの人たちが似たような印象を抱いているらしいと知って、私はむしろ、そのことの方が不思議だった。ミャンマーがどこにあるのかもろくに知らないのに。
(2008年文藝春秋刊 乃南アサ著「ミャンマー」より)

 「我が国は、ミャンマーにおける民主化運動の指導者アウン・サン・スー・チー女史が長年にわたり自宅軟禁措置の下におかれていたことに大きな懸念を有しておりましたが、本13日(土曜日)に同措置が解除されたことを一歩前進と受け止めています。ミャンマー政府が、人権状況の改善、民主化及び国民和解の実現に向けて、今後一層の前向きな措置を取ることを期待します。」(2010年11月13日 前原外務大臣談話)



 ビルマ語の文字は、まるで視力検査表の記号(「ランドルト環」、フランスの眼科医エドマンド・ランドルト (Edmund Landolt 1846-1926)が考案したもので、イタリアのナポリで開催された第11回「国際眼科学会(World Ophthalmology Congress)」(2014年の第34回は東京開催)で、国際指標として制定された)が並んでいるかのようです。



 運転免許証の更新時に受ける視力検査を思い出して、「上!」(パの音を表す基本字母)、「下!」(ガの音を表す)、「右!」(ガの音)、「左!」(ビルマ数字「1」(「ティッ」という音))、「左斜め下!」(アの音を表す母音記号)、「開いていません!」(こんなのは視力検査表にありませんね。ワの音)などと叫びたくなります。



 一つの円だけで構成されているかと思うと、上の二つの図形を組み合わせた文字もあります。「上+左斜め下」で「ハ」の音の表す字母、「下+左斜め下」で「カ」の音、「左+左斜め下」で「バ」の音、「真円(欠けていない円)+左斜め下」で「タ」(無気音)」、「真円+真円」で「タ」(有気音)です。



 さらに、左斜め上に開いた円、右斜め下に開いた円もあり、それを組み合わせて、「上+左斜め上」で「ヤ」の音を表す字母、「左+左斜め上」で「“think”の“th”」の音、「右斜め下+左斜め上」で「ラ」です。



 ビルマ語には、有気音と無気音の対立と有声音と無声音の対立があります。「対立」があるとは、それで語が区別されるということです。有声音と無声音の対立で言うならば、「たす(足す)」と「だす(出す)」を日本人の耳は区別でき、それは別の意味を持つのです。文字も「た」と「だ」で異なります。



 しかし、日本語には有気音と無気音の対立がありません。一方で、中国語は有気音と無気音の対立があるのですが、有声音と無声音の対立はありません。そこで、日本人の中国語学習者の多くは、有気音と無気音の対立を有声音と無声音の対立にすり替えて、中国語を覚えようとします。

 それはそれで何とかなるものなのですが、ビルマ語はタイ語と同じように有気音と無気音の対立とともに有声音と無声音の対立があるために、すり替えることができません。その識別を耳にしっかりと覚えさせなくてはなりません。

 有気音は、ラテン文字表記では“h”や“’(アポストロフィ)”で表されます。例えば、“p”の有気音を“ph”や“p’”と表します。ところが、ビルマ語には“think”の“th”の音もあることから、“t”の有気音を表すために“th”を使うことができません。そこで、有気音は、“h”を後ろではなく前につけることで解決している学習書もあります。つまり、“p”の有気音を“hp”とラテン文字表記するのです。

 “t”の有気音を“th”と表現することもできます。そのように表している学習書もあります。話しが横に逸れたので、元に戻して、ビルマ文字の話しを続けます。

 ビルマ語の基本字母は33文字ありますが、ここまでで12文字紹介したことになります。基本字母の中には「眼」の付いたものもあります。円の欠けている位置(上、下、左、右)と眼の付いている位置(上、下、左、右)の組み合わせで作られています。

 「上+上眼」で「バ」の音を表す字母、「上+下眼」で「マ」の音、「上+右眼」で「パ」(有気音)、「下+左眼」でビルマ数字の「8」(シッ)、「右+下眼」で母音「エ」、「左+下眼」で「カ」(有気音)、「真円+下眼」で「ダ」、「真円+左眼」で「サ」です。



 ビルマ文字をどうやって書くかも知りたいところです。漢字の書き順は、正しくなくても、漢字は理解されます。それと同様にビルマ文字も間違った書き順で書いたとしても理解されるでしょう。でも、漢字の書き順と同じように正しい書き順を守れば、文字は美しく見えます。

 ビルマ文字を書くときの原則は、時計回りに円を描くことなのだそうです。真円(欠けていない円)(/w/)は、最下部から描き始めて、時計回りに筆を運び、最下部でつなげます。一部が欠けている円は、上部が欠けている円を除いて(この円は2画になる)、一筆で書くことになります。



 2つの円が組み合わさったものは、左側の円から、上記の規則に従って書き始め、右側の円へと進みます。2つ並ぶ円の左側の円の上部が欠けているものは3画になりますが、残りはすべて2画になります。



 円の中に眼のある字母や記号・数字は、外の円から書き始め、中の眼で終わるのが原則ですが、母音記号の /e/ とビルマ数字の「8」は、1筆で描くために中の眼から書き始めます。また、外の円を書き終わってから、中の眼を書くのが原則なのですが、基本字母 /m/ は、2画で書くために、上の欠けた円はふつうは左半分から書き始めるところを、円の右半分から書き始めます。



 表音文字であるビルマ文字の基本字母33文字のうちの18文字とその書き順を紹介しました。この文字の形に慣れてしまえば、視力検査とは思わず、その表す「音」が頭に浮かびそうです。でも、ビルマ(ミャンマー)に行くときまでに間に合うのでしょうか。少なくとも街中の表記を意味は分からないまでも読みたいものです。住所が読めるのは大いに役立ちます。高い山に登ろうとして、まだその山の麓にも達していない気分です。

 東京都新宿区高田馬場周辺には、「リトル・ヤンゴン」と呼ばれる地域があり、ミャンマー料理店もいくつか存在するそうです。日本最大のミャンマー人コミュニティ(約500人が居住しているという)を形成している「リトル・ヤンゴン」に足を運んで、ミャンマーという国の雰囲気とその文字にそのうちに浸りに行きたいものです。

              (この項 健人のパパ)

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 公費負担の対象になる疾患に難病「家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)」があります。「家族性高コレステロール血症(Familial Hypercholesterolemia)」は、生まれつき血液中のLDLコレステロールが異常に増えてしまう疾病です。血液中にあるLDLコレステロールは、肝臓の細胞表面にある「LDL受容体(LDLレセプター)」と呼ばれる蛋白によって肝臓の中に取り込まれていきます。

 家族性高コレステロール血症の患者では、LDL受容体の遺伝子やこれを働かせる遺伝子に異常があり、血液中のLDLコレステロールが肝臓に取り込まれないで、血液中に溜まったままになってしまいます。この遺伝子疾患の遺伝子は、「常染色体」上にあり(常染色体性優性遺伝)、性染色体にあるわけではないので、男性にも女性にも起こりえます(同じ遺伝子疾患である「血友病」は、性染色体に疾患を引き起こす遺伝子があるため、血友病患者のほとんどが男性)。

 両親の一方からこの疾患を引き起こす不全の遺伝子を受け継いだ場合を「ヘテロ接合体」と呼び、両親双方から遺伝した重症例を「ホモ接合体」と呼びます。「ヘテロ接合体」は日本では500人に1人ほどなのですが、「ホモ接合体」は100万人に1人ほどと言われます。500×500=250,000(25万)ですから、この不全な遺伝子を持った男女が出会い子をもうける確率からして、「ホモ接合体」の患者は極めて稀有な例となります。

 ヘテロ接合体の患者は、健康な人の50%ほどしかLDL受容体がないのですが、肝臓でのコレステロール合成を低下させ、調整機能のためのLDL受容体を活性化させて、血液中のLDLコレステロールの肝臓への取り込みが促進される「スタチン (Statin)」(「HMG-CoA還元酵素阻害薬」の総称)が創薬されたことで、薬剤による治療が効果を上げることも多いと言います。

 (1)食べ物から摂取するコレステロールの量を減らすよりも、体内のコレステロール合成の阻害が、血中コレステロールをよく下げるはずだ、(2)他の微生物を攻撃する武器としてカビやキノコは抗生物質をつくるが、武器としてコレステロール合成を抑える物質をつくるカビやキノコがいるに違いない という予測を立て、1971年春に4人の小さなグループで研究を始めた遠藤章氏は、6000株という数多くの微生物を調べて、1973年夏に、ミカンや餅に生える青カビの仲間(penicillium citrinum、ペニシリウム・シトリヌム。腎機能障害・腎臓癌を引き起こす毒素「シトリニン(citrinin)」を生成する真菌)から「コンパクチン(compactin)」という物質を分離します。



 1981年8月27日に、金沢大学の「馬淵 宏」氏らは、アメリカの医学雑誌「The New England Journal of Medicine」に、コンパクチン(ML-236B)を7名の家族性高コレステロール血症(ヘテロ接合体)患者に投与し、経過を観察したところ、LDLコレステロールは劇的に低下し、その一方で、HDLコレステロールは低下しなかったことを“Effects of an Inhibitor of 3-Hydroxy-3-Methylglutaryl Coenzyme A Reductase on Serum Lipoproteins and Ubiquinone-10 Levels in Patients with Familial Hypercholesterolemia”として発表します。

 ニューヨークタイムズは、この報告を“New Drug May Prevent Hardening of Arteries”というタイトル(見出し)で記事にします。

 A new drug made from penicillin reduces levels of cholesterol in the blood and may prevent hardening of the arteries, an underlying cause of the heart attacks and strokes that kill 800,000 Americans a year, researchers say.(ペニシリンから作られた新薬は、血液中のコレステロール値を減少させ、年間80万人のアメリカ人が亡くなる心臓発作や脳卒中の根本的な原因である動脈硬化を防ぐことができる、と研究者は述べている。)

 A study shows that the experimental drug compactin is effective in people with an inherited defect that produces high cholesterol levels in the blood and leads to premature heart disease.(研究は、血中コレステロール値を上昇させ、心臓病にかかる年齢を早めてしまう不全な遺伝子を持つ人々に、実験薬「コンパクチン」が効果的であることを示している。)

 The new study was directed by Dr. Hiroshi Mabuchi at Kanazawa University School of Medicine in Japan and was published in the current issue of the New England Journal of Medicine.(この新研究は、日本の金沢大学医学部の馬淵宏博士により主導され、 the New England Journal of Medicineの最新号に掲載された。)(馬渕宏氏は、現在、金沢大学大学院医学研究科脂質研究講座特任教授)



 スタチン系薬剤は、構造中に肝臓でのコレステロール合成の中間生成物である「HMG-CoA」と類似した部分を持つため、律速酵素(rate-limiting enzyme)であるHMG-CoA還元酵素を阻害します。HMG-CoA還元酵素は、HMG-CoAと構造が類似しているスタチン系薬剤を取り込みます。HMG-CoA還元酵素の活性部位にスタチン系薬剤が入り込むと、本来の基質であるHMG-CoAは反応することができず、コレステロールの生合成は阻害されます。

 肝臓でのコレステロール合成が抑制され、肝臓内のコレステロール含量が低下すると、肝臓の調整機能が働き出し、LDL受容体の発現が誘導され、肝細胞膜のLDL受容体が増加しで、外部から肝臓内にコレステロールを取り込もうとします。血液中のコレステロール含有率の高い(コレステロールを50%ほど含む)LDL(Low Density Lipoprotein、低比重リポタンパク)の肝臓への取り込みが促進されます(HDL、IDL、VLDLといったリポタンパクはコレステロールの含量が22~30%程度)。そして、血液中のコレステロールが減少していきます。

 馬渕 宏氏の発表した論文には次のような記述があります。

 Serum cholesterol decreased from 390±9 to 303±8 mg per deciIiter, and serum triglyceride decreased from 137±18 to 87±9 per deciliter. Intermediate-density-lipoprotein(IDL) cholesterol,IDL triglyceride, low-density-lipoprotein(LDL) cholesterol, and LDL triglyceride decreased significantly. However,there were no significant changes in very-low-density-lipoprotein(VLDL) cholesterol and triglyceride or high-density-lipoprotein(HDL) cholesterol.(血清コレステロールは、390±9 mg/dLから303±8 mg/dLに、血清トリグリセリドは、137±18 mg/dLから87±9 mg/dLに減少した。IDLコレステロール、IDLトリグリセリド、LDLコレステロール、LDLトリグリセリドは有意に減少した。しかし、VLDLコレステロール、VLDLトリグリセリド、HDLコレステロールには有意な変化はなかった。)

 その機序についてはまだ理解が進んでいませんが、コレステロールの減少は中性脂肪(トリグリセリド)の減少を伴うもので、同時に増加・減少していくようです。これはコレステロールと中性脂肪を一緒に収納しているリポタンパクというカプセルの数が増減することの結果なのでしょうか。

 このHMG-CoA還元酵素阻害薬であるスタチン系薬剤は、血中のLDLコレステロールを減少させますが、同時に血中の中性脂肪も減少させます。これと同様の働きが「ヘスペリジン」にもあって、血中の中性脂肪を減少させる働きを持つ「ヘスペリジン」は、血中のコレステロールを減少させるのかも知れません。

 長々と「モノグルコシルヘスペリジン」について書いてきましたが、「私のブログは旅行ネタがメインなのに、、、」「こんな難しい話、誰も読んでいないわよ。」「調べる時間があったら、旅行のことにして!」「パソコンの前に座ってばかりいないで、私の話も聞いてよ。」などなど、妻の苦情が累積していくので、家庭の平穏のため、ほとぼりが冷めるまでこの話題での記事はしばらくお休みです。ではまた。

(参考)「トクホって? チュウセイシボウって? モノグルコシルヘスペリジンって?(1)

(参考)特保って? チュウセイシボウって? モノグルコシルヘスペリジンって?(2)

(参考)特保って? 中性脂肪って? モノグルコシルヘスペリジンって?(3)

(参考)「スタイリースパークリング」という飲み物と「モノグルコシルヘスペリジン」

(参考)禁煙? 運動? モノグルコシルヘスペリジン? そしてフラミンガム心臓研究(1)

(参考)禁煙? 運動? モノグルコシルヘスペリジン? そしてフラミンガム心臓研究(2)

(参考)コレステロールには、悪玉も善玉もなく、人体に欠くことができない物質(1)

(参考)コレステロールには、悪玉も善玉もなく、人体に欠くことができない物質(2)

                  (この項 健人のパパ)

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妻「まだ書いてるのね。厭きないんだ。」
私「・・・」
妻「ホントに何が好奇心に火を点けるかわからないんだから。」
私「・・・」
妻「飽きっぽいのに、1か月も続いているわよね。」
私「・・・」
妻「ミャンマーはどうなったの。あんなに本を買い込んだのに。」
私「・・・」
妻「熱中するなら旅行のことにして欲しいわ。来年の旅行、どこに行くつもりなの。そろそろ決めなくちゃ。」
私「・・・」

 ビタミンにA、B、C、D、E、Kなどの種類があるように、複合タンパク質型(非タンパク質性の構成要素を含むタイプの酵素)酵素の非タンパク質部分である「補酵素(コエンザイム、助酵素)」(多くはビタミンから作られる)にもA、R、Fなどの種類があります。そのなかで、パントテン酸(pantothenic acid、vitamin B5)とアデノシン二リン酸(Adenosine diphosphate, ADP)、およびシステアミン(cysteamine、2-mercaptoethylamine)から構成される「補酵素A(コエンザイムA、coenzyme A、CoA)」は、ヒトにとって非常に重要な補酵素です。



 主に肝臓で生合成されるコレステロールは、「内因性コレステロール」と呼ばれ、食物由来の(胆汁酸と複合体を形成して腸管より吸収される)「外因性コレステロール」の2~4倍程度体内に存在します。体内のコレステロールは、その多くが体内で作られているのです。それゆえ、食事療法で体内のコレステロールを減らそうとしてもその10%程度を減らすことができるに過ぎないといいます(運動療法と組み合わせても15%程度)。

 単純に考えて、LDLコレステロールの値が140mg/dL以上を脂質異常として、正常域に食事療法で戻せるLDLコレステロール値は155mg/dL程度の人までであり(155の10%は15.5だから、155-15.5=139.5)、食事療法+運動療法では165mg/dL程度の人までだということになります(165の15%は24.8ほどだから、165-24.8=140.2)。



 コレステロールは、酢酸と補酵素Aが結合した「アセチルCoA(Acetyl-CoA、アセチル補酵素A)」から、転移酵素(トランスフェラーゼ、transferase)、合成酵素(シンターゼ、synthase)、還元酵素(レダクターゼ、reductase)、リン酸化酵素(キナーゼ、kinase)、脱炭酸酵素(デカルボキシラーゼ、decarboxylase)、異性化酵素(イソメラーゼ、isomerase)、酸素添加酵素(オキシゲナーゼ、oxygenase)、水酸化酵素(ヒドロキシラーゼ、hydroxylase)、脱水素酵素(デヒドロゲナーゼ、dehydrogenase)などといった酵素の助けを借りて、多くの反応段階を経て、合成されます。



 その解明に人生の多くをかけた人たちがいるはずなのですが、「ああ、そうなの。で、それが、何?」と冷たく返答してしまいそうになる話しがしばらく続きます。「アセチルCoA(Acetyl-CoA、アセチル補酵素A)」は、どのような過程を辿って、「コレステロール(cholesterol)」になるのでしょう。



アセチルCoA
 ↓ アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ(Acetyl- Coenzyme A acetyltransferase)
 ↓ (アセチルCoA2分子からアセトアセチルCoAと補酵素Aを生成する反応を触媒する酵素)
アセトアセチルCoA
 ↓ HMG-CoA合成酵素(HMG-CoAシンターゼ、HMG-CoA synthase)
 ↓ (アセチルCoAとアセトアセチルCoA からHMG-CoAを生成する反応を触媒する酵素)
ヒドロキシメチルグルタリルCoA (HMG-CoA)
 ↓ ヒドロキシメチルグルタリルCoA還元酵素(hydroxymethylglutaryl-CoA reductase
 ↓ (HMG-CoAからメバロン酸を生成する反応を触媒する酵素。メバロン酸経路の律速酵素)
メバロン酸(mevalonic acid、MVA)

 メバロン酸ができるまでと寄り添っていてくれた補酵素Aが離れていきます。次に現れる“phospho-”(ホスホ、フォスフォ)とは、「リン酸(燐酸)」を意味します。

メバロン酸
 ↓ メバロン酸キナーゼ
5-ホスホメバロン酸(5-phosphomevalonate)
 ↓ ホスホメバロン酸キナーゼ
5-ジホスホメバロン酸(5-diphosphomevalonate)
 ↓ ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ
イソペンテニル二リン酸(isopentenyl diphosphate、IPP)

 「リン酸(phosphoric acid)」が2つ結合していることから「二リン酸(diphosphoric acid)」、リン酸が高温で脱水縮合すると生成することから「ピロリン酸(pyrophosphoric acid)」(pyro- は「高温」を意味する)と名前を2つ持つ化学式 H4P2O7 の物質がここからはついてきます。

イソペンテニル二リン酸
 ↓ イソペンテニル二リン酸イソメラーゼ
ジメチルアリル二リン酸((dimethylallyl diphosphate、DMAPP)
 ↓ ジメチルアリルトランスフェラーゼ
 ↓ ジメチルアリル二リン酸とイソペンテニル二リン酸から
ゲラニル二リン酸(geranyl diphosphate, GPP)
 ↓ ゲラニルトランスフェラーゼ
 ↓ ゲラニル二リン酸とイソペンテニル二リン酸から
ファルネシル二リン酸(farnesyl diphosphate)
 ↓ ファルネシル二リン酸ファルネシルトランスフェラーゼ
 ↓ (ファルネシル二リン酸2分子からスクアレンを生成する反応を触媒する酵素)
スクアレン (squalene)

 いい加減飽きてきたのですが、まだまだ続きます。二リン酸は離れ、ステロール骨格ができてきます。官能基同士が反応して、エネルギー的に安定な5員環や6員環を形成することを「閉環反応(ring closure reaction)」というのだそうです。

スクアレン
 ↓ スクアレンエポキシダーゼ
(3S)-2,3-エポキシスクアレン((3S)-2,3-Epoxysqualene)
 ↓ ラノステロールシンターゼ
ラノステロール (lanosterol)
 ↓ 
 ↓
 ↓
コレステロール(cholesterol)

 多くの人にとってどうでもいい話し、でも栄養士や薬剤師にとっては常識である「コレステロールの生合成」の話しをしてきました(私にとっても好奇心が満足すれば、すぐにでも忘れてしまうことですが、薬剤師さんたちは資格を取るために苦労しているんですね)が、実は私が取り上げたいのは、コレステロールの生合成の初期段階の「ヒドロキシメチルグルタリルCoAからメバロン酸を生成する反応」だったのです。すみません、時間を無駄にして、、、

 ヒドロキシメチルグルタリルCoA (HydroxyMethylGlutaryl-CoA、HMG-CoA)からメバロン酸(mevalonic acid、MVA)を生成する反応では、「ヒドロキシメチルグルタリルCoA還元酵素(HMG-CoA還元酵素)」が関与します。この反応を阻害するのが、リピトールなどの「HMG-CoA還元酵素阻害薬」であり、「ヘスペリジン(hesperidin)」(この説は確立していない。「ようだ」ということ)なのです。

 リンゴやブドウなどの果実は粘稠性の「ペクチン(pectin)」を大量に含んでいます。植物の細胞壁などに多く含まれているため、搾った果汁は粘度が高く、濁っています。この果汁を粘度の低い、澄んだものにするのには、「ペクチナーゼ(pectinase)」という酵素が用いられます。三共株式会社(現在は合併して、国内製薬メーカー大手4社の1つ「第一三共株式会社」)は、日本で最初にペクチナーゼを製造販売します(商品名「スクラーゼS」。1954年。2007年以降は三共株式会社の食品用酵素事業を取得した三菱化学フーズ株式会社が販売)。ブドウに生える2種類のカビとハラタケがペクチナーゼを大量につくる(Coniothyrium diplodiella)ことを発見して、特許を取り、商業化に成功させたのが三共の研究員「遠藤 章」氏(現在は、一橋大学イノベーションセンター客員教授)でした。

 いまから半世紀ほど前の1966年に一種の報奨としてアメリカの「アルバート・アインシュタイン医科大学(Albert Einstein College of Medicine、大学院大学“graduate school”)」に2年間留学した遠藤氏は、高血圧、肥満、糖尿病、動脈硬化といった生活習慣病の時代に入っていたアメリカで、「コレステロールに気をつけよう」という公共広告をテレビで見、コレステロール含量を表示している食品を目にします。

 コレステロール低下剤の開発ができないかと考えた30代の半ばの遠藤氏は、(1)食べ物から摂取するコレステロールの量を減らすよりも、体内のコレステロール合成の阻害が、血中コレステロールをよく下げるはずだ、(2)他の微生物を攻撃する武器としてカビやキノコは抗生物質をつくるが、武器としてコレステロール合成を抑える物質をつくるカビやキノコがいるに違いない という予測を立て、コレステロール合成の律速酵素である「HMG-CoA還元酵素」の阻害剤を探し始めます。

 またしても、話しが長くなりました。次回に続きます。

(参考)「トクホって? チュウセイシボウって? モノグルコシルヘスペリジンって?(1)

(参考)特保って? チュウセイシボウって? モノグルコシルヘスペリジンって?(2)

(参考)特保って? 中性脂肪って? モノグルコシルヘスペリジンって?(3)

(参考)「スタイリースパークリング」という飲み物と「モノグルコシルヘスペリジン」

(参考)禁煙? 運動? モノグルコシルヘスペリジン? そしてフラミンガム心臓研究(1)

(参考)禁煙? 運動? モノグルコシルヘスペリジン? そしてフラミンガム心臓研究(2)

(参考)コレステロールには、悪玉も善玉もなく、人体に欠くことができない物質(1)

(参考)家族性高コレステロール血症とHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系薬剤)

                 (この項 健人のパパ)

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 アメリカに「退役軍人省(United States Department of Veterans Affairs、VA)」という退役軍人に関わる行政を所掌している官庁があります。退役軍人省の下には「退役軍人保健局(Veterans Health Administration)」があり、およそ160の退役軍人用の医療施設、850以上の診療所を有して、およそ500万人に医療サービスを提供しています。退役軍人省は、「規範的老化研究(Normative Aging Study、NAS、規範的加齢研究)」に収集したデータを提供しています。

 心臓病学を扱った医学雑誌(online)“The American Journal of Cardiology”(アメリカ心臓病学ジャーナル)に“Relation Between High-Density Lipoprotein Cholesterol and Survival to Age 85 Years in Men (from the VA Normative Aging Study)”(85歳までの男性におけるHDLコレステロールと生存率の関係(退役軍人対象の規範的老化研究から))という記事が掲載されました(2011年)。この研究は、中年時に測定したHDL-C値が85歳まで生存するのにどのような影響があるかを検討したものです。

 男性の21歳から80歳までの登録者2,280人を経過観察し、85歳まで到達した375名と、達しなかった280名について、登録時のHDL-C値で(1)~40mg/dL、(2)40以上~50mg/dL、(3)50mg/dL~の3群に分け、各群の生存率を比較検討したそうです。その結果、HDL-Cが10mg/dL高くなれば、85歳前に死亡するリスクは14%減少することがわかったのだそうです。

 コレステロールについて調べていると、LDLコレステロールとかHDLコレステロールという名前が出てきたり、悪玉コレステロールとか善玉コレステロールとかいった言葉も出てきます。この言葉、すでに目にしてはいたのですが、関心はなく、コレステロールにはいろいろ種類があるんだな、くらいの認識で多くのことに好奇心を抱く私でありながら、調べることもなく過ごしてきました。

 すでに赤いちゃんちゃんこを着て、赤い頭巾を被り、赤い座布団に座ったはずなのですが、夜更かしをしていた若い頃とは違って、夜10時を過ぎると眠くなり、朝5時には目が覚めてしまうこと以外は、特に若い頃との違いを感じない生活を送っています。妻に付き合って受けた健康診断でも、肥満度は基準値が-15.9~13.2のところが-4.2%、最高血圧も90~130のところが116mgHg、中性脂肪が50~149のところが68mg/dL、LDL-Cが70~139のところが105mg/dL、HDL-Cが40~70のところが48mg/dLなどとすべてが基準値内に収まっています。

 そのために、「健康的な生活」という言葉に無頓着でした。しかし、若い頃、胴囲が73~76cmだったものが少し前から79cmのズボンでないと穿けなくなったことを妻に見抜かれ、栄養士の資格を持っていて「健康的な生活」を心がけている妻が私の口にする食べ物に以前より強く干渉するようになりました。食べたい物を食べたいときに食べるという食生活(といっても、決して暴飲暴食をするわけでも健康に悪いと思われる物を食べるわけではないのですが)を続けるためには、理論武装をしなければなりません。



 コレステロールは、1種類でした。LDLコレステロール(悪玉コレステロール)とHDLコレステロール(善玉コレステロール)の少なくとも2種類がある、わけではないのです。「悪玉」コレステロールという言葉がありますが、コレステロール自体は私たちの生命を維持するために欠かすことのできない物質で、1日あたり約1gを補充する必要があります。食事によって取り入れられるコレステロールは10~30%程度で、残りは主に肝臓で合成されているのだそうです。すると、食事から100mg~300mg程度のコレステロールを摂取しても問題ないことになります。コレステロールは、細胞膜、ステロイドホルモン(副腎皮質ホルモン、性ホルモンなど)、胆汁酸、ビタミンDの材料などになります。
 


 胆汁酸は、肝臓で酵素「チトクロムP450(Cytochrome P450)」の働きでコレステロールが酸化されることで産生され、十二指腸に分泌される消化液「胆汁」の主原料になります。食事でとった脂肪分の消化・吸収を助けるとともに、脂溶性ビタミンの吸収にも関わっているのだそうです。コレステロールから作られる胆汁酸は、界面活性剤として働き、細菌の細胞膜を溶解して、小腸内や胆管での「腸内細菌叢(enterobacterial flora、gut flora)」の形成を妨げることもあるのだそうです。



 ステロイド骨格(steroid、cyclopentanoperhydrophenanthrene、シクロペンタノペルヒドロフェナントレン)は、3つのシクロヘキサン環と1つのシクロペンタン環からなる4縮合環炭素構造です。このステロイド骨格にヒドロキシ基(OH基)が結合したものが「ステロール (sterol、ステロイドアルコール、steroid alcohol)です。そして、このステロールの一つが、コレステロール(cholesterol)です。フランスの科学者「フランソワ=プルティエ・ドゥ・ラ・サール(François Poulletier de la Salle、フランソワ=ラサール)」が1769年に胆石からコレステロールの固体を初めて同定します。それを、フランスの科学者「ミシェル=ウジェーヌ・シュヴルール(Michel Eugène Chevreul)」が1815年にギリシア語の“chole-”(胆汁)と“stereos”(固体)から名付け(最初は「コレステリン(cholesterine)」だったそうな)、化学構造がアルコール体であるため、“-ol”が付けられているのだそうです。

※ フェナントレン(phenanthrene)は、3つのベンゼン環が結合した多環芳香族炭化水素です。ペルヒドロ(perhydro-)とは、すべての二重結合に水素原子が付加して完全に飽和になったことを表します。そこで、ペルヒドロフェナントレン(perhydrophenanthrene)とは、フェナントレンのすべての二重結合に水素原子が付加していることを意味します。そこに、シクロペンタン (cyclopentane) が結合したものがシクロペンタノペルヒドロフェナントレン(cyclopentanoperhydrophenanthrene)だということになります。



 コレステロール値は低ければいいというものではないようです。70歳の日本人を対象にして、5年後の生存率と血中コレステロール値の関係を探ったある研究では、血中コレステロール値が195~214mg/dLのグループの5年後の生存率は75%だったのに対し、159mg/dL以下のグループは生存率が有意に低く、48%だったといいます。古いデータなのですが、ハワイの日系人男性を対象に行われた疫学研究では、血清コレステロール値が上昇するにつれて、虚血性心疾患での死亡率は上昇したのですが、一方で、悪性新生物(癌)での死亡率は下降したようです。

 食事からコレステロールを摂り過ぎても、健康体であるならば、肝臓でのコレステロールの合成が減り、それでも多すぎる場合は肝臓などに蓄積され、血中のコレステロールの量は一定に保たれているのだそうです。すると、コレステロールが正常値にある場合、摂取する食品のコレステロールの多寡を気にする必要はないことになります(実際、私は気にしたことがありません)。しかし、高コレステロールの人は、気にすべきでしょう。肝臓のこの機能が低下しているから、または体質的にこの機能が不十分であるから、高コレステロールになったのでしょうから。

 長い、長い道のりを辿って、いよいよ結論というべきものに到達しようとしています。この記事のシリーズを書き始めたのは、妻が私のために伊藤園の「スタイリースパークリング(Stylee Sparkling)」という飲料を買ってきたのがきっかけでした。あれから妻はたびたびスタイリーを買ってきますが、私はまだ殆ど口にしていません。実は、妻が気にしていた?

(参考)「トクホって? チュウセイシボウって? モノグルコシルヘスペリジンって?(1)

 血中のコレステロールの量が多「過ぎる」のは、心筋梗塞や脳血管障害になるリスクを増加させる。年齢とともに肝臓の機能が衰え、血中のコレステロールの量をコントロールし難くなっているだろう。薬に頼らず、食品でなら無理なく続けられるだろう。などという配慮があったのだろうと思われます。巷に氾濫する「健康情報」を鵜呑みにしない私は、調べ始めました。で、スタイリースパークリングの成分の「モノグルコシルヘスペリジン」は、どのようにして健康増進に寄与するかについての一応の結論に辿りつこうとしています。

 コレステロールが肝臓でどのようにして生成されるかが「ヘスペリジン」という物質の理解に必要なので、次回はそれについて調べたことを記述したいと思います。

(参考)「トクホって? チュウセイシボウって? モノグルコシルヘスペリジンって?(1)

(参考)特保って? チュウセイシボウって? モノグルコシルヘスペリジンって?(2)

(参考)特保って? 中性脂肪って? モノグルコシルヘスペリジンって?(3)

(参考)「スタイリースパークリング」という飲み物と「モノグルコシルヘスペリジン」

(参考)禁煙? 運動? モノグルコシルヘスペリジン? そしてフラミンガム心臓研究(1)

(参考)禁煙? 運動? モノグルコシルヘスペリジン? そしてフラミンガム心臓研究(2)

(参考)コレステロールには、悪玉も善玉もなく、人体に欠くことができない物質(2)

(参考)家族性高コレステロール血症とHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系薬剤)

                  (この項 健人のパパ)

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