監督:ウィル・シャープ
出演:ヴェネディクト・カンバーバッチ
クレア・フォイ他
あらすじ:
イギリスの上流階級に生まれたルイスは早くに父を亡くし、一家を支えるためイラストレーターとして働くように。やがて妹の家庭教師エミリーと恋に落ちた彼は、周囲から身分違いと猛反対されながらも彼女と結婚。しかしエミリーは、末期ガンを宣告されてしまう。そんな中、ルイスは庭に迷い込んできた子猫にピーターと名づけ、エミリーのために子猫の絵を描き始める。
先日の朝日新聞にこの映画の劇評があり、あのヴェネディクト・カンバーバッチさんが猫の絵をたくさん遺した人を演じるとのことで俄然興味がわいて、早速日比谷へ。
ルイス・ウェインという方はイギリスではかなり有名とのことですが、私は全く知りませんでした。「誰もが知っている有名な猫のイラスト」と聞いて、ハワイのあの猫かな?と思った程度。(イギリスだってば)いろいろググると、なんとあの「吾輩は猫である」の中に出てくる猫の絵葉書はこのウェイン氏の作であるとのこと。こんな本も出ていました。
漱石先生がご覧になった絵ハガキはこれ→
かの岩合光昭氏も共鳴したというこの映画、猫中心かといえばそうでもなく、ルイス本人の波乱の人生。ブルジョワ階級に生まれたものの、父を失いたくさんの妹たちを支えるために様々な仕事をしようと試みるが、どれもなかなかうまくはいかず、何故か特許と電気にこだわる。よーく見ると、この作品の原題って、[The Electrical life of Luis Wain]なんですよね。反対を押し切って結婚した10歳年上の妻のために描いたたくさんの猫たちがこの作家の生活を支えることになっていくわけですが、絵と一緒に版権まで売り渡してしまったがゆえに、いくら評判になって絵はがきが売れても、一向にお金持ちにはなりません。誰か教えてあげればいいのに~
それでも、病魔に侵された妻の「世界は美しい」という言葉を胸に絵を描き続けます。しかしながら、妻を失い、ソウルメイトだった愛猫ピーターを失い、次第に壊れていく心。ピーターの最期を見つめる場面とベッドで号泣するシーンは本当に短いのですが、胸が締め付けられてしまいました。やがて絵にも変化が訪れ、現代でも彼が晩年に描いた「万華鏡猫」は精神疾患をもつ人の典型的な絵として扱われているそうです。
統合失調症と診断されて貧民病院に入れられたウェインを救ってくれたのは、あのH.G.ウェルズをはじめとした彼の絵のファンたちだったそうです。
ラストは本当に美しい景色の中に入っていくウェイン。きっとその先には最愛の妻と愛猫ピーターが待っているんだろうなあ。。
ルイス・ウエインの猫の絵は今月下旬から銀座の画廊で公開されるそうなので、そちらものぞいてみようかな。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます