作:ニック・ペイン
翻訳:浦辺千鶴
演出:小川絵梨子
出演:浦井健治 鈴木杏
あらすじ:
物理学者のマリアンと養蜂家のローランド。
二人が出会ったのは雨のバーベキュー場。その時、彼には妻がいた。
あるいは、晴れた日のバーベキュー場で出会い、恋におちた。
いつしか別れてしまった二人が再会する時、ローランドは別の誰かと婚約していた。あるいは......。
あの日、違う受け答えをしていたら?あの日、二人の状況がまったく逆だったら?
さまざまなパターンを繰り返しながら物語は進行し、やがて二人に運命の日が訪れる......。
(公式HP)
このあらすじを読んだ時、まず思い浮かんだのが1998年のイギリス映画「スライディング・ドア」でした。グィネス・パルトロー演じる女性が地下鉄に乗り遅れた(つまりドアが閉まってしまった)場合と、間に合って無事地下鉄に乗れた(開いたドアに滑り込めた)場合の運命と恋の行方が並行して描かれるという異色の作品でした。
誰にでもありますよね~「あの時、別の選択をしていたら」ってことが。
・・・・・でも、この作品はもっと複雑な構成でした。マリアンとローランドが出会うシーンから「チン!」というベルの音を合図に何通りものパターンで繰り返し同じ場面が展開されます。????なんじゃこりゃ?ローランドに妻がいるパターン、いないパターン、などなど。あの「チン!」がなければ本当にわけがわからなかったかも。
その不思議な進行は、マリアンが専攻する量子力学と深く関わっているらしく「この世界は、実は無数の可能性にあふれている」ということのようです。
う~ん。。。。かなり実験的な作品。浦井君と杏ちゃんでなかったらきっと客席埋まらなかったのでは。。。。
『唯一のものに思える日々の裏には、実は数限りない別の可能性があるのではないか。誰もがぼんやりと考え、けれど答えの出ない人生の大きな疑問。この作品ではその無数の可能性を、同じようでいながら少しずつ変化している場面を連続して演じる、という一風変わった手法がとられています。』(公式HP)
とあり、同じ場面の違うバージョンが行きつ戻りつ少しずつ進行し、やがて二人が始めた生活が互いの心のすれ違いや浮気(これも数バージョン)そして別れ、再会、深刻な悲しみへとつながって行きます。最後に用意されたのは、やはり観客への「どっちだと思う?どちらがいい?」的な投げかけでした。
浦井君演じるローランドは本当に純真でまっすぐで不器用で誠実。マリアンの命をめぐる一大事を知って青ざめ、必死に心を整理しようとする表情は、鬼気迫るものがありました。そして、「そんなことにはならないよ~」バージョンの場面(何の事だかわかりにくいですね。ヒントは「完治」)では、喜びを体中で表現。浦井君、すごい役者になったなあ。プロポーズの場面も数パターンありますが、どの場面でも必ずナイトのように彼女の前にひざまずく姿が揺るぎなく「王子」なのもうれしい
杏ちゃんは、11年前に藤原君のハムレットでオフィーリアを演じた時、レアティーズ役に苦しんでいた井上芳雄くんに「生まれた時から女優のような杏ちゃん」と言わしめたほどの実力のある女優さんですから、もう鉄板です。難解な物理学の解説も流暢そのもの。まるで彼女自身が本当の物理学者のようでした。スタイルもいい!そして何より目ヂカラが半端ではない。
そんな二人の渾身の二人芝居。もう少し、もう少しわかりやすい物語にしてくれたら通いましたよ。小川先生!
実を申せばこの私にもありましたよ。あの日、あの時、あの地下鉄の通路で、出会うはずのない現夫とばったり再会しなければ・・・・というのが。ぼやっと壁の左側歩いてたら今頃は全く別の人と全く別の生活があったかもしれないということが。
オペラシティのツリーがきれいでした謎の巨人が見上げていました
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