作
アーサー・ミラー
翻訳
広田敦郎
演出
ショーン・ホームズ
出演
段田安則 鈴木保奈美 福士誠治 林遣都 / 前原滉 山岸門人 町田マリー 皆本麻帆 安宅陽子 /
鶴見辰吾 高橋克実
あらすじ
1950年代前後のアメリカ、ニューヨーク。かつて敏腕セールスマンとして鳴らしたウィリー・ローマンも、もう63歳。得意先も次々と引退する中、思うようにセールスの成績も上がらない。かつてのような精彩を欠き、二世の社長からは厄介者として扱われている。それでも地方へのセールスの旅を終え、いつもの通り帰宅する。妻のリンダは夫のウィリーを尊敬し献身的に支えているが、30歳を過ぎても自立出来ない2人の息子達とは過去のある事件により微妙な関係だ。息子たちへの不満と不安もウィリーの心をつぶす。セールスマンこそが夢を叶えるにふさわしい仕事だと信じてきたウィリーだが、ブルックリンの一戸建て、愛しい妻、自分を尊敬する自慢の息子、一度は手にしたと思った夢はもろくも崩れ始め、全てに行き詰まったウィリーは、家族のため、そして自分のために、ある決断を下す・・・・・
久しぶりのPARCO劇場。
2本の電柱がぶらさがる暗い舞台。中央に象徴的に置かれた古い冷蔵庫。
こうありたい、という強い思いを持ちながら、望む未来を描けなかった切ない家族の物語といったところでしょうか。老セールスマン、ウィリーの心象風景のように、過去と現在が行きつ戻りつ物語が展開していきます。
父ウィリーは、人脈の広い辣腕セールスマンで、行くところに行けば自分を知らない者はひとりもおらず、素晴らしい実績を積んでいると思い込んで、家族にも隣人にもそう公言して憚らない。。。。でも、現実は。。。
いるなあ、こういう人。過去の栄光にとらわれ、プライドを捨てられずに堕ちていく人。。
そして息子たちも親の期待に潰されそうになる。。。
そりゃあね、そうかも。バリバリセールスマンな自分と、いつも自分を信じきってついてきてくれる専業主婦の妻、高校アメフト界のヒーローで大学からの誘いも複数来ている人気者の長男。可愛い次男。絵に描いたような幸せな家庭のはずが、現実はそうではなく、あるべき自分と現実の自分のあまりの違いを受け入れられず、妄想の世界をさまよう。
その家族を心配事する隣人やその息子が手を差しのべようとしても、プライドが邪魔をして受け入れることができず、次第に絶望的な選択をするようになる父。
そうじゃない、自分は父が思うような人間じゃないんだと、心の内を吐き出す長男ビフの叫びには胸が押し潰されそうになりました。
父は最期に家族に大金を遺すためにある選択をするわけですが、もしかすると、優しく従順に見えた妻が、やけに保険掛け金支払いの心配をしていたことを考えると、もしかして彼女はその決断を知っていたのでは?という思いにかられ、最後はちょっと背筋が寒くなりました
一攫千金の幻として登場する兄、ベンが常に白い衣装なのも怖かったです。
いろいろ気が重くなることの多い昨今、暗い作品観るのはどうかなあと思っていましたが、終始圧倒される作品で、心が震えました。段田安則、恐るべし。
回想のようにビフのクラスメイトでもある隣人の息子が自転車で舞台を回遊したり、観念的だなあと思ったら、海外の方の演出だったんですね。ブラボーでした