pippiのおもちゃ箱

舞台大好き、落語大好き、映画大好き、小説大好き、猫大好き!なpippiのつれづれ日記です。

ガラスの動物園@シアタークリエ13列上手

2021-12-16 21:26:56 | 観劇/コンサート

作 テネシー・ウィリアムズ

翻訳 小田島雄志

演出 上村聡史

あらすじ

大恐慌の嵐が吹き荒れた1930年代のセントルイス。
その路地裏のアパートにつましく暮らす3人家族がいた。
母アマンダ(麻実れい)は、過去の華やかりし思い出に生き、
子供たちの将来にも現実離れした期待を抱いている。
姉ローラ(倉科カナ)は極度に内気で、
ガラス細工の動物たちと父が残した擦り切れたレコードが心の拠り所だ。
父親不在の生活を支える文学青年の息子トム(岡田将生)は、
そんな母親と姉への愛憎と、やりきれない現実への閉塞感の狭間で、
いずれ外の世界に飛び出すことを夢見ている。
ある日、母の言いつけで、トムが会社の同僚ジム(竪山隼太)を
ローラに会わせるために夕食に招待する。
この別世界からの訪問者によって、惨めだった家族にも、
つかの間の華やぎがもたらされたかのようだったが……。


テネシー・ウィリアムズの自伝的作品。。ということ以外になんの予備知識もなく劇場へ。

ネタばれ満載ですので改行します。これから観る方はご注意を。

 

 

いかにも路地裏というような暗いアパートに住む親子。これは「追憶の劇」であることをトムが語り始めます。

昔は良かった、こんなはずじゃなかった、何人もの青年紳士が自分を求めてやってきた。その人たちはみんな立派な人物になったのに、自分は顔や雰囲気で選んだ男と結婚してこんなことになってしまったと繰り返す母。足に軽い障害があり、超内向的でひきこもりがちな姉。父はふらっと家を出たまま帰らず、倉庫勤務をしながら閉塞感に苛まれながら家族を支えざるを得ない弟トム。

彼は仕事の後に映画を観て現実逃避をすることが日常らしく、そのことを「自分勝手」と母に罵られるのも毎度のことらしい。少ない賃金ながら稼いで養っているのは自分なのに、親としての権利を振りかざしてあれこれうるさく言う母に辟易し、姉もまた母の「保護」という名の呪縛から逃れられず、ガラスの動物だけを友としている。

うーん苦しい。息が詰まりそう。母のテンションが高ければ高いほど息苦しくなりそう。この、「昔は華やかだったけど今は」という痛い母、麻実れいさんがぴたりとはまってすごみあり。いるよなあこういう人。現実を生きることができない人。

そんな母の提案で姉になんとか素敵な相手をと、トムが家に連れて来た同僚のジムは、偶然にも姉ローラのハイスクール時代のあこがれの人だった。驚き、混乱するローラ。でも、停電というハプニングの中、二人で話す機会を持ち、その中でジムがローラに言います。悩みの種は人間としての自信の欠如だ。大事なのは、自分が何かの点で人より優れていることだ。だからその「長所」が何かを見つけさえすればいいんだと。君はいままで自分が出会ったどんな人とも違う。君は美しい。

そしてローラの手をとり、ワルツを踊ります。そしてキス。

次第に高揚し、自然な会話ができるようになり、大切なガラスの動物たちについて語るローラ。

でも、次の瞬間、ジムから出た言葉は、「期待に応えられない」

え~っっつなにそれここまで上げといてそれはないっしょ

と、いうわけでジムの接待のためにひっぱりだしたアマンダの素晴らしいお衣装もごちそうも全ては無駄となり、ジムは婚約者の元に帰り、母は息子を罵り、ローラは再び引きこもり、トムは絶望して家を出ていくのですが、どこへ行っても姉の存在を自分の中から消すことができず。。暗転。。。幕

いやあ、なんともひりひりする話ではありました。逃れようとし逃れることのできない家族のしがらみ。。

でもね、ほんとに一瞬だけだけど、ローラは光を見たと思うんですよ。「光」というのはジムじゃなくて、「自信を持つことで自分が変われるかもしれない」という光。その光を掴むかどうかはやっぱり自分次第なんですよね。ジムはローラの期待には応えられなくても「誰も気づかないようなささいな欠点を自分の想像力で何千倍にも拡大してるんだ。自信を持つことだ」って言ってくれてるじゃないですか。親も言ってくれなかったことを。「自信」は大事。誰かが、他の誰でもない自分を認めてくれたということが、どんなに嬉しいことか。それは自分の中のいろんな可能性を信じてもいいと感じることにつながると思うんですよ。

ジム自身、ハイスクール時代は生徒会長で、バスケ部のヒーローで、歌もうまけりゃ人望も厚く、偉い人になるに違いないと言われてたにもかかわらず、今じゃトムと一緒に倉庫で働く普通の人という状態ながら、絶望せずに勉強し、ずっと上を目指して生きている。彼自身が「光」なんだろうな。

だから、ジムに関しては、人を持ち上げといてまた絶望に突き落としたとは、あまり思いませんでした。(さっきはそう書いたけど)実生活では、テネシー・ウィリアムズのお姉さんは這い上がることができずに人生を終えて(ロボトミー手術を受けて廃人のようになり、一生、テネシー・ウィリアムズが面倒をみたらしいです)しまったようですが、ローラはいつかこの闇から這い上がれるといいなあ。。などと思ったのでした。

岡田将生さんが舞台に立ち続けるのは、蜷川先生にそう言われたからと、どこかで読みました。ジムが文学青年のトムのことを「シェイクスピア」と呼んでるのもツボでした。ネクスト出身の竪山隼太さん、蜷川先生の作品に数多く出られているだけあって、演技がくっきりしていて本当に素晴らしいです。ワルツも素敵。シェイクスピア劇は舞踏会の場面も多いから鍛えられているんでしょうね

なんとも感じることの多い舞台でした。もう一回行っちゃうかも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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