地球散歩

地球は広いようで狭い。言葉は違うようで似ている。人生は長いようで短い。一度しかない人生面白おかしく歩いてしまおう。

2006-06-20 09:16:45 | ポルトガル語
Peixes(ペイシェシュ)
 
 ポルトガルを代表する魚はタラ。これは塩漬けになっている干しタラで、365日違う料理を食べられるだけのレシピがある、いや1000を越える調理法があるなどと言われる国民食である。
 街の食料品店の店先に大粒の塩がゴロゴロとついたタラ(写真)が山積みになっているのを見かけることも多く、レストランではメニューのbacalhoada(バカリョアーダ・タラ料理)という見出しの下にはサラダからグラタンやコロッケ,リゾット、スープなど様々な料理名が並ぶ。オリーブオイル、サフランやハーブなどを使っても、ポルトガル料理全般が日本人の口に合う素朴な味わいだ。

 旅の途中、最も手軽に楽しめるのはタラのコロッケであろう。マッシュしたジャガイモに塩出ししたタラを混ぜ込んで揚げたものが街のスタンドや食堂のショーケースに並べられ何とも食欲をそそる。石畳の坂道を走る黄色いケーブルカー、壁のアズレージョ(装飾タイル)などを眺めながらコロッケをほおばれば、ポルトガルならではのそぞろ歩きとなる。

 ポルトガルは約500年前から遠洋でのタラ漁を行っていたそうである。タラは捕獲の容易な魚であるが、日持ちが悪い。古くはウ"ァイキングたちが長い航海の間、干し物にして蓄えた。その後はスペインのピレネー山脈に住むバスク人達が更に日持ちを良くするために塩して加工し、交易品としても用いたそうだ。ポルトガル人も同じように塩蔵で持ち帰ったのであろう。
 食材として広まった塩タラは、16世紀半ばに全ヨーロッパで消費される魚の6割を占めるようになり、北海の漁業権を巡っての「ハンザ同盟」や新たな漁域の発見に伴う「コッド・ラッシュ」なる言葉が世界史に登場する。
 
 彼らがそれほどまでにこの魚に惚れ込んだのは、栄養素にある。脂肪分が少なく、魚には珍しくタンパク質の含有率も高い。これを干物にすると体重の大部分を占める水分が蒸発、濃縮されて80%の高タンパクになるという。保存の為に絞った人間の知恵が豊かな食材を生み出したようだ。
 安くて高タンパク。畑の肉といわれる日本の豆腐同様、国民食として広く愛されてきたことがわかると、異国のタラ料理に親しみがわき、更に美味しく魅力的に感じられた。(さ)

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