ピッコロ便り

ピッコロシアター、県立ピッコロ劇団、ピッコロ演劇学校・ピッコロ舞台技術学校など、劇場のトピックをご紹介します。

【OBのいま②】舞台照明家 竹内哲郎さん

2018年02月21日 | 演劇学校・舞台技術学校

 前回の舞台美術家の渡辺舞さんにつづき登場するのは、ピッコロ舞台技術学校の創生期を知る貴重なOB、竹内哲郎さん。

 4月からは27期生を迎えることを思えば大先輩なのですが、今でも現役の学校生の頃と変わらない熱い思いで舞台に取り組まれています。

 第2回は舞台技術学校1期卒業生で「株式会社ハートス HD&Oグループ課長・舞台照明家の竹内哲郎さん」の、OBのいま をご紹介いたします。

 

 『ゆるゆるとしていた少年時代』

 テレビ・舞台・イベント等の技術部分を手がける大手企業、株式会社ハートスの課長で、舞台照明家の竹内哲郎さんは、ピッコロ舞台技術学校の1期生。当時の定員40名に対し、応募者が185名も来たという激戦を勝ち抜いたツワモノのやり手照明家ですが、子どもの頃は、ゆるゆると好きなスポーツに励む普通の少年でした。

 

 『テレビの仕事がしたかった』

 もともと機械いじりが好きだったこともあって、将来はテレビ業界(もちろん裏方の)で働いてみたいと思うようになり、大阪芸術大学放送学科に入学!

 学生時代はバイトで、ABCの朝の情報番組のスタッフとしてタイムキーパーを務めたり、探偵ナ○トスクープロケにも参加するなど、目標に向かって着々と階段を登っていました。

 そんなとき目にとまったのは、「ピッコロ舞台技術学校開校」の新聞記事。テレビの世界とは違うものでしたが、たまたま開校のタイミングだったこともあり、勉強のためと受験したところ、多くの受験者の中から選ばれ、栄えある第1期生となったのです。

 

 『舞台照明の世界へ』

 ピッコロ舞台技術学校・大阪芸術大学を卒業後、株式会社ハートスへ入社。同社では、シアターグループに配属されテレビではなく舞台の世界へ歩みを進めます。

 担当したのは「宝塚バウホール」や「シアター・ドラマシティ」での宝塚歌劇公演のオペレート。宝塚関係の仕事がしたいという人が多い中、舞台にも宝塚歌劇にも興味がなかった竹内さんが配属されるというのもおかしな巡り合わせですが、数年後にはチーフとなり、照明プランの作成も担当するようになります。また、劇団四季の「オペラ座の怪人」や「ライオンキング」にも関わるなど、技術者としてはまさに順風満帆でした。

 

『実は、演劇は観ない!』

 こんなに演劇を中心とした仕事をしているにも係わらず、プライベートではまったく演劇を観ないのだそう。職業柄どうしても仕事目線で見てしまい落ち着かないのが理由ですが、映画や美術はよく鑑賞していて、それらから受ける刺激が自身の照明デザインに大きく寄与しているとのこと。そのあたりテレビ業界を目指した映像指向が影響しているのでしょうか?

 技術者と言っても会社員ですから、自分の希望通りの仕事に就けるとは限りません。映像の世界に憧れて頑張ってきたのに、結局思惑とは少しずれた所に着地してしまった竹内さん。その心中はいかがなものなのでしょうか?

 

『この仕事を長く続けるには』

 竹内さん曰く「舞台に限らず、こういう仕事は大変です。不規則な勤務で休みもなかなか取れない。体力も気力も必要ですが、楽しんで取り組むことができれば続けることが出来ると思います。間違わないで欲しいのは、好きである必要はないと言うことです。むしろこの世界が大好きなんですという人よりも、客観的に見ることが出来る人の方が長く続くことが多いように思います。才能うんぬんという話もありますが、結局は各個人のやる気の問題で、飛び込んでみれば案外何とかなるものです」とのこと。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、いまは人材不足です。どこの現場でも人を欲しがっていますのでチャンスはたくさんあります。

 「どうやってアプローチしたらいいかわからない人も多いでしょうが、舞台技術学校に入るのも一つの手です」とも。確かに現役で活躍している講師の先生方から見れば舞台技術学校は宝の山(?)で、これまでも多くのOBたちが卒業後、プロの現場で活躍する姿が見られます。

 「私自身、まわりの人たちと巡り合わせに随分助けられました。もちろん努力はしていますが、自分が意図しないところで勝手に道が付いていったというか、当初希望していたテレビ業界とは違う分野にいますが、いまは舞台の世界に関われた事を喜んでいます」

 

『そして、これから』

 「いまは、東京を中心としたメディアには興味が無く関西を中心に盛り上げていきたいと思っています。これまで通り、お客さんとまわりのスタッフが喜んでくれたら最高ですし、仕事一辺倒にならず家族との時間も持てていますので充実しています。会社でも若い人たちを指導していく立場になって、これまでとは違った部分で大変ですが、やりがいは感じていますので、これからも“楽しんで取り組んで”頑張っていきたいと思っています」

 竹内さんは多忙な中、来る3月3日~4日「合同卒業公演」の照明オペレート主任・指導で後輩たちをバックアップしてくださいます。みなさんにも是非ご覧いただければ幸いです。


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