令和最初の合同卒業公演まで、あと2週間あまり。演劇学校生は稽古に、舞台技術学校生はプラン作りに製作にと日々頑張っているところです。
1年ぶりの『OBのいま』は、舞台技術学校27期(昨年度)の卒業生で『株式会社 俳優座劇場 舞台美術部』の中村あすかさんです。
『幼い頃から舞台人!?』
物心がつく前からバレエやお箏などを習い、人前に立つことも多かった中村さんにとって舞台はすごく身近で大好きな場所でした。将来はバレリーナ?それとも箏演奏家?ご両親の期待をよそに、本人はカメラマン・小説家・警察官に憧れていたという、他の子どもたちと同じよう…な、(のかな?) まあ色んな夢を描いていました。
『VS嵐に・は要りません』
そんな中村さんが、初めて大道具に興味を持ったのは小学生のころ。大ファンだった”嵐”の番組を見て「あのセットはどんな風になってるんだろう?嵐のセットを作ってみたい!!」と…。クラスメイトたちがマネージャーやスタイリストなんかに憧れるなか、他の子どもたちと同じよう…(じゃないよね?)な、憧れを持ったのがはじまりでした。
『もちろん地元の大学に行く気はなかったです!』
その後、運命的な出会いや事件もなく地元愛媛の高校を普通に卒業し、関西の大学へ!かつて舞台美術に興味を持っていたとはいえ、特別にモノづくりに熱心だったわけでもなく、とにかく都会へ行きたいという一心で、神戸の大学で環境デザイン(建築関係)を学ぶことに。
キャンパスライフは楽しかったのですが、勉強では同級生たちと目指す方向性の違いに温度差を感じていました。子どもの頃なりたかった警察官を目指すも、身長が6cm足らず断念。そんな中、イベントスタッフのアルバイトとしてライブや演劇など生の舞台に触れる機会が多かったこともあり、改めてその魅力にとりつかれ、舞台美術の世界に挑戦してみようと思うようになりました。
目標は定まったものの、いざ勉強するとなると大変。なぜなら中村さんは、もう大学4年生だったからです。経験も知識もない! 時間は1年しかない! 並行して就活もしなくてはならない!と、なかなか無謀な挑戦…
1年で基礎から専門的な事まで学べるところは?と探してみつけたのが『ピッコロ舞台技術学校』。すぐに入学することを決めましたが、ここでも大学時代のような違和感を覚えるようだったら、その程度の夢だったのだとあきらめて、実家のみかん農家を継ごうと考えていました。
『ピッコロ面白いっ!、俳優座スゴイ!』
「ピッコロ舞台技術学校は期待していた以上に面白く実践的な場でした。わずか1年ではありましたが現場で必要な様々なことを学べた気がします。また同期生は、みんな個性的で舞台技術以外にも学ぶことが多く、社会に出る前のわたしには、とても参考になりました。」
そんな中、忙しい合間を縫って東京まで観に行った芝居の舞台セットが凄すぎて、これぞ運命の出会い!絶対仕事にするぞー!!…、とはならず、「自分には絶対作れない~」とドン引き。プロなんて無理無理!と諦めかけたのですが、他の舞台の色々なセットを見ているうち「これいいっ!」と思うものがすべて俳優座劇場舞台美術部の作品だったので、一生の思い出作りのつもりで受験したところ、驚異の倍率だった狭き門をくぐり抜け見事合格!まさかのプロの道が開けたのでした。
実際に演劇学校公演で使われる舞台美術を製作
『FRIEND SHIP』
昨年4月に無事入社を果たして1年。今は研修生として、図面から立体にしていく大工・背景・経師・造形の仕事をされています。出来たものを劇場やTV局で立て込み、バラしたりを決められた期間で巡回する毎日。1月からは造形課でスチロールを削ったり、鉄工作業で溶接などにも挑戦中です。「最初の頃は、常に筋肉痛で湿布が手放せないほど苦しんでいましたが、身体がついてきだすと仕事は楽しいです! 工場内で流れる打ち合わせの放送や台車に積まれているセットを見るだけでワクワクします!」と、なかなか充実の様子。
まだまだ勉強はこれからですが、中村さん曰く「将来は同業者に注目されるようなセットを作ってみたい。また同じように愛媛から出てきて役者として頑張っている友達が立つ舞台のセットを自分の手で作ってあげたい。」と夢を語ってくれました。
いまは、各部署をまわって いろんな作業に挑戦中!
『今、いちばんハマってることは~♪』
「そりゃあ、ゲームです! すみません(笑)」
毎日忙しくて大変そうですが、プライベートはちゃんと大事にしているようです。
「写真も好きなので休みの日には、街や動物園なんかに出かけていろんなものを撮ってます。でも渋谷や原宿みたいな街には、ほとんど行きません。」それはもったいない。せっかくの東京暮らしなのに…。
もはや趣味の域を超えているのでは?という中村さんが撮った写真
『後輩たちへ!舞台技術者を目指す人たちへ!』
「…って、まだコメントできるほどじゃないけど、この学校はすごくいいよ!ってことだけは言っておきたいです。私は小学校から大学まで学校というところに本当に何気なく通っていました。そんなわたしに”青春”を教え、あたえてくれたのが『ピッコロ舞台技術学校』です! 学校ってこんなに楽しいんだ! たくさんいる生徒の中のひとりでなく、“中村あすか”というひとりの人間として見てもらえる空間で学べたことが本当にうれしかったです。
普通の学校と違って、同級生の年齢や職業など、みんなバラバラの人たちと共に学び、本当にたくさんの刺激を受けました。
私にとっては、確実に何かが変わった学校でした。あなたもきっと何かを見つけられるんじゃないかと思います。
何年後かに同じステージ(現場)で出会えたらいいですね!」
◆過去に掲載された「OBのいま」もお読みいただけます。以下のリンクからどうぞ。
「OBのいま」① 渡辺 舞さん(舞台美術家・みらい舞台美術塾)
https://blog.goo.ne.jp/piccolo-town/e/35cba71e5ed9b9a72af6211de56d676f
「OBのいま」② 竹内哲郎さん(舞台照明家・株式会社ハートス)
https://blog.goo.ne.jp/piccolo-town/e/b774881da7ed9387da51e4ab406f6aaa
「OBのいま」③ 岩花さとみさん(舞台照明家・株式会社ハートス)
https://blog.goo.ne.jp/piccolo-town/e/f24a46b2363b701789b9c942de0e19c0
◆ピッコロ演劇学校・舞台技術学校
http://hyogo-arts.or.jp/piccolo/school/index.php