日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

復興財源確保に関する私的提案

2011-08-17 | その他あれこれ
“菅後”の政局を巡ってあわただしい動きが報道されています。焦点は何と言っても震災復興です。これまで菅内閣下では、明確なビジョンも方針もないままダラダラと5カ月が過ぎてしまった感が強い訳で、民主党政権にとって国民の信頼を取り戻すラストチャンスであるとも言えるでしょう。ただどうも見ている限りでは、あまりに心もとない。例えば、出馬を予定している野田財務相が口にしている「大同連立」も今言うべき事かどうなのか。連立の是非は政策論ではなく方法論に過ぎず、各候補者は正式立候補に際しては現在の日本が抱えてる焦点の問題に関して、明確なビジョンや方針をまず掲げるべきであると思います。

関連してひとつ思いつきの私的提案です。あくまで思いつきレベルでありますが、財源確保に関する個人的アイデアを書いてみます。

「日本の強み」は何かと考える時、なぜ今円高なのかを考えてみると浮かび上がるヒントがあります。それは膨大な「個人資産」。約1500兆円と言われる我が国の「個人資産」の存在が“借金まみれ”の我が国財政を底支えしているという構図を作り出し、壊滅的欧米の経済財政情勢に比しての消去法的選別の結果として、昨今の理由なき円高の一因となっているとも言われています。そこで、この「個人資産」を上手に復興財源として活用できないだろうか、という発想に転換してみます。さらにもうひとつ「日本の強み」として今回の震災復興でも見せてくれた、日本人の自発的ボランティア精神の強さも活用できないものか、という考え。この2つの強みを活用した復興財源確保策を考えます。

今取りざたされている「復興債」。当然国債を発行すれば利払いをしなくてはいけない訳で、政府保有株の売却等が言われていますが膨大な利払いを賄うためには「増税」をも視野に入れざるを得ないでしょう。そうかと言って復興にメドの立たない段階での「増税」は、景気の先行きに暗い影を落とします。そこでこんな案はどうでしょう。例えば「利払い」のない債権の発行。「利払い」がない債権をどう買わせるのかですが、もっとも簡単なアイデアとしては「復興債」を細かく分かりやすい目的別に分けて発行する案です。例えば、「今回の債券は南三陸町の道路整備に使用します」とかの明言化です。これは言ってみれば「復興債資金使途の見える化」と言えるでしょう。

寄付もそうですが、日本人は強い被災地支援精神を持ちながら、行き先の不明確なおカネの流れにはいまひとつスッキリしていないもの事実です。街頭で耳にするのは「使い道が明確ならもっと協力したい」との声。ならば、「復興債」の使い道を明確にするだけで、たくさんの寝ているおカネが動きだすのではないでしょうか。あれだけの義援金が集まったことを考えれば、「無利子でも復興支援になるなら復興債を買おう」となるのではないかと思う訳です。しかも寄付ではなく国への“貸付”ですから。さらに資金使途が「見える化」されれば、国民が優先度を認めない使途の債券には資金が集まらず、施策が先送りあるいは中止され、無駄遣いの排除にもつながるという一石二鳥でもあります。

「利払い」が発生しないなら当面の「増税」は避けられます。ならばまずは政府は「復興ビジョン」を明確化し、そのビジョンの復興計画期間にあわせた長期の「復興債」を発行、償還までの間に「増税」も含めた徹底した「財政再建」を策定・実行し償還原資を確保する、という流れが可能ではないかと思うのです。これが実現するなら、「財政再建」も「増税」頼りの小手先ではなく、国として計画的に長期で取り組むという姿勢を明確にできるいい機会になるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

また「復興過程において「増税」をする場合には、債権保有者に優遇措置の可能性あり」というアナウンスも「復興債」購入動機づけとしてあっていいかもしれません。これは、たばこ税や酒税等の間接税引き上げ政策を債権保有者への税率据え置とセットで実施する、とかです(根幹をなす直接税や生活直結の消費税は優遇対象になり得ません)。この施策はそのまま実行したのでは「税負担公平の原則」から批判もまぬがれえないでしょうから、やり方にひとひねりふたひねり必要とは思いますが…。いずれにしましても、寝ている「個人資産」をいかにして有効に目覚めさせ、日本人のボランティア精神に訴えかける復興財源確保策を考えだすか、安易な「増税」策に頼るのではなく今こそ知恵を絞るべき時ではないかと思います。

実行できるか否かは別にしても、国家的危機打開に向けてまず必要な「財源確保」に関し何も言わない何も提案しない今の政権は、国民に考える場すら与えず政府としての体をなしているとは到底言えないでしょう。誰が政権を継ぐことになるとしても、一国のリーダーとして国民に未来の日本づくりに向けた前向きな具体論を提示し、皆で“復興日本”に向けた次の一歩を議論できるような土壌を作って欲しいと思います。

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