日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

利用者利便性にソッポ~ソフトバンクの「SIMロック」への固執

2010-07-15 | その他あれこれ
携帯電話の「SIMロック」の解除に関して、ソフトバンクモバイルの松本徹三副社長は14日、同社が販売する米アップル社製の大人気スマートフォン「iphone」について、「現時点で解除する考えはない」と記者団に話したといいます。今春、総務省が利用者の利便性を第一に考え「SIMロック解除が望ましい」との見解を出したことに端を発したこのSIMロック解除の一件。今月6日には、NTTドコモが来年4月以降原則全機種SIMロック解除の方針を明言していただけに、iphoneを擁するソフトバンクの動向が注目されていました。

この発言を受けてソフトの株価は急上昇し年度来高値を記録したとか。一方のドコモ株は売られ大幅に下げたようです。まぁ当面のビジネスという観点に限って見れば、ソフトバンクは人気スマートフォン利用回線を引き続き独占すると宣言した訳であり、投資家としてはこの“独占”がもたららすであろう収益面に着目し当然評価が高くなるのでしょう。しかしながら個人的にはこの評価はいかがなものかと疑問符を投げかけたいと思っております。それはすなわち、ソフトバンクの企業姿勢に端を発する疑問符であります。総務省が「利用者の利便性第一」を掲げたSIMロック解除政策でありながら、自社の収益を第一に考えた人気機種の回線独占は、まず何より企業の社会的責任の観点から見てどうなのかと思うからです。

確かにドコモは業界でトップシェアを持っており、「SIMロック解除はむしろプラスに働くだろうから、“原則全機種SIMロック解除”を率先してすすめるメリットがある」と言われる向きもあろうかとは思います。仮にそうであったとしても、忘れてはいけないのは、ドコモもソフトバンクも本来携帯販売の会社ではなく、回線を提供する通信サービス業者であると言う点です。その原点をしっかりと見間違えずにいるのなら、今回の「利用者の利便性第一」を掲げた国家的政策への対応には、本来業務たる通信事業以外は何をおいても利用者優先で対応を考えるべきであり、すなわち自社が製造してる訳ではない携帯販売業務においては、利用者に不便の残る“独占販売”は控えるべきではないかと思うのです。ソフトバンクのSIMロック堅持策は、携帯電話回線会社の社会的責任から問題ありと私は考えています。

ではソフトバンクはどうするべきなのか。iphoneに関して言うなら、原則SIMフリーを認めつつ並行してSIMロック機種を残すことで、SIMロックタイプのiphoneを契約の顧客には回線利用部分で他の顧客とは差別化をはかった特別なサービスを提供すればいい訳です。それならば利己的な利用者利便性無視の独占販売は存在せず、他のどのキャリア利用者も等しくiphoneが利用できるようになった上で、ソフトバンクは回線サービスと言う本来業務の魅力で自社SIMロックiphoneを選択する顧客囲い込みをはかる訳であり、利用者利便性向上を重視したあるべき市場競争の姿になると考えるのです。ドコモかソフトバンクかあるいはauか、キャリア各社の通信サービスという本来業務での競争でiphone利用者の囲い込み競争が繰り広げられる訳であり、こうした本来業務での競争激化もまた間違いなく利用者利便においては相乗効果的にプラスに働くハズなのです。

SIMロック堅持にこだわるソフトバンクは、裏を返せば本業の回線ビジネスでは勝ち目がないからiphone人気に頼らざるを得ないのではないかともなる訳であり、先の企業の社会的責任云々の観点も含め、昨日一気にソフトバンクの株価を上昇させた投資家の見方は少々近視眼的で甘いように思うのですが、いかがでしょうか。

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