日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

日本維新の会の戦略的誤りを示唆する「ランチェスターの法則」

2012-10-15 | ニュース雑感
日本維新の会の代表を務める橋下大阪市長が、13日に急きょ上京し石原慎太郎東京都知事と会談をもったそうです。以下記事の抜粋です。

 日本維新の会代表の橋下徹大阪市長は13日、東京都内のホテルで石原慎太郎東京都知事と極秘会談した。次期衆院選での連携などについて協議したとみられる。石原氏は会談後、記者団に対し「いろいろな話をした」と語った。
 橋下氏は、報道各社の世論調査での維新の支持率低下などを受け、いったんは決別したみんなの党も含む第三極勢力と連携する方針を示している。石原氏との連携で、既成政党への対抗勢力をさらに拡大する狙いがあるとみられる。石原氏も自身を党首とする新党結成について「(近く出る健康診断の)結果をみて判断する」と、あらためて意欲を示しており、連携話が一気に進む可能性もある。(「Sponichi Annex」http://www.sponichi.co.jp/society/news/2012/10/14/kiji/K20121014004326400.html
より抜粋)

この記事の見出し「橋下氏、石原都知事にすがった!?支持率低下に焦り」というのは、けっこう言い得ているように思います。個人的な見解としては、拙ブログ11日のエントリ(「日本維新の会は桶狭間に学ぶべき?」http://blog.goo.ne.jp/ozoz0930/e/4ab88e74776e515e3e07dbabae83a29c)でも書きましたが、昨今の支持率の思わぬ低下をみて長老の力を借りるのではなく、今一度自身の選挙戦略の見直しをする方が先なのではないかと思っています。前回のエントリで触れた「ランチェスター戦略」の法則と選挙戦のかかわりについて、もう少し詳しく知りたいと言うお問い合わせもいただいておりますので、そのあたりから再度現状の維新の会の戦略的問題点を掘り下げてみます。

ランチェスターの法則は、第一次世界大戦時に英国のエンジニアであったFWランチェスター氏が発見した戦いの法則で、第二次大戦下ではアメリカによって利用され、近年ではこれがビジネス戦略に応用が可能であるとの考えから企業戦略向けにカスタマイズされて、競争戦略のバイブル的に扱われてもいます。政治における選挙選はまさに勢力争いを繰り広げる戦いそのものであり、企業戦略以上にランチェスターの法則が有効に機能する環境にあると考えられます。

ランチェスターの基本戦略において、何よりもまず心得なくていけないものに次の法則があります。
★「戦闘力=武器効率×兵力数」★
すなわち、軍の強さは「武器効力=武器の性能」を兵の数で乗じたものであり、正面勝負をしたならば、その数値の大小で戦の勝敗は決してしまう、というものです。実例をあげれば、戦国時代の織田信長が長篠の合戦で当時無敵と言われた武田騎馬軍を一蹴した背景には、鉄砲と言う最新鋭の“飛び道具”を使用することで「武器効力」を一気に高めたことが最大の勝因とされている、そんなところが分かりやすいでしょう。

選挙に置き換えるなら、「武器効力」は候補者一人ひとりの選挙戦を戦う力(選挙区における人脈等地盤、財力、政治経験、本人と所属政党の風評や人気等)であり、「兵力」は立候補者の数でしょう。すなわち2つの政党が同じ数の候補者を立てたなら、どちらが多くの議席数を確保できるかという勝負は候補者人ひとりが持っている「武器効力」の平均値の大小で勝負が決まると言うわけです。

となれば、現状全国で350~400という数の候補者(=「兵力」)を立てようと目論んでいる日本維新の会ですが、「武器効率」はどうなのかという点が、選挙戦と言う競争戦略を吟味する上で大変重要になってくる訳なのです。維新の会の「武器効率」はと言えば、既存政党に比べてまず候補者の基盤は弱い、個々の財力は「?」ですが既存政党の派閥から軍資金をもらっている候補者との比較では苦しい感じはします。政治経験から言えば素人が大半を占める候補者軍団が上位にあるとは言い難いでしょう。素人が大半の候補者本人の知名度や人気もまた同じ。要は、維新の会の「武器効率」は様々な要素を補って余りある政党の人気が支えきれるなら、「戦闘力」で他政党を凌駕し数でライバルに正面からぶつかっていく「強者の戦略」が通用するという“人気頼み”の状況なのです。

その肝心の政党としての人気ですが、各メディアの最新の世論調査では政党支持率2~4%台とここにきて凋落の一途と言う感じでして、その原因は「大量の素人軍団+既存政党の落ちこぼれ」という次第に明らかになってきた候補者の質の問題にも起因しているという厳然たる事実もあるわけです。ならばとばかりに、この期に及んでの動きが冒頭の他者連合。石原新党、立ちあがれ日本、みんなの党・・・これらとの連合が果たして人気回復による「武器効率」を凋落人気をV字回復させることにつながるのでしょうか。答えはノーです。橋下氏個人の人気に支えられてきたこれまでの維新の会人気を見るに、橋下氏の人気回復なくして党の人気回復はないとみるのがセオリーなのです。

とするならば、他者連合を組んででも数の論理で正面突破をはかろうという現状の「強者の戦略」は、今後選挙戦までに劇的な人気回復が見込まれない限りは、戦時の日本軍と変わらぬ無謀な戦いに足を踏み入れることになるのではないかと思われるのです。今なら間に合う日本維新の会の戦略的方向転換は、「ランチェスター弱者の戦略」以外にありません。まず自党の強み分析に基づいて選挙区を絞り、候補者を絞って、「局地戦」「一点集中戦」で来るべき選挙戦は確実に勝てる戦いに徹するべきなのです。大量候補者の無駄死にによるイメージダウンは、今後の政党の運営にも大きな影響を及ぼすことでしょう。戦略面で「強者の戦略」に転じれるか否かは、今回の選挙で当選した所属議員一人ひとりの活躍による「武器効率」の向上がはかれた後のその次の選挙戦で判断すべきことであると、歴史が実証した戦いの法則は教えてくれているのです。

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