日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

中韓家電の販売好調は、尖閣・竹島以上の脅威

2012-09-07 | その他あれこれ
未読でたまっていた先月の日経MJを読んだ中で、中韓家電がホームセンターを席巻しているとの記事が目に止まりました。中でも中国の家電メーカー、ハイアールは家電量販店への食い込みが難航する中、幅広い分野での価格訴求力ある商材を求めるホームセンターとの思惑が一致し、ここを主戦場として急速に売り上げを伸ばしているというのです。家電エコポイント終了後の今年は、国内の家電全般の売り上げが低迷する中、同社の冷蔵庫や電子レンジは前年比5%増と健闘中とか。

ハイアールと言えば、昨年パナソニック傘下の旧三洋電機白物家電分野を買収し、日本の家電メーカーが製品ブランド化に至っていない冷蔵庫、冷凍庫、電子レンジあたりから進出を開始。製品の品質も急激に向上していると聞きます。新聞記事にもホームセンターの談話として「デザイン性も以前より向上し、故障などクレームの件数も大幅に減った」とそれを裏付ける記述があり、一足先に品質向上を遂げている韓国製品に次いでハイアール製品もデザイン・品質改善による好感度および信頼感のアップが右肩上がりの販売を後押ししているように思えます。

そもそも、中韓家電が受け入れられる背景には我が国の長引く不況とデフレ状況が大きく影響を及ぼしています。好景気でインフレ気味の時代であるなら、価格よりも機能面やデザイン重視の消費が先行するのですが、不況下のデフレ経済では細かい機能や見てくれよりも価格。今までは、「いくら安くとも、故障が多くては」とか「あまりに古臭いデザインは嫌」と、デフレ経済下でも中韓家電は敬遠されがちだったのですが、デザイン性も性能も日本製に大きくは見劣りしないとなれば、日本ブランドにこだわらず触手が伸びる人が増えても不思議ではないところです。

この話を受けて、早速近隣のホームセンターに行ってみました。確かに、家電コーナーの品揃えこそ今ひとつではありますが、冷蔵庫、冷凍庫、電子レンジ等の目玉商品の多くは中韓家電であり、照明機器や掃除機などにも中韓家電は進出し、どれも大手量販店の国産品最安値価格帯(基本機能装備水準製品)の商品価格と比べて、最低でも2~3割程度は安いという印象を受けました。これだけ価格が違うと、店舗独自の家電5年保証が当たり前の今の時代でもありますから、中韓家電を選択する人が増えているという実態にも納得せざるを得ない感じです。

この流れがどういうことになるかですが、今はまだホームセンター止まりの感が強い中韓家電は、韓国製の液晶テレビが機能面で同水準の日本製テレビよりも2~3割の割安感を持って急激に家電量販店に流入したのと同じような流れとなって現れる日も、そう遠くはないと予感させられるに十分すぎる気がしています。このままではメイド・イン・ジャパンの家電製品はテレビだけでなく、軒並み壊滅状態になる可能性すら感じさせられる危機的な事態にも思えては来ませんでしょうか。

この流れに歯止めをかけられるとすれば、何よりもまず景気回復とデフレ脱却以外にはないでしょう。と言いますのも、いくら日本の家電メーカーにも生き残りを賭けた路線変更が求められるとはいえ、中韓メーカーと同じと同じような経営思想で「安い」ばかりを追求させるのはあまりに酷であり、過去に世界に確固たる力を示してきたメイド・イン・ジャパンの在り様としてもどこか違うのではないかと思わざるを得ないからでもあります。

液晶テレビで市場を席巻したシャープが、ひん死の状態で台湾企業に救いの手を求めている姿を、忸怩たる思いで見ているご同輩も多いのではないかと思います。この問題は、単にシャープ1社の問題ではないと見ています。大手家電メーカーは皆明日は我が身でしょう。とにかく今必要なことは、景気回復、デフレ脱却です。民主党政権下で何も進まなかった景気浮揚策、デフレ打開策が、今ほど急がれている時期はないのです。中韓の家電業界における日本進行は、ある意味では尖閣・竹島など比較にならないレベルの経済占拠状態にもなりかねない状況なのですから。

このままもし家電に端を発し中韓による経済的“実効支配”が進行してしまうという事態にでも陥るということになるのなら、日本経済の国際競争力は著しく低下し、我々一人ひとりレベルの国民生活も大きなダメージを受けることになるかもしれません。来るべき総選挙に向けて、経済政策論議などそっちのけで数の綱引きばかりが繰り広げられる永田町の現況を見るに、このような不安はますます大きくなるばかりです。

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