日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

経営のトリセツ33 ~ 「ミッシー」と「ロジック・ツリー」

2008-06-19 | 経営
久しぶりに「実践!コンサル的ロジカル・シンキング」ノリで。

自分では論理的考えて言っているつもりが、相手から「あなたの考え方は、論理的じゃないよ」と言われることありませんか?一般的にどんな時相手はあなたを「論理的じゃない」と感じられるのでしょうか。一番分かりやすい例は、「論理の飛躍」です。「論理の飛躍」って?要は、論理的に詰まっていない状態、詰めが甘い状態、つまり抜けのある状態な訳です。

ある問題に関して、全体を見渡した時にモレやダブりがあると、これはまさに「論理的じゃない」と言うことになる訳です。モレに気がつかないと、思わぬ落とし穴があるかもしれません。ダブりに気がつかないと、無駄や混乱が発生して論理的思考の妨げになります。すなわち、論理的にモノを考えるためには問題全体を見渡して検討テーマについてモレ、ダブりのない状態を作ることが必要なのです。

このモレ、ダブりがない状態を「ミッシー(またはミーシー)」と言います。「ミッシー」?なんか人のニックネームのようですね。MECEと書きます。英語で「Mutually Exclusive Collectively Exhaustive」。直訳すれば、「相互排他的、完全全体集合」とでもなるのでしょうか。要は「各事柄間に重なりがなく、全体として漏れがない」ということです。そもそもは、戦略コンサルティング・ファームのマッキンゼー・アンド・カンパニーにおいて、コンサルタントが対象を構造的に把握するための基本テクニックとして使われたものです。

コンサルタントが論理的にモノを考える時、「ミッシー」は最低限必要となる分析上の基本ルールです。「ミッシー」を実現するための具体的思考ツールの代表が「ロジックツリー」。「ロジックツリー」はまさに、論理の構成要素である「幹」や「枝」の関係を因果関係などでつないで、体系的に整理をする手法です。

例えば主要課題に「利益を増加する」という項目を置いたとき、その下のロジックにはその要因たる「売上を上げる」と「コストを下げる」が来る訳で、さらにその下のロジックには「売上を上げる」と「コストを下げる」それぞれの要因となりうる項目が来て、さらにその下のロジックにはそれぞれの項目の要因が来る…、といった具合です。

それぞれの段階のロジック間にモレやダブりがないかを確認して、つまり「ミッシー」を実現して論理的な詰めを図るのです。例えば具体的なコンサルティング・テーマが与えられた場合、まず仮説的にテーマの考えうる原因をすべて一段目のロジックに書き上げた上で、ヒアリングを掛けて「ミッシー」を実現して次段階のロジックに分析を移すわけです。それを繰り返して、いくつかの根本原因が見出されたら、原因の優先順位をつけて、今度は原因それぞれの解決策を逆ロジックツリーで作り上げていき、より有効な解決策を優先順位をつけて提示するといった具合です。

「ミッシー」が実現できたら、「優先順位をつける」、はこれまたロジカルシンキングの常套手段であります。逆に言えば、正しい優先順位を見出すためには「ミッシー」が不可欠であるとも言えます。

さて、企業経営への応用ですが…
社内の文化に基本に忠実なロジカルな議論を根付かせることは、失敗リスクを最小限に抑えながら前向きな経営戦略を展開することには大変役立つと思います。「論理的におかしくないか?」「ミッシーか?」「ロジックツリーで書いてみろ!」。こんな発言で会議の活性化をはかってみてはいかがでしょうか。

余談ですが、大関はよく「記憶力がいいね」と人から言われます。別に今話題の“地頭(じあたま)”がいいと言っている訳じゃないんですよ。昔から物事や出来事を因果関係とセットで記憶する習慣があるのです。言わばロジックツリーの形で記憶していると言う訳です。記憶力を上げたい方は、物事や出来事をロジックツリーの形で覚えるといいと思います。要は“地頭”に関係なくロジカルシンキングの習慣づけができれば、「記憶力向上」はもれなくついてくるという話かもしれません。年齢的な“ド忘れ”には勝てませんが…。