日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

〈70年代の100枚〉№26 ~ 70年代アメリカ代表“渾身の1枚”

2008-06-14 | 洋楽
〈70年代の100枚〉もこのところややマニアックな流れにはまっているので、ここいらで少々メジャーなアーティストを…、というわけでイーグルスの登場です。

イーグルスは間違いなく70年代を代表、あるいは象徴する偉大なるグループです。そして、多くの人は彼らの代表作に「ホテル・カリフォルニア」をあげるのでしょうが、ここではまず、彼らのアメリカでの人気を決定づけむしろ「ホテル…」以上に彼らにとって、また70年代音楽シーンにとっても大きな意味を持つアルバムをとりあげます。

№26 「呪われた夜/イーグルス」

75年の暑い夏、ラジオから聞こえてきたイーグルスの新曲はどこかおどろおどろしい中にも、張りつめた緊張感が伝わり「完璧に作りこんだ」という言葉がぴったりの魅力的なナンバーでした。それがタイトルナンバーの「呪われた夜」。シングルはあっという間に全米ナンバーワンの座を獲得。時期を前後して発売された、このアルバムも彼らにとって初のチャート1位の大ヒットを記録します。当時、シングルを気にいってアルバムの購入にレコード店に走った私も、針を落とした時には寒気を感じるほどのメンバーの気迫と完成度の高さに驚かされたのをよく覚えています。

このリリースの約半年前に、前作「オン・ザ・ボーダー」からのおまけ的第三弾シングル「ベスト・オブ・マイ・ラブ」がなぜか全米ナンバーワンに輝き、グループにとっては思いがけないタイミングで、デビュー時の「テイク・イット・イージー」に続くセカンドステップの足がかりをつかんだのです。そして、制作中の次なるアルバムが彼らにとって今後の雌雄を決する重要な1枚であることを、誰よりもメンバーの一人ひとりが十分に認識をした上で制作は約半年にわたって続けられます。こうして発表された本アルバムは、まさに彼ら“渾身の1枚”だったのです。

名作でありますが、今まさに頂点を極め下りはじめとのギリギリのバランスの上に立った感のある次作「ホテル・カリフォルニア」に比べると、本作は圧倒的な前向きなパワーに後押しされた躍動感に満ち溢れています。それと気がつかされるのは、それまでの彼らの集大成的な意味合いも併せもっていて、その時点で彼らの持てる力のすべてをぶつけた、ある意味で「第一期イーグルス」をしめくくるにふさわしい素晴らしいアルバムなのです。また同時に、バーズ、CSN&Y、フライング・ブリトーブラザーズ、ポコ等々60年代後半から形作られてきたウエストコースト・サウンドのひとつの完成型がここに見てとれるとも言えるでしょう。

集大成と言ったのは、例えばタイトルナンバーは、ファースト・アルバムの「魔女のささやき」をスケール・アップした曲と言ったイメージですし、セカンドシングルのB1「いつわりの瞳」(全米第2位)に至っては、デビューサードシングル「ピースフル・イージー・フィーリング」のリメイク・グレードアップ版とも言えそうな出来栄えなのです。

もちろん、その他の曲も素晴らしくレベルが高いです。今だにファンの間で人気の高い「テイク・イット・トゥ・ザ・リミット」(全米4位)、やや神経質なバンド気質を解きほぐすバーニー・レドンの優しいバラードA3「ハリウッド・ワルツ」、ドン・ヘンリーとグレン・フライの掛け合いボーカルが素晴らしい「アフター・ザ・スリル・イズ・ゴーン」など、「乾坤一擲」の勝負に出た時のバンドマジックを感じさせる名作であると思います。

バンドは、大ブレイクの余波による緊張感の高まりから今後の方針をめぐって内部に亀裂が生じ、アルバムリリース後、バンドの“良心”とも言うべき“優しき男”バーニー・レドンが脱退してしまします。そして彼らは、さらなる商業的成功の頂点を求めて「ホテル・カリフォルニア」へ向けた旅を続ける訳です。B面ラストを飾るバーニーの歌「アイ・ウィッシュ・ユー・ピース(安らぎによせて)」は、残ったメンバーたちに向けた彼精一杯のメッセージであるように思えてなりません。