日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

経営のトリセツ31 ~ 再考!「ヒト」と「カネ」の絡ませ方

2008-06-05 | 経営
マネジメントの重要なポイントのひとつは「人材教育投資」です、というお話を一席。

「ヒト」「モノ」「カネ」の経営三大資源の中で、「カネ」は借りたり、出資を募ったりいろいろ集める方法があり、「カネに色なし」で「いいカネ」「悪いカネ」の違いはありませんから、どうにか集めればなんとかなるのです(「いい集め方」「悪い集め方」「いい使い方」「悪い使い方」はありますが…)。一方、「モノ」はもっと簡単です。「カネ」が潤沢にありさえすれば、使い方はともかく、「いいモノ」が手に入るでしょうから。しかし「ヒト」は難しい…。

「ヒト」も「カネ」を出せば集まっては来るかもしれませんが、その組織で使えるかどうかは、知識やスキルを身につけさせたり、モチベーションを上げさせたり、いろいろな努力が必要です。その努力の最たるものが「人材教育」なのです。

三大経営資源の中で、中小企業が決まって悩むのは「ヒト」です。中でも「ヒトが育たない」という声は、たいていの中小企業経営者が抱えている悩みであるといっていいでしょう。組織に大切な「人材教育」ができないから「ヒトが育たない」、「ヒトが育たない」から「悩む」という流れのロジックです。

ならば、ロジックの大元にある「人材教育」すればいいじゃないの、ということになるのですが、これがなかなか難しいのです。組織内で「人材教育」するには、「教える」ことができる「管理者」が必要な訳で、そうなるとまず「管理者教育」が必要になる訳です。新人や若手に商品知識を教えたり、業界特有のスキルやテクニックを伝授したりすることは可能かもしれませんが、「管理」されたことがない人に「管理」を身につけさせたり、長年培われた「組織風土」の下で「管理者」への「意識改革」を求めたり、というのは至難の業なのです。

中小企業では、「管理者教育」は基本的に外部に委ねよ、が私の持論です。社長も含めて社内に「管理者」教育を受けた手本となるような人が少ないであろうことがその理由。そしてもうひとつ、「人材教育」は「投資」であるという考えを理解し、「ヒト」に「カネ」をかける癖をつけてほしいと思うからです。

どうも中小企業の経営者の方々は、設備投資や研究開発投資などの「モノ」の整備には積極的かつ効果的に「カネ」をかけるものの、「ヒト」には給与以外のおカネをかけたがらない傾向が強いように思います。でも、「ヒト」こそが企業にとってのかけがえのない財産であり、中でも組織を引っ張って、まとめて、育てる「管理職」の人たちに投資をしないで「育て!」というのはちょっとばかりムシがよすぎるのではないか、と思うのです。

伸びる中小企業と、そうでない会社の違いは、「人材育成」におカネをかけているかどうか、かける気があるかどうかの違いが大きいように思います。あなたの組織が今一歩のところで脱皮してステップアップできないとしたら、それは「管理者教育」を中心とした「人材育成投資」が不足しているのではないでしょうか。

「人材が育たないんだよ」とお悩みの経営者の方々、「人材」は黙って育つものではありません、自分が「人材育成投資」をケチってないかどうか、自問自答してみてください。一番大切な「投資」を忘れて組織の発展は望めません。

もうひとつ、「ヒト」に「カネ」をかけているのに、かけ方が間違っているケース。
「ヒト」「モノ」「カネ」は、実は複雑にかつ有効にからみっあってはじめて、大きな効果を発揮するのです。先もお話ししたように、「モノ」と「カネ」はうまく絡み合っているのに、「ヒト」と「カネ」がうまくからんでいない、そんなケースもたくさんあります。例えば、「管理者」意識を身に着けさせようと「意識はポストが作る」とばかりに、教育せずに管理者の「肩書」だけ与えて給与という形で今まで以上の「カネ」をかける、ところが人件費ばかりが増えて効果はなし、こんな話よく耳にします。

このように、多くの悩める中小企業では、「ヒト」と「カネ」が絡んでいないか絡んでいても絡みが少ない、「ヒト」に「カネ」が正しくからみあっていない、そんなケースが実はものすごく多いのです。御社の「ヒト」と「カネ」、正しく絡んでますか?単発投資では効果が薄いのも、「人材育成投資」の特徴です。「ヒト」を育てる「カネ」の絡み方の再検討の際には、継続的かつ計画的な投資を前提にすることも重要なポイントです。