静聴雨読

歴史文化を読み解く

食い意地の系譜

2013-03-09 07:29:29 | 身辺雑録

 

フランス語で、gourmet は美食家、gourmand は食いしん坊。似通った言葉だが、その意味するところは大いに違う。

ここでは、卑しい食いしん坊について話をしよう。日本語では、「アイツは食い意地が張っている。」というふうに、食いしん坊は軽蔑されるのが常だ。

私の父は新聞記者だったこともあり、全国各地を回ったので、各地の食については一家言持っていた。とくに魚にはうるさかった。大家族だった家族の夕食は2ラウンドに分けられ、第1ラウンドは子供たちが魚などを食い散らかす。

第2ラウンドに父が登場して、子供たちが食い散らかした魚のアラを集めて、酒をちびちびやりながら、文字通り「骨までしゃぶりつくす」。父のいうには、「魚はアラが一番うまいのだよ。」

確かに、魚の身と皮の間や骨周りの身はうまいに違いない。

そのような父を見て、「何と食い意地が張った男だろう。」と評する人がいてもおかしくない。

だが、私にいわせれば、「食い意地が張る」というフレーズをけなし言葉として使うのがおかしいのだ。「食に対して貪欲だ。」ぐらいに言ってほしいものだ。  (2013/3)



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