フランス語で、gourmet は美食家、gourmand は食いしん坊。似通った言葉だが、その意味するところは大いに違う。
ここでは、卑しい食いしん坊について話をしよう。日本語では、「アイツは食い意地が張っている。」というふうに、食いしん坊は軽蔑されるのが常だ。
私の父は新聞記者だったこともあり、全国各地を回ったので、各地の食については一家言持っていた。とくに魚にはうるさかった。大家族だった家族の夕食は2ラウンドに分けられ、第1ラウンドは子供たちが魚などを食い散らかす。
第2ラウンドに父が登場して、子供たちが食い散らかした魚のアラを集めて、酒をちびちびやりながら、文字通り「骨までしゃぶりつくす」。父のいうには、「魚はアラが一番うまいのだよ。」
確かに、魚の身と皮の間や骨周りの身はうまいに違いない。
そのような父を見て、「何と食い意地が張った男だろう。」と評する人がいてもおかしくない。
だが、私にいわせれば、「食い意地が張る」というフレーズをけなし言葉として使うのがおかしいのだ。「食に対して貪欲だ。」ぐらいに言ってほしいものだ。 (2013/3)
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