静聴雨読

歴史文化を読み解く

記憶から推理する・競馬

2009-12-30 07:42:52 | スポーツあれこれ
競馬を推理する基軸はいろいろあり、過去のデータから推理する方法のほかに、過去のレースの記憶から推理する方法もある。

馬番連勝(馬連)の馬券が導入されてまもなくの頃、マチカネタンホイザという馬がいた。馬主の関係者にワーグナー好きがいたようで、マチカネトリスタンという名の馬もいた。

ある年の暮れの有馬記念にマチカネタンホイザが出走した。一流馬ではあるが超一流馬とはいえない存在であったマチカネタンホイザであるが、この有馬記念では、最後の直線で内枠に沿ってスルスルと進出して、4着に入線した。その脚が印象に残った。

競馬では、3着までが馬券の対象になるだけで、4着に入った馬は「負け馬」でしかない。そのため、マチカネタンホイザが見せた最後の直線の好走を記憶に留めた人は多くなかったのかもしれない。

さて、年明けて、1月に、有馬記念と同じ中山競馬場でアメリカ・ジョッキー・クラブ(AJC)杯が予定されていた。距離は2200mで、有馬記念(2500m)に比べ300m少ないが、レースの性質は有馬記念と似ている。

ここにマチカネタンホイザが出走すると聞いて、この馬に賭けてみようと思った。AJC杯はGⅡレースで、有馬記念(GⅠレース)に比べ、対戦相手は弱くなる。であれば、あの有馬記念で見せた脚を繰り出せば、マチカネタンホイザで確実に勝てる。そう思った。

レース当日、マチカネタンホイザの人気は高くなく、確か5番人気だった。単勝で800円の配当が見込めるとは、何とありがたいことか。

レースは、最後の直線で、外に持ち出したマチカネタンホイザが先行馬をかわして、1着でゴールインした。

このレースは、有馬記念でのマチカネタンホイザの走りぶりを記憶に留めていた人には、予測しやすいレースであった。「過去のレースの記憶から推理する」ケースの成功例である。  (2009/12)


データから推理する・競馬

2009-12-28 08:09:02 | スポーツあれこれ
秋競馬がきのうの有馬記念で終わった。

競馬は様々な楽しみ方ができる。もちろん競馬は賭け事の一つで、もっぱら賭けに熱中することもできる。しかし、それ以外にも、競馬の楽しみ方はある。それを括って、推理のゲームとしての競馬を記してみよう。

推理の基準はいろいろあるが、過去のデータから推理する方法、これも過去のレースの記憶から推理する方法、そして、血統から推理する方法などが考えられる。

きのうの有馬記念では、過去のこのレースのデータのうち、「春の宝塚記念の優勝馬が有馬記念でも強い」というデータに賭けてみることにした。過去にも、地方競馬から転入したイナリワンが春の宝塚記念を勝ったあと、数戦の不振を跳ね返して、暮れの有馬記念に優勝してしまった。また、外国からの持ち込み馬・グラスワンダーが、春の宝塚記念と暮れの有馬記念の両方を制したことがある。理由は解明できていないのだが、データからは、春の宝塚記念と暮れの有馬記念との連動性が見えるのだ。

今年の有馬記念は、ディープインパクトやテイエムオペラオーのような傑出した古馬がいない。人気は三歳牝馬のブエナビスタだ。そうであれば、春の宝塚記念優勝馬が勝つチャンスがあるのでは。これが推理の基準だ。春の宝塚記念優勝馬とは、そう、ドリームジャーニーだ。春の宝塚記念に勝った後、2戦して、2着と6着。今一つの競走成績で、大きな人気にはならないだろう(実際には2番人気だった)。

レースは予想が当たり、ドリームジャーニーがブエナビスタをかわしてゴールした。3コーナーと4コーナーの中間あたりから直線に入るまでのドリームジャーニーの伸び足はすごかった。こんな瞬発力を持っていたとは。

過去のデータから推理する方法は、当然、若駒のレースには使えない。レースを重ねて、データが溜まった古馬のレースを推理するのに適している。 (2009/12)


「事業仕分け」と「シーリング」・3

2009-12-26 05:53:12 | 社会斜め読み
「シーリング」と「事業仕分け」が予算策定にあたっての両輪になることを述べた。やや具体的に考えてみよう。

仮に予算案が3月に成立したとして、以降の年間のスケジュールを考えてみよう。

国家ビジョンの策定(4月-6月)→「シーリング」(7月-8月)→「事業仕分け」(9月-10月)→予算案の決定(11月-12月)、という年間スケジュールを組むことができる。今年の民主党中心の内閣は10月に発足したので、上記の過程を6ヶ月短縮して実行したわけで、多くの検討不足があったことはやむをえない。

上記の年間のスケジュールが確保できたと仮定すると、以下のようなことが実現できる:

国家ビジョンの策定:民主党中心の内閣が生活者重視を打ち出すのであれば福祉関係予算を厚くする必要があろう。しかし、一方で、景気の落ち込みによる税収不足と国債をこれ以上増発するべきではないという結論になれば、歳出の思い切った削減に踏み切らざるをえないだろう。この点について国民の理解を得る過程が是非必要だ。

「シーリング」:これは、策定した国家ビジョンを直接写すものでなければならない。
例えば;
歳出総額:前年比2%減、
国債発行額:前年比2%減、など。

上記の前提に沿って、各省庁別の予算上限を決めていく。
例えば;
福祉関係予算:前年度並み。(ただし、この枠の中で、民主党のマニフェストに盛り込まれていた目玉政策を実現すべし。そのため、ほかの優先度の低い予算はカットすべし。)
防衛予算:前年度比10%減。
科学技術開発関係予算:前年比2%減。などなど。

「事業仕分け」:各省庁から出された概算要求が、上記「シーリング」に合致しているかを重点的にチェックする。各省庁が提示した事業ごとの優先順位を精査して、予算枠をはみ出た事業の廃止を各省庁に勧告する。省庁によっては、「うちの事業はどれも必須の事業ばかりで、すべて優先度1です。」というところがあるかもしれない。その時は、「事業仕分け」チームが代わりにその省庁の優先順位をつけてやる。

予算案の決定:以上のステップをこなせば、後は、財務省と各省庁との折衝によって、予算案が出来上がるだろう。

以上は夢物語ではなく、民主党中心の内閣が成立して、初めて実現可能になったといえる。そのためには、「シーリング」の復活と「事業仕分け」の効率的運用が必要だということを強調しておきたい。 (2009/12)


大江健三郎の新作

2009-12-23 06:20:30 | 文学をめぐるエッセー
大江健三郎の新作『水死』、2009年、講談社、を読んだ。

長らく、大江の小説は発表される都度読んでいるので、斬新さは感じない。
私小説の流儀と、土地に潜む民俗と、風俗の風刺とで成り立つ今回の新作も、彼の近作とまったく同じ手法を取り入れている。

つまり、「私」が故郷の四国(の愛媛県)に放り込まれ、「私」を取り巻く劇団の人たちとの折衝に巻き込まれ、障害を持つ息子との葛藤に疲れ・・・、というようなことが延々と綴られる。

「私」は常に周りの人からバカにされ、「私」自身もその周りの評価を受け入れる、という点では、まったく救いのない物語だ。

大江健三郎は、ノーベル賞の受賞(1994年)の前か後に、新たな小説は書かないと宣言したのだが、その後もいくつかの小説を発表した。そのいずれもが、「私小説の流儀と、土地に潜む民俗と、風俗の風刺と」を基軸にしたもので、褒められた成果はない。

私の大江健三郎は『個人的な体験』や『洪水はわが魂に及び』の大江であって、その後の「私小説の流儀と、土地に潜む民俗と、風俗の風刺と」を基軸とした小説群はどうしても馴染めない。

ただ、「私小説の流儀と、土地に潜む民俗と、風俗の風刺と」を基軸とした小説群の端緒は、明らかに『万延元年のフットボール』にあったはずで、今、この小説の評価を公表することができないのが不甲斐ない。改めて、『万延元年のフットボール』を再読してみようと思っている。 (2009/12)


「事業仕分け」と「シーリング」・2

2009-12-18 06:13:18 | 社会斜め読み
これまでの予算策定では、初めに、「シーリング」という作業があった。毎年、夏の終わるころまでに、次年度の歳入見通し、重点政策の予算見通し、国債発行計画などを総合的に勘案しながら、各省庁の予算要求額の上限を決めるという重要なプロセスだ。この「シーリング」が決まれば、後の細部は財務省の主計官と各省庁との折衝に任せることができる。(そこに、自民党の「族議員」の横槍が入る、というのはあるにはあったが。)

「政権交代」が起こり、民主党中心の内閣ができたら、予算策定で「シーリング」を行わないことになったという。その理由は、「シーリング」は財務省主導で、「政治主導」を謳う政府には馴染まないというのだ。

そうであれば、「政治主導」で「シーリング」を行えばいいのではないか? 政府内には、「国家戦略室」なるものができ、この国をどのような方向に導くべきか、そのために必要な施策は何か、その財源はどう捻出するか、などについて立案するのがその役目ではなかったか? そのような侃々諤々の議論を経て、中長期的政策と短期的政策が生まれてくるのだろう。「シーリング」とは、短期的政策を次年度にどのように反映させるかという作業に他ならない。

生まれたばかりの民主党中心の内閣に多くを望みすぎるのは難しいかもしれない。しかし、少なくとも、次々年度の予算策定にあたっては、「国家戦略室」で国家ビジョンの議論を大いにしていただき、その結果を「シーリング」という形で次々年度予算に反映していただきたい。  (2009/12)


「事業仕分け」と「シーリング」・1

2009-12-16 05:08:18 | Weblog
鳩山内閣になって初めての予算編成作業が進んでいる。その第一弾となる「事業仕分け」は新鮮な驚きを与えるものであった。従来通りの要求方式で臨んだ省庁の予算は、その必要性に多くの疑問が投げかけられた。それはそれで良かったのだが、「事業仕分け」の結果、民主党が先の総選挙でマニュフェストに謳った諸政策を実現するための7兆円は捻出できなかった。

一方、来年度予算の概算要求を各省庁に諮るにあたって、政府は、敢えて上限を設けなかった。
そうしたら、各省庁の概算要求を積算したところ、95兆円を超える概算要求が積み上がった。各省庁は、従来通りの予算要求に加え、民主党のマニュフェストに掲げられている新規政策に伴う費用を上積みして要求予算を提出したのだという。

政府は、これから、それを削減していくという。しかし、その過程に困難が伴うことは予想に難くない。

官僚は政府からの明確な指示があれば、それに従う。しかし、政府からの指示があいまいだと、自らの都合のいいようにそれを解釈する。今回の概算要求の策定過程で、民主党のマニュフェストに掲げられた政策を実現するためにはこれだけ必要です、その他の政策については従来通りです、というのが各省庁の本音なのではないか。これでは、概算要求は積み上がる一方だ。

「事業仕分け」はそこに無駄が潜んでいるとして切り込んだわけだが、短期間で大きな無駄の削減まで指摘するには無理があった。「事業仕分け」の最中に、政府か民主党の幹部が、「このような事業仕分けは今年限りです。」と発言していたが、事態の認識の薄さにあきれる思いだ。来年も再来年も続けてこそ「事業仕分け」の効果が出てくるもので、一回、短期間に終えるような類のものではない。後、鳩山首相が「次年度以降も事業仕分けは継続して実施する。」と発言するのを聞いて安堵した。

素人が見ていて感じたことの一つは次のようなものだ。
似たような施策をA省でもB省でもC省でも予算要求しているが、これらは一本化できないのか、というもの。
各省庁の回答は「各省の政策の対象が違います。」というのがほとんどだ。
「他省庁と政策のすり合わせはしたのですか?」
「いや、していません。」

このような施策については、A省・B省・C省とも、すべて「ゼロ査定」にすればいいのではないか?
「本当に必要な施策なら、A省・B省・C省が合議の上、予算要求してください。」

財務省の主計官は、各省ごとに担当がいるという。各省担当の主計官を減らして、省庁横串で見る主計官を設置すべきではないだろうか? (2009/12)


癒される言葉

2009-12-12 07:24:21 | BIBLOSの本棚
以下に掲げるのは、お客様からいただいた声のサンプルです。

*『子規全集』を先日、無事受け取りました。本日、本棚に並べたところ、ちょう ど一列にはまりました。とても感動しています。
 予定していた半分の額で、状態のいいものを購入させてもらえたので、とても満足しています。
 ありがとうございました。
 今年の秋の夜長は子規全集で楽しみます。

*『カラマーゾフの兄弟』(光文社)5巻セットを受け取りました。
 驚くほど完璧な梱包に感動するとともに、迅速な対応に感謝申し上げます。

*『長屋王』は今朝、無事届きました。
 非常に迅速なご発送、誠にありがとうございました。
 又、新品同様のご本を、お安くお売り頂いたことにも感謝しています。

*Thanks of your services in recent days for my unusual request.
 Thank you very much again.
 (日本旅行中の方からの注文)

このようなお客様の声に接すると、心が癒されます。インターネット古書店を営み続けてよかったと思う時です。  (2009/12)

「クレーム・ゼロ」の古書店を目指して

2009-12-10 18:05:09 | BIBLOSの本棚
インターネット古書店を営み始めたのが2003年。以来、7年が経過しました。今では、古書店業務にすっかり慣れ、安定した運営ができるまでになっています。

インターネット上で古本を取引するにあたってお客様が気をつけなければならないのは、古本の実物をチェックできないまま取引をすすめなければならない点です。

リアルな世界では、古本を探すために、古書店に出向いて、求めたい本の実物をためつすがめつチェックして、買う・買わないの決断を下すことができます。ところが、インターネット上の取引では、売り手の商品説明だけが頼りです。売り手は、この点を十分に配慮しなければなりません。それで、「クレーム・ゼロ」の古書店を目指すことをモットーに掲げました。つまり、お客様から、特に、書籍の「状態」についてクレームを受けないようにするのが目標です。

「クレーム・ゼロ」の古書店になるには: 答えは意外に簡単で、買い手から見て気になると思われる書籍の「状態」を、商品説明欄にしっかりと書き込むことです。

書籍が普通に「経年並」であれば、特に記すこともありませんが、以下のような場合には、注記をするようにしています。

函に、ヤケ、スレ、痛み、こわれ、シミ、などがある。
天地と小口にヤケ、シミ、水ぬれなどがある。
本体に書き込みがある。
(全集などの場合)月報(もしあったのであれば)がない。
月報に、破れ、ヤケ、シミ、などがある。

これだけ記せば、買い手は事前に購入していいかどうかの判断をすることができます。

今、手元の資料で確認すると、お客様から最後にクレームを受けたのは、2008年1月のことでした。数ページにわたって、小さなミシン穴がある、というものでした。発送前の検本で見逃したもので、このお客様には、返金して、書籍を送り返していただきました。

以来、20ヶ月にわたって、「クレーム・ゼロ」の記録が続いています。これは、自慢できることだと思っています。  (2009/12)