静聴雨読

歴史文化を読み解く

神保町シアター

2009-09-29 05:57:02 | 映画の青春
東京・神田神保町に神保町シアターという映画館があることを最近知った。

このところ、新聞の購読を止めているので、情報に疎くなっている。たまたま、ある食堂で見た新聞の映画広告欄に、「没後二十五年|フランソワ・トリュフォーの世界」が神保町シアターで開かれることが予告されていた。それで、神保町シアターの存在を知った。

フランソワ・トリュフォーは私の好きな映画監督の一人だ。それで、神保町シアターに通ってみようかという気になった。この件については、別のコラムで報告する機会があるかもしれない。

ここでは、神保町シアターそのものを紹介してみたい。
どうやら、新しく建てた映画館らしい。客席100のミニシアターだ。
座席はゆったりと取ってあり、クッションは硬からず柔らかすぎずで、心地よい。
各回の上映ごとに入れ替える「完全入替制」だ。
1回1200円、シニアは1000円。5回通うと、1回無料になる。

神保町シアターの最大の特徴はその企画だろう。今回のフランソワ・トリュフォーの特集のように、テーマを決めた特集を打ち出しているのだ。

ちなみに、フランソワ・トリュフォーの特集の次は、「思ひ出は列車に乗って」という企画が待っている。川本三郎の企画になる「鉄道映画紀行」という趣向だ。
鉄道にまつわる映画を28本選び出して上映する。『素晴らしい蒸気機関車』など、鉄道そのものをテーマにした作品もあるが、例えば、『カルメン故郷に帰る』とか『飢餓海峡』とかも選ばれている。

『カルメン故郷に帰る』の説明文を引くと、「高峰秀子が草津と新軽井沢を結ぶ軽便鉄道、草軽電気鉄道(昭和37年廃線)に乗って故郷北軽井沢に帰ってくる。」
また、『飢餓海峡』の説明文では、「三国連太郎は下北半島の川内森林鉄道と岩内線(昭和60年廃線)に乗る。」というふうに、なるほど、鉄道が重要な小道具になっていることがわかる。

古い列車や廃線となった路線などが改めて確認できる・・・この企画は鉄道ファンにとっては堪(こた)えられないのではないか。

神保町シアターのようなミニシアターでは企画がすべてだといういい例だ。 (2009/9)

貰い火を受けた古本屋

2009-09-23 06:57:46 | BIBLOSの本棚
東京にある一軒の古本屋が店を閉めています。初めそれを見た時は、てっきり廃業したのだと思いました。今、伝統的な古本屋は、ブックオフなどの新興古本屋に押されて、次々に店を閉めています。このお店もその類かと思っていました。

一ヶ月後にその古本屋の前を通ると、明かりのない暗い中、店を開いています。留守番の奥さんに聞くと、何と、隣家からの出火の貰い火を受けて、3階建ての建物の2階と3階が焼けてしまったとのこと。2階にあった本は皆「炭」になってしまい、3階の住まいは焼き出されたそうです。1階は類焼を免れたものの、消火の際、2階から落ちてきた水で、大切な本の多くが水濡れの災害に遭ったとのこと。何とも痛ましい話です。

ご存知のように、水に濡れた本の商品価値はゼロです。このお店は在庫が豊富で、とくに全集類が多い特徴がありました。しかし、例えば20巻の全集の5巻が水を被ってしまえば、助かった残りは「端本」となり、商品価値は著しく低下してしまいます。この古本屋の損害は計り知れません。

今は、助け出した古本の残りを、電気の止まった店で、細々と商っているとのこと。

出火した隣家は跡形もなく取り壊され、すでに、整地されています。
それに引き替え、この古本屋は、なまじ1階が残ってしまったため、おそらく火災保険の「全焼」扱いにならず、下りる保険金も少なくなるでしょう。
新たに店を建て直すか、廃業に進むか、どちらかを決めないと、今のままでは立ち行かないのは目に見えています。
隣家との補償交渉が終わらないと、何とも先を見通せないらしい。

「気を落とさず頑張ってください。」と声をかけて店を出ました。ファンからすれば、是非、お店を再建してほしいと願っています。 (2009/9)