静聴雨読

歴史文化を読み解く

「公費購入」とは何だろう?

2011-02-23 07:11:06 | 社会斜め読み

第一のケース。

三重県の短期大学の人から「BIBLOSの本棚」に3万円ほどの書籍の注文が入りました(6月23日)。注文確認メールを差し上げると、「公費で購入したい」と返ってきました。「公費購入」とは何だろう? 薄々承知していましたが、聞いてみました。

・まず、書籍を送りなさい。
・納品書と請求書を同封しなさい。
・納品書と請求書には日付を入れないように。
・納品書と請求書には、書店の公印と代表者の印が必要。
・別に、代金振込方法を指示しなさい。

確か、これだけの指示がありました。納得のいかない事項もありましたが、ともかく書籍を送付しました(6月25日)。納品書と請求書は6月27日に送付しました。

その後、書籍到着のメールは入ったものの、ほかは沈黙が続きました。
一瞬、インターネット取引詐欺に引っかかったか、と疑心がよぎりました。

経過の問い合わせをすると(7月10日)、どうやら、内部の決裁でつまずいているようです。納品書と請求書に、代表者の印はあるが、書店の公印がないのがその原因のようです。
ようやく、代金が振り込まれたのは、7月17日でした。

第二のケース。

三重県の短期大学との取引の継続中に、兵庫県の大学の人から問い合わせが入りました。
・支払いが納品の翌月25日になるが、それでいいか?

翌日のメールでは、
・「公費購入」の対象が、600円の書籍であることが判明。

さらに、次の日のメールで「公費購入」の詳細な「条件」が書かれていました。
・見積書・納品書・請求書を同封せよ。
・日付は入れるな。
・社印と代表者印が必要。
・「古書価格認定書」を寄こせ。
・大学の指定する「振込依頼書」に必要事項を書き込んで、送れ。
・振込手数料は業者が負担せよ。

もちろん、この大学との取引はお断りしました。

2つのケースを合わせると、「公費購入」がどんなものか、理解できました。

さて、「公費購入」の「条件」は理解しましたが、納得のいかない点がいくつかあります。

1.もともと「公費購入」とは、例えば、30台のパソコン設備を購入するのを想定した手続きなのではないか? それを、「600円の書籍」に適用するとは!

2.「日付は入れるな」という指示が理解できません。書籍を送付した日には、書店から見れば債権が、大学から見れば債務が発生するはずで、それを明らかにしない意図が分かりません。

3.納品に伴う書類には公印と代表者印が必要とありますが、一方、大学の注文書はメールだけです。

4.「古書価格認定書」を納品業者に作らせるとは! 第三者に作らせなければ、「認定」の客観的効力がないでしょう。

5.振込手数料を購入相手に負担させるというのは、民間の商慣行にはありません。

以上、書籍の「公費購入」には様々な矛盾が見られます。

ここで、役所風のことばで「公費購入」を定義すると、次のようになるのではないでしょうか?
「公費購入」とは:「公費の適正な支出を確保するため、購入に要する手続きを明確にし、購入に伴う不透明さをなくすようにすること。その際、購入先の業者がたとえ零細業者であっても、厳格な手続きを求め、それにより生ずる、業者側の手間の増大・コストの増大・入金の遅延・ストレスの蓄積には、眼をつぶること。」 

2つのケースとも、窓口となった担当者はごく普通の人で、問題が「公費購入」という制度にあることは明らかです。

例えば、図書館開設にあたり、大量の図書を購入する場合に、「公費購入」を適用するのは妥当でしょう。しかし、これは稀なケースです。

一方、例えば、10万円以下の書籍購入の場合のような日常的なケースでは、簡易購入制度を適用するなどの改善を施さない限り、古書店は大学を相手にしなくなりかねません。 (2007/7)

この経験を踏まえ、その後は、「10万円以下の取引では、『公費購入』のお取り扱いをしておりません。」と答えるようにしました。
それに対して、あきらめるのが半数、残りの半数は「では、私費で購入します。」と方針を切り替えていただいています。 (2008/7)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿