静聴雨読

歴史文化を読み解く

道州制論議・2

2010-06-18 06:22:46 | 社会斜め読み
道州制を導入する意義の一つは、国に集中する権限の一部を地域に委譲することにあるが、もう一つの意義は、地域間の格差を認識して、格差是正のための措置を講じやすくなることだろう。カテゴリー1の東京都・大阪都の所得税や住民税を高くし、それに見合う形で、カテゴリー3の北海道特別州・沖縄特別区の所得税や住民税を少なくする案もその一つだ。

カテゴリー3の北海道特別州・沖縄特別区に、様々な「特区」を認めることも考えられてよかろう。

例えば、私の関心のある分野では、「競馬特区」というのはどうか?

北海道特別州は競走馬の産地だ。また、中央競馬の競馬場が札幌と函館にある。この、札幌競馬場と函館競馬場で開催される競馬の売り上げの一部を北海道に還元することができないか? 

現在、中央競馬の売り上げの25%を日本中央競馬会が召し上げているが、この召し上げ率は余りに高すぎる、という声が多い。日本中央競馬会は、今話題の独立行政法人で、その理事長ポストは農林水産省の天下りの指定席となっている。日本中央競馬会の召し上げ率を15%に抑え、残りの10%を北海道に還元する。これは十分考えられる案だ。

一方、沖縄特別区には競馬場がない。この温暖な地の、特に、冬季には、競馬を開催するメリットが大きいはずだ。沖縄にダート競馬専門の競馬場を一ヶ所作り、10月から3月にかけて、競馬を開催する。売り上げの分配方式は北海道に倣い、売り上げの10%を沖縄に還元する。

「経済特区」を北海道特別州と沖縄特別区に展開することは十分理にかなっていると思う。  (2010/6)


道州制論議・1

2010-06-16 07:09:51 | 社会斜め読み
自民党主体の政権から民主党主体の政権に交代し、鳩山内閣から菅内閣に移行して、道州制論議は深まっているのだろうか? よく見えない。

地域主権の拡張については、どの政治勢力も賛同しているはずだから、道州制についても反対は少ないはずだ。以下は、道州制を導入するための予備考察だ。

まず、道州を3つのカテゴリーに分ける。いきなり、背筋をなでるような話だが、これは必須の解決要件だ。

カテゴリー1:東京都と大阪都。
カテゴリー2:その他の道州。
カテゴリー3:北海道と沖縄。

そう、地域の余裕度に応じて、3つのカテゴリーに分けるのが基本原則だ。そして、カテゴリー1(東京都と大阪都)は、財政面で、カテゴリー3(北海道と沖縄)を支援する仕組みを作る。

北海道は面積が広い割に、第二次産業や第三次産業が少なく、雇用の機会も限られている。
沖縄も、同じく、第二次産業や第三次産業が少なく、雇用の機会も限られている上に、米軍の軍事基地を多数引き受けている。
この2地域は財政面で恩恵を受けてしかるべきだ。所得税や住民税も大幅に少なくしてよい。その結果、北海道や沖縄に工場が集まったり、住民が移住してきたりすれば、それはそれで悦ばしいことだ。

一方、東京都と大阪都(橋下知事の希望に沿うとして)は、自然に税収が多くなる構造になっているので、その一部をカテゴリー3の北海道と沖縄に分配してほしいのだ。

このようにして、地域格差を少なく設計するのが道州制を導入する基本原則だ。そして、設定する道州は次のようにする:
カテゴリー1:東京都・大阪都。
カテゴリー2:北日本州・関東州・中日本州・近畿州・中国四国州・九州。
カテゴリー3:北海道特別州・沖縄特別区。 (2010/6)

郵政問題をめぐる混迷・2

2010-06-14 07:24:53 | 社会斜め読み
郵政問題についての私の基本的考え方を改めて整理すると:

1. 日本郵政グループの3事業会社(郵便事業会社・ゆうちょ銀行・かんぽ生命)は完全民営化すべきである。

2. 郵便局会社は民営化せず、国からの補助金を入れつつ、「ユニバーサル・サービス」を堅持すべきである。

3. 郵便事業会社の事業を分割して、ローカル郵便ネットワークは郵便局会社にまかせるべきである。

4. 郵便局会社は日本郵政グループの窓口業務の受託にとどまらず、宅配・検針・集金などの業務も受託できるようにすべきである。このように、進化した郵便局会社は、もはや、その名がふさわしくなくなっているだろう。むしろ、「地域サービス会社」というほうが適切だ。

以上が、経営の効率化と「ユニバーサル・サービス」の維持とを両々相俟って実現する方策だ。

現行の政府案の弱点は、郵便事業会社と郵便局会社との癒着構造を温存している点にある。
それは、「信書の送達」に関する扱いに端的に現われている。

「民間業者による信書の送達に関する法律」という法律がある。郵政民営化後に、「民間業者による」と名乗る法律が生き残っているのが笑える。この法律を要約すれば、「日本郵政グループ以外の『民間業者』は信書を扱ってはならない。」ということだ。

「信書」とはなにか? 送る側が誰で、受け取る側が誰だ、ということを詮索されることなく送られる郵便物などのことだ。「開き封」で中身が見える「ゆうメール」や郵便局で対面で差し出す「ゆうパック」は「信書」に当たらない。そのため、宅配業者は、ダイレクト・メールなどを扱う場合、「これは『信書』ではありません。」という但し書きを入れている。

ということは、「信書」の中身が見えない「閉じ封」と、「信書」をどこでも投函できる「郵便ポスト」が必須の要件となる。「民間業者による信書の送達に関する法律」は、このような「信書の送達」を保証できない限り、「民間業者」は「信書の送達」業務に係わることはできない、といっているのだ。一時、ヤマト運輸が郵便事業に参入しようとして、この「信書の送達」条項を盾に、参入を阻まれたことがある。主として、「郵便ポスト」を、郵便事業会社並みに設置しなければ、「信書の送達」を認可しない、ということだった。

このように、時代に合わない「民間業者による信書の送達に関する法律」を盾に、民間業者の参入を頑なに排除しようとする日本郵政グループの姿勢は批判されてよい。郵便事業会社はほかの宅配業者などと対等の競争をすることが求められる。その結果、競争に敗れることがあっても、やむをえないと覚悟すべきだ。  (2010/6)



郵政問題をめぐる混迷・1

2010-06-12 06:12:29 | 社会斜め読み
ここに来て、国民新党の亀井党首が、郵政改革法案の早期国会通過を求めて、再び暴れている。
与党の郵政改革法案の骨子は、現行の日本郵政グループ(持株会社)のもとに並列してある郵便事業、銀行事業、生命保険事業の3事業会社と郵便局会社の4社体制を改め、郵便事業会社と郵便局会社を合わせた会社の下に、銀行事業、生命保険事業の2事業会社をぶら下げるという体制だ。

また、各事業会社の独立性を弱めるとともに、政府の関与の余地を拡大する、というものだ。

この「郵政改革法案」にはまったく賛成できない。

現状の日本郵政グループは、郵便事業の採算がまったく期待できない、という弱点をかかえたままだ。銀行事業、生命保険事業はそこそこの採算ラインに乗っているのに対し、郵便事業は「ユニバーサル・サービス」(どの地域でも同じサービスを受けられる体制)の維持が足かせとなって、採算ラインに乗せることができない、という。

郵便事業の経営効率化のために取るべき施策の第一は、郵便事業会社からローカル郵便ネットワークを切り離し、その要員(郵便配達員)と車ごと、郵便局会社に移管することだと以前述べた。ローカル郵便ネットワークを維持し活性化できる知恵を持っているのが地域を担当する郵便局会社の郵便局だからだ。

一方、郵便局会社を切り離した郵便事業会社は身軽になり、「ユニバーサル・サービス」の足かせから解き放たれて、ヤマト運輸や佐川急便グループと同様の競争条件に置かれることになる。それで、採算ベースに乗せられなければ、自らの経営手法に欠陥があると思う必要がある。  (2010/6)


菅氏への期待

2010-06-04 08:29:05 | 社会斜め読み
鳩山首相があっさり政権を投げ出して、民主党が代表を替えようとしている。
次期総理として菅直人氏が有力のようだ。菅氏への期待を述べたい。

当面の菅氏の役割は、7月の参議院議員選挙を乗り切ることと、「クリーンな政治」の実現だろう。

参議院議員選挙対策はここでは措いておいて、「クリーンな政治」の実現については、市民運動出身の菅氏が本領を発揮できるはずだ。

「クリーンな政治」の具体化は比較的容易で、企業・団体献金の廃止、官僚の天下りの廃止、行政改革の推進、などがすぐに浮かぶ。

すると、同じ政治理念を標榜している政党がほかにもあるではないか? そう、「みんなの党」だ。渡辺善実率いる「みんなの党」は、行財政改革一本を訴えて、いま人気上昇中だ。参議院議員選挙後には、「ミンミン連立」が現実味を帯びてくる。

その際には、行財政改革に真逆の政治信条を持つ国民新党(「郵政民営化」のより戻し、など)は、連立を解消することになろう。

さぞ、喧(かまびす)しい夏になるだろう。 (2009/5)